理 由 |
|
第1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第29類及び第30類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、令和元年9月18日に国際商標登録出願(事後指定)されたものであり、指定商品については、原審における同3年8月16日付け手続補正書の提出により、第29類「Potato chips; vegetable-based crisps; potato-based crisps.」及び第30類「Extruded cereal-based snacks; salted rice-based snacks; extruded corn-based snacks; extruded wheat-based snacks; extruded rice-based snacks; extruded cereal-based snacks; extruded granola-based snacks; extruded maize flour-based snacks; corn-based snack food; salted popcorn.」に補正されたものである。 |
本願は、令和3年4月5日付けで暫定拒絶通報の通知がされ、同年8月16日付けで意見書が提出されたが、同年12月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同4年4月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 |
|
第2 原査定の拒絶の理由の要点 |
1 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続している。 |
(1)登録第3342033号商標(以下「引用商標1」という。) |
商標の構成:「アミカ」の文字を横書きしたもの |
指定商品:第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」 |
登録出願日:平成6年11月8日 |
設定登録日:平成9年8月29日 |
(2)登録第5049526号商標(以下「引用商標2」という。) |
商標の構成:別掲2のとおり |
指定商品:第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー,シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」 |
登録出願日:平成18年8月11日 |
設定登録日:平成19年5月25日 |
(3)登録第5049527号商標(以下「引用商標3」という。) |
商標の構成:別掲3のとおり |
指定商品:第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー,シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」 |
登録出願日:平成18年8月11日 |
設定登録日:平成19年5月25日 |
(4)登録第5628401号商標(以下「引用商標4」という。) |
商標の構成:アミカ(標準文字) |
指定役務:第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ストロー・はしの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製コーヒーフィルターの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キッチンペーパーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家庭用食品包装フイルムの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用アルミホイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製包装用容器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,衛生手ふき・紙製タオル・紙製テーブルナプキン・紙製手ふき・紙製ハンカチの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,プラスチック製の包装用容器(「プラスチック製栓及びふた」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 |
登録出願日:平成25年5月14日 |
設定登録日:平成25年11月8日 |
(5)登録第5628402号商標(以下「引用商標5」という。) |
商標の構成:別掲4のとおり |
指定役務:第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ストロー・はしの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製コーヒーフィルターの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キッチンペーパーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家庭用食品包装フイルムの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用アルミホイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製包装用容器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,衛生手ふき・紙製タオル・紙製テーブルナプキン・紙製手ふき・紙製ハンカチの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,プラスチック製の包装用容器(「プラスチック製栓及びふた」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 |
登録出願日:平成25年5月14日 |
設定登録日:平成25年11月8日 |
2 以下、引用商標1ないし引用商標5をまとめて、「引用商標」という場合がある。 |
|
第3 当審の判断 |
1 商標法第4条第1項第11号該当性について |
(1)本願商標について |
