審決


不服2019-650006

333 Middlefield Road, Suite 200, Menlo Park CA 94025 (US)
 請求人
Apstra, Inc.
  
東京都港区新橋二丁目6番2号新橋アイマークビル8階
 代理人弁理士
アクシス国際特許業務法人
  


 
  
 国際登録第1364133号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は,成り立たない。



 理 由
  
1 本願商標
 本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,日本国を指定する国際登録において指定された第9類及び第42類に属する国際登録簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,2017年(平成29年)6月28日に国際商標登録出願されたものである。
 その後,指定商品及び指定役務については,当審における2019年(平成31年)1月24日付けで国際登録簿に記録された取消しの通報があった結果,第9類及び第42類に属する別掲2のとおりの商品及び役務とされた。
 
2 引用商標
 原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願の拒絶の理由に引用した登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
 なお,以下の登録商標をまとめて,「引用商標」という場合がある。
(1)登録第5751522号商標(以下「引用商標1」という。)
・商標の構成:AOS(標準文字)
・登録出願日:平成26年11月26日
・設定登録日:平成27年3月20日
・指定役務:第38類「メッセージの送信のための通信,コンピュータを利用したメッセージ及び映像による通信」及び第42類「コンピュータデータの回復,コンピュータプログラムのインストール,コンピュータプログラムの複製,データ又は文書の物理媒体から電子媒体への変換,コンピュータプログラムの変換及びコンピュータデータの変換,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおける記憶装置の記憶領域の貸与,インターネットにおけるサーバー記憶領域の貸与,サーバーのホスティング,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供,電子計算機の貸与,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」
(2)登録第5954619号商標(以下「引用商標2」という。)
・商標の構成:AOS(標準文字)
・登録出願日:平成27年6月26日
・設定登録日:平成29年6月16日
・指定商品:第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電線及びケーブル,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM」
 
3 当審の判断
(1)商標の類否判断について
 商標の類否は,「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないけれども,商標の構成部分の一部が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される」(知財高裁平成29年(行ケ)第10168号,平成30年2月20日判決参照)。
 上記の観点から,本願商標と引用商標との類否について判断する。
(2)本願商標
 ア 本願商標は,別掲1のとおり,黒塗りの横長隅丸長方形(以下「黒色長方形」という。)内に,鮮やかな緑色の「aos」の欧文字を,ややレタリングされた活字体をもって大きく表記し,「a」と「o」の文字及び「o」と「s」の文字との間には,その欧文字と同じ緑色の細い縦線1本をそれぞれ配してなるものである。
 イ 本願商標の構成中,「aos」の欧文字は,辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,欧文字3文字を羅列してなる造語の場合は,通常は,一文字一文字を区切って発音されるというべきであるから,「aos」の欧文字は,「エーオーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
 ウ 本願商標の構成中,「aos」の欧文字は,2本の縦線とともに,黒色長方形に比して顕著に目立つ色彩で表記されており,かつ,2本の縦線に比して太い線で,大きく表記されていることから,本願商標の構成中,「aos」の欧文字が,視覚上,最も強く看者の注意を引くものである。
 エ 本願商標の構成中,黒色長方形及び細い線で描かれた緑色の2本の縦線は,いずれも文字を囲む枠や区切り線を表すものであり,「aos」の欧文字を強調する装飾的な図形や線として理解されるものであるから,出所識別標識としての特定の称呼及び観念が生じるものとはいえない。
 オ そうすると,本願商標の構成中,「aos」の欧文字は,取引者,需要者において強く支配的な印象を与えるものとみるのが相当であって,かつ,黒色長方形及び2本の緑色の縦線からは,出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものとはいえないのであるから,本願商標に接する取引者,需要者は,その構成中,「aos」の文字部分を記憶にとどめ,取引にあたる場合も決して少なくないというのが相当である。
 してみれば,本願商標から「aos」の文字部分を要部として抽出し,当該文字部分のみを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである(以下「aos」の文字部分を「要部」という場合がある。)。
 カ したがって,本願商標は,その要部たり得る「aos」の文字部分に相応して「エーオーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(3)引用商標
 引用商標1及び引用商標2は,上記2のとおり,いずれも「AOS」の欧文字を標準文字で表してなるところ,当該「AOS」の欧文字は,辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,欧文字を羅列してなる造語の場合は,通常は,一文字一文字を区切って発音されるというべきであるから,「AOS」の欧文字は,「エーオーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
 したがって,引用商標1及び引用商標2は,いずれも「エーオーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(4)本願商標と引用商標との類否
 本願商標の要部と引用商標の類否について検討するに,外観においては,本願商標の要部と引用商標とは,書体や色彩が相違し,文字の字形は大文字と小文字の差異を有するとしても,「a(A)o(O)s(S)」の文字つづりが同一であるから,両者は,外観上,相紛らわしいものである。
 次に,称呼においては,本願商標の要部と引用商標とは,ともに「エーオーエス」の称呼を生じるから,称呼上,同一である。
 さらに,観念においては,本願商標の要部と引用商標とは,いずれも特定の観念を生じないから,比較することができない。
 以上によれば,本願商標と引用商標とは,その要部において,観念については,比較できないとしても,両者の外観において相紛らわしく,かつ,称呼を共通にするものであるから,その外観及び称呼によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合すれば,両商標は,商品及び役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
(5)本願の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務との類否
 本願の指定商品は,引用商標2の指定商品中の第9類「電子応用機械器具及びその部品」と同一又は類似の商品であり,本願の指定役務は,引用商標1の指定役務中の第42類「コンピュータにおける記憶装置の記憶領域の貸与,インターネットにおけるサーバー記憶領域の貸与,サーバーのホスティング,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供,電子計算機の貸与」と同一又は類似の役務である。
(6)請求人の主張について
 請求人は,本願商標は本願の指定商品及び指定役務に関して日本国内の需要者,取引者において周知であるから,本願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所の誤認混同を生ずるおそれはなく,両者は類似するとはいえない旨主張し,周知性を示す証拠方法として甲第7号証ないし甲第22号証を提出している。
 しかしながら,商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は,当該商標が現に,当該指定商品又は指定役務に使用されている特殊的,限定的な実情に限定して理解されるべきではなく,当該指定商品又は指定役務についてのより一般的,恒常的な実情,例えば,取引方法,流通経路,需要者層,商標の使用状況等を総合した取引の実情を含めて理解されるべきであるところ(知財高裁平成20(行ケ)第10285号,平成20年12月25日判決参照),請求人の主張に係る取引の実情は,いずれも本願商標が現に,その指定商品又は指定役務に使用されている個別・具体的かつ限定的な実情に係るものであるから,商標の類否判断に当たり考慮すべきものではないし,仮に考慮したとしても,提出された証拠からは,本願商標が使用された商品及び役務について,直ちに請求人を想起させるものとはいえず,引用商標が使用された商品又は役務と容易に区別をすることができるとはいい難いから,本願商標と引用商標とが類似の商標であるとの上記判断を左右するものではない。
 したがって,請求人の上記主張は,採用できない。
(7)まとめ
 以上によれば,本願商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,本願の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似の商品及び役務であるから,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することができない。
 よって,結論のとおり審決する。


