審決


不服2023-650006

EPFL - Quartier de l’Innovation Daniel Borel Innovation Center CH-1015 Lausanne(CH)
 請求人
Logitech Europe S.A.
  
東京都中野区中央5-40-18 キャピトル丸山3階
 代理人弁理士
佐藤 明子
  


 国際商標登録第1613105号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
第1 本願商標及び手続の経緯
 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第9類及び第28類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2021年6月17日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づき、パリ条約第4条による優先権を主張し、同年7月16日に国際商標登録出願されたものである。
 本願は、2022年5月30日付け暫定拒絶の通報がされ、令和4年(2022年)9月9日に意見書が提出され、2022年9月28日付けで国際登録簿に記録された取消しの通報があった結果、本願の指定商品は、第9類「Computer mice; wireless computer mice.」(以下「原審指定商品」という。)となったが、2022年10月18日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和5年(2023年)1月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
 
第2 引用商標
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した商標は、以下の1及び2並びに別掲2に記載のとおりの登録商標であり、これらの商標権は、現に有効に存続している。
 1 国際登録第1302911号商標(以下「引用商標1」という。)
 商標の構成:別掲3のとおり
 国際登録日:2016年3月7日
 優先権主張日:2015年9月11日(France)
 設定登録日:平成30年2月16日
 指定商品・指定役務:第9類「Apparatus and devices for the recording, detection, analysis of physical movements, gestures and performances in the field of racket sports; software and applications for analysis, measurement, processing, storage, distribution and display of physical movements, gestures and performances in the field of racket sports; software and software applications for computers, mobile phones and smart phones, enabling the provision of information and/or advice in the field of racket sports.」、第28類及び第38類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
 2 国際登録第1417862A号商標(以下「引用商標2」という。)
 商標の構成:POP
 国際登録日:2018年6月13日
 優先権主張日:2017年12月19日(United States of America)
 設定登録日:令和3年7月16日
 指定商品:第9類「Hand grips, stands, and mounts adapted for handheld electronic devices, namely, smartphones, tablet computers, cameras, and portable sound and video players.」
 なお、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、単に「引用商標」という。
 
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
 原査定は、本願商標と引用商標及び別掲2に記載のその他の引用商標(以下「その他の引用商標」という。)は外観において相違し、本願商標の要部である「POP」と引用商標及びその他の引用商標は観念において比較することができないとしても、本願商標の要部である「POP」と引用商標及びその他の引用商標とは「ポップ」の称呼を共通にする類似の商標であって、原審指定商品と引用商標及びその他の引用商標に係る指定商品とは、同一又は類似の商品であるから、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
 
