審決


取消2018-670009

東京都小平市小川町1-436
 請求人
重野 裕之
  
Hauptstrase 111-113, 70771 Leinfelden-Echterdingen(Germany)
 被請求人
thinkstep AG
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番2号 新丸の内センタービルディング ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所
 代理人弁理士
アインゼル・フェリックス=ラインハルト
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番2号 新丸の内センタービルディング ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所
 代理人弁理士
森田 拓
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番2号 新丸の内センタービルディング ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所
 代理人弁理士
前川 純一
  
東京都千代田区丸の内1丁目6番2号 新丸の内センタービルディング ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所
 代理人弁理士
山崎 和香子
  


 上記当事者間の国際商標登録第879554号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。



 結 論
  
 国際商標登録第879554号商標の商標登録を取り消す。
 審判費用は,被請求人の負担とする。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第879554号商標(以下「本件商標」という。)は「SoFi」の欧文字を横書きしてなり,2005年(平成17年)12月12日に国際商標登録出願,第9類「Computer software, computer software for operational environmental accounting for businesses; computer programs being recorded on data carriers.」を指定商品とし,平成19年12月14日に設定登録されたものである。
 そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年4月6日であり,商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは,同27年4月6日ないし同30年4月5日である(以下「要証期間」という。)。
 
第2 請求人の主張
 請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出した。
 1 請求の理由
 本件商標は,その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者により使用された形跡はなく,また,本件商標について,専用使用権者又は通常使用権者の登録はされておらず,使用権者による使用の事実も認められないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
 2 弁駁の理由
(1)乙第1号証ないし乙第5号証について
 乙第1号証は,被請求人ではなく,被請求人の日本法人が本件商標を使用している旨を示すための証拠であることから,本件商標の使用状況を示す証拠は,乙第2号証ないし乙第5号証である。
 被請求人は,乙第2号証ないし乙第5号証を提出し,これらの証拠をもって本件商標が第9類の指定商品である「Computer software」等(以下,単に,これらを「Computer software」という。)に使用されている旨を主張しているが,提出された証拠は,本件商標の第9類の指定商品「Computer software」に使用されていることを証明するものではない。商品「Computer software」とは,コンピュータ等にダウンロードするか,あるいは磁気媒体等に記憶させることで,商品として市場に流通させられ得るものが該当するとされる。
 一方,第42類の「rental of computer software (ソフトウェアの貸与),providing of computer software (ソフトウェアの提供)」といった役務(以下,単に,「providing of computer software」という。)は,「Computer software」をコンピュータ等にダウンロードできない形,あるいは磁気媒体等に記憶させない形で,顧客に提供する提供形式のものが該当するとされる。いわゆるクラウド提供やストリーミングがその代表例である。すなわち,商品「Computer software」に該当するか,「providing of computer software」といった役務に該当するかは,機能的にいえば,「ダウンロード可能か否か」,権利の側面からいえば,「(computer software等の)提供物の所有権が移転するか」が基準とされる(特許庁編:平成14年改正産業財産権法解説等参照。)。
 被請求人が提出した証拠からは,被請求人あるいは被請求人の使用権者が商標を使用しているソフトウェアが,上述のようなコンピュータ等にダウンロードして用いられるような性質のソフトウェアであるかが判別できない。少なくとも,それを積極的に示すものではない。
 乙第2号証には「SoFi」に関する説明として,「オンライン環境マネジメントツール」,「オンライン上で企業のサスティナビリテイに関する情報を管理するツールです」等の記載があり,その2ページ目の「レポートプラットフォーム」の文言があるが,「プラットフォーム」といった場合,通常,「providing of computer software」の形での提供の色彩が濃いものといえる。
 上述のとおり,クラウドサーバーにアクセスする形で提供されるソフトウェアについて,商標が使用される行為は,第9類の商品についての使用行為には該当しない。
 また,乙第4号証の見積書に記載してある「基本アプリケーション/年」,「ユーザーライセンス費用/年」の品名項目は,当該「computer software」が 「providing of computer software」の提供形式であることを示しているといえる。すなわち,「computer software」のいわゆるパッケージ販売ではなく,所有権を取得することなく,「ライセンス(使用権)」を年単位で購入し,年単位での貸与として使用料を支払う形であることを示しているからである。
 このように,乙第2号証ないし乙第5号証からは,被請求人あるいは被請求人の使用権者が提供するソフトウェアの性質を判別できないうえに,第9類の商品というよりはむしろ第42類の役務について使用されている事実が推察されること等を鑑みれば,これらの証拠のみをもって,本件商標が第9類の商品について使用されている事実が立証されないことは明らかである。
(2)本件商標と使用されている商標が社会通念上同一であるか等について
 乙第1号証ないし乙第5号証に示されている商標は,「thinkstep/SoFi」のようにある語が付加されているか,又は,文章中に埋没した形になっているか,商品・役務との関係が明確でないといったものがほとんどで,本件商標の使用といえるか,商標的使用か否かといった点で疑問が生じ得るものがほとんどであるといえる。
 また,乙第1号証ないし乙第5号証はウェブページ掲載のものか実際の商取引の前段階の書類である見積書であり,本格的な本件商標の使用の事実を示すとはいい得ない。これらの点で,被請求人提出の証拠は本件商標の使用を十分に示すものではないといえる。
 3 結論
 以上のとおりであるから,被請求人が提出した証拠のみによっては本件商標が要証期間に使用されていた事実は立証されず,被請求人による答弁の理由は成り立たない。
 
