理 由 |
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第1 本件商標 |
本件国際登録第1546343号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、2020年5月20日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づき、パリ条約第4条による優先権を主張して、同年6月1日国際商標登録出願、第5類「Nutritional supplements; dietary supplements for healthcare; dietary supplements; nutritional supplement bar for use as a meal replacement; dietary drink mixes for use as a meal replacement, sports enhancement, performance enhancement, weight management, weight loss and weight gain; food supplements; dietary food supplements; vitamins; mineral preparations; antioxidant pills; nutritional supplements for detoxification and anti-aging; air deodorizers.」、第30類「Coffee; coffee based beverages; coffee products, namely, beverages with a coffee base, caffeine-free coffee, coffee-based snack foods, and unroasted coffee; beverages made from coffee; beverages with a coffee base; coffee substitutes; decaffeinated coffee; extracts of coffee for use as flavours in beverages; tea; iced tea; tea-based beverages; cold tea; herb teas and infusions; chocolate-based beverages; cocoa; cocoa-based beverages; cereal bars for giving energy; cereal based bars; high-protein cereal bars.」及び第32類「Non-alcoholic beverages; fruit juice beverages that containing minerals and vitamins; fruit drinks; fruit juices, slush drinks, syrups and other preparations for making beverages; preparations in the form of powder for making drinks; energy drinks; flavour enhanced mineral water; mineral water enhanced with flavours, sugar, sweeteners, vitamins or minerals.」並びに第3類、第18類、第25類、第35類、第41類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和4年7月5日に登録査定、同年9月9日に設定登録されたものである。 |
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第2 申立人が引用する商標 |
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり、以下、これらをまとめて「引用商標」という。また、引用商標1は、現に有効に存続しているものである。 |
1 登録第5431413号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成22年10月27日に商標登録出願、第5類「栄養補給剤,その他の薬剤,食餌療法用食品及び飲料」、第29類「乳飲料,コーヒー入り乳飲料,その他の乳製品」、第30類「コーヒー飲料,ミルク入りコーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶,氷,食品香料(精油のものを除く。)」、第32類「ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の清涼飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したコーヒー風味のエネルギー補給用の清涼飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の果実飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したコーヒー風味のエネルギー補給用の果実飲料,飲料製造用調製品」及び第33類「エネルギー補給用のアルコール飲料(ビールを除く。),コーヒーを加味したアルコール飲料(ビールを除く。),その他のアルコール飲料(ビールを除く。)」を指定商品として同23年8月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 |
2 申立人主張の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの |
申立人の使用に係る、引用商標1と同一視できる爪の図柄からなる商標(色彩の異なるものを含む、以下「引用商標2」という。) |
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第3 登録異議の申立ての理由 |
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第5類「全指定商品」、第30類「全指定商品」及び第32類「全指定商品」(以下「申立に係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第457号証(枝番号を含む。)及び別紙1ないし別紙9を提出した。 |
1 引用商標2の周知著名性 |
(1)MONSTERブランドの創設及び「MONSTER」の使用 |
申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドを創設し、これ以降、現在に至るまで、「MONSTER」の頭文字「M」とモンスターの爪の形状をかたどって創作した図柄(甲328、引用商標2)をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として使用している。 |
申立人商品は、2002年に米国でMONSTERブランドの第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。 |
申立人商品には、2002年以降、現在まで一貫して、「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名(例えば、「MONSTER ENERGY」「MONSTER ASSAULT」「MONSTER KHAOS」「MONSTER M-80」「MONSTER RIPPER」など。)が採用されている。また、これらの個別製品の包装容器は同じデザインで統一され、中央の上部に引用商標2を大きく目立つ態様で表示し、下方にブランド名の「MONSTER」の文字を特徴的な書体(甲416)で表示したデザインで統一されている(別紙1、別紙2)。 |
このように、規則的なネーミング法(すなわち「MONSTER」に他の語を結合する方法。)で命名された個別製品名と引用商標2を大胆に配置した独創的デザインの包装容器を特徴とする申立人商品は、申立人のMONSTERブランドのエナジードリンク事業を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2~甲33、甲51~甲58、甲391~甲393)。 |
国内では、2012年5月の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー 缶 355ml)及び「MONSTER KHAOS」(モンスター カオス 缶 355ml)発売以降、現在まで25種類の申立人商品(リニューアル商品を含む。)を販売している(別紙1)。 |
