異議の決定


異議2019-685004
Via Stradone, 600/602 I-47030 SAN MAURO PASCOLI (FC)(IT)
 商標権者  
Sergio Rossi S.p.A.
東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル206区 ユアサハラ法律特許事務所
 代理人弁理士
中田 和博
  
東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル206区 ユアサハラ法律特許事務所
 代理人弁理士
青木 博通
  
東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル206区 ユアサハラ法律特許事務所
 代理人弁理士
森川 正仁
  
イタリア国 I-50010 フィレンツェ フィエーゾレ, ヴィア ファエンティーナ 171
 商標登録異議申立人  
ステファノ リッチ エス ピー エイ
東京都中央区日本橋本町三丁目3番6号 ワカ末ビル 八木田・濱野・森田特許事務所
 代理人弁理士
浜野 孝雄
  
東京都中央区日本橋本町三丁目3番6号 ワカ末ビル 八木田・濱野・森田特許事務所
 代理人弁理士
八木田 智
  


 国際登録第1371521号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。



 結 論
  
 国際登録第1371521号商標の商標登録を維持する。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第1371521号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2016年(平成28年)9月23日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2017年(平成29年)2月15日に国際商標登録出願、第3類、第9類、第14類、第18類、第25類、第26類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成30年10月25日に登録査定、同31年2月8日に設定登録されたものである。
 
第2 引用商標
 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由として引用する国際登録第1187327号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2013年(平成25年)2月20日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年8月5日に国際商標登録出願、第3類、第8類、第9類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第25類、第34類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成27年11月27日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
 
第3 登録異議の申立ての理由
 申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項第5号、同法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第3条第1項第5号に該当することについて
 商標審査基準によれば、「ローマ字の1字又は2字の次に数字を組み合わせたもの」については、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章に該当する旨が明記され、「A2、AB2」が例示されており、本件商標は、これに該当する。
 「sr」が欧文字の小文字であることを考慮すると、「sr」より「1」を大きく表示することは極めて一般的な手法であり、かつ、「sr」及び「1」は書体の違いはあるものの何れもありふれた書体であり、特別な書体又は特別なデザインが施されているものではない。
 よって、本件商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号に該当することについて
(1)指定商品及び指定役務の比較
 引用商標の第3類、第14類、第18類又は第25類の指定商品の類似群コードは、本件商標の第3類、第14類、第18類、第25類又は第26類の指定商品の類似群コードを含み、本件商標の第35類の指定役務は類似群コードを比較するまでもなく、それぞれ同一又は類似の商品又は役務である。
(2)商標の比較
 本件商標は、数字の「1」には殆ど識別性がないことを考慮すると、「エスアアルワン」「エスアアルイチ」に加えて、「エスアアル」の称呼が生じる。
 これに対して、引用商標は、「S」及び「R」の文字がはっきり読み取れるため、「エスアアル」の称呼が生じる。
 本件商標と引用商標を比較すると、何れも「エスアアル」の称呼が生じるから、両商標は類似の商標である。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類及び第26類における「embroidery laces」以外の第3類、第14類、第18類、第25類、第26類及び第35類の指定商品及び指定役務は、何れも、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似しているので、本件商標は、第3類、第14類、第18類、第25類、第26類(「embroidery laces」を除く)及び第35類について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号に該当することについて
(1)「STEFANO RICCI」が世界的に著名な商標であること
 「STEFANO RICCI」は、1972年にフィレンツェで創業したブランドの名称であり、現在では世界24力国(トルコ3店舗、フランス2店舗、ドイツ、イタリア5店舗、スイス3店舗、イギリス、モナコ、チェコ、オーストリア、カザフスタン、アゼルバイジャン2店舗、ロシア8店舗、ウクライナ、ジョージア、アルメニア、アメリカ5店舗、カナダ、中国15店舗、インドネシア、インド2店舗、カンボジア、韓国、シンガポール、UAE)まで販売店を展開しており(甲14)、フィレンツェのメンズラグジュアリーを管理している会社だけでも、2018年度に売上高が1億5000万ユーロを超えるまで成長している。
 また、「STEFANO RICCI」のブランドを、衣料品だけでなく、食器、家具、寝具に加えて、ジュエリー、レザー製品、インテリア製品、さらにワインまで広げ、今後も様々な商品及び役務に拡大していく計画を持っている。
 同ブランド広告費は、2015年度が225万ユーロ、2016年度が283万ユーロ、2017年度が320万ユーロと年々増加し、同ブランドの世界での著名度が上がり、様々な雑誌等で取り上げられるようになってきている(甲4~13等)。
(2)「SR」は「STEFANO RICCI」のロゴとして使用される著名な商標であること
 申立人は、ブランド「STEFANO RICCI」のロゴマークとして、引用商標に係る商標と同様に「S」と「R」とを組み合わせてデザイン化したロゴ(以下、申立人の主張において「SRロゴ」という。)を様々な商品に使用しており(甲15~18)、「SRロゴ」も世界的に著名になっている。
(3)誤認混同が生じる理由
 「SRロゴ」は、著名なロゴであり、「エスアアル」と称呼されるものである。
 これに対して、本件商標は、「1」の部分の識別性が極めて弱いことから、「sr」の部分のみで「エスアアル」と称呼され識別される可能性が高く、本件商標の指定商品及び指定役務に使用されると、あたかも、世界的な高級ブランドである「STEFANO RICCI」に関連する企業等の商品又は役務であると誤認する可能性が極めて高い。
 
