審決


不服2019-650051

109 rue Aristide Berges F-38340 VOREPPE(FR)
 請求人
POMA
  
東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
青木 篤
  
東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
田島 壽
  
東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
外川 奈美
  
東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
大橋 啓輔
  


 国際登録第1396248号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
1 本願商標
 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第9類及び第12類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2017(平成29)年7月10日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、同年12月27日に国際商標登録出願され、その後、指定商品については、原審における平成31年2月22日付けの手続補正書により、第9類「Simulators for the steering and control of vehicles; electronic training simulators for operating and maintaining ropeways; computer software for operating and maintaining ropeways; training simulators for the operation and maintenance of ropeways; simulators for driving or control of vehicles.」と補正されたものである。
 
2 原査定の拒絶の理由の要点
(1)原査定は、「本願商標は、次の(2)の登録商標(以下、これらをまとめていうときは『引用商標』という。)と類似の商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(2)引用商標
 引用商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
ア 登録第611796号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 「PILOT」
指定商品 「乗物運転技能訓練用シミュレーター」を含む第9類、並びに第7類及び第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 昭和36年10月27日
設定登録日 昭和38年5月11日
 なお、指定商品は、平成17年1月26日に指定商品の書換登録がされた結果、上記のとおりとなった。
イ 登録第1679947号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 「パイロツト」
指定商品 「電子応用機械器具及びその部品」を含む第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 昭和54年9月5日
設定登録日 昭和59年4月20日
 なお、指定商品は、平成16年5月19日に指定商品の書換登録がされた結果、上記のとおりとなった。
ウ 登録第1812542号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 「パイロット」
指定商品 「電子応用機械器具及びその部品」を含む第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 昭和58年6月22日
設定登録日 昭和60年10月31日
 なお、指定商品は、平成18年1月4日に指定商品の書換登録がされた結果、上記のとおりとなった。
エ 登録第4213409号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成 「PILOT」
指定商品 「電子応用機械器具及びその部品」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 平成9年6月30日
設定登録日 平成10年11月20日
オ 登録第4385099号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成 別掲2
指定商品・役務 「インクジェットプリンタ用インクカートリッジ」を含む第2類、「電子応用機械器具及びその部品,電算機用座標入力装置,電算機用入力ペン,電子手帳,パーソナルコンピューター用のフッロピーディスクその他の記録媒体,表示機能付き磁気カード,表示機能付き磁気カードを使用してなる食堂管理システム用機械器具,磁気泳動式表示板及びその装置,液晶シートを用いた情報表示装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター」を含む第9類及び「磁気泳動表示板又は液晶シートを用いた表示板」を含む第16類、並びに第1類、第3類ないし第8類、第10類ないし第15類及び第17類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品・役務
登録出願日 平成10年9月10日
設定登録日 平成12年5月19日
 なお、指定商品は、商標登録の取消し審判により、第10類「耳栓」について取り消すべき旨の審決がされ、平成23年7月28日にその確定審決の登録がなされた。
カ 登録第4457078号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成 「パイロット」
指定商品 「電子応用機械器具及びその部品,乗物運転技能訓練用シミュレーター」を含む第9類、並びに第1類、第2類、第6類、第7類、第14類、第16類、第18類、第20類、第23類ないし第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 平成11年7月30日
設定登録日 平成13年3月2日
キ 登録第5235069号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成 別掲3
指定役務 「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
登録出願日 平成19年6月27日
設定登録日 平成21年5月29日
 
3 当審の判断
(1)本願商標について
 本願商標は、別掲1のとおり、内部を青色の濃淡により幾何学的に配色した、略三日月状の図形とその開口部に配した略長方形状の図形(上部を斜めに下部を円弧により表してなる。)とを組み合わせてなる図形(以下「本願図形部分」という。)を左側に配置し、右側に、図形に比して4分の1程の大きさで、青色の「PILOT」の欧文字(以下「本願文字部分」という。)を普通に用いられる域を脱しない方法で横書きしてなる、文字と図形との結合商標である。
 まず、本願商標の外観についてみるに、本願図形部分及び本願文字部分は、いずれも重なることなく間隔を空けて配置されており、大きさが顕著に異なる上、本願図形部分が、複数の青色で表されているのに対し、本願文字部分は、単一色で表されているから、外観上、各構成部分が視覚的に分離して看取され得るといえるものである。
 次に観念についてみるに、本願図形部分は、特定の文字又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、本願図形部分からは特定の観念は生じないものである。他方、本願文字部分である、「PILOT」の文字は、「操縦士」の意味を容易に理解させる平易な英語である。そして、本願図形部分と本願文字部分が結びついて特定の観念を生じるという事情は見いだせない。
 さらに、称呼についてみるに、本願図形部分は、上記のとおり、特定の文字等を表すものと認識されないものであるから、これより称呼は生じず、本願文字部分は、構成文字に相応して「パイロット」の称呼を生じるものである。
 そうすると、本願商標は、本願図形部分と本願文字部分とが、それぞれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものということはできず、本願文字部分及び本願図形部分それぞれが独立して、自他商品の識別標識として機能し得るというのが相当である。
 そして、簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中、はっきりと明瞭に表され、称呼しやすい欧文字からなる「PILOT」の文字部分に着目し、これを記憶にとどめて取引にあたる場合も少なくないというのが相当である。
 以上からすると、本願文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから、本願商標は、当該「PILOT」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
 したがって、本願商標は、要部である「PILOT」の文字部分から「パイロット」の称呼が生じ、「操縦士」の観念が生じるものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1及び4
 引用商標1及び4は、前記2(2)でそれぞれ列記したとおり、「PILOT」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は「操縦士」の意味を有するものと容易に理解させる平易な英語であるから、これに相応して「パイロット」の称呼及び「操縦士」の観念を生じる。
イ 引用商標2
 引用商標2は、前記2(2)イのとおり、「パイロツト」の片仮名を横書きしてなるところ、旧仮名遣いでは促音を「ツ」と表記していたこと及び「パイロット」の文字が「操縦士」の意味合いを有する語として広く親しまれていることからすれば、当該文字より「パイロット」の称呼及び「操縦士」の観念を生じる。
ウ 引用商標3及び6
 引用商標3及び6は、前記2(2)でそれぞれ列記したとおり、「パイロット」の片仮名を横書きしてなるところ、これより「パイロット」の称呼を生じること明らかであり、「操縦士」の観念を生じる。
エ 引用商標5及び7
 引用商標5及び7は、別掲2及び別掲3のとおり、2つの円弧図形と略三角形を組み合わせてなる図形を左側に配し、右側に、「PILOT」の欧文字を横書きしてなる文字と図形との結合商標であるところ、両者は、重なること無く間隔を空けて配置されており、外観上、両者が視覚的に分離して看取され得るといえるものである。
 そして、引用商標5及び7の図形部分は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、特定の観念は生じないものであり、他方、引用商標5及び7の文字部分は、前記(1)の本願商標の要部と同じく、「操縦士」の観念を生じるものであって、さらに、それら図形部分と文字部分とが結びついて特定の観念を生じるという事情は見いだせないものである。
 そうすると、引用商標5及び7は、その図形部分と文字部分とが、視覚上分離して看取し得るものであり、また、両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合されている事情は見いだせないものであるから、図形部分と文字部分のそれぞれを出所識別標識としての機能を有する要部として認識、理解するというのが相当であり、当該文字部分のみを他人の商標と比較して商標としての類否を判断することが許されるというべきである。
 以上のことからすると、引用商標5及び7は、要部である「PILOT」の文字部分から「パイロット」の称呼が生じ、「操縦士」の観念が生じるものである。
(3)本願商標と引用商標との類否について
 本願商標の要部と引用商標1及び4並びに引用商標5及び7の要部との外観を比較すると、いずれも同一のつづりからなる「PILOT」の文字からなるものであるから、外観において相紛れるおそれがあるものというべきである。また、本願商標の要部と引用商標2、3及び6との外観を比較すると、文字の種類が欧文字と片仮名とで相違するとしても、いずれも普通に用いられる域を脱しない書体で表されたものであって、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記されることが一般的に行われている取引の実情があること、「パイロット」(旧仮名遣いを含む。)は「PILOT」の読みと一致するものであることに鑑みれば、両者における文字種の相違が、取引者、需要者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえない。
 そして、「PILOT」又は「パイロット」(旧仮名遣いを含む。)の文字からなる、本願商標の要部と引用商標(引用商標5及び7についてはその要部)とは、「パイロット」の称呼及び「操縦士」の観念を共通にするものである。
 そうすると、本願商標の要部と引用商標(引用商標5及び7についてはその要部)は、「パイロット」の称呼及び「操縦士」の観念を共通にし、外観において、近似するか又は外観における差異が称呼の同一性をしのぐほどの顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないものであるから、これらの外観、称呼、及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合勘案すれば、これらは相紛れるおそれがあるものといえる。
 したがって、本願商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似する商標というのが相当である。
(4)本願商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務との類否
ア 本願商標の指定商品中、第9類「Simulators for the steering and control of vehicles; electronic training simulators for operating and maintaining ropeways; training simulators for the operation and maintenance of ropeways; simulators for driving or control of vehicles.」は、引用商標1、5及び6に係る指定商品中、第9類「乗物運転技能訓練用シミュレーター」と、同一又は類似の商品である。
イ 本願商標の指定商品中、第9類「Computer software for operating and maintaining ropeways.」は、引用商標2ないし4及び6に係る指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」並びに、引用商標5に係る指定商品中、第2類「インクジェットプリンタ用インクカートリッジ」、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電算機用座標入力装置,電算機用入力ペン,電子手帳,パーソナルコンピューター用のフッロピーディスクその他の記録媒体,表示機能付き磁気カード,表示機能付き磁気カードを使用してなる食堂管理システム用機械器具,磁気泳動式表示板及びその装置,液晶シートを用いた情報表示装置」及び第16類「磁気泳動表示板又は液晶シートを用いた表示板」と、類似の商品である。
ウ 本願商標の指定商品中、第9類「Computer software for operating and maintaining ropeways.」は、引用商標7に係る指定役務中、第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取扱商品である「電気機械器具類」に含まれるものである。
 そうすると、本願商標の指定商品と引用商標7の上記指定役務の取扱商品とは共通又は類似する商品を有するため、商品の販売及び役務の提供が同一業者によって行われるのが通常で、その商品の販売場所と役務の提供場所、需要者の範囲も一致することから、それぞれの商品と役務の間に出所の混同を生じるおそれがあるものであり、相互に類似するものといえる。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、創業から約80年の歴史を持つロープウェイ建設やロープウェイ輸送の事業分野における国際的なトップ企業であって、本願商標は、請求人が提供するシミュレーション機器のブランドであり、欧州の取引者・需要者により、「UPILOT」として一体的に把握されている旨、主張している。
 しかしながら、請求人が提出する証拠(甲4、甲5)によっては、我が国の取引者・需要者において、本願商標が広く知られ「UPILOT」として一体的に把握されているものと認めることはできず、また、本願商標の構成中、「PILOT」の文字部分が要部としてとして抽出されることは前記(1)のとおりであり、その他、本願商標が「UPILOT」として一体的に把握されるというべき事情も見出し得ない。
イ 請求人は、本願商標の指定商品の分野において、欧文字「PILOT」を構成中に含む過去の登録例を挙げて、本願商標もこれらと同様に登録されるべきである旨、主張している。
 しかしながら、上記商標と本願商標とは、その構成を異にするものであり、同一に論ずることは適切ではなく、また、そもそも商標の類否判断は、当該商標の査定時又は審決時において、その判断の対象となる商標が使用される商品、役務における取引の実情等も併せ考慮して、個別具体的に判断されるべきものであるから、請求人の挙げた過去の登録例の存在によって、本願商標の商標法第4条第1項第11号該当性の判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
(6)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
 よって、結論のとおり審決する。


        令和 2年10月14日

     審判長  特許庁審判官 中束 としえ
          特許庁審判官 板谷 玲子
          特許庁審判官 黒磯 裕子

 
 
別掲1(本願商標、色彩については原本参照)
別掲2(引用商標5)
別掲3(引用商標7)
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
  
審判長 中束 としえ         
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W09)
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 2年10月14日  審判書記官  木村 勝美