理 由 |
|
第1 本件商標 |
本件国際登録第1193724号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり「Viridian」の欧文字を横書きしてなり、2013年7月19日に国際商標登録出願、第5類「Nutritional supplements containing vitamins, minerals, trace elements, coenzymes, amino acids or nutritional seed oils; herbal remedies for human or animal consumption and for application to the skin; probiotic bacterial formulations as nutritional supplements; digestive aids; preparations consisting of mixtures of vitamins and minerals for use as additives for foods for human consumption; food supplements; vitamin supplements; health food supplements made principally of vitamins and/or minerals; food supplements for human consumption.」並びに第29類及び第30類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年7月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 |
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年3月30日である。 |
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成31年(2019年)3月30日ないし令和4年(2022年)3月29日である(以下「要証期間」という場合がある。)。 |
|
第2 請求人の主張 |
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 |
1 請求の理由 |
本件商標は、その指定商品中、第5類「herbal remedies for human or animal consumption and for application to the skin; digestive aids; preparations consisting of mixtures of vitamins and minerals for use as additives for foods for human consumption」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。 |
2 答弁に対する弁駁 |
(1)請求に係る指定商品中の「herbal remedies for human or animal consumption and for application to the skin;」(以下「請求商品1」という。)の使用に係る、商品名を「Organic Milk Thistle 400mg」とする商品(以下「使用商品1」という。)の本件商標権者のショップでの販売について |
ア 被請求人がインターネット上の本件商標権者のショップ、(以下「商標権者ショップ」という。)であると主張する画面(乙5~乙13)が、要証期間内の商標権者ショップの画面であることは証明されていない。ウェブショッピングサイトは更新されることが一般的であることから、商標権者ショップの画面に係る書証(乙5~乙13)は、印刷日である2022年6月23日または2022年6月24日頃の商標権者ショップ画面を示すにとどまり、要証期間内の商標権者のショップ画面を示すものではないため、当該画面が要証期間内の商標権者ショップの画面と同じであるかは疑義がある。 |
イ 仮に、被請求人が商標権者ショップであると主張する画面(乙5~乙13)が、要証期間内のものと同一ないし実質的に同内容であることが証明されたとしても、商標権者ショップ(乙5~乙13)は、その構成全体が英語からなり、日本語による記載がないから、本件商標権者の所在地(英国)に開設されたウェブサイトとみるのが相当であって、日本から使用商品1の注文ができたとしても(乙17)、それは、インターネットの性質上、世界各地からアクセスが可能であることによるものにすぎず、日本国内において商業活動をしているとは評価できず、日本国内での本件商標の使用行為とは認めることはできない(取消2009-300037)。 |
したがって、本件商標は、本件商標権者により、日本国内において、要証期間内に、請求商品1について使用されたことにはならない。 |
ウ また、商標法第50条第1項における商標の使用とは、日本国内における商標の適法な使用を意味するところ、本件商標の適法な使用については以下のように疑義がある。 |