第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第5号について
 本件商標は、別掲1のとおり、サンセリフ体で表された欧文字の小文字「sr」とセリフ体で表されたアラビア数字の「1」とを結合させた構成からなるところ、本件商標に係る指定商品及び指定役務を取り扱う業界において、本件商標と同様の構成態様からなる文字が、取引上、商品の品番、型番等又は役務の種別、等級等を表した記号又は符号として、一般的に使用されている事実を見出すことができず、さらに、当該文字を商品の品番等又は役務の種別等を表示するものというべき事情も発見できない。
 そうすると、本件商標は、その指定商品及び指定役務との関係において、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるとまではいうことができず、自他商品又は役務の識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当である。
 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第5号に該当しない。
2 引用商標等の周知著名性について
 申立人の主張及び提出した証拠によれば、申立人に係るブランド「STEFANO RICCI(Stefano Ricci)」がイタリア、イギリス等において紳士服等に使用され(甲5、9、12、13、14等)、また、「S」と「R」を組み合わせたと看取されるモノグラムが、ジーンズパンツ、バッグ、財布等に使用されていること(甲15、16、18)をうかがうことができる。
 しかしながら、申立人に係る引用商標又は上記「S」と「R」を組み合わせたと看取されるモノグラム(以下、両者をまとめて「引用商標等」という。)の使用状況について、使用数量及び使用期間並びに広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等が不明であり、加えて、引用商標等について、広く「エスアアル」と称呼されるとみるべき実情も不明である。なお、申立人主張の「SRロゴ」を使用しているとされるブランド「STEFANO RICCI(Stefano Ricci)」についても、上記のような使用状況が不明である。
 そうすると、引用商標等は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認めることはできない。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
 本件商標は、別掲1のとおり、サンセリフ体で表された欧文字の小文字「sr」とセリフ体で表されたアラビア数字の「1」とを結合させた構成からなるところ、その全体がまとまりよく表されており、欧文字と数字とで、書体の違いはあるものの、いずれかのみが強い印象を与えるような書体で表されたものではなく、「sr」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。
 また、本件商標の構成文字全体からから生じる「エスアアルワン」、「エスアアルイチ」の称呼も格別冗長でなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
 さらに、本件商標の構成中の「sr」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべき事情は見いだせない。
 したがって、本件商標は、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが相当であるから、これより「エスアアルワン」、「エスアアルイチ」の一連の称呼のみを生じるものである。また、本件商標は、その全体として特定の意味を有するものではないから、特定の観念を生じないものである。
 なお、申立人は、数字の「1」にはほとんど識別性がないことを考慮すれば、本件商標から「エスアアル」の称呼が生じること明らかである旨主張する。
 しかしながら、一般に、数字1字に出所識別標識としての機能がない又は極めて弱いことを否定するものではないが、本件商標については、上記のとおり、「sr」と「1」とを結合させた一体的な商標として把握されるとみるのが相当であるから、「sr」の文字部分に相応する「エスアアル」の称呼をもって取引に資するとは認めることができない。
(2)引用商標について
 引用商標は、「S」と「R」と見られる欧文字を組み合わせていわゆるモノグラムのように表したと看取されるものであるところ、顕著な図案化により、1つの図形として把握されるものであるため、これからは特定の称呼及び観念は生じない。なお、前記2からすれば、引用商標から「エスアアル」との称呼を生じるというべき事情は見いだせない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
 本件商標と引用商標を比較するに、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観において、判然と区別し得る差異を有するものである。
 次に、称呼においては、引用商標から称呼が生じないため、本件商標と引用商標は、称呼上、相紛れるものではない。
 さらに、観念においては、本件商標及び引用商標からは互いに特定の観念を生じないから、比較することができない。
 以上によれば、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れることのないものであるから、非類似の商標というべきである。
 他に、本件商標が、引用商標との関係において、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
 したがって、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務とを比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号について
 前記2のとおり、引用商標等は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認めることはできないものであり、また、前記3も踏まえれば、本件商標と引用商標等とは、明らかな差異を有する非類似の商標であって、別異の商標である。
 してみれば、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する需要者が、引用商標等を想起、連想して、当該商品又は役務を申立人の業務に係る商品若しくは役務、又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品若しくは役務であるかのように、商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第5号、同法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
 よって、結論のとおり決定する。


        令和 2年 2月 6日

     審判長  特許庁審判官 木村 一弘
          特許庁審判官 中束 としえ
          特許庁審判官 板谷 玲子

 
別掲1(本件商標)
 
別掲2(引用商標)
 
 
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〔決定分類〕T1651.15 -Y  (W030914182526
                    35)
            255
            261
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 2年 2月 6日  審判書記官  木村 勝美