異議の決定


異議2022-685014
The Brunel Building, 2 Canalside Walk, London W2 1DG(United Kingdom)
 商標権者  
Paymentsense Limited
東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁理士
杉村 憲司
  
東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁護士
杉村 光嗣
  
東京都千代田区霞が関3丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁理士
門田 尚也
  
東京都千代田区霞が関3丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁理士
長嶺 晴佳
  
東京都豊島区東池袋三丁目1番1号 サンシャイン60ビル57F
 商標登録異議申立人  
株式会社テンダ
東京都千代田区内神田一丁目17番9号 TCUビル8F 創光国際特許事務所内
 代理人弁理士
泉 通博
  


 国際登録第1545363号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。



 結 論
  
 国際登録第1545363号商標の指定商品及び指定役務中、第42類「software as a service (SaaS) and platform as a service (PaaS) in the field of financial payment transactions」についての商標登録を取り消す。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第1545363号商標(以下「本件商標」という。)は、「DOJO」の文字を横書きしてなり、2019年(令和元年)12月12日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2020年(令和2年)6月11日に国際商標登録出願、第42類「Designing computer software for controlling self-service terminals; software as a service (SaaS) and platform as a service (PaaS) in the field of financial payment transactions; design of information systems relating to finance; none of the aforesaid relating to security, cyber security or privacy.」並びに第9類、第16類、第35類及び第36類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和4年1月31日に登録査定され、同年4月15日に日本国において設定登録されたものである。
 
第2 登録異議申立人が引用する商標
 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由において引用する登録第5199516号商標(以下「引用商標」という。)は、「Dojo」の文字を標準文字で表してなり、平成20年7月11日に登録出願、第9類「コンピュータソフトウェア,その他の電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同21年1月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものであり、申立人が「マニュアル作成用アプリケーションソフトウェア」等に使用し、需要者の間に広く一般に知られているとするものである。
 
第3 登録異議の申立ての理由
 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
 1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標について
 本件商標は、その構成文字(「DOJO」)に相応して「ドージョー」の称呼が生じ、当該称呼から「道場」という意味を想起する可能性があると考えられる。
 一方、引用商標は、大文字と小文字の違いを除いて本件商標と同一の欧文字(「Dojo」)により構成され、「ドージョー」の称呼が生じ、同様に「道場」という意味を想起する可能性があると考えられる。
 したがって、本件商標と引用商標は、外観が類似し、称呼及び観念が同一の商標である。
(2)指定商品及び指定役務の類否について
 ア 本件商標の指定商品及び指定役務中、第42類「software as a service (SaaS) and platform as a service (PaaS) in the field of financial payment transactions」(以下「申立役務」という場合がある。参考訳「金融決済取引の分野におけるオンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)及びコンピュータソフトウェアプラットフォームの提供(PaaS)」。)は、第42類「電子計算機用プログラムの提供」の範疇に属する役務である。
 そして、申立役務は、参考訳において、「アプリケーションソフトウェアの提供」、「コンピュータソフトウェアプラットフォームの提供」と表現されているところ、これらが「電子計算機用プログラムの提供」であることは明らかである。
 イ 引用商標の指定商品中、第9類「コンピュータソフトウェア」(以下「引用商品」という場合がある。)は、「電子計算機用プログラム」の範疇に属する商品である。
 ウ 「コンピュータソフトウェア」(引用商品)は、ダウンロード方法やインターネット等の通信回線を通じてオンラインで提供されることが一般的であるから、申立役務と引用商品とは、商品の販売と役務の提供が同一事業者によって行われることが多いといえる。
 また、商品の販売場所と役務の提供場所が同一であり、取引者、需要者も共通するものであるから、同一の商標を付した場合、商品又は役務の出所に関し誤認混同が生じるおそれがある。
(3)まとめ
 本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、本件商標の申立役務は、引用商品に類似する。
 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
 2 商標法第4条第1項第15号について
 申立人は、平成20年(2008年)4月にマニュアル作成用アプリケーションソフトウェアである「Dojo」(以下「申立人商品」という。)の提供を開始して以来、申立人商品を多くの需要者に提供し、累計2600社以上が導入している。
 申立人商品は、金融決済取引の分野におけるマニュアルの作成にも使用できるものであり、現に銀行、証券会社等の金融機関に提供されているから、その取引者、需要者は、本件商標と引用商標とを誤認混同するおそれがあるといえる。
 そして、申立人商品は、「コンピュータソフトウェアプラットフォーム」のマニュアルの作成にも使用可能であり、情報通信業の多数の企業に導入されているから、その取引者、需要者も、本件商標と引用商標とを誤認混同するおそれがあるといえる。
 また、申立人商品は、長年の販売により、ウェプサイト、雑誌、マニュアル等多数の刊行物に掲載され、需要者によく知られたソフトウェア商品となっている(甲7)。
 そうすると、本件商標の申立役務は、申立人商品と同一の需要者層となるため、本件商標に接した需要者は、申立人商品を想起し、誤認混同が生じるおそれが高いといえる。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
 
第4 当審における取消理由
 当審において、商標権者に対して、「本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第42類「software as a service (SaaS) and platform as a service (PaaS) in the field of financial payment transactions」について、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号に該当する。」旨の取消理由を令和5年5月15日付けで通知した。
 
第5 商標権者の意見
 上記第4の取消理由の通知に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。
 
第6 当審の判断
 1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
 本件商標は、「DOJO」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して「ドージョー」の称呼を生じるものであり、当該文字は知られた成語とはいえず、特定の観念を生じない造語と認められる。
(2)引用商標について
 引用商標は、「Dojo」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して「ドージョー」の称呼を生じるものであり、当該文字は知られた成語とはいえず、特定の観念を生じない造語と認められる。
(3)本件商標と引用商標の類否について
 本件商標と引用商標は、「DOJO」と「Dojo」の綴り字を同じくするものであるから、外観上類似し、「ドージョー」の称呼を共通にするものである。
 また、両商標は、ともに特定の観念を生じないものであるから、観念上比較することができない。
 そうすると、本件商標と引用商標とは、観念においては比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのある類似の商標とみるのが相当である。
(4)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否について
 本件商標の指定商品及び指定役務中、第42類の指定役務には、「software as a service (SaaS) and platform as a service (PaaS) in the field of financial payment transactions」(申立役務)が含まれ、これは、金融決済取引の分野において用いられる「オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)及びコンピュータソフトウェアプラットフォームの提供(PaaS)」であり、当該サービスは、主として、コンピュータプログラマー等が提供する役務である。そして、当該役務は、電気通信回線を通じて、コンピュータソフトウェアを利用させるサービスであると解するのが相当である。
 一方、引用商標の指定商品は「コンピュータソフトウェア」(引用商品)を含むものである。
 ところで、コンピュータソフトウェアは、記録媒体に記録されて店頭にて販売されたり、インターネットを通じたダウンロードにより流通されるほか、インターネット等の通信回線を通じ、サーバ上に保管されたコンピュータソフトウェアを使用させる役務として提供されることもある。
 そして、申立役務において提供される内容は「コンピュータソフトウェア」であるから、引用商品である「コンピュータソフトウェア」とは、商品の製造、販売と役務の提供が同一の事業者によって行われることが少なくないものと考えられる。
 また、申立役務と引用商品の需要者は、いずれもコンピュータソフトウェアを使用する者であるから、需要者を共通にし、さらに、引用商品には、金融決済取引の分野において用いられるものも当然に含まれるところ、その場合には、商品と役務の用途も共通する。
 そうすると、申立役務と引用商品とは、商品の製造、販売と役務の提供とが同一事業者によって行われることが少なくなく、用途及び需要者の範囲が一致するものとみるのが相当である。
 したがって、申立役務は、引用商品と類似するものである。
(5)小括
 本件商標と引用商標とは類似の商標であり、本件商標の指定商品及び指定役務中、第42類「software as a service (SaaS) and platform as a service (PaaS) in the field of financial payment transactions」は、引用商標の指定商品中、第9類「コンピュータソフトウェア」と類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
 2 むすび
 以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、申立役務について、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は同条同項の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、その他の登録異議の申立ての理由について論及するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、結論掲記の指定役務について、その登録を取り消すべきである。
 よって、結論のとおり決定する。
 
 


        令和 5年 9月 5日

     審判長  特許庁審判官 旦 克昌
          特許庁審判官 馬場 秀敏
          特許庁審判官 山根 まり子

 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)        本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
  
審判長 旦 克昌           
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔決定分類〕T1652.261-Z  (W42)
            262
            263
            264

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 5年 9月 5日  審判書記官  齊藤 葉月