ア 本願商標は、別掲1のとおり、上下に青色の細い横線を伴った、赤色の丸みを帯びた横長長方形状の図形内に、大きく太い文字で「AMICA」の欧文字を、当該文字の下には、左右に黄色の長方形状図形(以下「黄色長方形図形」という。)を伴った、小さく細い筆記体状で「Chips」の欧文字を、それぞれ白抜きで横書きしてなるものである。 |
イ 本願商標の構成中の「AMICA」の文字部分は、本願商標のほぼ中央に、大きく太い文字で顕著に表されているから、看者の注意を強く引くものといえる。また、「AMICA」の文字は、「女友だち」等の意味を有するイタリア語ではある(「伊和中辞典第2版」株式会社小学館発行)ものの、当該語及び意味は我が国において一般的に知られているとはいい難く、我が国において特定の意味合いをもって使用、認識されているといった特段の事情も見当たらないから、これより特定の観念は生じない。そして、「AMICA」の文字部分が本願商標の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を果たさないとみるべき事情はない。 |
ウ 他方、「Chips」の文字部分は、指定商品との関係において、「(果物・野菜などの)薄切り小片、ポテトチップ」等の意味を有する英語「chip」(「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社大修館書房発行)を複数形で表したものとして、我が国において広く一般に使用されているというべきものであるから、商品の普通名称、品質又は形状を表したものと取引者、需要者に認識させるものであり、自他商品の識別標識としての機能がないか又は極めて弱い部分というべきである。これに加えて、「Chips」の文字は、「AMICA」の文字に比べて小さく表されている上に、黄色長方形図形は、一見してハイフンを表したものと見て取れるものであるから、これに左右を挟まれた「Chips」の文字は、「AMICA」の文字とは、視覚上分離したように捉えられるものである。 |
エ 以上よりすると、本願商標は、その構成中、顕著に表されて、自他商品の識別標識としての機能を果たす「AMICA」の文字部分が、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきであるから、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較することも許されるというべきである。 |
したがって、本願商標は、全体から生じる「アミカチップス」の称呼のほかに、「AMICA」の文字部分に相応した「アミカ」の称呼をも生じ、特定の観念は生じないものである。 |
(2)引用商標について |
ア 引用商標1及び引用商標4について |
引用商標1は、「アミカ」の文字を横書きしてなり、また、引用商標4は、「アミカ」の文字を標準文字で表してなるところ、これより引用商標1及び引用商標4は、「アミカ」の称呼が生じること明らかである。また、「アミカ」の文字は辞書等に載録がなく、さらに、我が国において特定の意味合いをもって使用、認識されているといった特段の事情は見当たらないから、引用商標1及び引用商標4は特定の観念を生じないものである。 |
イ 引用商標2について |
引用商標2は、別掲2のとおり、左右に橙色の円を付した「Good Professional Foods」の文字を黒色の小さな字体で横書きし、その下には、それぞれの文字の左上部の端に橙色の円を付して装飾した、赤色の「アミカ」の文字を大きく顕著に横書きしてなるものである。そして、上段の欧文字に比して顕著に表された「アミカ」の文字部分が、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきであるから、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較することも許されるというべきである。また、「アミカ」の文字は、上記アのとおり、特定の意味合いを有しないものである。 |
そうすると、引用商標2は、「アミカ」の文字部分に相応した「アミカ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。 |
ウ 引用商標3及び引用商標5について |
引用商標3は、両手に調理器具を持ち、白色のコック帽を着用した子供を表したとおぼしき図形からなり、当該白色のコック帽の前面中央部分には、赤色で「アミカ」の文字が付されているものである。また、引用商標5についても、前記特徴を共通にした、ほぼ同じ構成よりなるものである。 |
そして、「アミカ」の文字部分は、図形全体の3分の1程度の面積を占めるコック帽の白色を背景に、赤文字で目立つように描かれ、看者の注意を引きやすい態様で表されている上に、引用商標3及び引用商標5において、文字として明確に視認できるものは「アミカ」の文字のみである。 |
そうすると、引用商標3及び引用商標5に接する取引者、需要者は、「アミカ」の文字部分を出所識別標識として捉え、当該部分を記憶、連想して取引に資することもあるというべきであるから、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較することも許されるというべきである。また、「アミカ」の文字は特定の意味合いを有しないことは、上記アのとおりである。 |
したがって、引用商標3及び引用商標5は、「アミカ」の文字部分に相応した「アミカ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。 |
(3)本願商標と引用商標の類否について |
ア 本願商標と引用商標1及び引用商標4の類否について |
本願商標と引用商標1及び引用商標4の外観において、本願商標の要部である「AMICA」の文字と、引用商標1及び引用商標4とは、文字種や書体が異なるものの、我が国においては、商標の構成文字を、同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、書体に変更を加えて表記したりすることが一般的に行われていることを考慮すれば、文字種や書体が異なるにすぎない両者は、取引者、需要者に同一の出所表示として認識され得るというべきであるから、両商標は、外観において類似するものというべきである。 |
次に、称呼についてみるに、本願商標と引用商標1及び引用商標4は、「アミカ」の称呼を共通にするものである。 |
さらに、観念については、本願商標と引用商標1及び引用商標4は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。 |
そうすると、本願商標と引用商標1及び引用商標4とは、観念において比較することができないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであることから、両商標の外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。 |
イ 本願商標と引用商標2の類否について |
本願商標と引用商標2の外観において、本願商標の要部である「AMICA」の文字と、引用商標2の要部である「アミカ」の文字とは、上記アと同様の理由により、取引者、需要者に同一の出所表示として認識され得るというべきであるから、両商標は、外観において類似するものというべきである。 |
次に、称呼についてみるに、本願商標と引用商標2は、「アミカ」の称呼を共通にするものである。 |
さらに、観念については、本願商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。 |
そうすると、本願商標と引用商標2とは、観念において比較することができないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであることから、両商標の外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。 |
ウ 本願商標と引用商標3及び引用商標5の類否について |
本願商標と引用商標3及び引用商標5の外観においては、本願商標の要部である「AMICA」の文字と、引用商標3及び引用商標5の要部である「アミカ」の文字とは、上記アと同様の理由により、取引者、需要者に同一の出所表示として認識され得るというべきであるから、両商標は、外観において類似するものというべきである。 |
次に、称呼についてみるに、本願商標と引用商標3及び引用商標5は、「アミカ」の称呼を共通にするものである。 |
さらに、観念については、本願商標と引用商標3及び引用商標5は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。 |
そうすると、本願商標と引用商標3及び引用商標5とは、観念において比較することができないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであることから、両商標の外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。 |
(4)本願商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務との類否について |
ア 本願商標の指定商品と引用商標1ないし引用商標3の指定商品の類否について |
本願商標の指定商品のうち、第29類「Potato chips; vegetable-based crisps; potato-based crisps.」は、引用商標1ないし引用商標3の指定商品中、第29類「加工野菜及び加工果実」と類似の商品である。 |
イ 本願商標の指定商品と引用商標4及び引用商標5の指定役務の類否について |
本願商標の指定商品である、第29類「Potato chips; vegetable-based crisps; potato-based crisps.」及び第30類「Extruded cereal-based snacks; salted rice-based snacks; extruded corn-based snacks; extruded wheat-based snacks; extruded rice-based snacks; extruded cereal-based snacks; extruded granola-based snacks; extruded maize flour-based snacks; corn-based snack food; salted popcorn.」は、引用商標4及び引用商標5の指定役務中、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似の商品である。 |
(5)小括 |
上記のとおり、本願商標は、引用商標と類似の商標であって、引用商標の指定商品又は指定役務と類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
2 請求人の主張について |
(1)請求人は、甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、本願商標が付された商品が「アミカチップス」として称呼し、認知されており、また、本願商標からイタリアの主要ポテトチップメーカーが製造販売する商品が想起される一方、引用商標からは業務用スーパーの観念が生じるから、本願商標は引用商標と称呼及び観念において非類似である旨主張する。 |
しかしながら、商標法第4条第1項第11号該当性における商標の類否判断にあたっては、願書に記載された商標の構成態様や、指定商品又は指定役務についての一般的、恒常的な取引の実情を考慮すべきであって、請求人や引用商標に係る権利者が現在実際に行っている事業に基づく特殊的、限定的な実情を考慮すべきものではない。そして、本願商標及び引用商標から「アミカ」の称呼が生じ、ともに特定の観念が生じないことは上記1のとおりであるから、仮に消費者が本願商標を「アミカチップス」と称呼する場合があるとしても、それが、本願商標と引用商標の類否判断に影響を及ぼすものではない。 |
(2)請求人は、引用商標3及び引用商標5について、帽子の表面に付されている「アミカ」の文字は、帽子のデザインと理解されるものであって、全体として一つのキャラクターとして印象付けられ、構成全体を一体不可分のものとして認識、把握されるから、「アミカ」の称呼をもって取引に資されることはない旨主張する。 |
しかしながら、上記1(2)ウのとおり、引用商標3及び引用商標5において、「アミカ」の文字は看者の注意を引きやすい態様で表されていて、十分に視認できるものである。そして、制服や制帽等に社名や店名等を表示させることが一般に行われているというべき事情も併せて考慮すれば、「アミカ」の文字は単にコック帽のデザインとして認識されるというよりは、むしろ自他役務の識別標識として認識され得るものであるから、「アミカ」の称呼が生じるというべきである。また、請求人が主張するように、引用商標3及び引用商標5がの図形全体がキャラクターを認識させる場合があるとしても、例えばそこに付された文字をもって取引することもあり得るから、それが「アミカ」の称呼が生じることを妨げるものとはいえない。 |
(3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。 |
3 まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
|