理 由 |
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1 手続の経緯 |
本願は、2021年(令和3年)7月6日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 |
2022年(令和4年) 5月13日付け:暫定拒絶通報 |
2022年(令和4年) 9月 9日 :意見書、手続補正書の提出 |
2023年(令和5年) 5月29日付け:拒絶査定 |
2023年(令和5年) 9月 8日 :審判請求書の提出 |
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2 本願商標 |
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、日本国を指定する国際登録において指定された第3類に属する商品を指定商品として、国際商標登録出願されたものであり、その後、指定商品については、上記1の手続補正書により、第3類「Cosmetics for personal use; cosmetics for the treatment of dry skin; cosmetics for the use on the hair; cosmetics for use on the skin; cosmetics in the form of creams; cosmetics in the form of milks; cosmetics in the form of oils; cosmetics preparations; essential oils for use in cosmetics; moisturisers (cosmetics); night creams (cosmetics); non-medicated cosmetics; non-medicated creams for moisturizing the skin; skin and body topical lotions, creams and oils for cosmetic use; cosmetic creams for skin care; skincare cosmetics; body cream for cosmetic use; body soaps; facial soaps; liquid soaps (non-medicated); perfumed soaps; baby lotions; body lotions (other than for medical purposes); cocoa butter in the form of lotions for cosmetic purposes; lotions for cosmetic purposes; moisturising lotions (cosmetic); moisturising skin lotions (cosmetic); non-medicated lotions for the body; non-medicated foot lotions; skin care lotions [cosmetic]; non-medicated skin lotions; essential oils for use in cosmetics; non-medicated cosmetics; non-medicated hair lotions (cosmetic).」に補正されたものである。 |
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3 原査定の拒絶の理由(要旨) |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第4936775号商標(以下「引用商標」という。)は、「ソーナチュラル」の片仮名と「So Natural」の欧文字を上下二段に表した構成よりなり、平成17年7月5日登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、平成18年3月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 |
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4 当審の判断 |
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について |
ア 本願商標について |
本願商標は、別掲のとおり、上部に、縦長楕円形と大小2枚の葉のような図形が組み合わされた図形(以下、「図形部分」という。)を配し、その下に、「SO NATURAL」と「-Company-」の文字とを上下二段に表した構成よりなるところ、図形部分と各文字部分とは、相互に一定の間隔を空けて、重なり合うことなく、独立して表されていることから、視覚上分離して看取し得るものである。 |
そして、図形部分は、その構成態様から特定の意味合いを想起させるとはいい難く、特定の称呼及び観念を生じないものである。 |
また、「SO NATURAL」の文字部分は、その構成文字に相応して「ソーナチュラル」の称呼を生じ、「SO」の文字が「たいへん、実に、非常に」等の意味を、「NATURAL」の文字が「自然な」等の意味をそれぞれ表すことから、当該文字部分全体からは、「実に自然な」程の観念を生じるものである。 |
さらに、「-Company-」の文字部分は、構成中「Company」の文字が「会社、商社、商会 」等の意味を表す英単語として広く知られるものであり(以上、出典は、すべて株式会社小学館「ランダムハウス英和大辞典第2版」)、当該文字の前後に表された、やや長めの横線は、特に看者の目を引くような特殊な態様で表されているものでもないことから、当該文字部分全体からは、「会社、商社、商会」程の観念を生じるものである。 |
そうすると、本願商標を構成する図形部分と各文字部分の間には、観念上のつながりもなく、両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえない。 |