        令和 1年11月26日

     審判長  特許庁審判官 榎本 政実
          特許庁審判官 平澤 芳行
          特許庁審判官 渡邉 あおい

 
  
別掲1 本願商標(色彩については,原本参照。)
 
別掲2 本願の指定商品及び指定役務(取消しの通報後)
 第9類「Software for automation of operation of a storage infrastructure; software for visibility into the operation of a storage infrastructure; software for operation of a storage infrastructure; software for management and control of a storage infrastructure; software for management, control and operation of storage applications; software for automation of operation of a compute infrastructure; software for automation of operation of a networking infrastructure; software for visibility into the operation of a compute infrastructure; software for visibility into the operation of a networking infrastructure; software for operation of a compute infrastructure; software for operation of a networking infrastructure; software for management and control of a compute infrastructure; software for management and control of a networking infrastructure; software for management, control and operation of a compute and networking applications.」
 第42類「Providing on-line non-downloadable software for automation of operation of a compute infrastructure; providing on-line non-downloadable software for automation of operation of a networking infrastructure; providing on-line non-downloadable software for automation of operation of a storage infrastructure; providing on-line non-downloadable software for visibility into the operation of a compute infrastructure; providing on-line non-downloadable software for visibility into the operation of a networking infrastructure; providing on-line non-downloadable software for visibility into the operation of a storage infrastructure; providing on-line non-downloadable software for operation of a compute infrastructure; providing on-line non-downloadable software for operation of a networking infrastructure; providing on-line non-downloadable software for operation of a storage infrastructure; providing on-line non-downloadable software for management and control of a compute infrastructure, applications and services; providing on-line non-downloadable software for management and control of a networking infrastructure, applications and services; providing on-line non-downloadable software for management and control of a storage infrastructure, applications and services.」
 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 
審判長 榎本 政実          
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W0942)
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 1年11月26日  審判書記官  蓮池 睦人