審決


不服2019-650048

Erlenstrasse 31A CH-2555 Brugg(CH)
 請求人
LA MONTRE HERMES S.A.
  
東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビル4階 隼あすか法律事務所
 代理人弁護士
高松 薫
  
東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビル4階 隼あすか法律事務所
 代理人弁護士
鈴岡 正
  


 国際登録第1389259号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
1 本願商標
 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第14類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2017(平成29)年6月26日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年12月5日に国際商標登録出願され、その後、指定商品については、原審における2018(平成30)年12月19日付けの手続補正書により、第14類「Precious metals and their alloys, precious stones, jewelry, necklaces (jewelry), chokers (necklaces), bracelets (jewelry), rings (jewelry), earrings (jewelry), pendants (jewelry), brooches (jewelry), badges (jewelry), cuff links (jewelry), medals (jewelry), medallions (jewelry), charms (jewelry), tie clips, tie pins, chains (jewelry), boxes of precious metal, jewel cases of precious metal, jewelry cases, watch cases, jewelry and watch cases, timepieces and chronometric instruments, watches and their components, chronographs (watches), chronometers, wristwatches, clocks, pendulums (watchmaking), table clocks, watch bracelets, watch clasps, watch dials, watch cases, watch chains, watch movements, cases for watchmaking, presentation cases for timepieces, fancy key rings, head jewelry (jewelry).」と補正されたものである。
 
2 原査定の拒絶の理由の要点
(1)原査定は、「本願商標は、次の(2)の登録商標と類似の商標であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(2)引用商標
 原審で引用した登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
ア 登録第4382331号商標(以下「引用商標」という。)
商標の構成 別掲2
指定商品 第14類「デンマーク製の貴金属,デンマーク製のイヤリング,デンマーク製のネックレス,デンマーク製のブレスレット,デンマーク製のペンダント,デンマーク製の宝石ブローチ,デンマーク製の指輪,金及び銀を使用したデンマーク製貴金属製身飾品,その他のデンマーク製身飾品(「カフスボタン」を除く。),デンマーク製の宝玉及びその模造品」
登録出願日 平成10年5月27日
設定登録日 平成12年5月12日
イ 国際登録第1042436号商標
商標の構成 「KARE」
指定商品 第20類「Furniture; Mirrors.」並びに、第11類及び第21類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日 2010(平成22)年4月15日
設定登録日 2011(平成23)年9月22日
 
