理 由 |
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1 手続の経緯 |
本願は、2020年(令和2年)10月21日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 |
2021年(令和3年)11月 2日付け:暫定拒絶通報 |
2022年(令和4年) 3月18日 :意見書及び手続補正書の提出 |
2022年(令和4年) 7月27日付け:拒絶査定 |
2022年(令和4年)11月10日 :審判請求書の提出 |
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2 本願商標 |
本願商標は、「MONDRIAN」の欧文字を横書きしてなり、第36類に属する日本国を指定する国際登録において指定された役務を指定役務として国際商標登録出願されたものであり、その後、指定役務については、前記1の原審における手続補正書において、第36類「Investment management services; asset management services.」と補正されたものである。 |
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3 原査定の拒絶の理由(要旨) |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第6332967号商標は、「MONDRIAN」の文字を標準文字で表してなり、令和元年12月20登録出願、第36類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、同2年12月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 |
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4 当審の判断 |
(1)本願商標 |
本願商標は、前記2のとおり、「MONDRIAN」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、「オランダの画家(1872-1944)」を意味(「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社大修館)する英単語として英和辞典に載録があるものも散見されるが、我が国における英語の普及の程度に鑑みても、平易で一般に広く慣れ親しまれたものであるとはまではいい難く、特定の意味合いを理解するということはできないから、これより特定の観念は生じないと判断するのが相当である。 |
そうすると、本願商標からは、その構成文字に相応して「モンドリアン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 |
(2)引用商標 |
引用商標は、前記3のとおり、「MONDRIAN」の文字を標準文字で表してなるところ、上記(1)と同様に、その構成文字に相応して、「モンドリアン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 |
(3)本願商標と引用商標との類否 |
本願商標と引用商標との類否について検討するに、本願商標と引用商標は、それぞれ前記(1)及び(2)のとおりであるところ、外観における「MONDRIAN」の文字構成及び「モンドリアン」の称呼を同じくし、観念においては共に特定の観念を生じないものであることから比較することができないものである。 |
そうすると、本願商標と引用商標とは、観念においては比較できないとしても、外観における文字構成及び称呼を同じくするものであるから、本願商標と引用商標とは互いに相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。 |
なお、請求人は、この点について何ら主張していない。 |
(4)本願の指定役務と引用商標の指定役務との類否 |
本願の指定役務中「investment management services;」と引用商標の指定役務中「不動産投資信託に関する管理,ホテルコンドミニアムに関する金融資産の管理,不動産に関する財務管理,不動産に関する財政投資」とは同一又は類似の役務であり、また、本願の指定役務中「asset management services;」と引用商標の指定役務は同一又は類似の役務である。 |
(5)小括 |
以上より、本願商標は引用商標と類似する商標であり、かつ、引用商標の指定役務には、本願の指定役務と同一又は類似の役務を含むものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
(6)請求人の主張について |
請求人は、本願の指定役務中「asset management services.」について、金融業界におけるアセットマネジメント業務は、投資運用業を指すインベストメントマネジメントを包含する概念であり、請求人が権利範囲としたいサービスは、金融業界における「投資運用業」、「投資助言代理業」及び「投資信託」といった金融商品を取り扱う業務であり、金融業界におけるアセットマネジメント業務と不動産業界におけるアセットマネジメント業務とは、取り扱う資産の範囲が異なり、事業者を規制する法律(金融商品取引法及び宅地建物取引業法)が異なることから、金融業界でアセットマネジメントを行う事業体と不動産のみのアセットマネジメントを行う事業体とにおいて同一の名称が使用されていたとしても、 事業体が取り扱える資産の対象が異なり、登録認可の有無も容易であるため、需要者がその出所の誤認混同を生ずるおそれはない旨主張する。 |
しかしながら、商標の類否判断に当たり考慮される取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではない旨判示されているところ(最高裁昭和47年(行ツ)第33号、昭和49年4月25日第一小法廷判決参照)、指定役務についても同様に理解されるものである。 |