請求商品1は医薬品又は医薬部外品に該当するところ、外国において日本に輸出される医薬品又は医薬部外品を製造しようとする者が、請求商品1を日本に輸出するに際しては、医薬品医療機器等法第13条の3による認定を受けていなければ、違法な輸出となる。 |
使用商品1が請求商品1に相当するのであれば、使用商品1は医薬品又は医薬部外品に該当することになり、本件商標権者は、日本への輸出に際して、医薬品医療機器等法第13条の3による認定を受ける必要がある。 |
したがって、使用商品1に関して、医薬品医療機器等法第13条の3による認定を受けていることの証明がなされない限り、本件商標権者による使用商品1の日本への輸出は適法な輸出とはいえず、日本国内における使用商品1に付された本件商標の使用は適法なものとはいえない。 |
エ 以上より、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、本件商標権者により、請求商品1について使用されていたとは認められない。 |
(2)請求に係る指定商品中の「digestive aids;」(以下「請求商品2」という。)の使用に係る、商品名を「Synerbio Daily」とする商品(以下「使用商品2」という。)の商標権者ショップでの販売について |
上記(1)アと同様に商標権者ショップの画面(乙5~乙13)が要証期間内のものであることは証明されていない。 |
また、上記(1)イのとおり、商標権者ショップ(乙5~乙13)は、その構成全体が英語からなり、日本語による記載がないから、日本国内での本件登録商標の使用行為とは認めることはできない。 |
そして、消化補助剤の一種である請求商品2は医薬品又は医薬部外品に該当するところ、上記(1)ウと同様に、使用商品2に関して、医薬品医療機器等法第13条の3による認定を受けていることの証明がなされない限り、本件商標権者による使用商品2の日本への輸出は適法な輸出とはいえず、日本国内における使用商品2に付された本件商標の使用は適法なものとはいえない。 |
以上より、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、本件商標権者により、請求商品2について使用されたとは認められない。 |
|
第3 被請求人の答弁 |
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書、審尋に対する回答書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第55号証を提出した。 |
1 請求商品1についての本件商標の使用について |
(1)請求商品1の内容 |
本件商標の国際商標公報(乙1)において、請求商品1の参考訳は「人用又は動物用並びに皮膚への塗布用の薬草治療薬」と記載されているが、請求商品1の商品名(herbal remedies for human or animal consumption and for application to the skin;)より、「人又は動物のための飲用及び皮膚塗布用薬草治療薬」の訳が正しい。 |
以下、この前提に沿って、本件商標が「人のための飲用薬草治療薬」に使用されている事実を示す。 |
(2)請求商品1に係る本件商標の日本国内における使用 |
ア 本件商標権者は、インターネット上にショッピングサイトを開設・運営し(乙2、乙5、乙6)当該ショッピングサイト(商標権者ショップ)において、「薬草製剤」である使用商品1を販売しており、日本の一般需要者も、商標権者ショップにアクセスすることにより、使用商品1を購入することができる(乙5~乙13)。 |
なお、商標権者ショップは、日本の消費者が、本件商標権者の販売に係る商品を購入できることを示すものであって、商標権者ショップのサイトのみによって、本件商標の使用を立証しているものではない。 |
イ 使用商品1(オーガニックオオアザミ製剤)の白地帯部の上方に、ややデザイン化された欧文字による「viridian」(別掲2、以下「使用商標1」という。)が、商標的な態様により直接付されている(商標法第2条第3項第1号。乙10~乙14)。 |
本件商標は、欧文字の「Viridian」をややデザイン化した態様よりなるが(乙1)、これと使用商標1との間には、語頭の「V」(大文字)と「v」(小文字)の相違、各文字の字間の相違、各「i」の文字の上の「点」が「黒」で表示されているか、やや青みがかって表示されているかの相違がある。しかし、本件登標からも使用商標1からも、同じく「ヴィリディアン」の称呼が自然に生じるし、そもそも両商標は、同一の文字構成から成るものである。したがって、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標に相当する(商標法第38条第5項)。 |
以上よりすれば、本件商標権者が、日本国内において購入することが可能な「薬草製剤」(請求商品1)について、本件商標を、商標的な態様により使用していることは明らかである。 |
