審決


不服2018-650016

Mercedesstrasse 137 70327 Stuttgart
 請求人
Daimler AG
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
永井 浩之
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
中村 行孝
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
佐藤 泰和
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
朝倉 悟
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
本宮 照久
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
今岡 智紀
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番6号 日本生命丸の内ビル 協和特許法律事務所
 代理人弁理士
矢崎 和彦
  


 
  
 国際登録第1328469号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件についてされた平成30年9月7日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成31年(行ケ)第10004号,令和元年7月3日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。



 結 論
  
 原査定を取り消す。
 本願商標は,登録すべきものとする。



 理 由
  
第1 本願商標
 本願商標は,「EQ」の欧文字を書してなり,日本国を指定する国際登録において指定された第12類「Motor vehicles.」を指定商品として,2016年(平成28年)7月8日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,同月28日に国際商標登録出願されたものである。
 
第2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は,「本願商標は,『EQ』の欧文字を普通に用いられる方法で書してなるところ,かかる欧文字2文字は,本願の指定商品の品番や型番等を表す記号又は符号として類型的に使用されているものであるから,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定し,本願を拒絶したものである。
 
第3 当審の判断
 請求人が提出した甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。),職権により採用した請求人が裁判所に提出した甲第10号証ないし甲第92号証(枝番号を含む。)及び請求人の主張,並びに,職権により調査し裁判所に提出した乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)によれば,以下のとおり判断できる。
 1 商標法第3条第1項第5号該当性について
 本願商標は,欧文字の「E」と「Q」を,一般に用いられる書体により,「EQ」と横書きしてなるものであり,用いられる文字の形や組合せ方法に特徴があるわけではない。
 一般に,欧文字2字からなる標章は,商品の品番,型番,等級等を示す記号,符号として用いられることがあるところ,本願の指定商品である自動車の関わる業界においても,欧文字2字が,商品の品番,型番,等級等を示す記号,符号として用いられることがある(乙2~乙5)。そして,文字の形や組合せ自体に特徴があるとはいえない本願商標は,自動車関連業界で商品の品番,型番,等級等を示す記号,符号として用いられる欧文字2字との比較において特段の差異があるとは認められない。
 よって,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第5号に該当する。
 2 商標法第3条第2項該当性について
(1)商標法第3条第2項は,同条第1項第3号ないし第5号に対する例外として,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は,特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから,当該商標の登録を認めようというものと解される。
 そして,使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標が使用された期間及び地域,商品の販売数量及び営業規模,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合して判断すべきである。