第3 被請求人の主張
 被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し,その理由を審判事件答弁書において要旨以下のとおり述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
 1 答弁の理由
(1)本件商標の使用者
 被請求人は,本件商標の使用を使用権者である被請求人の日本法人「thinkstep株式会社」(以下「thinkstep社」という。)に許諾しており,同社は被請求人が開発し,「SoFi」の商標を付す企業の環境マネジメントに用いるコンピュータソフトウェアを日本国内で販売している。
 thinkstep社の会社概要(乙1)には,同社が,被請求人を中核とするthinkstepグループのアジア地域統括会社として1999年(平成11年)5月6日に設立されたことが明記されている。
(2)日本における本件商標の使用状況
 被請求人が開発した企業の持続可能性を測るデータを管理するための製品「SoFi」は,企業の環境マネジメント用のコンピュータソフトウェアである。thinkstep社のウェブサイト(乙2)の写しには,商標「SoFi」を冠した被請求人の環境マネジメント用コンピュータソフトウェアに関する製品情報が,「SoFi」,「thinkstep/SoFi」,「SoFi software」の各見出しの下に,多数掲載されている。
 そして,被請求人の製品パンフレット(乙3)「SoFi software」は,2014年(平成26年)9月発行であるが,thinkstep社のウェブサイト内の「SoFi」の製品情報にあるリンクから常時閲覧可能である。
 これら乙第2号証及び乙第3号証は,本件商標が,要証期間に使用権者により,本件審判の請求に係る指定商品の広告に使用されたことを示すものである(商標法第2条第3項第8号)。
 2015年(平成27年)7月31日発行のthinkstep社の見積書(乙4)は,被請求人の環境マネジメント用コンピュータソフトウェア「SoFi」シリーズの企業向け製品「SoFi for Enterprise」の導入を検討中の見込客宛てに発行されたものである。これは,本件商標が,要証期間に使用権者により,本件審判の請求に係る指定商品の価格表に使用されたことを示すものである(商標法第2条第3項第8号)。
 そして,2017年(平成29年)10月2日発行のthinkstep社の請求書(乙5)は,被請求人の環境マネジメント用コンピュータソフトウェア「SoFi」シリーズの企業向け製品「SoFi for Enterprise」を購入した顧客宛てに発行されたものである。なお,この顧客との間では,契約内容及び価格に関する守秘義務契約が締結されているため,その企業名を開示できないが,当該証拠は,本件商標が,要証期間に使用権者により,本件審判の請求に係る指定商品の取引書類に使用されたことを示すものである(商標法第2条第3項第8号)。
 以上,これら乙第1号証ないし乙第5号証から,本件商標「SoFi」が要証期間に,その請求に係る指定商品の第9類「Computer software, computer software for operational environmental accounting for businesses; computer programs being recorded on data carriers.」に,日本国内において使用されたことが明らかである。
(3)本件商標と使用されている商標が社会通念上同一であること
 上述のように,本件商標は「SoFi」の欧文字を横書きしてなるものであり,乙第1号証ないし乙第5号証に表されている商標は「SoFi」の欧文字を横書きにしてなるものに加え,「thinkstep/SoFi」,「SoFi software」及び「SoFi Software」を被請求人の製品の標識として顕著に表示しており,これらは「SoFi」に被請求人の略称「thinkstep」又は商品の直接的な品質を表す「software」を併記したにすぎないから,本件商標と使用されている商標は,同一のつづりであり,両者が社会通念上同一の商標であることは明らかである。
 2 むすび
 以上により,本件商標は本件審判の請求に係る指定商品「Computer software, computer software for operational environmental accounting for businesses; computer programs being recorded on data carriers.」について,被請求人の使用権者によって要証期間に日本国内で使用されていると認められるから,本件商標の取消を求める請求人の主張は失当である。
 
