審決


不服2021-650020

Suite 400, 16430 N. Scottsdale Road Scottsdale AZ 85254 USA(US)
 請求人
Carlisle Fluid Technologies, Inc.
  
東京都港区虎ノ門一丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
青木 篤
  
東京都港区虎ノ門一丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
外川 奈美
  
東京都港区虎ノ門一丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー 青和特許法律事務所
 代理人弁理士
大橋 啓輔
  


 国際登録第1439419号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は,成り立たない。



 理 由
  
 1 手続の経緯
 本願は,2018年(平成30年)5月9日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,同年11月6日に国際商標登録出願されたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
 2020年(令和2年)3月3日付け :暫定拒絶通報
 令和2年(2020年)7月13日  :意見書の提出
 2021年(令和3年)3月16日付け:拒絶査定
 令和3年(2021年)6月28日  :審判請求書の提出
 
 2 本願商標
 本願商標は,「DV1」の欧文字及び数字を横書きしてなり,第7類「Spray coating applicator, namely, gravity feed spray coating guns, pneumatic atomization spray guns, spray coating guns.」を指定商品として,国際商標登録出願されたものである。
 
 3 原査定の拒絶の理由(要旨)
 本願商標は,「DV1」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ,ローマ字2字の次に数字を組み合わせたものは,商品の品番や型番等を表した記号又は符号として一般的に用いられており,本願商標はその一種であると需要者に認識されるにとどまるものである。
 そうすると,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であるというべきである。
 したがって,本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する。
  
 4 当審においてした証拠調べ
 本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲1及び別掲2に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,別掲1については令和4年2月1日付け証拠調べ通知書によって,また,別掲2については同年8月8日付け証拠調べ通知書によって,それぞれ通知し,期間を指定して,これに対する意見を求めた。
 
 5 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨
(1)令和4年2月1日付け証拠調べ通知書に対する意見の要旨
 別掲1の「DV1」の使用対象となる商品は,本願の指定商品とは商品の内容,品質,用途等が大きく異なるものであるから,取引実情や,商品に対する取引者,需要者の認識も大きく相違すると考えるのが極めて妥当である。
 そうとすると,別掲1の数件の使用例を,本願の指定商品に使用される本願商標に対するわが国の取引者,需要者の認識について判断する根拠とするのは,客観的に合理的とは到底いえない。
 そもそも,わずか数件の使用例に基づいて,「DV1」が商品の品番や型番の一部として使用されている根拠とするのも合理的とはいえず,ましてや,引用された新聞記事情報は最新のもので現在から約7年前のものであり,(4)の記事に至っては現在から40年以上も前のものである。
 すなわち,これらの使用例を根拠として,本願商標がその指定商品との関係において商品の品番や型番等を表す記号又は符号として取引者・需要者に認識され得るという結論を導き出すことについては,その蓋然性についての説明が欠如しており,著しい論理の飛躍があるといわざるを得ない。
 この点については,本願商標については,請求人が製造・販売するスプレーガンの自他商品識別標識として実際に機能していることが客観的に認識され得るものであり,また,本願商標は,その指定商品との関係において,極めて簡単でかつありふれた標章のみからなるものの範ちゅうを超えた商標として,わが国の取引者・需要者により把握・認識され,本願の指定商品について十分に自他商品識別力を発揮していると考えるのが極めて妥当である。
(2)令和4年8月8日付け証拠調べ通知書に対する意見の要旨
 請求人は,指定した期間内に何ら意見を述べていない。
 
