審決


不服2020-650002

Drottninggatan 112A SE-113 60 Stockholm(SE)
 請求人
Whitelines AB
  
東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
青木 篤
  
東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
田島 壽
  


 国際登録第1382085号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
1 本願商標について
 本願商標は、「Whitelines」の欧文字を横書きしてなり、第9類及び第16類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2018年(平成30年)2月5日に国際商標登録出願(事後指定)されたものである。
 その後、指定商品については、原審における平成30年12月14日付けの手続補正書により、第9類「Computer software; downloadable publications; downloadable software; computer software applications (downloadable).」及び第16類「Paper for handwriting and self-adhesive note pads.」と補正されたものである。
 
2 引用商標について 
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続している。 
(1)登録第4404733号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成12年2月15日登録出願、第16類「文房具類」を指定商品として、同年7月28日に設定登録、その後、同22年6月15日及び令和2年3月12日に更新登録されたものである。 
(2)登録第4798112号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成16年2月25日登録出願、第16類「文房具類」を指定商品として、同年8月27日に設定登録、その後、同26年7月8日に更新登録されたものである。
 なお、以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
  
3 当審の判断
(1)商標の類否判断について
 商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、当該商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、そのためには、両商標の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、当該商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号参照)。
 この点に関し、図形や文字等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、経験則上、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合、取引の実際において、一部の構成部分のみによって称呼、観念されることも少なくないといえる。このことから、結合商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などは、当該構成部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号、最高裁平成3年(行ツ)第103号、最高裁平成19年(行ヒ)第223号参照)。
 上記の観点から、本願商標と引用商標との類否について判断する。
(2)本願商標
 本願商標は、「Whitelines」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字及び意味合いから、「白い」の意味を有する一般に親しまれている英単語「White」と、「線」(いずれも「ベーシック ジーニアス英和辞典」参照)の意味を有する一般に親しまれている英単語「line」の複数形「lines」とを結合させたものと容易に認識、把握されるものである。そして、両語は同じ書体で連続して書され、まとまり良く一体に表されており、その構成文字全体から生じる「ホワイトラインズ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
 そうすると、本願商標は、その構成全体が一体不可分のものとして認識、把握されるとみるのが相当であり、全体として特定の意味を有する既成の語ではないが、その構成各語の有する意味によれば、「白い線」程の意味合いを想起させるものである。
 したがって、本願商標は、「ホワイトラインズ」の称呼が生じ、「白い線」程の観念が生じるというのが相当である。
(3)引用商標
 ア 引用商標1
 (ア)引用商標1は、上段の左側に、幾何学的な図形(以下「図形部分」という。)を配し、その右側に「PILOT」の欧文字を黒色の太字ゴシック体調のデザインで横書きに表し(以下、「上段文字部分」といい、図形部分と上段文字部分とを合わせて「上段部分」という。)、そして、下段に、上段文字部分よりもやや大きく、「White Line」の欧文字を、黒い縁取りの中に白抜きした、やや丸みを帯びた文字のデザイン(語頭の「W」の文字には、中央部よりやや上部に、黒塗り部分から白い細い横線が表されている。)を用いて、僅かに斜体で横書きに表してなる(以下「下段文字部分」という。)ものである。