ウ 使用商品1の成分及び薬効 |
使用商品1の商品名中の「Milk Thistle」とは、「オオアザミ」の和名を持つ「薬草」である(乙4)。 |
使用商品1のボトルを左側から撮影した写真(乙15)のラベルには、使用商品1に含まれる成分が表示されている。当該ラベルから、当該ボトルの内容物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなるカプセルに入った「オーガニックオオアザミ種子粉末」のみであることがわかる。 |
「オオアザミ」の果実と葉は、伝統的に肝臓と胆嚢の疾病に服用されていること等が記載されている(乙4)。したがって、オオアザミが「人のための飲用薬草治療薬」に該当し、使用商品1が請求商品1に相当するものであることも明らかである。 |
なお、このラベル中にある「本品はフードサプリメントです」との記載が、使用商品1の薬効性を否定するものでない。 |
また、使用商品1のボトルを右側から撮影した写真(乙16)にある、ボトルのラベルの中央やや下には、本件商標権者の住所及び商標権者ショップのURLの表示があり、使用商品1の製造販売が、本件商標権者によって行われていることがわかる。 |
エ 使用商品1の日本国内における流通 |
本件商標権者が日本に住所を有する顧客に向けて発行した2021年1月19日付のインボイスの写し(乙17)の左上の記載、また、インボイス右上には、本件商標と社会通念上同一の商標である「VIRIDIAN」の欧文字(別掲3、以下「使用商標2」という。)の表示、インボイス中央部よりやや上に表示されている「Customer Name & address」(顧客氏名及び住所)の欄の住所及び商品明細書欄の記載から、このインボイスにより、本件商標権者が本件商標と社会通念上同一の使用商標1を、請求商品1に相応する薬草製剤に付し、又は使用商標2をその取引書類に表示しつつ、要証期間に、日本国、兵庫県あわじ市の顧客に向け販売したことが立証されたことになる。 |
また、当該インボイスにおける使用商標2の表示により、これも本件商標と社会通念上同一の商標の「使用」に該当する(商標法第2条第3項第8号)。 |
(3)小括 |
以上述べたとおり、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、本件商標権者により、請求商品1について使用されている。 |
2 請求商品2についての本件商標の使用について |
(1)請求商品2の内容 |
請求商品2である「digestive aids;」の商品名中の「aids」の単数形「aid」には直接「薬剤」を指す意味がなく、広く「助けとなるもの」の意味を持つにすぎない(乙29)。 |
また「digestive」は「消化の、消化を助ける」の意味だから(乙30)、「digestive aid(s)」は全体として「消化を助けるもの」の意味合いを持つことになる。よってこの概念の商品には「消化を助けるもの」が一般的に含まれると解すべきである。そして「aid(s)」の語に関しては、例えば、国際分類第5類の「dietary fiber to aid digestion」に「消化補助用食物繊維」の日本語訳を付し、「サプリメント」の類似群コード「32F15」を付しているような例もあるし(乙31)、「消化を助ける」ための「消化補助」や「消化促進」の効果がある商品が「サプリメント」として流通している事実もある(乙32~乙39)。 |
そうすると、これらの上位概念と考えられる「digestive aids」(消化を助けるもの)も「サプリメント」たり得ることになるから、請求商品2を「薬剤」であると限定的に解する必要は無い。 |
(2)請求商品2に係る本件商標の日本国内における使用 |
ア 本件商標権者は「消化補助剤」として使用商品2を商標権者ショップで販売しており(乙18、乙19)、使用商品1と同様に我が国の需要者も使用商品2を購入することができる。 |
そして使用商品2は、請求商品2に該当する(乙22~乙27)。 |
使用商品1と同様に、使用商標1が、使用商品2のボトルの白地帯部に付されている(乙18~乙20)。 |
使用商品1と同様に、使用商品2のボトル右側には当該商品の販売者の住所の一部及び名称が表示されており、これらは本件商標権者のものと一致している(乙21)。 |
そして本件商標権者が発行した2019年5月22日付のインボイスの写し(乙28)は、上記1(1)エと同様に、本件商標権者が、要証期間に、日本国、横浜市旭区に住所を有する顧客に対し、使用商品2を販売したことを示している。 |
イ 使用商品2のボトルを左側から接写した写真(乙22)には、使用商品2に含まれる成分が示されている。 |
使用商品2は、その成分に整腸作用や感染予防などの作用があること(乙23~乙27)より「消化補助剤」であって、請求商品2に相当する。 |
(3)小括 |
以上述べたとおり、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、本件商標権者により、請求商品2について使用されている。 |
