理 由 |
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第1 本件商標 |
本件国際登録第1007862号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「LA MIU」の欧文字を横書きしてなり、2009年4月23日に国際商標登録出願、第25類「Underwear; clothing; pajamas; bathing suits; hosiery; hats; gloves (clothing); scarfs; girdles; layettes (clothing).」を指定商品として、平成23年1月28日に設定登録されたものである。 |
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年8月26日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成元年8月26日から令和4年8月25日までの期間(以下「要証期間」という。)である。 |
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第2 請求人の主張 |
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第25類「Underwear; clothing; pajamas; bathing suits; hosiery; hats; gloves (clothing); scarfs; girdles; layettes (clothing).」(以下「請求に係る商品」という。)についての登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和4年12月16日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同5年2月3日付け審判事件弁駁書においてその理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。 |
以下、証拠の記載にあたっては、「甲1」のように省略して記載する。 |
1 請求の理由 |
本件商標は、その指定商品中、請求に係る商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 |
2 答弁に対する弁駁 |
(1)商標法第50条第1項及び第2項について |
商標法第50条第1項及び同条第2項で不使用の商標であるため取り消されるか否かを決定するにあたり、ア 継続して三年以上日本国内において、イ 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、ウ 各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていることについて証明した否かを検討する。 |
(2)乙1ないし乙24について |
ア 乙1及び乙2について |
乙1及び乙2は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が、Guangzhou Tianhua Trading Co.,Ltd.(以下「Guangzhou社」という。)に、本件商標を「Clothing;pajamas」について使用することについて通常使用権を設定していることがうかがえる。 |
イ 乙3ないし乙24について |
(ア)乙3について |
乙3についてみると、左上の日付が令和4年12月9日であり、要証期間中の使用を立証する証拠たり得ず、上記(1)のアの要件を満たさないから、乙3は、本件商標の使用を証明する証拠たり得ない。 |
(イ)乙4ないし乙9について |
乙4ないし乙9について、これらの資料は被請求人の証拠説明書によると、いずれも、本件商標権者のみが使用することを目的とする「管理画面」の写しであり、商標の使用に該当せず、上記(1)のウの要件を満たさないから、乙4ないし乙9は、本件商標の使用を証明する証拠たり得ない。 |
(ウ)乙10の1について |
乙10の1は宣誓書及びその訳文の写しであり、使用を証明するものではない。 |
(エ)乙10の2について |
被請求人の証拠説明書によると、乙10の2は、本件商標権者が販売を管理する社内システムのデータ写しとのことであるが、乙10の1と併せて考えたとしても商標の使用を証明する客観的な証拠には該当しない。 |
(オ)乙11ないし乙24について |
乙11ないし乙24は、令和4年(2022年)12月12日が印刷日であるAmazon.co.jp(以下「アマゾン」という。)のECサイトの画面の写しであることから、本件審判の請求後の使用を示すものであり、要証期間中の本件商標の使用を証明する証拠とはいえず、上記(1)のアの要件を満たさないから、乙11ないし乙24は、本件商標の使用を証明する証拠たり得ない。 |
なお、請求人は被請求人がアマゾンで販売している被服(甲2~甲7)を購入し、本件商標が付されているか否かを確認したものの、その使用は確認されなかったから、被請求人の提出する資料について、疑義がある。 |
ウ 家庭用品品質表示法の表示義務について |
なお、請求人は被請求人がアマゾンで販売する商品について以下の点を確認した。 |
(ア)パジャマ等に関する家庭用品品質表示法の表示義務について |
家庭用品品質表示法(甲8)によると、パジャマ(寝衣)等の繊維製品については家庭用品品質表示法でその商品に、a繊維の組成、b家庭洗濯等取扱方法、c表示者名等の付記が義務付けられている(甲9、甲10)。 |
そして、消費者庁のウェブサイトの「よくある質問・総論」(甲11)によると輸入品の場合は上記aないしcは日本語で表示されるべきものであるとされている。 |
(イ)被請求人がアマゾンで販売しているパジャマ等について |