以上よりすれば、本願商標は、その構成中の図形部分と各文字部分が、それぞれ独立して出所識別機能を有する要部となり得るものであるところ、「SO NATURAL」の文字部分は、ひときわ大きく太字で表してなり、外観上、強く看者の注意を引くといえることに加え、自他商品・役務の識別標識として機能する部分といえる一方、「Company」の文字は、商取引に際して、しばしば捨象され取引に当たることも多いことが一般に知られており、自他商品・役務の識別標識としての機能は弱いといえることから、「SO NATURAL」の文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。 |
したがって、本願商標は、その要部である「SO NATURAL」の文字部分(以下「本願要部」という。)に相応して、「ソーナチュラル」の称呼を生じ、「実に自然な」程の観念を生じる。 |
イ 引用商標について |
引用商標は、「ソーナチュラル」の片仮名と「So Natural」の欧文字を上下二段に表してなるところ、当該構成文字に相応して、「ソーナチュラル」の称呼及び「実に自然な」の観念を生じるものである。 |
ウ 本願商標と引用商標との類否について |
本願商標と引用商標とを比較するに、まず外観については、全体としては図形部分の有無や文字構成等の相違はあるものの、本願要部と引用商標の構成文字を比較すると、「SO NATURAL」と「So Natural」とで文字種を共通にするものであり、両者における大文字、小文字の相違が、取引者、需要者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないものである。 |
また、称呼については、本願要部と引用商標の構成文字からは、いずれも「ソーナチュラル」の称呼を生じるものであるから、称呼を共通にするものであり、観念については、両商標はいずれも「実に自然な」程の観念を生じるものであるから、観念を共通にするものである。 |
そうすると、本願商標と引用商標とは、全体の外観においては図形部分の有無等の相違があるにせよ、本願要部と引用商標の構成文字との対比においては、その外観上の差異が強い印象を与えるとまではいえないものであり、また、両商標は称呼及び観念を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。 |
エ 本願の指定商品と引用商標の指定商品との類否について |
本願の指定商品は、引用商標の指定商品中の第3類「せっけん類,香料類,化粧品」と同一又は類似の商品である。 |
オ 小括 |
上記アないしエによれば、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、かつ、本願の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。 |
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
(2)請求人の主張について |
ア 請求人は、本願商標は、上段の図形部分において、2枚の葉が縦長楕円形の中の上半分に余白を残して下半分のみに描かれていることから2枚の葉が若葉であることを意識させ、この若葉と中段の「SO NATURAL」の文字部分の意味が相まって全体として若々しさ、瑞々しさを印象づけるデザインであると述べ、これらの印象は、図形部分と文字部分の両方の相乗効果により得られるものであるから、本願商標は外観上、観念上、図形部分と文字部分が強く結びついている旨主張する。 |
しかしながら、上記(1)アで述べたとおり、本願商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、上部の図形部分と各文字部分とは、相互に一定の間隔を空けて、重なり合うことなく、独立して表されており、視覚上分離して看取し得るものであって、図形部分と各文字部分とが結合して特定の意味合いを想起させる等、観念上の繋がりがあるともいえないことよりすれば、これらは、外観及び観念において、強く結びついているとまではいえず、常に一体不可分のものとしてのみ観察しなければならない特段の事情は見出せないものというべきである。 |
イ 請求人は、本願商標中の「SO NATURAL」の語自体は、美容及び化粧品業界において原材料又は質を表示する語として慣用されている「NATURAL」の文字に、程度を表す「SO」を結合した語であって、本願の指定商品に関連する分野では商品の出所識別標識としての機能がない又は極めて弱いものであるから、本願商標は、全体を一体的に観察されるべき旨主張する。 |
しかしながら、本願商標中の「SO NATURAL」の文字部分は、その指定商品との関係において、商品の原材料や品質を表示する等の格別な事情は見いだせないことから、自他商品の出所識別標識として、取引者、需要者に強く支配的な印象を与えるものであり、該文字部分を要部として抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきものであることは、上記(1)アのとおりである。 |
ウ 請求人は、過去の審決例を挙げ、本願はこれと同趣旨であるから、本願商標は登録されるべきである旨主張する。 |
しかしながら、商標の類否判断は、対比する商標について個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げる審決例は、商標の具体的構成等において本願とは事案を異にするものであり、本願商標と引用商標の類否については上記(1)ウにおいてした判断のとおりであるから、過去の審決例をもって、上記判断が左右されるものではない。 |
エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。 |
(3)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することはできない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |