理 由 |
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1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第5類、第29類、第30類、第31類及び第40類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2020年1月28日にスイス連邦においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2020年(令和2年)3月2日に国際商標登録出願されたものである。 |
本願は、2021年(令和3年)8月11日付けで暫定的拒絶通報が通知され、同年11月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同4年3月30日付けで拒絶査定がされたものである。 |
これに対して、令和4年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 |
本願の指定商品及び指定役務については、原審における上記手続補正書にて、第5類が削除され、第29類「Meat, fish, poultry and game; meat extracts; preserved, frozen, dried and cooked fruits and vegetables; jellies, jams, compotes; eggs; milk, cheese, butter, yogurt and other dairy products; oils and fats for food; all the aforesaid goods are of Swiss origin.」、第30類「Coffee, tea, cocoa and coffee substitutes; rice, pasta and noodles; tapioca and sago; flour and preparations made from cereals; bread, pastry and confectionery products; chocolate; ice cream, sherbets and other edible ices; sugar, honey, golden syrup; yeast, baking powder; salt, seasonings, spices, preserved herbs; vinegar, sauces and other condiments; ice for refreshment; all the aforesaid goods are of Swiss origin.」、第31類「Barley; grains [cereals]; plant seeds; natural flowers; plants; seedlings; trees; fresh vegetables; fresh fruits; unprocessed and raw grains and seeds; fresh fruits and vegetables, fresh aromatic herbs; natural plants and flowers; bulbs, seedlings and seeds; live animals; food products and beverages for animals; malt; all the aforesaid goods are of Swiss origin.」及び第40類「Cloth treating; leather staining; metal treating; water treating; recycling of trash and waste; air purification and water treatment; printing services; all the aforesaid services are of Swiss origin.」に補正されたものである。 |
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、その構成中にスイス連邦の国旗(以下「スイス国旗」という。)と同一又は類似の図形を顕著に有してなるものであって、同国の国旗と同一又は類似の商標であるから、商標法第4条第1項第1号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
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3 当審の判断 |
(1)商標法第4条第1項第1号該当性について |
本願商標は、別掲1のとおり、山脈を描いたシルエット図形(以下「上部図形部分」という。)と、その下に、水平方向に表した直線を介して、「nutri」の欧文字(以下「文字部分」という。)と、その右側に、上辺及び下辺が波形状に描かれた赤色の略四角形の中央に白色の幅広の十字を有する図形(以下「下部図形部分」という。)を配した構成からなるものである。 |
そして、本願商標を構成する上部図形部分、直線、文字部分及び下部図形部分は、構成態様が異なること、重なり合うことなく間隔を設けて配置されていること、赤色と黒色とで色彩が相違することなどから、それぞれが視覚上、明確に分離して看取されるものである。 |
また、本願商標の構成中、下部図形部分は、他の構成部分がいずれも黒色で表されている中、唯一赤色で表されているため、特に看者の目を引く部分であるといえる。 |
そうすると、本願商標の構成中、下部図形部分は、他の構成部分から独立して、認識され、把握されるものとみるのが相当である。 |
そして、下部図形部分は、赤色の略四角形の上辺及び下辺が波状に描かれており、その中央に表された白色の幅広の十字も、略四角形の波状に合わせたように描かれている。 |
してみると、下部図形部分は、別掲2に示すスイス国旗が風になびいている様を表したものと認識され、把握されるとみるのが相当である。 |
以上のとおり、本願商標の構成中、特に看者の目を引き、独立して認識、把握される下部図形部分が、スイス国旗が風になびいている様を表したものと認識、把握されるものであるから、本願商標は、スイス国旗と類似の商標といわなければならない。 |
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第1号に該当する。 |
(2)請求人の主張について |
ア 請求人は、本願商標の下部図形部分は、全体に占める面積比が小さく、また、折った屏風形状であり、白十字部分も歪んでいるから、赤い図形部分の形状もスイス国旗とは全くその構成を異にする旨主張する。 |
しかしながら、上記(1)のとおり、下部図形部分は、本願商標において、特に看者の目を引き、独立して認識、把握されるものであり、スイス国旗が風になびいている様を表したものと認識、把握されるものであるから、本願商標は、スイス国旗と類似の商標というべきである。 |
イ 請求人は、スイス連邦特許庁の書簡の写しを提出し、日本特許庁が、スイス原産・由来である指定商品・役務について、本願商標を登録することを、スイス国が認めている旨主張する。 |
しかしながら、本願商標が商標法第4条第1項第1号に該当することは上記(1)のとおりであるから、たとえ、請求人の主張する上記事情があるとしても、そのことによって、上記(1)の判断が左右されるものではない。 |
ウ 請求人は、外国の国旗を含む構成からなる商標の過去の審決、判決例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨主張しているが、請求人の挙げる過去の審決、判決例は、本願商標とは、構成文字や構成態様等が異なるものであって、かつ、具体的事案の判断においては、過去の審決例等に拘束されることなく、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別的に判断されるべきであるから、これらの事例の存在によって、上記(1)の認定判断が左右されるものではない。 |
エ したがって、上記請求人の主張は、いずれも採用することができない。 |
(3)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第1号に該当するから、これを登録することはできない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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