理 由 |
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1 手続の経緯 |
本願は、2015年(平成27年)10月8日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいて、パリ条約第4条による優先権を主張し、2016年(平成28年)4月7日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 |
2016年(平成28年)11月 2日付け:暫定拒絶通報 |
2017年(平成29年) 5月17日 :意見書の提出 |
2017年(平成29年)11月 1日 :上申書の提出 |
2019年(令和 元年) 5月14日付け:通知書 |
2019年(令和 元年) 8月 5日 :上申書の提出 |
2019年(令和 元年)10月31日効力発生:所有権移転通報 |
2020年(令和 2年)11月25日付け:通知書 |
2021年(令和 3年) 3月10日 :上申書の提出 |
2022年(令和 4年) 4月14日付け:拒絶査定 |
2022年(令和 4年) 7月14日 :審判請求書の提出 |
2022年(令和 4年)12月 5日付け:審尋 |
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2 本願商標 |
本願商標は、「NUANCE」の欧文字を横書きしてなり、第10類「Surgical apparatus and instruments for ophthalmic surgery.」を指定商品として、国際商標登録出願されたものである。 |
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3 原査定の拒絶の理由(要点) |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの登録商標をまとめて「引用商標」という。)。 |
(1)登録第5100663号商標 |
商標の態様 「NUANCE」(標準文字) |
指定商品 第10類「埋込可能な除細動器,埋込可能な心臓用パルス発生器,その他の医療用機械器具」 |
登録出願日 平成19年2月21日 |
設定登録日 平成19年12月21日 |
(2)国際登録第1151024A号商標 |
商標の態様 「NUANCE」の欧文字を横書きしてなるもの |
指定商品 第10類「Only masks for medical applications, including nasal pillows masks.」 |
国際登録出願日 2013年(平成25年)1月10日(2012年7月11日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権主張) |
設定登録日 平成29年6月23日 |
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4 当審の判断 |
(1)本願商標 |
本願商標は、前記2のとおり、「NUANCE」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は「微妙な違い、ニュアンス」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)として、一般に広く知られている語である。 |
そうすると、本願商標は、その構成文字に相応し「ニュアンス」の称呼を生じ、「微妙な違い、ニュアンス」の観念を生じるものである。 |
(2)引用商標 |
引用商標は、前記3のとおり、「NUANCE」の文字を標準文字又は欧文字で表してなるところ、上記(1)の本願商標と同様に、その構成文字に相応し「ニュアンス」の称呼を生じ、「微妙な違い、ニュアンス」の観念を生じるものである。 |
(3)本願商標と引用商標との類否 |
本願商標と引用商標との類否を検討すると、両者は、外観において、書体を異にするとしても、その構成文字である「NUANCE」の欧文字の綴りを同一とすることから、近似した印象を与えるものであり、称呼において「ニュアンス」の称呼を、観念において「微妙な違い、ニュアンス」の観念を共通にするものである。 |
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観において近似した印象を与えるものであり、かつ、称呼及び観念において同一のものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、本願商標と引用商標は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 |
(4)本願の指定商品と引用商標の指定商品との類否 |
本願の指定商品である第10類「Surgical apparatus and instruments for ophthalmic surgery.」は、引用商標の指定商品である第10類「埋込可能な除細動器,埋込可能な心臓用パルス発生器,その他の医療用機械器具」及び第10類「Only masks for medical applications, including nasal pillows masks.」と同一又は類似の商品である。 |
(5)小括 |
以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
(6)請求人の主張について |
請求人は、原審における平成29年5月17日提出の意見書、同年11月1日提出の上申書、令和元年8月5日提出の上申書及び同3年3月10日提出の上申書、また、当審における同4年7月14日提出の審判請求書(同年8月29日提出の手続補正書により、「請求の理由」を補正)において、引用商標権者と交渉中である旨主張し、審査及び審理の猶予を申し出ていたことから、審判長は、その交渉の具体的な進捗状況を確認するために、請求人に対し、同年12月5日付けで審尋を通知した。 |
しかしながら、請求人からは何らの回答もなく、交渉の具体的な進捗状況の事実を確認できる書面の提出もないことに加え、原審における最初の審査の猶予の申出から5年8か月以上経過している現在においても、手続の進展がみられず、本願商標に係る商標権者への移転等、先の拒絶理由が解消したと認めるに足る事実も見いだせないことから、これ以上、本件の審理を遅延させるべき合理的な理由はないものと判断し、審理を終結することとした。 |
(7)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |