異議の決定


異議2022-685004
15 EAST PUTNAM AVENUE, #131 The Black Fives Foundation GREENWICH CT 06830(US)
 商標権者  
THE BLACK FIVES FOUNDATION
フィンランド共和国 00100 ヘルシンキ,メヘリニンカトゥ 6
 商標登録異議申立人  
ユーファクトリー オイ
大阪府大阪市西区江戸堀1-9-11アイプラス江戸堀2階 マークス国際弁理士事務所
 代理人弁理士
三上 真毅
  


 国際商標登録第1548801号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。



 結 論
  
 国際商標登録第1548801号商標の商標登録を維持する。



 理 由
  
1 本件商標
 本件国際登録第1548801号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「RENS」の欧文字を横書きしてなり、2020年(令和2年)7月16日に国際商標登録出願、令和3年8月12日に登録査定され、第25類「Clothing, namely, shirts, jerseys, uniforms, hats, caps, jackets, coats, tops, pants, shoes, footwear, sneakers, athletic footwear, bottoms, sweat shirts, sweat pants, t-shirts, play suits, warm-up suits.」を指定商品として、同年12月10日に設定登録されたものである。
 
2 引用商標
 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり、「rens」の欧文字を横書きし、申立人が商品「サステナブルスニーカー」に使用するものである。
 