(2)広告宣伝活動 |
申立人商品に関する広告宣伝活動は、幅広く継続的なものであり、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む。)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む。)、引用商標2と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク(甲330)、「MONSTER ENERGY」の文字(以下、これらを併せて「MONSTERブランドマーク」という。)、並びに引用商標2を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3~7)。 |
また、申立人は、申立人商品の中心的需要者層である10代~30代の若い世代(特に男性)に人気が高いモータースポーツ、エクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行うとともに、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウント(別紙9)を開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。 |
(3)ライセンス商品の輸入差止 |
需要者におけるMONSTERブランドのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から度々発生している(別紙8)。 |
(4)国内外における商標登録 |
申立人は、引用商標1をはじめとして、国内外において多数の商標登録を取得している(甲447~甲454)。 |
また、引用商標2は、申立人の創作に係る独創的構成からなる創造標章であり、申立人の本国米国では、引用商標2の図案画の作品について著作権登録も取得している(甲455、甲456)。 |
(5)ブランド認知度及び市場占有率 |
複数の第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、既に2013年時点で申立人商品の国内市場占有率は25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかである。2013年以降も、申立人商品は着実に売上を伸ばしており、若い世代の男性を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく目立つ態様で表示された引用商標2が人目をひきつけ、男性のみでなく女性の間でもMONSTERブランドの認知度を高めている。(甲311~甲322、甲383~甲385)。 |
(6)小括 |
以上の事柄に照らせば、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。 |
2 商標法第4条第1項第11号該当性 |
本件商標は、やや幅広の輪郭線で描いた正方形の中に、英語のアルファベットの「M、m」(エム)を大文字で表記したものをその一部が当該正方形の右縦方向の辺と重なり合う態様で配置した図柄からなるものであって、アルファベットの「M、m」(エム)を大文字で表記したものと認識理解されるものであり、当該構成文字より、「エム」の称呼、並びに「アルファベットの13番目の文字、ローマ数字の千」等の観念が生じる(甲457)。 |
引用商標1は、「MONSTER(monster)」の頭文字「M、m」とヴェロキラプトル(恐竜)の爪の形状から着想を得てこれを独創的なデザインに高めた創造標章であって、アルファベットの「M、m」(エム)を小文字で表記したものと認識理解されるものであり、当該構成文字より、「エム」の称呼、並びに「アルファベットの13番目の文字、ローマ数字の千」等の観念が生じる(甲457)。 |
したがって、本件商標と引用商標1の構成文字は、同一のアルファベットを大文字(M)で表記したものか小文字(m)で表記したものかの点で異なるに過ぎず、「エム」の称呼、並びに「アルファベットの13番目の文字、ローマ数字の千」等の観念を共通にする類似のものであることが明らかである。 |
申立に係る商品中には、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品があり引用商標1は、本件商標よりも先に登録出願されたものである。 |
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
3 商標法第4条第1項第15号該当性 |
上記2のとおり、本件商標は、申立人の使用に係る引用商標と称呼及び観念を共通にするものであるから、両者の類似性の程度は高い。 |
申立に係る商品は、申立人が引用商標2を長年使用している商品(エナジードリンク)と同一又は類似のもの、あるいはこれらと極めて関連性が強いものである。そして、本件指定商品の需要者は一般消費者を含むものであるから、その通常の需要者の注意カの程度はさほど高いものとはいえない。 |
上記のとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者、需要者の間で広く認識されていた。 |
これらの事柄を総合して考察すれば、本件商標が申立に係る商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、引用商標2と申立人を想起連想し、当該指定商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信することにより、その出所について混同を生じるおそれがある。 |
また、引用商標2は、申立人の商品役務の代表的出所識別標識として、その製造販売に係るMONSTERブランドのエナジードリンクの略すべての個別製品に使用されていることに加えて、申立人から商標使用許諾を受けた者の製造販売に係る各種ライセンス商品、申立人の支援を受けているアスリート及びチームが競技会で着用又は使用するものに付されており、これらの大量の模倣品が水際で輸入差止めされる程度まで国内外で高い人気を獲得するに至っている。 |
このような事情の下で、本件商標が使用された場合は、2002年から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品役務の出所識別標識として広く認識されるに至っている引用商標2の出所表示力が希釈化するおそれがある。 |
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 |
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第4 当審の判断 |
1 引用商標の周知性について |
(1)申立人提出の甲各号証、各別紙及び同人の主張によれば、次のとおりである。 |
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスター カオス)」の販売を開始し、その後、2022年まで毎年、新製品やリニューアル商品を合計25種類以上販売した(甲7~甲13、甲59、甲60、甲101、甲127、甲130、甲291、甲323、甲324、甲354~甲361、甲434~甲442、甲445、甲446、別紙1 ほか)。 |
イ それら商品(我が国で販売された申立人商品、以下単に「申立人商品」という。)のすべての種類の商品(の容器)には、引用商標2が表示され、ほとんどの種類の商品には、デザイン化された「MONSTER」の文字(以下「MONSTERロゴ」という。)及び「ENERGY」の文字からなる別掲3のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲3商標」という。)が表示されている(甲7~甲13など上記アと同じ。)。 |
ウ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、引用商標2又はこれと共に別掲3商標を表示している(甲73~甲80、甲82 ほか)。 |
エ 我が国において、引用商標2若しくは別掲3商標が単独で、又は引用商標2と別掲3商標の両方が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98 ほか)。 |
オ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標権(国際登録第1048069号など)を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169~甲224、別紙8)。 |
カ 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。 |
キ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTERENERGY」であった(甲319)。 |
ク JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であり、同消費者調査No.232「エナジードリンク(2016年8月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲311、甲312)。 |
ケ 株式会社商業会運営のウェブサイトにおいて2019年8月18日付けの「ドリンク剤とは対照的な市場動向 エナジードリンク市場:急成長の要因は若い男性の支持」の見出しの下「エナジードリンクは3年前に比べて市場規模が約1.4倍に拡大」との記載がある(甲401)。 |
コ 申立人、モンスターエナジージャパン合同会社及びアサヒ飲料株式会社による申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品の画像、引用商標2若しくは別掲3商標が単独で、又は引用商標2と別掲3商標の両方が表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101~甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124 ほか)。 |
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、25種以上の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できる。そして、申立人商品の2017年(平成29年)以降の認知度及び出荷数等に係る証拠の提出がないものの、エナジードリンクの市場は2019年(令和元年)において成長を続けており、現在においても、同様であると推認されることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の国際商標登録出願日(2000年6月1日)前から、登録査定日(令和4年7月5日)においても、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。 |
そして、申立人商品は、その全ての容器に引用商標2が表示されていることから、引用商標2は、いずれも本件商標の国際商標登録出願日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(申立人商品、エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く知られていることがうかがえる。 |
また、引用商標2と同一視できる引用商標1は、その指定商品中にエナジードリンクの範ちゅうの商品(ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の清涼飲料等)を含むものであるから、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、少なくともエナジードリンクの需要者の間に広く知られていることがうかがえる。 |
2 商標法第4条第1項第11号について |
申立人は、本件商標は引用商標1との関係で、商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張するのでこれについて検討する。 |
(1)本件商標について |
本件商標は、別掲1のとおり、やや幅広の輪郭線で描いた正方形の中に、欧文字の「M」と思しき文字をその一部が当該正方形の右縦方向の辺と重なり合う態様で配置した図形からなるものであるところ、これよりは、直ちに特定の事物を表したものとして認識されるというべき事情は認められないから、特定の称呼及び観念は生じないというのが相当である。また、当該図形より欧文字の「M」が視認されるとしても、欧文字の1文字は、それ単独では極めて簡単で、かつ、ありふれた標章というべき部分であるから、該文字よりは、商品及び役務の出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。そうすると、本件商標からは、特定の称呼及び観念は生じないといえる。 |
(2)引用商標1について |
引用商標1は、別掲2のとおり、上端に左向きの突起を設け、下向きに幅が徐々に細くなる不規則な凸凹上の輪郭を有するかぎ裂き状の長さの異なる帯状図形を、3本縦方向に平行に配置してなる図形である。 |
そして、引用商標1は、上記1のとおり、我が国において、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、少なくともエナジードリンクの需要者の間に広く知られていることがうかがえるものであって、特定の称呼は生じないとしても、申立人商品の観念を生じる場合もあるといえる。 |
(3)本件商標と引用商標1との比較について |
本件商標と引用商標1とは、外観において、本件商標が、正方形の中に、欧文字の「M」と思しき文字をその一部が当該正方形の右縦方向の辺と重なり合う態様で配置した図形であるのに対し、引用商標は、かぎ裂き状の帯様図形を3本縦方向に平行に配置してなる図形である。 |
そうすると、本件商標と引用商標1とは、上記した構成上の明らかな差異を有するものであって、構成全体から受ける印象は顕著に異なるから、対比して観察した場合はもとより、両者を時と所を異にして離隔的に観察した場合であっても、外観において、十分に区別し得るものである。 |
また、本件商標からは、特定の称呼及び観念が生じないの対し、引用商標1からは、特定の称呼は生じないが、申立人商品の観念を生じる場合もあるから、両者は称呼において比較することはできないが、観念において異なる場合もあるといえる。 |
(4)小括 |
本件商標と引用商標1とは、上記(3)のとおり、称呼において比較することはできないものの、外観において十分に区別し得る上、観念においても、異なる場合があるといえるから、両者の外観、称呼及び観念等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標と判断するのが相当である。 |
したがって、本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから、申立に係る商品と引用商標1の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 |
3 商標法第4条第1項第15号該当性について |
申立人は、本件商標は引用商標2との関係で、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張するのでこれについて検討する。 |
(1)引用商標2の周知性について |
上記1のとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、少なくともエナジードリンクの需要者の間には広く知られていることがうかがえる。 |
(2)本件商標と引用商標2との類似性の程度 |
本件商標と引用商標2とは、上記2と同様の理由により、非類似の商標であって、別異の商標である。 |
(3)出所の混同を生ずるおそれについて |
上記(1)のとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、少なくともエナジードリンクの需要者の間に広く知られていることがうかがえるものの、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標2は別異の商標である。 |
そうすると、引用商標2に独創性があり、申立に係る商品と申立人商品とに関連性があるとしても、申立に係る商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者が申立に係る商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 |
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 |
4 むすび |
以上のとおり、本件商標の申立に係る商品についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 |
よって、結論のとおり決定する。 |
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