第4 当審の判断
 1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本願商標について
 本願商標は、「POP MOUSE」の欧文字を横書きしてなるところ、本願商標を構成する「POP」の欧文字と「MOUSE」の欧文字との間には1文字分の空白を有することから、本願商標は、「POP」の欧文字と「MOUSE」の欧文字とを結合したものであることは容易に理解されるものであり、また、1文字分の空白を有することにより、これらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。
 そして、原審指定商品は、いずれもコンピューターマウスであるところ、本願商標の構成中の「MOUSE」の欧文字は、「コンピューターの位置入力装置の一種。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑 第7版」)の意味を有する語であるから、当該文字は、原審指定商品そのものを意味するものと捉えられ、自他商品の識別標識としての機能を有さないものである。
 これに対し、本願商標の構成中の「POP」の欧文字は、「大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。」(前掲書)の意味を有する語であり、原審指定商品との関係において、当該文字が原審指定商品の品質等を表示するものではないので、当該文字が自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特段の事情はない。
 そうすると、本願商標は、引用商標との類否を判断するに当たって、本願商標の構成中の自他商品の識別標識としての機能を有さない「MOUSE」の欧文字を捨象し、その構成中の「POP」の欧文字を要部として抽出し、これのみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
 したがって、本願商標は、その構成中の「POP」の欧文字に相応した「ポップ」の称呼が生じ、「大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。」の観念が生じるものである。
(2)引用商標について
 ア 引用商標1は、別掲3のとおり、その構成中の欧文字の「P」と「P」の間に黒丸を配してなるところ、これよりは「ピィピィ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
 イ 引用商標2は、「POP」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ポップ」の称呼が生じ、「大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。」の観念を生じるものである。
(3)本願商標と引用商標との類否について
 ア 本願商標と引用商標1との類否について
 本願商標と引用商標1とを比較すると、両商標は、外観において明らかに判別し得るものである。
 また、称呼においては、本願商標より生じる「ポップ」の称呼と引用商標1より生じる「ピィピィ」の称呼とは明瞭に聴別し得るものである。
 さらに、観念においては、本願商標からは「大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。」の観念が生じるのに対し、引用商標1からは特定の観念は生じないものであるから、観念において相紛れない。
 そうすると、本願商標と引用商標1とは、外観において明確に区別し得るものであり、称呼において明瞭に聴別し得るものであり、観念において相紛れないものであることからすると、両商標の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、非類似の商標というべきである。
 イ 本願商標と引用商標2との類否について
 本願商標と引用商標2とを比較すると、両商標は、構成全体を見た場合、「MOUSE」の欧文字の有無に明らかな差異があることから、外観において相違するものの、本願商標の要部である「POP」の欧文字と引用商標2を構成する「POP」の欧文字とは、「POP」のつづりを共通にするものであるから、本願商標の要部と引用商標2とは、外観において類似する。
 また、本願商標の要部である「POP」の欧文字と引用商標2を構成する「POP」の欧文字とは、「ポップ」の称呼及び「大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。」の観念を共通にするものである。
 そうすると、本願商標の要部と引用商標2とは、外観において類似し、称呼及び観念を共通にするものであるから、本願商標と引用商標2とは、相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
 そして、原審指定商品と引用商標2に係る指定商品とは類似の商品である。
 したがって、本願商標は引用商標2と類似の商標であって、原審指定商品と引用商標2に係る指定商品とは類似のものであるから、本願商標は、引用商標2との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
 ウ 本願商標とその他の引用商標との類否について
 原査定において、本願商標と同一又は類似するとしたその他の引用商標との類否については、上記第1のとおり、本願の指定商品は、2022年9月28日付けで国際登録簿に記録された取消しの通報があった結果、原審指定商品となり、その他の引用商標に係る指定商品と類似しない商品である。
 したがって、本願商標とその他の引用商標との類否を判断するまでもなく、本願商標は、その他の引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)小括
 以上のとおり、本願商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当しないものであるが、引用商標2との関係においては、両商標は類似の商標であり、かつ、原審指定商品は、引用商標2に係る指定商品と類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
 2 請求人の主張について
 請求人は、本願商標は「POP」と「MOUSE」の各文字が同一書体により等間隔をもって表されており、それぞれの構成文字数が3文字及び5文字であって極端な差がなく、「POP」と「MOUSE」の両文字の視覚的に与える印象にそれほど軽重がなく、全体が視覚上まとまりよく一体的な印象を与えること、本願商標からは「ポップなマウス」、「カラフルなマウス」、「都会的で軽やかなデザインのマウス」ほどの観念が生じること、本願商標から生じる称呼は「ポップマウス」であることから、引用商標とは外観、称呼、観念のいずれにおいても非類似である旨主張する。
 しかしながら、上記1のとおり、本願商標は、「POP」の欧文字と「MOUSE」の欧文字とを結合したものであることは容易に理解されるものであり、これらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。
 また、原審指定商品は、コンピューターマウスであるところ、本願商標の構成中の「MOUSE」の欧文字は、「コンピューターの位置入力装置の一種。」の意味を有する語であるから、当該文字は、原審指定商品そのものを意味すると捉えられ、自他商品の識別機能を有さないものである。
 これに対し、本願商標の構成中の「POP」の欧文字は、「大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。」の意味を有する語であり、原審指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特段の事情はない。
 そうすると、本願商標は、その構成中の「MOUSE」の欧文字を捨象し、その構成中の「POP」の欧文字を要部として抽出し、これのみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
 よって、請求人の上記主張は、採用することができない。
 3 まとめ
 以上のとおり、本願商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当しないものであるが、引用商標2との関係においては、両商標は類似の商標であり、かつ、原審指定商品は、引用商標2に係る指定商品と類似のものであるから、同法第4条第1項第11号に該当するものであり、登録することができない。
 よって、結論のとおり審決する。


        令和 6年 3月13日

     審判長  特許庁審判官 豊田 純一
          特許庁審判官 馬場 秀敏
          特許庁審判官 岩谷 禎枝

 
 
別掲1(本願商標)
 
別掲2(その他の引用商標)
 1 登録第1851844号商標
 商標の構成:POP
 登録出願日:昭和54年8月31日
 設定登録日:昭和61年4月23日
 書換登録日:平成21年4月30日
 指定商品:第7類及び「業務用テレビゲーム機」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
 2 登録第1851845号商標
 商標の構成:ポップ
 登録出願日:昭和54年8月31日
 設定登録日:昭和61年4月23日
 書換登録日:平成21年4月30日
 指定商品:第7類及び「業務用テレビゲーム機」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
 3 国際登録第1260907号商標
 商標の構成:POP!
 国際登録日:2015年7月13日
 設定登録日:平成28年9月16日
 指定商品:第28類「Dolls and toy figurines」
 4 国際登録第1262216号商標
 商標の構成:別掲4のとおり
 国際登録日:2015年7月13日
 優先権主張日:2015年6月29日(United States of America)
 設定登録日:平成28年9月16日
 指定商品:第28類「Collectable toy figures.」
 
別掲3(引用商標1)
 
別掲4(国際登録第1262216号商標)
 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
 この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)
 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
  
審判長 豊田 純一          
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W09)
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年 3月13日  審判書記官  眞島 省二