3 登録異議の申立ての理由
 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第38号証(枝番号あり。以下「甲○」と記載する。)を提出した。
(1)申立人のメガヒットスニーカーを表示する引用商標
 ア 申立人
 申立人(ユーファクトリー社)は、2015年設立、ヘルシンキに本店を有するフィンランド国法人である(甲3)。
 同社は、創業直後より、ゴミとして廃棄される予定だったコーヒーかすとプラスチックをリサイクル(再利用)したスニーカー(靴)の開発に着手し、その取組みは、地球環境にやさしい持続可能(サステナブル)な社会の要請にも合致し、業界や世界各国のメディアの注目を集めることになった。同社は、当該事業の名称に「RENS」を用いている(甲4~甲27)。
 イ 引用商標の使用実績、認知度
(ア)申立人は、引用商標を、同社が世界で最初に開発したコーヒーかすとプラスチックを使って製作したスニーカー(以下「申立人商品」という。)の靴底及びインソールに使用している。
 甲第21号証は、申立人のウェブサイトに掲載された申立人商品(男性用及び女性用)の情報であり、引用商標が、同サイトにおいて目立つように表示されている。なお、当該サイトを通じて、我が国の需要者も、直接、申立人商品を購入できる。
 甲第22号証は、申立人のFacebookページの掲載であり、引用商標が、ハッシュタグ(#)図形とともに、トップ画面に表示されている。
 「RENS」スニーカーが世界各国で注目を集めていることも相まって、申立人のSNSのフォロワーは、Facebookが24,748人(甲22)、Instagramが28,000人(甲23)となっている。
(イ)上述したとおり、申立人の「RENS」事業(世界初のコーヒースニーカー)が世界の注目を集める中、2019年6月25日、ユーファクトリー社は、「Kickstarter」において、事業資金を集めるキャンペーンを行ったところ、わずか24時間で目標金額を達成し(甲12)、最終的に、世界69カ国、5,033人から資金を調達することに成功した。この快挙により、「RENS」に対する世間の関心はより一層高まり、ユーファクトリー社に対する取材記事(甲13)だけでなく、The GuardianやBBC、Bloombergといった世界的なメディアにおいても、申立人の「RENS」事業が取り上げられた(甲14~甲16)。我が国においても、「Kickstarter」での話題をきっかけに、申立人の「RENS」スニーカーに関心を持つ人が増え、例えば、「防水と通気性を兼ね備え、そしてコーヒーの力で素足で履いても臭わないスニーカー「Rens」」(2019年8月12日、甲24)、「現在、Rensはキックスターターにおいてクラウドファンディングキャンペーン中で、すでに目標額の15倍以上を達成(※2019年7月24日現在)しており、注目の商品となっている。」(2019年7月30日、甲20、別紙A)と紹介されている。
(ウ)また、ノルウェー国際報道協会役員は、2019年9月16日付け記事において、「プラスチック削減を求める動きが活発で、コーヒー消費量が世界的にもトップの北欧フィンランドで、「レンス」(#rens)というブランドが話題だ。若い移民によるスタートアップの成功例として、現地の政治家やメディアからも注目を浴びている。クラウドファウンディング「Kickstarter」では試作品のスニーカーをリリースし、7月11日にはすでに達成率900%、最終的には5033人のバッカーから55万ドルを調達した。スニーカーはどの国の店頭にもまだ並んでいない。まずはファウンディングでの約5千人に年内に靴を届けることを優先。今から欲しい人は、indiegogoのサイトで注文すれば、来年から入手可能だそうだ。実は、すでに日本からも複数の企業が販売をしたいと交渉してきているそうだ。日本の市場で、このハッシュタグのスニーカーを目にするのは、それほど遠くはなさそう。」(甲20、別紙A)として、フィンランドにおける申立人商品の人気度を報じている。
(エ)甲第20号証は、申立人の代表取締役(甲3)の宣誓供述書である。
 同供述書の別紙(ANNEX)Aには、2019年6月の「Kickstarter」での事業資金キャンペーンが我が国においても話題となり、本件商標の国際登録日(2020年7月16日)以前より、国内の複数のメディアを通じて報道されたことが記されている。
 同供述書の別紙B及びCは、引用商標が、本件商標の国際登録日よりも前から日本国内において使用されていたことを示す顧客名簿及び発送書類(Invoice)である。