 (イ)引用商標1の上段部分と下段文字部分とは、重なることなく間隔を空けて上下二段に分けて表記されている上、文字のデザイン、大きさ及び太さがいずれも異なっていることから、両者は、外観上明瞭に区別して認識されるものといえる。
 また、上段文字部分は、「パイロット」を意味及び称呼を有する、一般に親しまれている英単語であり、下段文字部分は、その構成に相応して、「ホワイトライン」の称呼が生じ、「白い線」程の観念が生じるものである。
 そうすると、上段部分と下段文字部分とは、外観上明瞭に区別して認識される上、観念上及び称呼上の関連性も認められないことから、これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
 そして、下段文字部分は、上段文字部分に比して、文字が大きく、かつ、デザイン化されていることから、視覚上強い印象を与えるものと認められる。
 (ウ)そうすると、引用商標1の下段文字部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることができるから、この部分を抽出して他人の商標(本願商標)と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
 (エ)したがって、引用商標1は、要部である「White Line」の欧文字部分から、「ホワイトライン」の称呼及び「白い線」程の観念が生じるというのが相当である。
 イ 引用商標2
 引用商標2は、「White Line」の欧文字を、黒い縁取りの中に白抜きした、やや丸みを帯びた文字のデザイン(語頭の「W」の文字には、中央部よりやや上部に、黒塗り部分から白い細い横線が表されている。)を用いて、僅かに斜体で横書きに表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「ホワイトライン」の称呼及び「白い線」程の観念が生じる。
(4)本願商標と引用商標の類否
 ア 外観について
 本願商標「Whitelines」と、引用商標1の要部及び引用商標2の「White Line」とを対比すると、中央部「L(l)」の文字の大文字と小文字の差異、中央部の空白及び語尾の「s」の有無、及びデザインの差異を有するとしても、両者は同じ英単語の単数形及び複数形であることに加え、共に十分判読可能な書体で表されていることから、両者における外観上の相違は、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差違として強い印象を与えるとはいえない。
 イ 称呼について
 本願商標から生じる「ホワイトラインズ」の称呼と、引用商標1の要部及び引用商標2から生じる「ホワイトライン」の称呼とを対比すると、称呼における識別上重要な要素である語頭音から第7音までの「ホワイトライン」の音を同じくし、異なるところは語尾における「ズ」の音の有無のみである。そして、該「ズ」の音の有無は、同じ英単語の単数形か複数形かの相違によるものであるから、その差異が聴者に対し、強い印象を与えるものとはいえない。
 ウ 観念について
 本願商標「Whitelines」と、引用商標1の要部及び引用商標2の「White Line」とは、「lines(Line)」の文字における単数形と複数形の相違があるが、いずれも「白い線」程度の意味合いを理解させるものであって、当該相違を明確に区別して理解されているものではないから、両者は、同一の観念を生じるものといい得る。
 エ 小括
 以上から、本願商標と引用商標は、「白い線」程の観念を共通にし、称呼においては語頭音から第7音までの「ホワイトライン」の音を同じくし、語尾における「ズ」の音の有無は聴者に対し強い印象を与えるものとはいえず、また、両者の外観上の相違は、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差違として強い印象を与えるとはいえないから、これらの外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合勘案すれば、両者は、相紛らわしい商標であり、互いに類似する商標というべきである。
 したがって、本願商標と引用商標は、類似する商標であるというのが相当である。
(5)本願商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否
 本願商標の指定商品中「Paper for handwriting and self-adhesive note pads.」(仮訳:「手書き用紙及び接着性のあるはぎ取り式のメモ帳」)は、引用商標の指定商品「文房具類」と同一又は類似の商品である。
(6)まとめ
 以上によれば、本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標であり、かつ、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品も類似するものである。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(7)請求人の主張について