(2)請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば,次の事実が認められる。
 ア 請求人は,世界的に著名なドイツの自動車メーカーであり,「メルセデス・ベンツ」ブランドの乗用車その他各種乗用車・商用車や各種エンジンのメーカーとして世界200以上の国と地域で事業を展開している(甲17,甲18)。
 イ 商標の採択とモーターショーへの出展
(ア)請求人は,「メルセデス・ベンツ」ブランドのうちの,電動車モデルのブランドを示す商標として本願商標を採択した。請求人の会長であるAによれば,「EQ」とは,「Electric Intelligence」を意味する言葉であるとされ(甲9の2),請求人の中長期戦略として掲げるコンセプト「CASE」(C=コネクテッド,A=オートノマス(自動運転),S=シェアリング,E=エレクトリック(電動化))の「E」を体現するものであるとされる(甲9の3)。
(イ)請求人は,2016(平成28)年9月29日,パリモーターショー2016において,請求人の電動車ブランド「EQ」及び中長期戦略「CASE」を発表するとともに,「EQ」ブランドのコンセプトカーである「Generation EQ」を世界初公開した。
 パリモーターショー2016の来場者数は,主催者発表によれば106万6439人で,公式ビデオは56万2000ビュー増を記録し,公式ウェブサイトには150万ユニークユーザーが513万5000頁を閲覧し,公式アプリは40万ダウンロードに達した(甲27)。
 パリモーターショー2016における「EQ」の発表等は,以下のとおり,ウェブサイトや雑誌において紹介された。
 a 2016(平成28)年9月29日付け「AUTOCAR JAPAN」のウェブサイトには,「メルセデス・ベンツは・・・電動SUVであるジェネレーションEQコンセプトをパリ・モーターショーで公開した。・・・EQはメルセデス・ベンツのサブブランドとしてリリースする予定だ」等の記載がある(甲5)。
 b 2016(平成28)年9月30日付け「Clicccar」のウェブサイトには,「メルセデスがEVの新ブランド『EQ』を発表」,「『EQ』シリーズは,機能拡張や規模の拡大に対応できるのが見どころで,・・・」等の記載がある(甲2)。
 c 2016(平成28)年9月30日付け「WebCG」のウェブサイトには,「EVに特化したメルセデス・ベンツのサブブランド『EQ』から発売される予定である」等の記載がある(甲3)。
 d 2016(平成28)年9月30日付け「LEVOLANT BOOST」のウェブサイトには,「EQとは“エレクトリック・インテリジェンス”を意味し,メルセデス・ベンツが掲げるブランドバリューの“エモーション・アンド・インテリジェンス”から派生しているとのこと。これはこのコンセプトカーの車名の一部であると同時に,メルセデスが今後送り出していく電気自動車シリーズの,新たなブランドネームでもある」等の記載がある(甲6)。
 e 2016(平成28)年9月30日付け「GQ JAPAN」のウェブサイトには,「メルセデス・ベンツが考えるコンセプト『ジェネレーションEQ』-パリモーターショー2016現地レポート」,「ここで紹介されたのが,C,A,S,Eの4文字。これは,コネクテッド,オートノマス=自動運転,シェアリング,エレクトリック=電動化の頭文字・・・そして,これらの要素をすべて満たす新ブランド『EQ』を立ち上げると発表したのである」,「その第1弾として紹介されたのが,ジェネレーションEQと名付けられたコンセプトカーである」等の記載がある(甲26)。
 f 2017(平成29)年6月5日付け「MOBY」のウェブサイトには,「【メルセデスベンツEV専門新ブランドEQ誕生】」,「メルセデス・ベンツがEV(電気自動車)専門のブランド『EQ』を立ち上げました。EQブランドの第一弾となるEVコンセプトカーは,・・・」等の記載がある(甲4)。
 g 自動車専門誌「ベストカー」2016(平成28)年10月号には,「メルセデス・ベンツが電動パワートレーンに特化したブランドである『EQ』から初のコンセプトカーとなるジェネレーションEQ・・・」等の記載がある(甲29の1)。同誌の同年10月から12月までの公表発行部数は23万6667部である(甲49)。
 h 自動車専門誌「Motor Fan illustrated」2016(平成28)年10月号には,「EQは,メルセデスが新たに立ち上げた電動パワートレーンに特化したブランドだ」等の記載がある(甲29の2)。
 i 自動車専門誌「driver」2016(平成28)年10月号には,「EVモデルのブランド『EQ』発足!」,「『EQ』はEVのブランド名でもあり,2025年までに11モデルが登場する予定だ」等の記載がある(甲29の3)。
 j 自動車専門誌「カーセンサーEDGE」2016(平成28)年10月号には,「ジェネレーションEQ・・・を発表したメルセデス」等の記載がある(甲29の4)。