 引用商標が付された申立人商品の日本の顧客への配送において、申立人は、香港法人と契約を結び、申立人商品は工場出荷後、一度、同社の倉庫に保管される。同社は、輸出・船積み業務を請け負う会社と業務提携を行い、その仲介を得て、日本の顧客に商品が届く仕組みとなっている。
 このように、引用商標を付した申立人商品は、ゴミとして廃棄される予定だったコーヒーかすとプラスチックをリサイクル(再利用)したスニーカー(靴)であり、地球環境にやさしい持続可能(サステナブル)な社会の要請にも合致したことで、発売開始前から、世界的に注目を集めてきた。
(オ)フィンランドの創業間もない会社(スタートアップ)がこのように注目されるようになった背景として、ファッション業界は、世界で二番目に環境を汚染している産業として国連貿易開発会談で発表され、多くの水資源を使い、温室効果ガス排出量が全業界の10%以上を占めるなどの問題が指摘されており、このため、地球環境へ配慮した持続可能な素材や製法で作られた商品開発への取り組みが業界として求められていることが挙げられる(甲25)。
 申立人商品のように、地球環境へ配慮した持続可能な素材や製造で作られたスニーカーは、業界では「サステナブルスニーカー」と呼ばれている(甲25、甲27)。
 「サステナブルスニーカー」とは、再生可能な素材と生分解性の高い素材を用いるのが特徴で、廃棄された素材を再度材料として利用することで、地球資源の使用抑制、温室効果ガスの発生抑制が可能となり、また、生分解性が高いほど廃棄された際にすぐ分解され環境にとどまる期間が少なく、環境に対する悪影響が軽減される(甲25)。
 世界中でSDGs(持続可能な開発目標)への取組みが推進される中、この「サステナブルスニーカー」に対する人々の関心は日に日に高まっており、従来のスニーカーやシューズとは別に、「サステナブルスニーカー」の人気、おすすめブランドを紹介するサイト記事には、申立人商品が頻繁に掲載されるに至っている(甲25~甲27)。
(カ)このように、引用商標は、「サステナブルスニーカー」を取り扱う業界において、本件商標の国際登録時には、申立人商品を表示するものとして、フィンランドをはじめ、地球環境問題や持続可能な社会への意識が高い欧州諸国において、広く認識されるに至っており、我が国においても、当該商品に関心を有する地球環境問題に対する意識が高い一般消費者の間で、一定の認知度を獲得している。
 本件商標の国際登録時において、日本でも申立人商品に対する関心が高まっていたことは、申立人が、日本の独占販売代理店を通じて、「マクアケ」(甲10)や「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」(甲11)において事業資金調達キャンペーンを行ったところ、「マクアケ」においては、目標金額100,000円を3164%も上回る金額が集まった事情から伺える(甲10)。
(キ)引用商標及び「RENS」の欧文字が、申立人の事業を表示する重要な商標であることから、「Kickstarter」での事業資金キャンペーンの開催時期(2019年6月)に前後して、「サステナブルスニーカー」の需要が見込まれる国、地域において商標出願を行っており、欧州連合(EUTM)、英国、中国においては、既に登録されている(甲28~甲30)。
 ウ 本件商標の基礎登録に対する取消審判
 本件商標は、2019年6月25日、ユーファクトリー社が「Kickstarter」において事業資金調達キャンペーンで大成功を納め(甲12)、世界各国のメディアが申立人商品に注目し、その人気ぶりを報じた(甲13~甲19)後の2020年7月16日に国際登録されたものである。
 本件商標権者は、米国法人であるところ、本件商標の基礎出願(第78184117号)が2002年11月12日にUSPTOに出願され、2006年6月13日に米国において登録(登録第3104596号)されていたにもかかわらず(甲2、甲31)、なぜか、申立人商品に世間が注目した後に、本件商標を国際登録出願しており、本件商標の使用事実についても疑わしいことから、申立人は、本件商標の基礎登録に対し、2020年7月9日付けで取消審判(Cancellation)を請求した(甲32、甲33)。
 当該取消審判は、現在も審理係属中であり(甲32)、審理の結果、基礎登録が取り消された場合、セントラルアタックにより、本件商標に係る国際登録は消滅する。
 エ 商標法第4条第1項第10号について
(ア)引用商標の周知性
 申立人の「RENS」事業(世界初のコーヒースニーカー)が世界の注目を集める中、2019年6月25日、ユーファクトリー社は、「Kickstarter」において、事業資金を集めるキャンペーンを行ったところ、わずか24時間で目標金額を達成し(甲12)、最終的に、世界69カ国、5,033人から資金を調達することに成功した。この快挙により、「RENS」に対する世間の関心はより一層高まり、ユーファクトリー社に対する取材記事(甲13)だけでなく、The GuardianやBBC、Bloombergといった世界的なメディアにおいても、申立人の「RENS」事業が取り上げられた(甲14~甲16)。我が国においても、「Kickstarter」での話題をきっかけに、申立人の「RENS」スニーカーに関心を持つ人が増え、例えば「防水と通気性を兼ね備え、そしてコーヒーの力で素足で履いても臭わないスニーカー「Rens」」(2019年8月12日、甲24)、「現在、Rensはキックスターターにおいてクラウドファンディングキャンペーン中で、すでに目標額の15倍以上を達成(※2019年7月24日現在)しており、注目の商品となっている。」(2019年7月30日、甲20、別紙A)と紹介されている。2019年9月18日付けフィンランド大使館のfacebookには、「シューズカンパニー・ユーファクトリー社とそのプランドRensが、フィンランドでのKickstarterキャンペーンとして最も成功を納めた」とのコメントが掲載された(甲17)。
 また、「RENS」事業への取組みによって、ユーファクトリー社の共同創業者の一人が欧州及びベトナムのフォーブス誌(Forbes Europe)の「30 Under 30-Social Entrepreneurs」に選ばれ(甲4、甲5)、2019年には、ワールドエコノミックフォーラムにおいて特集が組まれ、ユーファクトリー社の「RENS」事業について、「スニーカーブランドRensは、コーヒーかすからシューズを製作することによって、ファッション業界からの廃棄物のレベルを低減する」と紹介された(甲6)。
 また、2018年、欧州イノベーション・技術機構(EIT)のEIT Climate KIC’s ClimateLaunchPadにおいて「RENS」事業が2位に選ばれ、「RENSは、コーヒーとプラスチックのゴミからスニーカーを世界で初めて製作した」ことが高く評価された(甲7、甲8)。
 このように、引用商標を付した申立人商品は、ゴミとして廃棄される予定だったコーヒーかすとプラスチックをリサイクル(再利用)したスニーカー(靴)、すなわち、サステナブルスニーカーであり、地球環境にやさしい持続可能(サステナブル)な社会の要請にも合致したことで、発売開始前から、世界的に注目を集め、「サステナブルスニーカー」の人気ブランド(甲25~甲27)として、本件商標の国際登録時には、外国において周知であった。
 当該事情が、「サステナブルスニーカー」に係る我が国の需要者及び取引者の間でも知られるに至っていたことは、申立人が、日本の独占販売代理店を通じて、「マクアケ」(甲10)や「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」(甲11)において事業資金調達キャンペーンを行ったところ、「マクアケ」においては、目標金額100,000円を3164%も上回る金額が集まった事情から伺える(甲10)。
 また、「Kickstarter」事業資金調達キャンペーンにおいては、フィンランドや欧州諸国以外にも、オーストラリア、米国、シンガポール、日本といった国の資金提供者もあったため(甲18)、本件商標の国際登録時には、数か国に申立人商品が輸出されている。
 したがって、引用商標は、本件商標に係る指定商品のうち、少なくとも、「サステナブルスニーカー」との関係において、商標法第4条第1項第10号に定める「需要者の間に広く認識されている商標」に該当する。
(イ)商標の同一又は類似
 本件商標と引用商標とを対比してみると、大文字、小文字及びフォントデザインの違いにより外観上の差異はあるものの、いずれも「RENS」の欧文字からなるもので、称呼を同じくするから、両商標は全体として類似している。
(ウ)商品の同一又は類似
 本件商標の指定商品のうち、「shoes,footwear,sneakers,athletic footwear」は、申立人商品(サステナブルスニーカー)と同一又は類似している。
(エ)小括
 引用商標は、申立人の商品「サステナブルスニーカー」を表示するものとして、本件商標の国際登録日において、需要者の間で広く認識されており、本件商標と引用商標とは類似し、さらに、本件商標の指定商品中「shoes,footwear,sneakers,athletic footwear」と申立人商品(サステナブルスニーカー)とは同一又は類似する。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
 オ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)本件商標と引用商標との類似性の程度
 本件商標と引用商標は、対比してみると、大文字、小文字及びフォントデザインの違いにより外観上の差異はあるものの、いずれも「RENS」の欧文字からなるから、称呼を同じくする。
 このため、本件商標と引用商標とは全体として類似しているから、その類似性の程度は高い。
(イ)引用商標の周知性及び独創性の程度
 引用商標を付した申立人商品「サステナブルスニーカー」は、地球環境にやさしい持続可能(サステナブル)な社会の要請にも合致したことで、発売開始前から、世界的に注目を集め、「サステナブルスニーカー」の人気ブランド(甲25~甲27)として、本件商標の国際登録時には、外国において周知であった。また、引用商標は我が国の一般消費者に馴染みある外国語ではないため、その独創性は決して低くはない。
 商品「サステナブルスニーカー」に係る我が国の需要者、取引者の間で、引用商標及び申立人商品が認識されていたことは、「Kickstarter」での話題をきっかけに、申立人の「RENS」スニーカーに関心を持つ人が増え、例えば「防水と通気性を兼ね備え、そしてコーヒーの力で素足で履いても臭わないスニーカー「Rens」」(2019年8月12日、甲24)、「現在、Rensはキックスターターにおいてクラウドファンディングキャンペーン中で、すでに目標額の15倍以上を達成(※2019年7月24日現在)しており、注目の商品となっている。」(2019年7月30日、甲20、別紙A)と紹介されていること、申立人が、日本の独占販売代理店を通じて、「マクアケ」(甲10)や「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」(甲11)において事業資金調達キャンペーンを行ったところ、「マクアケ」においては、目標金額100,000円を3164%も上回る金額が集まった事情から伺える(甲10)。
(ウ)本件商品と申立人商品との関連性
 本件商標の指定商品のうち、「shoes,footwear,sneakers,athletic footwear」は、申立人商品「サステナブルスニーカー」と同一又は類似している。
 その他の本件商品は、いずれも一般消費者によって頻繁に購入、消費される商品であるところ、これら指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度は相当高い。
(エ)取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
 本件商標の指定商品はいずれも、国民の快適な日常生活に欠かせない各種アパレル商品であり、日常的に頻繋に利用される性質の商品といえ、本件商標が使用される商品の主たる需要者は、広く一般の消費者といえる。そして、このような一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えられることから、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点でも共通する。
 また、「ユニクロ」をはじめ、アパレル商品を取り扱う店舗やオンラインショップにおいては、スニーカーやカジュアル・シューズも、衣料品と同様に販売されている取引の実情が存在する(甲36、甲37)。
(オ)混同を生ずるおそれ
 引用商標は、申立人商品「サステナブルスニーカー」を表示するものとして、本件商標の国際登録時には、外国において周知となっており、当該事情は、我が国内の需要者、とりわけ、地球環境問題への意識が高い一般消費者の間で認識されるに至っていた。両商標の類似性の程度は極めて高く、申立人の業務に係る商品との関連性の程度も相当高いから、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、「サステナブルスニーカー」との関係において、周知な引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、誤認するおそれがある。
(カ)小括
 以上から、本件商標は、その指定商品について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の国際登録日前から、申立人の業務に係るサステナブルスニーカーを表示する外国周知商標として、我が国の取引者、需要者の間で認識されている引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
 カ 商標法第4条第1項第19号について
(ア)外国における引用商標の周知性
 引用商標を付した申立人商品「サステナブルスニーカー」は、地球環境にやさしい持続可能(サステナブル)な社会の要請にも合致したことで、発売開始前から、世界的に注目を集め、「サステナブルスニーカー」の人気ブランド(甲25~甲27)として、本件商標の国際登録時には、外国において周知であった。
(イ)商標の同一又は類似
 本件商標と引用商標とを対比してみると、大文字、小文字及びフォントデザインの違いにより外観上の差異はあるものの、いずれも欧文字「RENS」からなり、称呼を同じくするから、両商標は全体として類似する。
(ウ)本件商標に係る不正の目的
 本件商標は、2019年6月25日、ユーファクトリー社が「Kickstarter」において事業資金調達キャンペーンで大成功を納め(甲12)、世界各国のメディアが申立人商品に注目し、その人気ぶりを報じた(甲13~甲19)後の2020年7月16日に国際登録されたものである。
 本件商標権者は、米国法人であるところ、本件商標の基礎出願(第78184117号)が2002年11月12日にUSPTOに出願され、2006年6月13日に米国において登録(登録第3104596号)されていたにもかかわらず(甲2、甲31)、なぜか、申立人商品に世間が注目した後に、本件商標を国際登録出願しており、本件商標の使用事実についても疑義があり、申立人が調べた限り、少なくとも、我が国において本件商標の使用の事実は確認されなかった。
 このため、申立人は、本件商標の基礎登録の登録性に疑義があるとして、2020年7月9日付けで取消審判(Cancellation)を請求した(甲32、甲33)。なお、当該取消審判は、現在も審理係属中である(甲32)。
 また、2019年6月25日に行った「Kickstarter」における事業資金調達キャンペーン(甲12)には、日本の出資者も多く含まれていたことから(甲18、甲19)、申立人は、本件商標の国際登録日の半年前から、引用商標を付した申立人商品を、日本向けに出荷、納品しており(甲20)、その後も、国内事業者と独占販売代理店契約を結んでクラウドファンディング(甲10、甲11)を行う等、我が国に進出する具体的計画を有している。
 申立人は、「RENS」商標の問題解決に向け、本件商標権者との交渉を進めているが、未だ和解には至っていない。本件商標が不使用であるにもかかわらず、交渉を長期化させていることから、本件商標権者は、世間の注目を集める申立人の「RENS」事業の名声、顧客吸引力等を毀損させ、市場参入を阻止する目的で本件商標の国際登録を行った可能性がある。
(エ)小括
 引用商標は、申立人の商品「サステナブルスニーカー」を表示するものとして、本件商標の国際登録日において、外国において周知性を獲得しており、本件商標は、引用商標が世界的に注目を集めた後、自らは不使用にもかかわらず、引用商標と同一又は類似する商標を国際登録することで、申立人の「RENS」事業の名声、顧客吸引力等を毀損させ、申立人に損害を加える目的で出願されたものである。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
 キ 商標法第4条第1項第7号について
 本件商標は、引用商標を構成する欧文字「rens」を大文字に置き換えたものにすぎず、両商標は明らかに類似しているだけでなく、その指定商品は、申立人商品「サステナブルスニーカー」を包含し、関連性の高い各種アパレル商品を指定している。
 引用商標は、申立人商品「サステナブルスニーカー」を表示するものとして、本件商標の国際登録日において、外国において周知性を獲得しているところ、本件商標は、引用商標が世界的に注目を集めた後、自らは不使用にもかかわらず、引用商標と同一又は類似する商標を国際登録することで、申立人の「RENS」事業の名声、顧客吸引力等を毀損させ、申立人に損害を加える目的で出願された可能性が否定できず、本件商標の採択、国際登録において、不正の目的がなかったと捉えることの方が、むしろ不自然といわざるを得ない。
 そうすると、本件商標は、引用商標を付した申立人商品が世界的に注目を集めたことを知った後、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する、あるいは、引用商標の出所表示機能を希釈化するなどの目的で採択、出願した可能性があり、公序良俗に反する。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
 
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
 ア 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、フィンランド国ヘルシンキに所在する、2015年に設立された会社であって、コーヒーかすとプラスチックをリサイクル(再利用)したスニーカーの開発をしたもので、同社のスニーカーには引用商標を表示している(申立人の主張)。
(イ)フィンランド国ヘルシンキを拠点とする「Rens Original」は、コーヒーによる廃棄物とリサイクルしたペットボトルを活用して生み出したシューズ「Rens」を開発し、プロジェクト成功により2019年11月に当該シューズが発送されるクラウドファンディングを実施した(甲20)。
(ウ)当該クラウドファンディング及び引用商標に係る「スニーカー」は、我が国において、「「北欧」発、世界中が認めた、サステナブル防水スニーカー「♯rens」」、「防水と通気性を兼ね備え、そしてコーヒーの力で素足で履いても臭わないスニーカー「Rens」」などの見出しの下、インターネット上の記事情報において紹介されている(甲10、甲11、甲19、甲24~甲27)。
 また、海外においては、申立人の「RENS」事業は、メディア(The Guardian、BBC、Bloomberg)において取り上げられている(申立人の主張)。
(エ)引用商標に係る「スニーカー」と関連する、我が国及び外国における販売手法、販売実績及び販売規模(市場シェア)、広告宣伝手法及びその規模等を具体的に示す証拠(外国語の証拠については訳文付きのもの)は提出されていない。
 イ 以上によれば、引用商標に係る「スニーカー」と関連して、2019年頃に我が国又は外国において、事業資金募集及び事業準備が開始され、一定数のスニーカーが出資者に提供された状況は把握できるとしても、本件商標の登録出願時前の1年程度の間の出来事にすぎず、それと関連したメディア等を通じた露出や宣伝広告の頻度や規模も大きいとはいい難いばかりか、その後の大規模かつ広範な範囲における販売実績や広告宣伝実績は確認できない。
 そうすると、商品「スニーカー」に使用される引用商標は、本件商標の登録出願時において、申立人の使用に係る商標として、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
 ア 本件商標は、別掲1のとおり、「RENS」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は我が国で親しまれた外来語ではない。そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「レンズ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
 他方、引用商標は、別掲2のとおり、「rens」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は我が国で親しまれた外来語ではない。そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「レンズ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、構成文字のつづりを共通にし、称呼においては、「レンズ」の称呼を共通にするから、相紛らわしく、また、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
 そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛らわしいから、同一又は類似の商品について使用するときは、その出所について誤認混同を生じるおそれがあり、類似する商標と認められる。
 イ 本件商標の指定商品中「shoes, footwear, sneakers」は、引用商標の使用に係る商品「スニーカー」とは、同一又は類似する商品を含むものである。
 ウ 引用商標は、上記(1)イのとおり、我が国の需要者の間に広く認識されている商標とはいえない。
 エ 以上によれば、本件商標と引用商標は類似し、その指定商品も引用商標の使用に係る商品「スニーカー」と同一又は類似する商品を含むとしても、引用商標が、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とはいえないから、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
 本件商標と引用商標は、上記(2)ア及びイのとおり、類似する商標であり、その指定商品及び使用に係る商品は、同一又は類似する商品を含むとしても、引用商標は、上記(1)イのとおり、我が国の需要者の間に広く認識されている商標とはいえない。
 そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、我が国において周知著名ではない引用商標との関連性を連想又は想起するとは考えにくく、また、当該商品が、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について、混同を生じさせるおそれもない。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
 ア 引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
 イ 申立人は、申立人の商品に世間が注目した後に、本件商標が国際登録出願され、使用の事実も確認できないから、本件商標に係る不正の目的がある旨を主張する。
 しかしながら、申立人の主張は具体的な証拠に基づかない憶測によるものにすぎず、本件商標の我が国における登録出願の目的は、提出証拠からは明らかではないから、本件商標が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など)をもって使用をするものと認めることはできない。
 ウ そうすると、本件商標と引用商標は類似する商標であるとしても、引用商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ではなく、かつ、本件商標が不正の目的をもって使用をするものともいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号について
 本件商標は、上記(4)イのとおり、不正の目的をもって使用するものとはいえず、その登録出願の目的及び経緯に、著しい社会的相当性を欠くというべき理由は見いだせない。
 その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
 そうすると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)手続中止の申し出について
 申立人は、本件商標の国際商標登録出願の基礎登録(米国の登録第3104596号商標)に対して、米国において取消審判を請求しており、当該基礎登録が取り消された後、セントラルアタックにより本件商標に係る国際登録は消滅するから、当該審理が確定するまで、本件異議申立の手続を中止することを申し出ている。
 しかしながら、本件商標の登録適格性(商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号該当性)は、米国における取消審判の結論によりその判断内容や結論が影響されるものではない。さらに、本件異議申立てにおいて本件商標の登録適格性を審理する利益は、事後的に国際登録が取り消されるか否かによって、左右されるものでもない。
 したがって、本件の審理を猶予する理由はない。
(7)まとめ
 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
 よって、結論のとおり決定する。
 


        令和 5年 2月 6日

     審判長  特許庁審判官 矢澤 一幸
          特許庁審判官 小田 昌子
          特許庁審判官 阿曾 裕樹

 
別掲1(本件商標)
 
 
別掲2(引用商標)
 
 
 
 
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〔決定分類〕T1651.22 -Y  (W25)
            25
            271
            222

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 5年 2月 6日  審判書記官  眞島 省二