第4 当審の判断
 1 証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証について
 乙第1号証は,thinkstep社のウェブサイトとされるもので,「会社概要」の見出しの下,「会社名」の項に「thinkstep株式会社」,「設立」の項に「1999年5月6日」及び「概要」の項に「LCA(ライフサイクルアセスメント)コンサルティング事業を欧州にて展開してきた独thinkstep社(thinkstep AG・・・)を中核とするthinkstepグループのアジア地域総括会社として設立。」の記載がある。
 そして,「SoFi」の項に「thinkstep/SoFi」の文字の記載,「関連リンク」の項に「・SoFi software」の文字の記載がある。
(2)乙第2号証について
 乙第2号証は,thinkstep社のウェブサイトとされる全5葉からなる書面であり,1葉目には,「thinkstep株式会社(旧PEアジア)」の見出しの下,「thinkstep株式会社はドイツthinkstep AG(旧PE international社)のアジア地域での統括拠点として1999年よりLCAに特化したコンサルティングサービスを提供しております。」及び「・・・オンライン環境マネジメントツール『SoFi』の販売を通じて製品・企画のLCAに関する取り組みを協力にサポートいたします。」の記載がある。
 そして,「SoFi」の項に「thinkstep/SoFi」の文字の記載,「関連リンク」の項に「・SoFi software」の文字の記載がある。
 また,2葉目には,「SoFi」の見出しの下、「SoFiはオンライン上で企業のサスティナビリティに関する情報を管理するツールです。」の記載がある。
 さらに,4葉目には,「スタンダード(GRI,CDP)」の見出しの下,「SoFiはグローバルなサステナビリティにおける基準であるGRI G4,カーボンマネジメントにおける基準であるCDPに準拠したレポート作成をサポートします。」の記載がある。
(3)乙第3号証について
 乙第3号証は,全3葉からなる「SoFi」の製品パンフレットとされるもので,1葉目の右上には「thinkstep」の文字,中央には「SoFi Software/Enterprise Sustainability Performance」の文字の記載,その右下に図形とともに「SoFi/Enterprise Sustainability/Performance」の文字の記載がある。
 また,3葉目には,「September 2014」の記載がある。
(4)乙第4号証について
 乙第4号証は,thinkstep社が作成した見積書であり,右上部に「2015年7月31日」,宛先として「ブラザー工業株式会社」の記載,「品名」の欄には「SoFi for Enterprise」,その下に「SoFi for Enterprise基本アプリケーション/年」,「ユーザーライセンス費用/年」,「追加言語:日本語/年」及び「SoFi導入費用(初年度のみ)」の記載,「単価」及び「小計」については,一部マスキングが施されている。
(5)乙第5号証について
 乙第5号証は,thinkstep社が作成した請求書(控)であり,右上部に「2017年10月2日」,宛先はマスキングが施されており,「内訳」の欄には「SoFi for Enterprise(2017/11/01-2018/10/31)」の記載,「単価(円)」及び「金額(円)」については,一部マスキングが施されている。
 2 上記1によれば,以下のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用者について
 被請求人は,本件商標の使用については使用権者である被請求人の日本法人thinkstep社に許諾している旨を主張しているが,上記1(1)及び(2)のとおり,thinkstep社は,ドイツthinkstep社のアジア地域統括会社である旨の記載がされているものの,その記載のみでは,本件商標権者とthinkstep社との具体的な関係が明らかにされたとはいえない。
 また,その他,本件商標権者とthinkstep社との関係を明らかにする証拠の提出もない。
 そうすると,thinkstep社が,本件商標権の通常使用権者とは認めることができない。
 そして,本件商標権者又は専用使用権者が,本件商標を使用していることを示す証拠の提出もない。
(2)本件商標の使用商品について
 上記1(2)の「SoFi」の項における記載から,これが何らかの管理ツールであることはうかがえるものの,その内容について具体的な説明はなく,見積書(乙4)と請求書(乙5)の記載からも,これがいかなる商品(又は役務)であるかを特定することはできず,本件審判の請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる商品であることを確認できない。
 そして,「SoFi」のパンフレット(乙3)には,「thinkstep」及び「SoFi Software」の記載があるが,このパンフレットは外国語で記載されたものであって,日本の需要者を対象としたものと直ちに理解できないものであり,また,このパンフレットに「Software」の文字の記載があることのみをもって,商品「ソフトウェア」の使用にあたるとはいえない。さらに,記載されている日付が要証期間外のものである。
(3)小括
 してみれば,被請求人が提出した証拠のいずれからも,本件商標権者,専用使用権者及び通常使用権者が,要証期間に,日本国内において,本件商標を,第9類に属する商品「Computer software」について,商標法第2条第3項の各号に係る使用をしたことを認め得る事実を見いだすことができない。
 したがって,本件商標権者,専用使用権者及び通常使用権者が,要証期間に,日本国内において,本件商標を,本件審判の取消し請求に係る商品である第9類に属する商品「Computer software」について,使用していたということはできない。
 3 まとめ
 以上のとおり,被請求人は,本件審判の登録前3年以内に,日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,請求に係る指定商品について,本件商標を使用したことを証明したものと認めることはできない。
 また,被請求人は,その指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
 したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により取り消すべきものである。
 よって,結論のとおり審決する。


        令和 2年 4月15日

     審判長  特許庁審判官 薩摩 純一
          特許庁審判官 榎本 政実
          特許庁審判官 小松 里美

 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,この審決に係る相手方当事者を被告として,提起することができます。         (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
  
審判長 薩摩 純一          
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T131 .1  -Z  (X09)

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 2年 4月15日  審判書記官  木村 勝美