 k 自動車専門誌「CARトップ」2016(平成28)年10月号には,「ついにドイツの巨人がEV市場に参入。EV専用の新ブランド『EQ』を立ち上げた」,「メルセデス・ベンツはパリショーで専用ボディを持ったB-EV,『EQ』を発表した」等の記載がある(甲29の5・6)。同誌の同年10月から12月までの公表発行部数は14万4973部である(甲50)。
 l 自動車専門誌「GQ CARS」2016(平成28)年10月号には,「メルセデスはEVをEQクラスと呼ぶことにしたようだ」等の記載がある(甲29の7)。
 m 自動車専門誌「ENGINE」2016(平成28)年10月号には,「メルセデスが新たに立ち上げたEV専用ブランドのEQから,2020年に発売される第1弾モデルの雛形」等の記載がある(甲29の8)。同誌の同年10月から12月までの公表発行部数は2万480部である(甲51)。
 n 自動車専門誌「CAR GRAPHIC」2017(平成29)年10月号には,「ダイムラーにとって今回のパリ・サロンは大きなマイルストーンとなった。何しろここで,電気駆動のモデルに特化したメルセデス・ベンツのサブブランド『EQ』を展開していくことが初めて明らかにされたのだ」,「“Electric Intelligence”を意味するというEQは,単なるプロダクト名ではない。・・・EQは,こうしたサービスやテクノロジーを包括したブランドなのです」,「EQでは・・・,様々な車種を生み出していく予定だ」等の記載がある(甲29の9)。
(ウ)請求人は,2017(平成29)年9月に開催されたフランクフルトモーターショー2017において,「Generation EQ」のコンパクトサイズの「Concept EQA」を世界初公開するとともに,「EQ」ブランドの市販車「EQC」を2019年に販売する計画を発表した。フランクフルトモーターショー2017の来場者数は,主催者発表によれば81万人である(甲30)。フランクフルトモーターショー2017でEQのコンセプトカーであるEQAが発表されたこと等は,以下のとおり,ウェブサイトや雑誌において紹介された。
 a 2017(平成29)年9月12日付けの「Response」のウェブサイトには,「メルセデスベンツは9月12日,ドイツで開幕したフランクフルトモーターショー2017において,『コンセプトEQA』を初公開した。『EQ』は,メルセデスベンツが2016年に立ち上げた電動パワートレイン車に特化した新ブランド。同ブランドの最初のコンセプトカーが,SUVクーペの『ジェネレーションEQ』だった。フランクフルトモーターショー2017で初公開されたコンセプトEQAは,ジェネレーションEQに続くEQブランドの第2弾モデル」等の記載がある(甲31)。
 b 2017(平成29)年9月25日付け「Park blog」のウェブサイトには,「2016年パリモーターショーにおいてメルセデスベンツは新しいEVブランドである『EQ』を発表した。今回発表された次世代EV『EQA』がEQの第2弾コンセプトモデルである」,「2019年に,EQシリーズとして最初の生産開始が予定されているのが『EQC』」等の記載がある(甲32)。
 c 自動車専門誌「ベストカー」2017(平成29)年10月号には,「ダイムラーは・・・電動化ブランドである『EQ』(HV,PHV,ピュアEVなどを示す新ブランド)も発表した」,「『E』の電動化では,『EQ』ブランドとして2022年までにすべてのメルセデスベンツが販売する全モデルに対して電動パワートレーンを導入するとした・・・今年のフランクフルトモーターショーでは,EQブランドのコンセプトカーとして『Smart vision EQ fortwo』が発表されたのだ」,「今年9月のフランクフルトモーターショーで初公開されたコンセプトEQAは,EQCに続くEQブランドの第2弾モデル」等の記載がある(甲29の10)。同誌の2017(平成29)年10月から12月までの公表発行部数は22万9833部である(甲52)。
 d 専門誌「SOLAR JOURNAL」2017(平成29)年11月号には,「ベンツはプラグインハイブリッドに続き,電動化ブランドの『EQ』を立ち上げた。その最新作がコンセプトEQAだ」等の記載がある(甲29の13)。同誌の公表発行部数は約10万部である(甲55)。
 e このほか,自動車専門誌「日経Automotive」2017(平成29)年10月号にも請求人が,フランクフルトモーターショー2017で,EQCの発売計画や,EQAを発表したことの記載がある(甲29の11)。同誌の公表発行部数は1万2000部である(甲53)。
(エ)請求人は,2017(平成29)年10月27日から11月5日までの間,開催された東京モーターショー2017において,「Concept EQA」をアジア初公開するとともに,ステアリングレスカーのコンセプトカー「smart vision EQ fortwo」を発表した(甲33,甲34)。東京モーターショー2017の来場者数は,主催者発表によれば77万1200人である(甲30)。
