理 由 |
|
1 手続の経緯 |
本願は、2022年(令和4年)1月18日に国際商標登録出願(事後指定)されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 |
2022年(令和4年)11月 1日付け:暫定拒絶通報 |
2023年(令和5年) 2月14日 :意見書の提出 |
2023年(令和5年) 4月21日付け:拒絶査定 |
2023年(令和5年) 8月14日 :審判請求書の提出 |
|
2 本願商標 |
本願商標は、別掲のとおり、「ISOLIGHT」の文字を横書きしてなり、第1類「Assays for research purposes.」を指定商品として、国際商標登録出願(事後指定)されたものである。 |
|
3 原査定の拒絶の理由(要旨) |
(1)商標法第4条第1項第6号について |
本願商標は、「ISOLIGHT」の文字を横書きしてなるものであって、その構成中に、工業製品・部品・使用技術の規格統一を推進するための国際機関である「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」の著名な略称である「ISO」の文字を顕著に有するものであるから、これを同機構以外の者が使用した場合には、同機構の権威、信用の尊重に影響を与えるものであり、また、同機構との出所の混同を生じさせるものとみるのが相当である。 |
したがって、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと類似の商標というのが相当であるから、商標法第4条第1項第6号に該当する。 |
(2)商標法第4条第1項第11号について |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第5795721号商標(以下「引用商標」という。)は、「ISOLITE」の文字を標準文字で表してなり、平成26年4月10日登録出願、第1類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同27年10月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 |
|
4 当審の判断 |
(1)商標法第4条第1項第6号について |
本願商標は、別掲のとおり、「ISOLIGHT」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、すべて同じ書体、同じ大きさで、等間隔で表されてなるものであるから、視覚上、まとまりよく、全体として一体的に看取されるものである。 |
また、本願商標の構成全体から生じる「イソライト」又は「アイソライト」の称呼も、5音又は6音と短く、よどみなく一連に称呼し得るものである。 |
そして観念上も、本願商標を殊更「ISO」と「LIGHT」とに分断して観察しなければならないとする特段の理由を見いだすことはできない。 |
そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「ISO」の文字部分のみに着目し、これを独立した識別標識として認識するとはいえず、むしろ、本願商標の構成文字全体をもって、特定の意味を有しない一体的な造語を表したものとして認識し、把握するというべきである。 |
してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、「国際標準化機構」の略称である「ISO」を連想、想起するということはできないから、本願商標は、上記国際機関を表示する著名な標章とは類似しないものである。 |
そうすると、本願商標は、商標法第4条第1項第6号にいう「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」ということはできない。 |
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しないものである。 |
(2)商標法第4条第1項第11号について |
ア 本願商標について |
本願商標については、上記(1)のとおりであって、これよりは「イソライト」又は「アイソライト」の称呼が自然に生じ、また、特定の観念は生じないものである。 |
イ 引用商標について |
引用商標は、「ISOLITE」の文字を標準文字で表してなるところ、これは一般的な辞書類に掲載されているものではなく、また、これより特定の意味合いが認識されるというべき事情も見当たらないことからすると、特定の意味合いを認識させない造語と理解されるというのが相当である。 |
そうすると、引用商標よりは、その構成文字に相応した「イソライト」又は「アイソライト」の称呼が自然に生じ、また、特定の観念は生じないものである。 |
ウ 本願商標と引用商標の類否について |
本願商標と引用商標を比較するに、外観においては、文字の書体が異なり、また、構成中前半の「ISOLI」の文字部分を共通にするものの、そのほかのつづり字は「GHT」と「TE」とで異なるものであって、欧文字8文字又は7文字と長いとはいえない文字構成において、この差異が全体の視覚的印象に与える影響は小さいとはいえないことからすると、相紛らわしいとはいえないものである。 |
そして、称呼においては、「イソライト」又は「アイソライト」を共通にするものであって、また、観念においては、いずれも特定の意味合いを認識させない造語であるから、比較することができないものである。 |
加えて、本願商標の指定商品は、「Assays for research purposes.」(参考訳:「研究用分析試料」)であるところ、その主たる需要者層は研究機関であって、一般消費者が含まれないと考えられることからすると、その商品の需要者層において普通に払われる注意力は比較的高いものというのが相当である。 |
そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することができず、称呼が共通するとしても、外観において相紛れるおそれはなく、本願商標及び引用商標の指定商品の需要者層において普通に払われる注意力を基準として、両商標が与える印象、記憶等を総合してみれば、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。 |
エ 小括 |
以上のとおり、本願商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、両商標の指定商品の類否について判断するまでもなく、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。 |
(3)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第6号及び同項第11号に該当するものではないから、これらを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 |
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
|