また、「標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」の「商品・サービス国際分類表」の第36類の注釈によれば、「第36類には、主として、銀行業務及びその他の金融又は財務取引、財務評価、並びに保険及び不動産活動を含む。」とあることから、当該「asset management services.」の表示は、請求人の主張する「金融業界におけるアセットマネジメント」及び「不動産業界におけるアセットマネジメント」の両者を包含するものと解される。 |
そして、「金融業界におけるアセットマネジメント」も「不動産業界におけるアセットマネジメント」も投資資産の運用を実際の所有者・投資家に代行して行う業務(甲3)であることを共通にし、当該役務を取り扱う業界においては、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(甲6)や別掲2のように、「金融業界におけるアセットマネジメント」及び「不動産業界におけるアセットマネジメント」の両業務を行っている事業者は複数存在しているから、請求人の取り扱いにかかる役務が「金融業界におけるアセットマネジメント」のみであるとしても当該役務が「不動産業界におけるアセットマネジメント」と非類似の役務であるとはいえない。 |
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 |
(7)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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別掲1 引用商標の指定役務 |
第36類 「土地・建物の管理,コンドミニアム及びホテルに関する土地・建物の管理,土地・建物の貸与の契約の代理又は媒介,土地又は建物の査定,不動産の管理,賃貸用のアパート及び住宅のリストの提供,商業用の土地・建物の売買又は貸借の代理又は媒介,土地又は建物の評価,土地・建物の売買,土地・建物の売買の代理又は媒介,土地・建物の貸借の代理又は媒介,土地・建物の貸与,コンピュータデータベースによる近隣地域及びコミュニティに位置する住宅用不動産のリスト及び情報の提供,インターネットのウェブサイトによるアパート・マンション・別荘及び山小屋の賃貸及び売買に関する建物又は土地の情報の提供,ウェブサイト利用者を他の不動産情報を提供するウェブサイトに移動させて行われる建物又は土地の情報の提供,インターネットによる建物又は土地の情報の提供,インターネットによる建物又は土地のリスト及び情報の提供,共同所有用の建物又は土地の管理及び売買又は貸借の代理又は媒介,土地・建物の売買又は貸借に関する助言,不動産投資信託に関する管理,土地・建物の管理に関する助言,アパート・マンション・別荘及び山小屋のリストの提供,アパート・リゾートマンション・マンション・別荘及び山小屋の管理,賃貸用の土地・建物の管理,コンピュータネットワーク上のクリック課金広告を介して行われるアパート・マンション・別荘及び山小屋の貸与,短期間利用のための家具付きアパート・マンション・別荘及び山小屋の貸与,ホテル開発用地内の住宅用コンドミニアムの貸与及び管理,アパート・マンション・別荘及び山小屋の賃貸の管理またはその仲介,アパート・マンション・別荘及び山小屋の売買並びに売買又は貸借の代理又は媒介,マンションの管理,タイムシェアによる土地又は建物の貸与,タイムシェアによる休暇用の土地又は建物の貸与,アパート・マンション・別荘及び山小屋の貸与,コンドミニアム及びその他の建物取引を容易にするためのリスト化された不動産に関する情報の提供,マンション及び他の不動産の取引を促進するための不動産のリストの提供,ホテルコンドミニアムの管理,ホテルコンドミニアムに関する金融資産の管理,建物又は土地の情報の提供,不動産業務,不動産に関する財務管理,不動産に関する財政投資」 |
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別掲2 本願の指定役務を取り扱う業界において、「金融業界におけるアセットマネジメント」及び「不動産業界におけるアセットマネジメント」の両業務を行っている事業者が存在する事実 |
(1)「モルガン・スタンレー」のウェブサイトにおいて、「インベスト・マネジメント」の見出しの下、「投資運用業務」及び「不動産投資業務」の記載がある。 |
https://www.morganstanley.co.jp/ja/what-we-do |
(2)「PGIMジャパン」のウェブサイトにおいて、「PGIM【pi:gim ピージム】は、世界最大級の金融サービス機関であるプルデンシャル・ファイナンシャルの資産運用部門です。 日本においては、1988年に資産運用ビジネスを開始。債券、株式、不動産、オルタナティブの各資産クラスでPGIMが展開する様々な運用戦略を提供しています。」の記載がある。 |
https://www.pgim.com/pgim-japan/ |
(3)「三菱UFJ信託銀行」のウェブサイトにおいて、「法人のお客様」の見出しの下、「受託財産業務」及び「不動産業務」の記載がある。 |
https://www.tr.mufg.jp/houjin/ |
(4)「SMBC信託銀行」のウェブサイトにおいて、「信託業務」及び「不動産業務」の記載がある。 |
https://www.smbctb.co.jp/corporate/ |
(5)「りそな銀行」のウェブサイトにおいて、「法人のお客さま」の見出しの下、「年金・信託・不動産」の項に「証券信託業務、企業年金、不動産業務・・」の記載がある。 |
https://www.resonabank.co.jp/hojin/?loc=1 |
(6)「三井物産オルタナティブインベストメンツ」のウェブサイトにおいて、「主な取り扱いアセットクラス」の見出しの下、「インフラストラクチャー、プライベート・エクイティ、ヘッジファンド、不動産・・」の記載がある。 |
https://www.mitsui-ai.com/ja/securities.html |
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(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
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審判長 大森 友子 |
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |