審決


不服2023-650012

Eresburgstrase 22-23 12103 Berlin(DE)
 請求人
TIB MOLBIOL Syntheselabor GmbH
  
東京都千代田区六番町2-5 フォルム六番町1F
 代理人弁理士
新保 斉
  


 2021年(令和3年)5月7日に事後指定が記録された国際登録第1317641号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
1 手続の経緯
 本願は、2021年(令和3年)5月7日に国際商標登録出願(事後指定)されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
  2022年(令和4年) 3月 8日付け:暫定拒絶通報
  2022年(令和4年) 6月24日  :意見書、手続補正書の提出
  2022年(令和4年)11月14日付け:拒絶査定
  2023年(令和5年) 2月22日  :審判請求書の提出
 
2 本願商標
 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、日本国を指定する国際登録において指定された第1類及び第42類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、国際商標登録出願(事後指定)されたものである。
 本願の指定商品及び指定役務は、原審における上記1の手続補正書により、第1類「Reagents for molecular biology procedures, in particular polymerase chain reaction (PCR).」及び第42類「Development of genetic tests; biological sample analysis.」とされたものである。
 
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した国際登録第979387号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2007年9月10日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)3月10日に国際商標登録出願、別掲3のとおりの商品を指定商品として、平成22年3月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
 