 請求人は,2017(平成29)年10月2日付けで出展概要を発表し(甲34),同月25日付け請求人ウェブサイト(甲9の4)において,出展内容に係る予告を行った。また,同月3日付け「Clicccar」(甲36),同月24日付け「乗りものニュース」(甲35)に出展概要にかかる記事が掲載された。
 請求人は,2017(平成29)年11月3日付け(甲9の5)及び同月14日付け(甲9の6)請求人ウェブサイトにも,同モーターショーへの出展内容や,「Concept EQA」についての解説記事を掲載した。同モーターショーにおける請求人の「EQ」ブランドのプレゼンテーション等については,ウェブサイトや雑誌において紹介された。
 a 2017(平成29)年10月26日付け「Clicccar」のウェブサイトには,「4台のショーモデルを東京モーターショーにおいてアジア初公開したのです。その4台は,それぞれがメルセデスを支える4つのブランドから選ばれています。・・・電気自動車ブランドのEQは・・・『Concept EQ A』を出展しました」等の記載がある(甲37)。
 b 男性ライフスタイル誌「DIME」2017(平成29)年11月号には,「同社のEV専用ブランド『EQ』から登場したコンセプトカー『Concept EQA』」等の記載がある(甲29の16)。同誌の同年10月から12月までの公表発行部数は7万1000部である(甲58)。
 c 自動車専門誌「GENROQ」2017(平成29)年11月号には,「メルセデスのEQシリーズ」等の記載がある(甲29の17)。
 d 専門誌「日経ものづくり」2017(平成29)年12月号には,「EQは2016年に発表したEVの新ブランド。2019年にEQブランドで第1弾となる中型EV『EQC』を量産する計画である」等の記載がある(甲29の21)。同誌の公表発行部数は1万8200部である(甲53)。
 e ビジネス誌「日経トレンディ」2017(平成29)年12月号には,「メルセデス・ベンツは,19年にEV専用ブランド『EQ』を投入予定」等の記載がある(甲29の22)。同誌の公表発行部数は10万3595部である(甲53)。
 f 専門誌「日経エコロジー」2017(平成29)年12月号には,「2017年9月開催の独フランクフルトショーで,EVブランド『EQ』のコンセプトモデルを発表した独ダイムラー」等の記載がある(甲29の23)。
 g このほか,自動車専門誌「LE VOLANT」2017(平成29)年10月号(甲29の12)及び同年11月号(甲29の20),情報誌「サンデー毎日」同年11月号(甲29の14),男性ライフスタイル誌「週刊プレイボーイ」同年11月号(甲29の15),専門誌「テレコミュニケーション」同年11月号(甲29の18),専門誌「ラジオライフ」同年11月号(甲29の19)にも,東京モーターショー2017において「Concept EQA」等が発表されたことの記載がある。
 ウ 新聞広告の掲載
 請求人は,2018(平成30)年1月5日付けの全国紙(読売新聞,朝日新聞,日経新聞)の朝刊に,請求人が電動化を進める新ブランド「EQ」を紹介する広告を掲載した(甲38)。同広告は,一面全部を使用し,広告の上部約3分の2のスペースには「Concept EQA」の写真が配置され,その右下に「EQ」のロゴが配置されており,その下に,「Concept EQA」について「2017年フランクフルト・東京モーターショーにて発表されたEVコンセプトモデル」との記載があり,下部約3分の1のスペースには,「クルマと人の関係を未来へと進める新ブランド『EQ』」との記載がある。各紙の発行部数は,読売新聞が851万2674部,朝日新聞が595万4336部,日経新聞が150万2020部である(甲87)。
 エ 請求人ウェブサイト及び定期機関誌による広報
(ア)請求人ウェブサイト
 請求人は,英語のウェブサイトにおいて,「Mercedes-Benz Concept EQ:The electric SUV of the Future(メルセデス・ベンツ コンセプトEQ:未来の電動SUV)」とのタイトルの下,「EQ」を紹介する記事を英文で掲載するとともに(甲1),以下のとおり,日本語による請求人ウェブサイトにおいても「EQ」の広報記事を掲載している。
 a 2017(平成29)年10月5日付け請求人ウェブサイトには,「最先端の技術を実現した自動車ブランド『EQ』」,「メルセデス・ベンツは約1年前のパリモーターショーで『コンセプトEQ』を紹介すると同時に,『EQ』という新ブランドを立ち上げることを発表した」等の記載がある(甲9の1)。
 b 2017(平成29)年10月13日付け請求人ウェブサイトには,「メルセデスの新ブランド『EQ』が目指す,クルマと人との未来」との標題の下,「EQ」を紹介する記載がある(甲9の2)。
 c 2017(平成29)年10月20日付け請求人ウェブサイトには,「メルセデスが提唱するクルマの新たな価値『CASE』」との標題の下,「EQ」についても,「『CASE』の『Electric(電動化)』を担うメルセデスの新ブランド『EQ』」等の記載がある(甲9の3)。
(イ)定期機関誌