3 当審の判断
(1)本願商標について
 本願商標は、前記1のとおり、「Carre H」(第5文字「e」の上部にはアクサンテギュが付されている。以下、本願商標において同じ。)の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の「Carre」の文字と欧文字の一字「H」とは、半角分ほどのスペースを空けて表されていることから、視覚上分離して看取される。
 そして、「Carre」の文字は、「正方形」を意味し、「カレ」と発音するフランス語ではあるものの、我が国において一般に馴染みのある語とはいえないことから、この文字に接する取引者、需要者が、直ちに特定の意味合いを理解するとはいい難く、当該語と欧文字の一字「H」を組み合わせた全体としても、特定の意味合いを生ずるものではないことから、各構成文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないものである。
 さらに、欧文字の一字は、それ自体、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章というべきであり、また、商取引において、一般に自己の製造又は販売に係る商品の品番、型式等を表示するための記号、符号として類型的に使用されているのが実情であって、本願商標の指定商品を取り扱う業界においても、欧文字の一字が品番等として取引上普通に使用されていることからすれば、本願商標構成中の「H」の文字部分は、記号、符号の一類型と理解されるというのが相当である。
 これに対して、「Carre」の文字は、上記のとおり、我が国において特定の意味を理解させる語とはいえないから、指定商品との関係で、商品の品質等を表示するものとして直ちに理解されるものではなく、また、商品の品質等を表示するものとして使用されているという事実も見いだせない。
 そうすると、本願商標は、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないものであって、また、その構成中の「H」の文字部分が出所識別標識としての称呼及び観念が生じないものであるため、その構成中の「Carre」の欧文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、当該文字部分をもって取引に資されるということができるから、本願商標から「Carre」の文字部分を抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきである。
 したがって、本願商標は、要部である「Carre」の文字部分から「カレ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
 引用商標は、前記2(2)アのとおり、上段に正方形状の図形を配し、中段に「CARRE」(第5文字「E」の上部にはアクサンテギュが付されている。以下、引用商標において同じ。)の欧文字を、下段に、横線を挟み上記文字に比して小さく「COPENHAGEN」の欧文字を横書きした構成よりなる、文字と図形との結合商標であるところ、いずれも、重なること無く間隔を空けて配置されており、外観上、3段に配された上記各構成部分が視覚的に分離して看取され得るといえるものである。
 そして、引用商標の図形部分は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、特定の観念は生じないものである。また、引用商標の構成中、「CARRE」の文字部分は、前記(1)の本願商標の要部と同じく、特定の観念は生じないものであって、「COPENHAGEN」文字部分は、「デンマークの首都」という意味合いを有する英語として一般に広く親しまれた語であるところ、これら文字全体として、特定の意味合いを生じるものではなく、特定の観念は生じないものである。さらに、それら図形部分と文字部分とが結びついて特定の観念を生じるという事情も見いだせないものである。
 加えて、引用商標の構成中、「COPENHAGEN」文字部分は、上記したとおり、「デンマークの首都」を意味する広く親しまれた語であるところ、引用商標に係る指定商品「デンマーク製のイヤリング」等との関係において、商品の産地を表したにすぎないものであるから、自他商品の出所識別標識としての機能はないか又は極めて弱いものといえ、引用商標の文字部分全体から生じる「カレコペンハーゲン」の称呼もやや冗長といえるものである。
 以上のことからすると、引用商標は、これを構成する図形部分、文字部分全体又は「CARRE」の文字部分のそれぞれが出所識別標識としての機能を有する要部として認識、理解されるというのが相当であり、構成中ひときわ大きく表されている「CARRE」の文字部分のみを他人の商標と比較して商標としての類否を判断することが許されるというべきである。
 したがって、引用商標は、要部である「CARRE」の文字部分から「カレ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本願商標と引用商標との類否について
 本願商標の要部と引用商標の要部との類否について検討すると、「Carre」と「CARRE」とは、外観においては、共に欧文字のみからなり、2文字目以下が大文字と小文字の差異はあるものの、つづり字を共通にするものであるから、外観上、類似するものであり、また、称呼については、「カレ」で同一であり、観念については、いずれも我が国において特定の観念を想起させるものではないものの、フランス語で同じ意味を生じるものであるから、この点において、両者に相違があるものでもない。
 そうすると、本願商標の要部と引用商標の要部とは、観念に相違があるものではなく、外観及び称呼において相紛らわしいものであるから、本願商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)本願商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
 本願商標に係る指定商品は、前記1のとおりであるところ、その指定商品中「Precious metals and their alloys.」は、引用商標に係る指定商品中の「デンマーク製の貴金属」と、また、本願商標に係る指定商品中「Precious stones, jewelry, necklaces (jewelry), chokers (necklaces), bracelets (jewelry), rings (jewelry), earrings (jewelry), pendants (jewelry), brooches (jewelry), badges (jewelry), cuff links (jewelry), medals (jewelry), medallions (jewelry), charms (jewelry), tie clips, tie pins, chains (jewelry), watch bracelets, head jewelry (jewelry).」は、引用商標に係る指定商品中の「デンマーク製のイヤリング,デンマーク製のネックレス,デンマーク製のブレスレット,デンマーク製のペンダント,デンマーク製の宝石ブローチ,デンマーク製の指輪,金及び銀を使用したデンマーク製貴金属製身飾品,その他のデンマーク製身飾品(「カフスボタン」を除く。),デンマーク製の宝玉及びその模造品」と、同一又は類似の商品である。
(5)請求人の主張について
 請求人は、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や」、「それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合」などを除き、許されないというべきであって(最高裁昭和37年(オ)第953号他参照)、本件ではそのいずれの要件も充足しないため、要部観察や分離観察することは認められない旨、主張している。
 しかしながら、請求人が主張する上記判決は、「簡易、迅速をたつとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によつて称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによつて簡略に称呼、観念され」るとしているのであって、前記(1)及び(2)のとおり、本願商標及び引用商標は、各構成部分が、取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められず、それぞれ「Carre」、「CARRE」の文字部分が商品の出所識別標識として機能し得るといえるから、請求人の上記主張は採用することができない。
 また、請求人は、本願商標における「H」はそれ自体では単なる欧文字にすぎないものの、特定の製品群との結びつきにおいては、全世界の取引者ないし需要者において請求人の製品を識別させる役割を果たしており、請求人は「H」から構成される多数の登録商標を保有しているところ、それぞれデザインの差はあるにせよ「H」という欧文字が請求人製品であることの出所表示として機能していることは明らかである旨、主張している。
 しかしながら、請求人が「H」から構成されると主張する登録商標は、「H」をモチーフとした図形からなるものと認識できる場合があるとしても、かなり図案化されてなるものであるのに対し、本願商標を構成する「H」の文字は、普通に書された欧文字の一字にすぎず、前記(1)のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う業界においても、欧文字の一字が品番等として取引上普通に使用されていることからすれば、本願商標に接した取引者、需要者が、「H」の文字部分から、請求人の出所に係る商品であることを想起するものとはいい難いから、請求人の上記主張は採用することができない。
(6)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。なお、原査定においては、本願の拒絶の理由として上記引用商標以外の商標も引用しているが、本願商標は、他の引用商標との関係においては、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
 よって、結論のとおり審決する。


        令和 2年 6月10日

     審判長  特許庁審判官 中束 としえ
          特許庁審判官 板谷 玲子
          特許庁審判官 黒磯 裕子

 
 
別掲1(本願商標)
 
 
別掲2(引用商標)
 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
  
審判長 中束 としえ         
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W14)
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 2年 6月10日  審判書記官  眞島 省二