本件に関連して、請求人は被請求人がアマゾンで販売しているパジャマ等を無作為に選定し購入して上記aないしcの表示があるか否かを調べたところ、当該商品には日本語によるa繊維の組成、b家庭洗濯等取扱方法、c表示者名等の付記を発見できなかった(甲12~甲19)。 |
よって、本件商標が使用されていると被請求人が主張する商品は商品家庭用品品質表示法施行規則第三条(甲20)に規定される遵守事項を遵守していないと考えられ、本来、市場において流通させるべきではないものである可能性がある。 |
エ 小結 |
以上より、被請求人は乙1ないし乙24によって指定商品「Clothing;pajamas」について上記(1)アないしウの要件を満たす本件商標の使用を証明したとはいえない。 |
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第3 被請求人の主張 |
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書において、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第24号証(枝番を含む。)を提出した。 |
1 答弁の理由の要点 |
(1)本件商標の使用者について |
本件商標権者は、Guangzhou社に対して本件商標の使用を許諾しており、同社は、本件商標の通常使用権者である。 |
本件商標権者とGuangzhou社は、2019年12月31日に「ブランド代理及び運営契約」を締結し、商標「Lamiu」(決定注:「Lamiu」の後に中国語で「ラミウ」と発音される語が表記されている。以下「Lamiu」ブランドという。)についての使用を許諾している(乙1)。 |
さらに、前記契約書内にて示した「Lamiu」ブランドには本件商標が含まれるものとする補足契約を、2020年1月21日に交わしている(乙2)。 |
以上より、Guangzhou社が本件商標の通常使用権者である。 |
(2)通常使用権者による本件商標の使用について |
Guangzhou社(以下、答弁書において「通常使用権者」という。)は、アマゾンにおいて「cottonideas jp」という名称の店舗を運営し、該店舗において、商標「LA MIU」が付された商品を(中国から日本に)輸出して販売している(乙3)。 |
なお、商標「LA MIU」が付された商品を含む「cottonideas jp」においての年間の出荷件数は、2020年で206件、2021年で1,775件である(乙4、乙5)。 |
商標「LA MIU」が付された商品「Clothing;pajamas」が、実際に、要証期間内において販売されていたことを示すものの一例として、乙6ないし乙9を提出する。 |
これらはアマゾンにおける「cottonideas jp」の管理画面の写しであり、出荷時期が要証期間内であること、商標「LA MIU」が付された「パジャマ」が出荷されたこと、出荷先が日本国であることが確認できる(なお、商品「パジャマ」は第25類「Clothing」に属する)。 |
また、乙10は、通常使用権者がアマゾンにおいての販売を管理する社内システムより抽出した真正なデータの写しである。乙10には、乙6ないし乙9において示した出荷情報について、乙6の出荷情報は乙10の2の1頁目の5行目に、乙7の出荷情報は乙10の2の1頁目の6行目に、乙8の出荷情報は乙10の2の1頁目の8行目に、乙9の出荷情報は乙10の2の1頁目の9行目に、それぞれ記載されている。これらの証拠より、通常使用権者が本件商標を付した商品「パジャマ」を要証期間内において相当数販売していたことは明らかである。 |
乙11ないし乙24は、通常使用権者がアマゾンにおいて運営している店舗「cottonideas jp」において、商標「LA MIU」が付された商品に対する日本における購入者のレビューの写しである。これらのレビューが要証期間内にされていることからも、本件商標が通常使用権者により要証期間内に日本国内において使用されていたことは明らかである。 |
(3)使用商標について |
乙11ないし乙24の一部において本件商標「LA MIU」に代わり標章「LAMIU」(スペースなし)が使用されているが、本件商標「LA MIU」と標章「LAMIU」とは構成文字が同じであり、また、同一の称呼を生じ、かつ、観念においても異なるものではないことから、「LAMIU」は本件商標と社会通念上同一の商標といえる。 |
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第4 当審の判断 |
1 事実認定 |
被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。 |
(1)本件商標の使用者について |
本件商標権者とGuangzhou社との間で、2019年12月31日付けで締結された「ブランド代理及び運営契約」の契約書(以下「原契約」という。)(乙1)には、Guangzhou社は、「Lamiu」ブランドの代理及び運営に対する法的権利を有する旨、原契約に基づく代理期間は、2020年1月1日から2023年12月31日までの3年間である旨、本件商標権者とGuangzhou社は補足契約を結ぶことができる旨が記載されている。 |
また、本件商標権者とGuangzhou社との間で、2020年1月21日付けで締結された「補足契約」(乙2)には、原契約に規定される「Lamiu」ブランドには、本件商標が含まれ、本件商標権者は、Guangzhou社が請求に係る商品についての使用を許諾する旨が記載されている。 |
なお、2019年12月31日及び2020年1月21日は、いずれも要証期間内である。 |
(2)Guangzhou社による使用について |
ア アマゾンのウェブサイト(乙11)には、1ページに、商品「パジャマ」(以下「使用商品」という。)の画像の表示とともに、別掲2のとおり、ブランドとして「LA MIU」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)、商品の説明として「パジャマ レディース・・・おしゃれ 柔らかい 肌に優しい かわいい 暖かい・・・LAMIU」、「¥3,180」及び出荷元及び販売元の名称として「cottonideas jp」の記載がある。 |