3 請求に係る指定商品中、第5類「preparations consisting of mixtures of vitamins and minerals for use as additives for foods for human consumption;」(以下「請求商品3」という。)についての本件商標の使用について |
(1)請求商品3の内容 |
本件商標の国際商標公報(乙1)において、請求商品3の参考訳は「ビタミン及びミネラルの混合物からなる用剤(人用の食品添加剤として使用するもの)」と記載されており「Preparations」を「用剤」と訳しているが、当該「Preparations」は「pharmaceutical preparations」ではないため、医療用薬剤としての内用剤に限られるものではない。 |
「Preparation」は「調製品」を示す単語であり(乙40)、「デジタル大辞泉」(小学館)のウェブサイト及び別のウェブサイトでは、「調整」及び「調製品」という言葉が「複数の原料を混合した食品」、「食品原料をブレンドした商品」等を示すものであるとされ使用されている(乙41~乙46)。そうすると、請求商品3は「複数のビタミン及びミネラル成分を混合した調製品」と同義の商品を指すこととなり、請求商品3を薬剤であると限定的に解する必要はないことになる。すなわち「複数のビタミン及びミネラルを混合した調製品」は、我が国においては通常「サプリメント」として流通しているが(乙47、乙48)、請求に係る指定商品3が「サプリメント」の概念に属するか否かに拘わらず、本件商標権者が、請求商品3について本件商標を使用していることに変わりはない。 |
なお、請求商品3中の「as additives for foods for human consumption」(人用の食品添加剤としての)の記載は、ビタミンとミネラルを混合してなる調製品の一用途として「食品添加剤としても用いられること」を示すに過ぎず、請求商品3が商品としての「食品添加剤」に限定されるわけではない。 |
(2)請求商品3に係る本件商標の日本国内における使用 |
ア 本件商標権者は、日本国内の在住者に対して「ビタミンとミネラルを混合して成る調製品」である、商品名を「HighFive Multivitamin & Mineral Fonnula」とする商品(以下「使用商品3」という。)を販売している。 |
使用商品3を接写した写真(乙49)には、白地帯部の上方に、使用商標1が、商標的な態様により直接付されている(商標法第2条第3項第1号)。 |
イ 使用商品3のボトルを左側から接写した写真(乙50、乙51)には、使用商品3に含まれる成分が表示されているところ、当該表示から使用商品3は、複数のビタミン及びヨウ素、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、カリウム、鉄、クロム等のミネラル(乙52)を主成分として含む「ビタミンとミネラルを混合して成る調製品」であることが明らかである。 |
ウ 使用商品3に係るインボイスについて |
本件商標権者が日本に住所を有する顧客に向けて発行した2021年4月26日付け、2021年10月28日付け及び2022年2月16日付けのインボイスの写し(乙53~乙55)の左上の記載より、当該インボイスの作成者は本件商標権者であることがわかる。また、インボイス右上には使用商標2が表示されており、インボイス中央部よりやや上に表示されている「Customer Name & Address」(顧客氏名及び住所)の欄の住所及び商品明細書欄の記載から、このインボイスにより本件商標権者が要証期間内に、日本国、横浜市に住所を有する顧客に対し、請求商品3である使用商品3を販売していることが明らかである。 |
また、当該インボイス右上の使用商標2の表示により、これも本件商標と社会通念上同一の商標の「使用」に該当する(商標法第2条第3項第8号)。 |
(3)小括 |
以上のとおり、本件商標権者は、要証期間内に日本国内で、本件登録商標と社会通念上同一の商標が付された請求商品3である使用商品3を販売した。 |
4 まとめ |
以上より、要証期間に、日本国内において、本件商標権者が、請求に係る商品について、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標(商標法第38条第5項)を使用(商標法第2条第3項第1号、同項第2号並びに同項第8号)したことは明らかである。 |
|
第4 当審の判断 |
1 本件商標の請求に係る指定商品の使用について |
被請求人は、本件商標権者が、要証期間に、本件商標(社会通念上同一のものを含む、以下同じ。)を請求に係る指定商品に使用し、日本に住所を有する顧客に向けて商品を販売した旨及び当該発売に係るインボイスに本件商標を付して顧客に頒布した旨を主張する。 |
そこで、被請求人が請求に係る指定商品であると主張する使用商品1ないし使用商品3(以下、使用商品1ないし使用商品3を「使用商品」という。)が請求に係る指定商品の範ちゅうにあるのかについて検討する。 |
(1)被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。 |
