理 由 |
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第1 本件商標 |
本件国際登録第1500237号商標(以下「本件商標」という。)は、「REALITY ENGINE」の欧文字を書してなり、2019年3月7日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、同年9月7日に国際商標登録出願、第9類「Downloadable and recorded computer software.」を指定商品として、令和3年12月27日に登録査定され、同4年2月10日に設定登録されたものである。 |
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第2 引用商標 |
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する国際登録第1456671号商標(以下「引用商標」という。)は、「Reality Engine」の欧文字を書してなり、2018年6月25日にトルコにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、同年9月24日に国際商標登録出願、第42類「Scientific and industrial analysis and research services; engineering; engineering and architectural design services; testing services for the certification of quality and standards; computer services, namely, computer programming, computer virus protection services, computer system design, creating, maintaining and updating websites for others, computer software design, updating and rental of computer software, providing search engines for the internet, hosting websites, computer hardware consultancy, rental of computer hardware; industrial design services, other than engineering, computer and architectural design; graphic arts designing.」を指定役務として、令和3年1月29日に日本国において設定登録され、現に有効に存続しているものである。 |
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第3 登録異議申立ての理由の要点 |
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 |
1 具体的理由 |
(1)本件商標と引用商標の類否について |
本件商標及び引用商標は、外観は構成文字の全体が大文字か語頭のみ大文字かという相違はあるものの類似するといえ、称呼及び観念についてはいずれも同一と考えられることから、同一又は類似の商標といえる。 |
(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定役務の類否について |
本件商標の指定商品「Downloadable and recorded computer software.(ダウンロード可能な及び記録済みのコンピューターソフトウェア)」は、コンピューターソフトウェアであることから、第9類「電子計算機用プログラム」の下位概念である。 |
また、引用商標の指定役務「computer services, namely,(中略) computer virus protection services,(コンピューターウィルスの侵入防止用プログラムの設計・作成・保守又はそのプログラムの提供)」に含まれる「コンピューターウィルスの侵入防止用プログラムの提供」は、第42類「電子計算機用プログラムの提供」の下位概念である。「類似商品・役務審査基準」によれば、第9類「電子計算機用プログラム」は第42類「電子計算機用プログラムの提供」に類似と推定することから、本件商標の指定商品「Downloadable and recorded computer software.(ダウンロード可能な及び記録済みのコンピューターソフトウェア)」は、引用商標の指定役務「computer services, namely,(中略) computer virus protection services,(コンピューターウィルスの侵入防止用プログラムの設計・作成・保守又はそのプログラムの提供)」に類似と推定される。 |
よって、本件商標及び引用商標は、商標が同一又は類似であり、指定商品(指定役務)が類似と推定されることから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に規定する商標に該当する。 |
2 結び |
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に規定する商標に該当することから、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきである。 |
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第4 当審における取消理由の要旨 |
当審において、商標権者に対して、「本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和5年2月21日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。 |
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第5 商標権者の意見 |
商標権者は、上記第4の取消理由に対して、令和5年5月8日受付の期間延長請求書を提出するも、その後相当期間経過するも何らの意見を述べていない。 |
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第6 当審の判断 |
1 商標法第4条第1項第11号該当性について |
(1)本件商標 |
本件商標は、「REALITY ENGINE」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して「リアリティーエンジン」の称呼を生じるものであり、当該文字は、全体で知られた成語とはいえず、特定の観念を生じない造語と認められる。 |
(2)引用商標 |
引用商標は、「Reality Engine」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して「リアリティーエンジン」の称呼を生じるものであり、当該文字は、全体で知られた成語とはいえず、特定の観念を生じない造語と認められる。 |
(3)本件商標と引用商標の類否について |
本件商標と引用商標は、外観において、「REALITY ENGINE」と「Reality Engine」とはつづりを同じくするものであるから、外観上類似し、称呼において、「リアリティーエンジン」の称呼を共通にする。 |
また、本件商標と引用商標は、両者共に特定の観念を生じないものであるから、観念において比較できない。 |
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念においては比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。 |
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定役務との類否について |
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、「Downloadable and recorded computer software.」であるから、コンピューターソフトウェアに該当する商品といえる。一方、引用商標の指定役務は、上記第2のとおりであり、その指定役務中には「computer virus protection services,」を含むものである。 |
そして、引用商標の指定役務中の「computer virus protection services,」は、「コンピューターウィルス対策用のサービス」であって、当該サービスは、主として、コンピュータープログラマー等が提供する役務、すなわち、「コンピューターソフトウェアの設計・作成・保守」に限らず、電気通信回線を通じて、コンピューターソフトウェアを利用させるサービスである「コンピューターソフトウェアの提供」も含まれると解するのが相当である。 |
なお、別掲のインターネット情報によれば、「プロテクションサービス」の語は、例えば「サーバープロテクションサービス」、「PCプロテクションサービス」、「Webサイトプロテクションサービス」又は「クラウド型セキュリティプロテクションサービス」のように、実際に標的攻撃やコンピーターウィルス対策用のコンピューターソフトウェアを提供するサービスの名称の一部として使用されている。 |
以上を踏まえると、「computer virus protection services,」には、「コンピューターウィルス対策用のコンピューターソフトウェアの提供」を含むものといえる。 |
ところで、コンピューターソフトウェアは、記録媒体に記録されて店頭にて販売されたり、インターネットを通じてダウンロードにより流通されるほか、インターネット等の通信回線を通じ、サーバ上に保管されたコンピューターソフトウェアを使用させる役務として提供されることもある。 |
そして、引用商標の指定役務中「computer virus protection services,」において役務の提供の用に供される対象は、「コンピューターソフトウェア」であるから、本件商標の指定商品である「Downloadable and recorded computer software.」とは、商品の製造、販売と役務の提供が同一の事業者によって行われることが少なくないものである。 |
また、当該商品と役務の需要者は、いずれもコンピューターソフトウェアを使用する者であるから、需要者を共通にし、さらに、「Downloadable and recorded computer software.」には、コンピューターウィルス対策用のものも当然に含まれるところ、その場合には、商品と役務の用途も共通にする。 |
そうすると、「Downloadable and recorded computer software.」と「computer virus protection services,」とは、商品の製造、販売と役務の提供とが同一事業者によって行われることが少なくなく、用途及び需要者の範囲が一致するものとみるのが相当である。 |
したがって、本件商標の指定商品である第9類「Downloadable and recorded computer software.」は、引用商標の指定役務中の第42類「computer virus protection services,」と類似する。 |
(5)小括 |
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは類似の商標であり、上記(4)のとおり、本件商標の指定商品、第9類「Downloadable and recorded computer software.」と引用商標の指定役務中、第42類「computer virus protection services,」は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
2 まとめ |
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。 |
よって、結論のとおり決定する。 |
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別掲 |
(1)「大塚商会」のウェブサイトにおいて、「サーバープロテクションサービス」の見出しの下、「サーバープロテクションサービスは、標的型攻撃に有効なサーバーの脆弱性対策とウイルス対策をセットにして、大塚商会がお客様にご提供するSaaS型サービスです。従来のサービス内容に加えてサービス内容を強化した新サービス『らくらくサーバーセキュリティ』がリリースされています。詳しいサービス内容と費用は、以下の "詳しいサービスのご案内はこちら" をご確認ください。」の記載がある。 |
https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/products-page/hard-soft?seihinbunrui1=10&seihinbunrui2=1006&seihinbunrui3=001&navi=1#:~:text=%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%81%AF%E3%80%81%E6%A8%99%E7%9A%84,%E3%81%8C%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 |
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(2)「ミライネットサポートサイト」のウェブサイトにおいて、「PCプロテクションサービス」の見出しの下、「ウィルス・スパイウェア対策、不正アクセス防止にPCプロテクションサービスを提供いたします。(月額308円でPC3台まで)」の記載がある。 |
https://support.mirai.ad.jp/7so/guide/etc/pcv |
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(3)「アズジェント」のウェブサイトにおいて、「サービス情報/セキュリティーサービス」の見出しのもと、「アズジェントの「セキュリティ・プラス Webサイトプロテクションサービス」は、企業のWebサイトをそれらの脅威から守る仕組みをSaaS型で提供するサービスです。」の記載がある。 |
https://www.asgent.co.jp/services/website-protection.html |
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(4)「JMSジャパンメディアシステム株式会社」のウェブサイトにおいて、「クラウド型セキュリティプロテクションサービスビジネス(SaaS)」の見出しの下、「エフセキュアプロテクションサービスビジネスは、ノートPC、デスクトップPC、各種サーバを、ウィルス、スパイウェア、トロイの木馬、ルートキットから保護します。ソリューションには、ファイアウォール、侵入防止、アプリケーション制御、スパム制御が含まれます。セキュリティ情報は、Webベースのサービスポータルから管理することができます。サービスポータルには、コンピューターネットワークのセキュリティ状況が表示されます。PCやサーバのセキュリティは、サービスポータルから簡単に設定・監視できます。全て自動で動作するため、ユーザは最小限のITリソースで24時間のサービスを受けることができます。」の記載がある。 |
https://www.bias.jp/product/f-secure/protection-service-business/ |
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