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
 ア 本願商標について
 本願商標は、別掲1のとおり、黒地の円に「TIB」の文字を白抜きで表し、その下に「MOLBIOL」の文字を横書きしてなるものであって、その構成中の「TIB」の文字部分と「MOLBIOL」の文字部分とは、明らかに分離して配置されているものであり、また、文字の色彩も異なるほか、「TIB」の文字は「MOLBIOL」の文字の4倍程度の大きさで表されているものであるから、これらは視覚上分離して看取されるものである。
 そして、「TIB」及び「MOLBIOL」の文字は、一般的な辞書類に掲載されているものではなく、いずれも造語というべきものであり、したがって、両語に観念的なつながりがあるともいえない。
 また、欧文字3文字からなる造語については、1文字ずつ区切って発音することが珍しくないことから、「TIB」の文字よりは「ティーアイビー」の称呼が生じるといえ、他方、「MOLBIOL」の文字よりは「モルビオル」の称呼が生じるものといえるところ、本願商標全体より生じる「ティーアイビーモルビオル」の称呼は11音とやや冗長である。
 そうすると、本願商標の構成中の「TIB」の文字部分と「MOLBIOL」の文字部分は、分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているということはできず、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、取引者、需要者において、「TIB」の文字部分(以下「本願要部」という。)をもって取引の用に供されることもあるというべきである。
 したがって、本願商標よりは、その構成文字全体に相応した「ティーアイビーモルビオル」の称呼のほか、本願要部に相応した「ティーアイビー」の称呼も生じるといえ、また、特定の観念が生じるとはいえないものである。
 イ 引用商標について
 引用商標は、別掲2のとおり、「TIB」の文字を横書きしてなるものであるところ、上記アと同様に、これよりは「ティーアイビー」の称呼が生じるものであって、また、特定の観念が生じるとはいえないものである。
 ウ 本願商標と引用商標との類否について
 本願商標と引用商標を比較するに、外観においては、全体としては相違するものであるが、本願要部と引用商標とは、文字の表し方が相違するものの、セリフ体(ブラケットセリフ)で書された「TIB」の欧文字からなる点を共通にするものであって、近似した印象を与えるものである。
 そして、称呼においては、「ティーアイビー」を共通にし、また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
 そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することはできず、全体の外観においては相違があるものの、本願要部と引用商標との対比においては外観上近似した印象を与えるものであり、称呼も共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本願商標と引用商標は、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。
 エ 本願商標と引用商標の指定商品の類否について
 本願の指定商品である第1類「Reagents for molecular biology procedures, in particular polymerase chain reaction (PCR).」(参考訳「分子生物学的手順、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための試薬」)は、試薬の一種と考えられるものであるところ、別掲4の情報にあるように、試薬を取り扱う者は様々な用途の試薬を取り扱っていることが少なくなく、また、試薬以外の工業用化学品(工業薬品)も広く扱っている実情が認められる。そうすると、当該指定商品と、引用商標の指定商品中、第1類「Chemical products for industrial use」(参考訳「工業用化学品」)とは、その生産部門、販売部門、需要者の範囲を一定程度共通にするというのが相当である。
 また、本願の指定商品は、「in particular(特に)」として「polymerase chain reaction (PCR)」のための商品を含むものであると明記されてはいるものの、それ以外の用途の「Reagents for molecular biology procedures」が含まれないことは明記されておらず、そして、本願に適用される「商品・サービス国際分類表(第10-2016版)」において、第1類の商品について「第1類には、主として、工業用、科学用及び農業用の化学品(他の類に属する商品の製造に用いられるものを含む。)を含む。」との記載があることを踏まえて考えると、本願の指定商品には「工業用、科学用及び農業用」の「Reagents for molecular biology procedures」が含まれ得るというのが相当であり、そうすると、本願の指定商品は、引用商標の指定商品中、第1類「Chemical products for industrial use」と、その内容及び範囲が一部重複するともいえるものである、
 以上のことからすれば、本願の指定商品は、引用商標の指定商品中、第1類「Chemical products for industrial use」と同一又は類似するものというのが相当である。
 オ 小括
 上記アないしエによれば、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、かつ、本願の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
 ア 請求人は、「MOLBIOL」の文字は、請求人の名称であり、30年間以上も事業展開をしており注目されているものであって、また、同文字は分子生物学を意味する「Molecular biology」を由来としているため、本願商標の指定商品又は指定役務との親和性も高い文字であるから、これを除外して商標の比較判断をすべきではない旨主張し、証拠方法として、資料1ないし資料5を提出している。
 しかしながら、提出された資料は、いずれも英語で記載されており、翻訳文の提出もないことから、その意味内容を正確に把握することが困難である上、本願商標又は「MOLBIOL」の文字が、請求人の事業に係る商品又は役務について、我が国においてどの程度使用され、広告宣伝されているかといった事実を読み取ることはできず、したがって、提出された資料をもってしては、「MOLBIOL」の文字が、請求人の名称として、又は、分子生物学を意味する「Molecular biology」を由来としているものであることについて、我が国の取引者、需要者に広く知られているということはできない。
 イ 請求人は、本願の指定商品はもともと臨床用、診断用試薬といったものであるから、もっぱら工業用の商品である引用商標の指定商品とは非類似のものである旨主張する。 
 しかしながら、指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない(商標法第27条第2項)ものであるところ、本願の指定商品は、第1類に属するものとして指定されているものであり、本願に適用される「商品・サービス国際分類表(第10-2016版)」において、第1類の商品について「第1類には、主として、工業用、科学用及び農業用の化学品(他の類に属する商品の製造に用いられるものを含む。)を含む。」との記載があること、及び、「この類には、特に、次の商品を含まない」として「医学用化学品(第5類)」との記載があることを踏まえて考えれば、本願の指定商品が「臨床用、診断用」の試薬であるということは適切とはいえず、あくまで「工業用、科学用又は農業用」の商品と捉えるのが相当であって、そうすれば、上記(1)エのとおり、本願の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるといえる。
 ウ したがって、請求人の上記ア及びイの主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、これを登録することができない。
 よって、結論のとおり審決する。
 


        令和 5年 9月19日

     審判長  特許庁審判官 豊瀬 京太郎
          特許庁審判官 板谷 玲子
          特許庁審判官 白鳥 幹周

 
 
 別掲1 本願商標
 
 別掲2 引用商標
 
 別掲3 引用商標の指定商品
 第1類 Chemical products for industrial use; as well as catalysts (chemical), namely flame retarding compositions, galvanizing preparations, alkaline earth metals, alkali metals, salts of metals, metalorganic compounds, tin oxide, tin and zinc halides; oxides of metals and metalloids, metalloids, mixtures of metals and metal alloys with oxides or sulfur compounds or halogen compounds and chemical additives for oils; unprocessed artificial resins, unprocessed plastics; fertilizers and manures; fire extinguishing compositions; tempering and soldering preparations; chemical substances for preserving foodstuffs; tanning substances; adhesives used in industry.
 第2類 Paints, varnishes, lacquers; preservatives against rust and against deterioration of wood; colorants; mordants; raw natural resins; metals in foil and powder form.
 第6類 Base metals, light and heavy metals (included in this class) and their alloys.
 第14類 Precious metals and their alloys.
 