ア 被請求人が本件商標権者が請求商品1に使用していると主張する、商品名を「Organic Milk Thistle 400mg -30 Veg Caps」とする商品(使用商品1)の包装瓶に貼付けられたラベルの中央上部には「viridian」の文字(使用商標1)が表示され、左側には「Directions: As a food supplement, take one capsule daily with food, or as directed by your healthcare practitioner.」(飲み方:フードサプリメントとして、食事とともに1日1錠を摂取してください。又は医療従事者の指示に従って、摂取してください。)の文字が、また同ラベルの右側には「This is a food supplement.」の文字が記載されている(乙14~乙16)。 |
イ 被請求人が本件商標権者が請求商品2に使用していると主張する、商品名を「Synerbio Daily-150 Veg Caps」とする商品(使用商品2)の包装瓶に貼付けられたラベルの中央には、「viridian」の文字(使用商標1)が表示され、左側には「Directions: As a food supplement, take one to three capsule daily with food, or as directed by your healthcare practitioner.」(飲み方:フードサプリメントとして、食事とともに1日1から3カプセルを摂取してください。又は医師の指示に従って、摂取してください。)の文字が、また同ラベルの右側には「This is a food supplement.」の文字が記載されている(乙20~乙22) |
ウ 被請求人が本件商標権者が請求商品3に使用していると主張する、商品名を「High Five Multivitamin & Mineral Formula」とする商品(使用商品3)の包装瓶に貼り付けられたラベルの中央には、「viridian」の文字(使用商標1)が表示され、左側には「Directions: As a food supplement, take one capsule daily with food, or as directed by your healthcare practitioner.」(飲み方:フードサプリメントとして、食事とともに1日1カプセルを摂取してください。又は医師の指示に従って、摂取してください。)の文字が表示されている(乙49~乙50)。 |
エ 本件商標権者は、使用商品1を2021年1月19日付けで、兵庫県南あわじ市の顧客に、使用商品2を2019年5月22日付けで、横浜市旭区の顧客に、使用商品3を2021年4月26日付け、同年10月28日付け及び2022年2月16日付けで横浜市の顧客にそれぞれ譲渡している(乙17、乙28、乙53~乙55)。 |
また、当該譲渡に係るインボイスには「VIRIDIAN」の文字(使用商標2)が表示されている(乙17、乙28、乙53~乙55)。 |
オ 英和辞典に、「digestive」の見出しの下、「a」(形容詞)として「消化の;消化を助ける,消化力のある」及び「n」(名詞)として「消化薬(剤)」の記載がある(乙30)。 |
カ 英和辞典に、「aid」の見出しの下「n」(名詞)として「助けとなるもの[人];協力者」等の記載がある(乙29)。 |
(2)判断 |
ア 使用商品1は、その包装瓶のラベルに表示された「Directions: As a food supplement, take one capsule daily with food, or as directed by your healthcare practitioner.」及び「This is a food supplement.」の文字から「サプリメント」の範ちゅうの商品であると認められる。 |
他方、請求人が使用商品1の使用に係る商品と主張する請求商品1は「herbal remedies for human or animal consumption and for application to the skin;」であるところ、商品名中の「herbal remedies」の文字は「薬草治療薬」の意味を有すことから、請求商品1は、「薬剤」の範ちゅうの商品であること明らかである。 |
そうすると、使用商品1と請求商品1とは明らかに異なる商品であって、使用商品1が請求商品1の範ちゅうの商品と認められない。 |
イ 使用商品2は、その包装瓶のラベルに表示された「Directions: As a food supplement, take one to three capsule daily with food, or as directed by your healthcare practitioner.」及び「This is a food supplement.」の文字から「サプリメント」の範ちゅうの商品であると認められる。 |