 請求人は,日本国内の顧客向けの定期機関誌「Mercedes-Benz magazine」を年4回発行しており,2018(平成30)年までの同誌の発行部数は,年間17万部である(甲87)。
 a 2017(平成29)年9月(03秋)号には,「EQ」を紹介する記事が掲載され,同記事中には,「メルセデスは既に昨年秋のパリサロンで2020年までに市販される予定の次世代モビリティの新ブランドを発表している。それがEQだ」,「メルセデスはなぜ電気自動車以降の時代,新しい時代を担うファミリーに『EQ』という新たなブランドを与えたのか」等の記載がある(甲39)。
 b 2017(平成29)年12月(04冬)号には,「CASE」を紹介する記事が掲載され,同記事中には,「電動モビリティのための新ブランド,EQの設立も,すでに発表されている。『Electric Intelligence』を意味するこのネーミングの下,電動化されたモデルを2020年までに10モデル以上投入することが決定している。その目玉のひとつが,EQブランドのコンパクトカー『コンセプトEQA』だ」等の記載がある(甲40)。
 c 2018(平成30)年3月(01春)号にも「CASE」を紹介する記事が掲載され,同記事中には,「次世代の自動車に欠かせないのが電動化。そこでダイムラーが立ち上げたのが,ハイブリッドカーやEV,燃料電池車などを専門に扱うブランド『EQ』だ」,「『Electric Intelligence』を表す『EQ』の名で新たに設立されたブランドから登場したモデル群が『EQ POWER』だ」等の記載がある(甲41)。
 オ 販売実績及び販促活動
 請求人は,2014(平成26)年より,内燃機関と電力で駆動するハイブリッド車で,コンセントから充電可能な車である,プラグインハイブリッド車シリーズの製造販売を行っていたが,2017(平成29)年以降,これに「EQ POWER」との名称を付して販売するようになった。「EQ POWER」の販売台数は,2017(平成29)年から2019(平成31)年4月までの累計で1081台である(甲87)。
 請求人は,2017(平成29)年10月,全国215の販売店において,販促フェアを開催し,「EQ」ブランドの告知を行うとともに,「EQ POWER」の販売及び販促活動を行った(甲46,甲87)。フェアの開催時期を予告する「メルセデス・ベンツ山形ブログ」には,「未来に向けたメルセデス・ベンツの新ブランドとして,“Electric Intelligence”を表す『EQ』が誕生!!」との記載がある(甲47)。
 請求人は,フェアに先立ち,顧客にリーフレット(甲88)を送付したほか,フェアの会場では,のぼり(甲89)を立てたり,展示用車両のナンバープレートに化粧プレート(甲90)を装着したり,壁面にステッカー(甲91)を貼付したり,来場客にブックレット(甲48)を配布するなどの販促活動を行った。これらの販促ツールには,「EQ」の文字を図案化したロゴ(甲91),「EQ」の文字を図案化したロゴと「POWER」の欧文字を並べて横書きしたロゴ(甲88~甲90)が付されている。また,ブックレットには,「EQ」の文字を図案化したロゴと「POWER」の欧文字を並べて横書きしたロゴとともに,「EQ POWER モデル」の車種が掲載され,「新たな電気自動車ブランドとして“Electric Intelligence”を示す『EQ』が誕生します。まず始めにプラグインハイブリッドモデルとなる『EQ Power』が誕生」等の記載がある(甲48)。
 請求人は,顧客に対し,「EQ」ブランドの車種が掲載されたカタログを約6万8000部発行し,顧客に対し配布しているが(甲87,甲92),その時期は明らかではない。
 カ 外国での登録状況
 本願商標は,英国及び欧州(EUTM)に出願され,2016(平成28)年10月14日付けで英国(甲84),同年12月1日付で欧州(甲85)において,それぞれ登録された。また,国際登録第1328469号に基づく領域指定国では,2017(平成29)年4月27日にオーストラリア(甲86の4),同年8月18日にノルウェー(甲86の8),同年9月28日にロシア(甲86の9),同年11月29日にスイス(甲86の10),同月30日にメキシコ(甲86の11),2018(平成30)年5月2日にインド(甲86の14),同年8月10日にトルコ(甲86の15),同年11月1日に米国(甲86の16)において,それぞれ保護が認容されている。
(3)自他商品識別力の有無について
 ア 上記(2)の事実によれば,請求人は,2016(平成28)年9月29日,パリモーターショー2016において,電動車専用の新ブランドとして「EQ」を発表するとともに,「EQ」ブランドのコンセプトカーを発表し,その後,フランクフルトモーターショー2017,東京モーターショー2017でも「EQ」ブランドのコンセプトカーを発表して,「EQ」ブランドの宣伝を行い,その様子は,自動車専門誌やウェブサイトにおいて,取引者,需要者に紹介された。また,請求人は,全国紙3紙において広告を掲載したほか,請求人ウェブサイトや顧客向け定期機関誌等においても,「EQ」ブランドの宣伝を行った。