 6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第5号該当性について
 本願商標は,「DV1」の欧文字と数字を横書きしてなるところ,当該文字は一般に用いられる書体で表されており,用いられる文字の形や組合せ方法に特徴があるわけではない。
 そして,別掲1及び別掲2のとおり,欧文字2字と数字1字を組み合わせた標章は,様々な商品分野において,商品の品番,型番等を表した記号又は符号として,一般的に使用されている実情があるものであって,そのことが本願の指定商品の分野においても同様であることは,別掲2の事実から裏付けられるところであり,また,別掲1のとおり,「DV1」の標章も,本願の指定商品とは異なる商品についてではあるものの,本願の指定商品と同様の機械器具の分野において,商品の品番,型番等を表した記号又は符号として使用されることがあるものである。
 そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,これが単に,商品の品番,型番等を表した記号又は符号の一類型であると理解するにとどまるものであるから,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であり,自他商品の識別標識とは認識し得ないといわざるを得ないものである。
 したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。
(2)請求人の主張について
 ア 請求人は,「本願商標は,その指定商品との関係において,極めて簡単でかつありふれた標章のみからなるものの範ちゅうを超えた商標として,我が国の取引者,需要者により把握され,本願の指定商品について十分に自他商品識別力を発揮している」旨を主張するとともに,証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出しているため,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備している旨主張しているものと解し,これについて検討する。
(ア)請求人の主張及び同人が提出する証拠によれば,以下のとおりである。
 a 請求人は,1917年創業の米国「Carlisle Companies Incorporated」の塗装関連機器を取り扱う事業部門であり,スプレーガンの「DeVILBISS」,静電塗装の「Ransburg」,高効率ベローズポンプの「Binks」,乾燥機を扱う「BGK」,粉体塗装機の「MS」の各ブランドを統括し,世界各地で塗装関連機器及び設備を提供している(甲1,請求人の主張)。
 b 「DeVILBISS」ブランドのスプレーガンは,我が国においても請求人の日本法人を通じて販売されており,そして,その中の「DV1」ブランドのスプレーガンは,2018年9月から我が国でも販売が開始され,自動車塗装や板金塗装を中心とする工業用塗装に従事する者から,その品質・機能及び操作性等について,高い評価を受けている(甲2,請求人の主張)。
 c 請求人の日本法人のウェブサイトには,「DV1」の欧文字及び数字を商品名の一部に含むスプレーガンが掲載されており,当該スプレーガンには,中抜きの六角形の左側が一部欠けた図形に「V1」の欧文字及び数字を組み合わせてなるロゴからなる標章(以下「ロゴ標章」という。)が表示されている(甲3)。
 d 本願商標に係る請求人のスプレーガン(以下「請求人商品」という。)の我が国における2019年ないし2021年5月の売上台数は,合計1366台であったとされる(甲6,請求人の主張)。
(イ)以上によれば,請求人は,我が国において,請求人の日本法人を通じて,請求人商品を販売しており,当該商品を使用している者から高評価を得ていることはうかがえる。
 しかしながら,請求人の主張する売上台数の根拠とする甲第6号証は,その作成者や作成日時等が不明な上,当該売上台数を裏付ける証拠の提出はないから,これによっては,実際の請求人商品の売上台数は不明といわざるを得ない。また,請求人の主張する売上台数が事実であるとしても,その多寡を客観的に判断するための証拠の提出はないから,当該売上台数によって,本願商標が,これに接する取引者,需要者にどの程度認識されるに至っていたかを推し量ることはできない。そして,請求人は,請求人商品を2018年9月より我が国において販売している旨も主張するが,当該事実を裏付ける客観的な証拠の提出はなく,当該発売開始時期が事実であるとしても,我が国における販売期間は4年半程度と短いものである。そのほかに,本願商標について,我が国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,請求人商品の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできない。
 したがって,我が国における客観的な使用事実に基づいて,本願商標の使用状況を把握することはできない。
 そうすると,請求人の提出する証拠によっては,本願商標は,その指定商品について使用をされた結果,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないし,その他,当審において,職権で調査するも,本願商標が請求人商品を表示するものとして,取引者,需要者に広く認識されていると認めるに足りる事情も見いだせず,自他商品の識別標識としての機能を発揮するものであるというべき事情は認められない。
 したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
 イ 請求人は,欧文字1文字又は2文字と数字が結合された構成からなる商標の過去における登録例(甲7~甲13)を挙げて,本願商標も登録されるべき旨を主張している。
 しかしながら,登録出願に係る商標が,商標法第3条第1項第5号に該当するものであるかどうかの判断は,当該商標登録出願の査定時又は審決時において,個別具体的に検討,判断されるものであって,過去の登録例が存在することをもって,本願商標の上記(1)の判断が左右されるものではない。
 なお,請求人の挙げる登録例は,いずれも本願商標とは,その具体的な構成,態様を異にするものであって,事案を異にするものであり,同一に論ずることができないものである。
 ウ 請求人は,本願商標が,請求人の本国である米国を含め,英語を母国語又は公用語の一つとする諸外国で登録されていること(甲14~甲22)を挙げて,本願商標も登録されるべき旨を主張している。
 しかしながら,諸外国と我が国の商標保護に関する法制は,細部においては自ずと異なるものであるから,本願商標の登録の適否は,専ら我が国商標法の下において判断されるべきものであって,諸外国における登録状況等の事情をもって,上記(1)においてした本願商標についての判断が左右されるべきではない。
 エ したがって,請求人の主張はいずれも採用できない。
(3)まとめ
 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当し,かつ同条第2項に規定する要件を具備しないものであるから,登録することができない。
 よって,結論のとおり審決する。
 


        令和 5年 4月25日

     審判長  特許庁審判官 豊瀬 京太郎
          特許庁審判官 大森 友子
          特許庁審判官 須田 亮一

 
 
別掲1 令和4年2月1日付け証拠調べ通知書において示した事実
 「DV1」の欧文字及び数字が,商品の品番や型番の一部として使用されている例(下線は合議体による。以下同じ。)。
 1 新聞記事情報
(1)2015年7月1日付け建設通信新聞の6頁には,「最新の情報化施工機器紹介/カナモトが建設技術展示会」の見出しの下,「会場では,酒井重工業の国内1号機となるコンバインドローラ(大型土工ローラ)「SV900-DV1」や低コストで現場効率が大幅アップするオービットの機械式マシンガイダンス「法面勾配指示器」など最新の製品・技術に注目が集まった。」の記載がある。
(2)2008年5月5日付け日刊工業新聞の5頁には,「アマダワシノ,CCDカメラ装備の高精度研削盤を発売」の見出しの下,「アマダワシノ(愛知県小牧市,・・・)は,電荷結合素子(CCD)カメラで高精度な画像計測・補正加工機能を備えるプロファイル研削盤「WASINO DV1」を発売した。金型加工用と工具加工用の2種類ある。価格は3400万円。年間販売目標は60台。」の記載がある。
(3)2002年8月10日付け日経MJ(流通新聞)の12頁には,「DVDプレーヤー――ビデオ一体型,1台2役に支持(MJカウントダウン)」の見出しの下,「4位になった日本ビクターの「HR―DV1」は2001年11月発売で,Hi―FiビデオとDVDプレーヤーを一体化。CD―Rなどに記録されたMP3オーディオの再生にも対応している。」の記載がある。
(4)1981年10月24日付け日経産業新聞の7頁には,「東京モーターショー,見どころ探る――持てる力存分に発揮,FFやターボやカーエレ。」の見出しの下,「このほか,セリカのシンボルカー『トヨタSV2』,上肢障害者のために開発した『トヨタDV1』,短距離小口集配用に最適な『トヨタクイックデリバリー』などを参考出品。さらに,トヨタが先進技術の粋を集めて開発したレーザーツインカム6・―G―二十四バルブエンジンなど四機種の新エンジンを参考出品。」の記載がある。
 2 インターネット情報
(1)「amazon」のウェブサイトにおける「GE フルハイビジョン ビデオカメラ DV1 CMOS 503万画素デジタルズーム4倍 防水 /防塵 グリーン DV1 GREEN」という商品のページには,「メーカー型番」として「DV1 GREEN」の記載がある。 (https://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%83%93%E3%83%87%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9-CMOS503%E4%B8%87%E7%94%BB%E7%B4%A0-%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%83%BC%E3%83%A04%E5%80%8D-GREEN/dp/B0044DEEJM?th=1)
(2)「株式会社エーオーアール」のウェブサイトにおける「デジタルボイスレシーバー AR-DV1」という商品のページには,「商品コード」として「AR-DV1」の記載がある。
 (https://www.aor.co.jp/receiver/product/ar-dv1/)
(3)「モノタロウ」のウェブサイトにおける「サンワサプライ」の「プリンタケーブル」のページには,「品番」として「KP-DV1」,「KP-DV15」,「KP-DV2」,「KP-DV3」,「KP-DV5」の記載がある。
 (https://www.monotaro.com/g/00864584/)
 
別掲2 令和4年8月8日付け証拠調べ通知書において示した事実
 本願の指定商品を取り扱う業界において,欧文字2文字と数字の組み合わせが,商品の品番や型番又はその一部として使用されている例。
 1 モノタロウのウェブサイトにおける「エアブラシ ピーススリー」という商品の紹介ページには,品番として「PE3」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01320631/)
 2 モノタロウのウェブサイトにおける「エアブラシ XP7」という商品の紹介ページには,品番として「XP7」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01320593/)
 3 モノタロウのウェブサイトにおける「エアレスハンドガン」という商品の紹介ページには,品番として「MG7」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01416985/)
 4 モノタロウのウェブサイトにおける「エアブラシ グラフォT3」という商品の紹介ページには,品番として「GT3」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01320556/)
 5 モノタロウのウェブサイトにおける「レギュレーターシート」という商品の紹介ページには,「エアレギュレーター「AGS1」や「MAFR-200」をエアブラシ専用ホルダー「AH01」に固定するための金具です。」の記載と共に,品番として「RS1」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01320678/)
 6 モノタロウのウェブサイトにおける「エアーブラシ用部品」のカテゴリー下の「チェンジネジ(S-M5)」という商品の紹介ページには,品番として「SM5」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01320637/)
 7 モノタロウのウェブサイトにおける「重量式塗料カップ」という商品の紹介ページには,品番として「6CP」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/04909404/)
 8 モノタロウのウェブサイトにおける「エアブラシホルダー」という商品の紹介ページには,品番として「AH01」及び「AH03」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01320680/)
 9 モノタロウのウェブサイトにおける「吸上式スプレーガン」のカテゴリー下の「エアー4点キット」という商品の紹介ページには,品番として「AK4-2」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/04054798/)
 10 モノタロウのウェブサイトにおける「ブリードバルブ」という商品の紹介ページには,「エアーブラシに接続し,手元で空気調整が可能です。」の記載と共に,品番として「HPA-BV2」の記載がある。
(https://www.monotaro.com/g/01380135/)
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
  
審判長 豊瀬 京太郎         
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .15 -Z  (W07)
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上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 5年 4月25日  審判書記官  眞島 省二