また、同号証の2ページに、「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2021/9/29」の記載のほか、同号証の5ページに、「2022年2月14日」、「2022年2月25日」及び「2022年4月15日」の日付の複数のレビューの記載がある。 |
なお、2021年9月29日、2022年2月14日、同月25日及び同年4月15日は要証期間内である。 |
イ Amazon出品者プロフィールのウェブサイト(乙3)において、「cottonideas jp」の出品者情報について、「ブランド:LA MIU」の記載、特定商取引法に基づく表記の販売業者として、Guangzhou社の名称の記載がある。 |
なお、アマゾンのウェブサイト(乙11)に記載されたブランドと出荷元及び販売元の名称とAmazon出品者プロフィールのウェブサイト(乙3)に記載されたブランドと出品者の名称は、いずれも「LA MIU」、「cottonideas jp」である。 |
2 判断 |
前記1において認定した事実によれば、以下のとおり認めることができる。 |
(1)Guangzhou社について |
前記1(1)のとおり、本件商標権者とGuangzhou社との間で、2019年12月31日付けで締結された「ブランド代理及び運営契約」の契約書及び2020年1月21日付けで締結された補足契約によれば、Guangzhou社は、2020年1月1日から2023年12月31日までの3年間を契約期間として、「Lamiu」ブランドの代理及び運営に対する法的権利を有し、かつ、同社は、「Lamiu」ブランドに含まれる本件商標の請求に係る商品の使用について、本件商標権者の許諾を得ていることが認められる。 |
したがって、Guangzhou社は、本件商標の通常使用権者といえる。 |
(2)本件商標と使用商標について |
本件商標は、別掲1のとおり、「LA MIU」の欧文字を横書きしてなり、使用商標は、別掲2とおり、「LA MIU」の欧文字を横書きしてなるものであるから、本件商標と使用商標とはそのつづりを共通にし、かつ「ラミウ」の称呼を共通にするものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものと認められる。 |
(3)使用商品について |
前記1(2)のとおり、使用商品は「パジャマ」であるから、請求に係る商品中「pajamas」に含まれるものである。 |
(4)使用商標の使用及び使用時期について |
前記1(2)によれば、2021年9月29日に存在したことが推認できるアマゾンのウェブサイトにおいて、使用商標とともに使用商品の写真が掲載されており、また、価格の表示や「パジャマ レディース・・・おしゃれ 柔らかい 肌に優しい かわいい 暖かい・・・LAMIU」といった宣伝文句などが記載されている。 |
そして、Amazon出品者プロフィールのウェブサイトにおいて、「cottonideas jp」という出品者が、「LA MIU」というブランドの商品を出品しているところ、アマゾンのウェブサイトに記載されたブランド「LA MIU」及び出荷元及び販売元の名称とAmazon出品者プロフィールのウェブサイトに記載されたブランド「LA MIU」及び出品者の名称「cottonideas jp」が一致していることを併せみれば、本件商標の通常使用権者であるGuangzhou社は、要証期間にアマゾンのウェブサイトにおいて「cottonideas jp」を運営し、使用商品を販売していたものと推認し得るものである。 |
そうすると、アマゾンのウェブサイトにおける使用は、本件商標の通常使用権者であるGuangzhou社による使用商標を付した使用商品に関する広告ということができる。 |
そして、当該ウェブサイトは、2021年9月29日にインターネット上に公開されたといえる。 |
そうすると、使用商品に関する広告を内容とする情報に使用商標を付して電磁的方法(インターネット)により提供したものということができる。 |
そして、2021年9月29日は、要証期間内である。 |
(5)小括 |
以上によれば、本件商標の通常実施権者は、要証期間内である2021年9月29日に、請求に係る商品中、「pajamas」についての広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供したものと認めることができる。 |
そして、上記行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 |
3 請求人の主張について |
請求人は、家庭用品品質表示法に照らすと、使用商品は同法に規定される遵守事項を遵守していないから、被請求人は本件商標の使用を証明したとはいえない旨主張する。 |
しかしながら、本件審判は、商標法第50条による商標登録の取消しの審判であり、本件商標の通常実施権者は、要証期間内に、請求に係る商品についての広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供したものと認められること上記2のとおりであるから、請求人の主張は、当該判断を何ら左右するものではない。 |
4 むすび |
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、本件商標の通常使用権者がその請求に係る商品中、「pajamas」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。 |
したがって、本件商標の登録は、請求に係る商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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