 ア 請求人は、本願商標と、引用商標1の要部及び引用商標2の「White Line」とは、共に英語からなるものであり、今日、我が国の需要者は、英語からなる商標は英語として捉え、殊更、日本語に翻訳して捉えることはなく、そして、英語の単数形と複数形は中学一年生で学ぶ英語の基本とされており、これまで文法を重視してきた英語教育では単数形と複数形とを誤った場合には厳しく指摘されてきたこと、さらに、複数の者の集まりを示す名称として複数形が一般に用いられていることからすれば、我が国の需要者は、単数形と複数形の差を常に意識するようになっている旨主張し、本願商標と引用商標とは観念上非類似である旨主張する。
 ところで、商標の類否は、時と場所を異にする離隔的観察により判断するものであり、商標が使用をされる指定商品又は指定役務の主たる需要者層その他指定商品又は指定役務の取引の実情を考慮し、その需要者が通常有する注意力を基準として判断するものである。
 本願商標の指定商品中「Paper for handwriting and self-adhesive note pads.」及び引用商標の指定商品は、いずれも事務用品又は学用品といった日用品の一種であり、その需要者は一般の消費者であると認められるから、需要者が通常有する注意力はさほど高いとはいえない。
 そして、本願商標と引用商標1の要部及び引用商標2は、単数形か複数形かの違いはあるものの、同じ英単語からなり、共に「白い線」程の観念を生じるものであり、その観念は単数形か複数形かによって異なるものではない。
 このように同じ英単語からなり、同一の観念を生じる商標同士の比較においては、単数形か複数形かによって観念が異なるものではないから、時と場所を異にする離隔的観察においては、同じ英単語からなるとの印象を与え、記憶として残るといえるとしても、単数形か複数形かによる「s」の文字の有無及び称呼における語尾の「ズ」の音の有無は、強い印象を与えるものとはいえず、記憶として残るものともいえない。
 そして、本願商標の指定商品中「Paper for handwriting and self-adhesive note pads.」及び引用商標の指定商品の需要者が通常有する注意力はさほど高いとはいえないことをも踏まえれば、単数形か複数形かの違いは、商品の出所の混同のおそれを否定するほどの差異とはいえないから、上記(4)のとおり判断するのが相当である。
 イ 請求人は、本願商標と、引用商標1の要部及び引用商標2の「White Line」とは、称呼上、語尾の「ズ」音の有無において相違するものであり、7音ないし8音の称呼は、今日複数の語からなる商標が頻繁に採択使用される状況下では格別冗長なものではない旨、及び該「ズ」音は有声の破裂音であってかつ濁音であるため、音質上明確に響き、そして該「ズ」音は口を開かずに発音される故に弱く響く撥音の「ン」の後に位置する関係で本来の音質以上に明確に聞き取られるものであるから、本願商標の称呼中の「ズ」音は、本願商標の全体称呼に大きな影響を与え、引用商標と語調、語感において相違するものとさせるものである旨主張する。
 しかしながら、語尾における「ズ」の音の有無の相違は、単数形か複数形かによって生じるものであるから、上記アのとおり、当該相違は、強い印象を与えるものとはいえず、記憶として残るものともいえない。そうすると、請求人の主張は、上記(4)の判断を左右するものではない。
 ウ 請求人は、心理学上、言葉の認知に当たっては、聞いた称呼が表す言葉と自己の頭の中にある言葉を照合して聞き取ると言われているから、ある称呼を聞いたときに、既に自己の頭の中にある言菓と違うものであると認識できれば、音声学上からすれば、その語の称呼が近似していても聞き誤ることなく、別の語として正しく聞き取れるものである旨主張し、当該観念の相違による聞き分けより、本願商標と引用商標とは称呼上相紛れることはない旨主張する。
 しかしながら、心理学上の言葉の認知のいかんにかかわらず、商標の類否の判断においては、上記(4)のとおり判断するのが相当である。
 エ 請求人は、既登録例の存在、及び引用商標と他の登録例との併存関係を挙げて、本願商標と引用商標とは非類似の商標である旨主張するが、商標の類否の判断は、対比する商標について個別具体的に判断されるべきものであるところ、上記登録例は,商標の具体的構成等において本願とは事案を異にするものであり、本願商標については,上記(4)においてした判断のとおりであるから、該登録例をもってその判断が左右されることはない。
 オ したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
(8)むすび
 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、登録することはできない。
 よって、結論のとおり審決する。


        令和 2年 8月31日

     審判長  特許庁審判官 中束 としえ
          特許庁審判官 山田 啓之
          特許庁審判官 庄司 美和

 
別掲1(引用商標1)
 
別掲2(引用商標2)
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
  
審判長 中束 としえ         
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W0916)
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 2年 8月31日  審判書記官  石井 亜希