 別掲4 試薬を取り扱う者が、様々な用途の試薬を取り扱っていること、及び、試薬以外の工業用化学品(工業薬品)も広く扱っていることを示す事例(下線は当審が付した。)
(1)「不二化学薬品株式会社」のウェブサイトにおいて、「事業内容」として「営業第二部 研究用試薬」の見出しの下、「国内外のネットワークを活用し、研究用試薬から工業薬品、医薬中間体、機能性ポリマー、電子材料、食品・化粧品素材原料など多岐に渡って幅広い提案で、未来に貢献します。」「多彩な分野で用いられる試薬や、工業用に用いられる薬品類を提供します。」の記載がある。
https://www.fuji-chemicals.co.jp/business-kenkyuu/
 
(2)「岡山薬品工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「事業案内」として「試薬・工業薬品・理化学機器」の見出しの下、「試薬は化学に関するあらゆる分野の、研究・開発・分析などに必要不可欠な薬品です。弊社は県内のほぼ全ての大学・企業・研究機関にこの試薬をお届けしております。その範囲は組織培養からバイオテクノロジー、さらには食品・遺伝子組換えなどの最先端分野から有機・無機の基礎研究・教育まで幅広い分野に対応しています。」「電気・電子・自動車・鉄鋼・化学等のあらゆる製造業において、工業薬品は様々な方法で活用されています。原材料や副原料として、触媒や分析用として、または洗浄剤、添加剤として・・・などその活用場面は多岐に渡っています。弊社は、県内の多くの製造業企業様にこうした工業薬品をタイムリーにお届けし、その高度で複雑なご要求に対応しております。」の記載がある。
https://www.okayaku.jp/service/shiyaku/
 
(3)「大阪化学研究所」のウェブサイトにおいて、「工業薬品、試薬、化学品」の見出しの下、「現在約4000種類の試薬を取り扱っています。なかでも一般試薬をはじめ、最近とくにニーズが増加傾向にある用途別の特殊試薬にも少量から対応しています。実験・研究で使用されるため、試薬のニーズは急を要することもしばしばですが、すばやい対応力も当社の特徴と自負しております。一般試薬から特殊試薬まで、柔軟に対応できます。」の記載がある。
http://o-kk.com/chemicals/
 
(4)「桜木理化学機械株式会社」のウェブサイトにおいて、「分析・研究用試薬、工業用薬品の販売」の見出しの下、「試薬は、化学、生物、材料などの分野における検査、研究、実験などの試験研究から、病院などでの臨床検査あるいは、環境分析などきわめて広範囲な分野で用いられています。」「大学、官公庁の試験・研究機関や産業界の研究開発に不可欠な試薬類をスピーディーにお届け致します。」「半導体などの日本を代表する産業に欠かせない工業用薬品。高純度高品質の工業用薬品をお届けしています。」の記載がある。
https://www.sakuragi-rk.co.jp/item/analysis_reagent.html
 
(5)「大和薬品株式会社」のウェブサイトにおいて、「試薬・化学工業薬品・医薬品 薬品のことならなんでもお任せください」「当社は昭和8年に初代田路栄一が創業し、姫路の地場産業である皮革工業に関わる化学薬品販売から始まり、昭和40年より日本薬局方品、医薬品の販売で基盤を形成、今ではあらゆる施設・業種へ試薬・化学工業薬品・医薬品の販売をさせていただいております。」の記載がある。
https://yamato-chemi.co.jp/
 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)        本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
  
審判長 豊瀬 京太郎         
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W0142)
            262
            263
            264

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 5年 9月19日  審判書記官  奥村 恵子