 さらに,請求人は,2017(平成29)年から,日本国内において,プラグインハイブリッド車に「EQ POWER」との名称を付して販売しているところ,「EQ」の後に1文字分のスペースを空けて「POWER」が配置された標章の形態や,宣伝広告の内容から,需要者において,「EQ POWER」が「EQ」ブランドの自動車の名称であることを認識することができると解される。
 以上によれば,請求人は,本願商標を本願の指定商品である「Motor vehicles.」に使用したものと認められる。
 イ 上記(2)の認定のとおり,本願商標は,世界有数の自動車メーカーである請求人が,電動車ブランドを示す商標として採択したものであること,請求人は,モーターショーにおいて,「EQ」を新しい電動車ブランドとして公表するとともに,「EQ」ブランドのコンセプトカーを発表し,各モーターショーの展示内容等は多くの自動車専門雑誌や自動車関連情報のウェブサイトにおいて紹介され,雑誌の発行部数は,多いものでは23万部に達していること,請求人は,請求人ウェブサイトや顧客向け定期機関誌の記事,全国紙での新聞広告等によって,請求人の電動車ブランド「EQ」について宣伝を行ったことが認められる。
 また,上記の雑誌等の記事の中には,請求人の「EQ」ブランドの紹介に特化したものもあること(甲29の6・10,甲35~甲37),請求人の顧客向け定期機関誌の発行部数は,2018(平成30)年度には年間17万部に達していることも勘案するなら,著名な自動車メーカーである請求人の発表する電動車やそのブランド名に注目する取引者,需要者が類型的に存在することが認められる。
 そして,広告宣伝の具体的態様も,上記のとおり,請求人ウェブサイトやブックレット等では,「メルセデス・ベンツは約1年前のパリモーターショーで『コンセプトEQ』を紹介すると同時に,『EQ』という新ブランドを立ち上げることを発表した」(甲9の1),「メルセデスの新ブランド『EQ』が目指す,クルマと人との未来」(甲9の2),「新たな電気自動車ブランドとして“Electric Intelligence”を示す『EQ』が誕生します」(甲48)などと宣伝され,雑誌やウェブサイトの記事等においても,「電気駆動のモデルに特化したメルセデス・ベンツのサブブランド『EQ』」(甲29の9),「『EQ』は,メルセデスベンツが2016年に立ち上げた電動パワートレイン車に特化した新ブランド」(甲31),「EQブランド」(甲4,甲29の10・21,甲31,甲40等),などと紹介されており,本願商標が請求人のブランドの名称であることが強調されている。
 以上によれば,本願商標については,著名な自動車メーカーである請求人の発表する電動車やそのブランド名に注目する者を含む,自動車に関心を持つ取引者,需要者に対し,これが請求人の新しい電動車ブランドであることを印象付ける形で,集中的に広告宣伝が行われたということができる。加えて,本願商標は,現在の時点で,出願国である英国及び欧州にて登録され,国際登録出願に基づく領域指定国7か国にて保護が認容されており,世界的に周知されるに至っていたと認められることも勘案するなら,本願商標についての広告宣伝期間が,パリモーターショー2016で初めて公表された2016(平成28)年9月29日から現在までの約3年間と比較的短いことや,請求人が2017(平成29)年から販売している「EQ POWER」との名称のプラグインハイブリッド車の販売台数が多いとはいえないこと等の事情を考慮しても,本願商標は,請求人の電動車ブランドを表す商標として,取引者,需要者に,本願商標から請求人との関連を認識することができる程度に周知されていたものと認められる。
 ウ 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を満たすものである。
3 結論
 したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当するものの,同条第2項により商標登録を受けることができるものであるから,原査定は取消しを免れない。
 その他,本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって,結論のとおり審決する。


        令和 1年10月31日

     審判長  特許庁審判官 薩摩 純一
          特許庁審判官 大森 友子
          特許庁審判官 浜岸 愛

 
  
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〔審決分類〕T18  .15 -WY (W12)
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上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 1年10月31日  審判書記官  蓮池 睦人