他方、請求人が使用商品2の使用に係る商品と主張する請求商品2は「digestive aids;」であるところ、当該文字は「消化剤」の意味を有する語としてウェブサイト上の辞書に掲載されている(職権調査:株式会社アルク英辞郎 on the WEB https://eow.alc.co.jp/search?q=digestive+aid)。 |
そうすると、請求商品2の文字中の「digestive」が形容詞の「消化の;消化を助ける,消化力のある」の意味を有し、当該商品の直訳が「消化を助けるもの」であるとしても、当該「消化を助けるもの」は、「digestive」の名詞の意味(消化薬(剤))及び上記ウェブサイトの辞書から「消化薬(剤)」の範ちゅうの商品であるとするのが相当であって、これは「薬剤」に含まれる商品である。 |
そうすると、使用商品2と請求商品2とは明らかに異なる商品であって、使用商品2が請求商品2の範ちゅうの商品と認められない。 |
これについて、被請求人は、「digestive aids」は「消化を助けるもの」であり、これは「サプリメント」たり得ることになるから、「digestive aids」を「薬剤」であると限定的に解する必要はない旨主張する。 |
しかながら、上記のとおり「digestive aids」は薬剤に含まれる商品と認められる。また、被請求人は「digestive aids」とする商品がサプリメントとして取引されているとする客観的な証拠を提出していない。 |
したがって、被請求人の主張は採用できない。 |
ウ 使用商品3は、その包装瓶のラベルに表示された「Directions: As a food supplement, take one to three capsule daily with food, or as directed by your healthcare practitioner.」の文字から「サプリメント」の範ちゅうの商品であって、当該商品が一般需要者に譲渡(販売)されていることから、これ自体が製品であると認められる。 |
他方、請求人が使用商品3の使用に係る商品と主張する請求商品3は「preparations consisting of mixtures of vitamins and minerals for use as additives for foods for human consumption;」であるところ、その商品名を構成する「as additives for foods for human consumption」の文字から、請求商品3は「人用の食品添加剤として使用するものに限られる」ものであって、原材料としての食品添加剤(調整品)であると解される。 |
そうすると、使用商品3と請求商品3とは製品としてのサプリメントと原材料としての食品添加剤であって、明らかに異なる商品であるから、使用商品3が請求商品3の範ちゅうの商品と認められない。 |
これについて、被請求人は「as additives for foods for human consumption」(人用の食品添加剤としての)の記載は、ビタミンとミネラルを混合してなる調製品の一用途として「食品添加剤としても用いられること」を示すに過ぎず、請求商品3が商品としての「食品添加剤」に限定されるわけではない旨主張しているが、商品名を構成する「as」の文字は「[役割・資格・用途などを表す修飾語を導いて]・・・として(の)」等の意味を有する形容詞等の英単語であって(職権調査:ジーニアス英和辞典第5版(株式会社大修館書店))「2つの並べられた物・事が等価の関係にあることを示す」文字であるから(職権調査:Weblio英和・和英辞典 https://ejje.weblio.jp/content/as)、商品名の前半の「preparations consisting of mixtures of vitamins and minerals for use」は後半の「additives for foods for human consumption」と同じものであり、請求商品3は、「人用の食品添加剤として使用するもの」のみと解されるから、被請求人の主張は採用できない。 |
エ 以上より、使用商品が要証期間に日本国内の需要者に譲渡されているとしても、使用商品はいずれも請求に係る商品の範ちゅうの商品であるとはいえないから、本件商標権者は本件商標を請求に係る指定商品に使用したものとは認められない。 |
2 まとめ |
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)を請求に係る指定商品について使用をしていることを証明したものと認めることはできない。 |
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について要証期間に使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。 |
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものである。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
|