理 由 |
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1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第3類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2020年(令和2年)7月16日に国際商標登録出願されたものである。 |
本願は、2021年(令和3年)8月4日付けで暫定的拒絶通報が通知され、2022年(令和4年)3月16日付けで拒絶査定がされたものである。 |
これに対して、令和4年6月28日に手続補正書が提出されるとともに、拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 |
そして、本願商標の指定商品は、上記手続補正書により、第3類「Nail gel; nail art ink; gel nail polish.」と補正された。 |
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2 原査定の拒絶の理由(要点) |
原査定は、「本願商標は、登録第5340610号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第5614632号商標(以下「引用商標2」という。)及び登録第6301230号商標(以下「引用商標3」という。)と同一又は類似の商標であって同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
そして、引用商標2は、別掲2のとおりの構成からなり、平成25年5月9日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品」を指定商品として、同年9月13日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 |
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3 当審の判断 |
(1)引用商標1及び引用商標3との関係における本願商標の商標法第4条第1項第11号該当性について |
本願商標の指定商品は、上記1のとおり補正された結果、引用商標1及び引用商標3の指定商品と同一又は類似の商品は全て削除されたと認められるものである。 |
その結果、本願商標の指定商品は、引用商標1及び引用商標3の指定商品と類似しない商品になったと認められるものである。 |
したがって、本願商標は、引用商標1及び引用商標3との関係において、商標法第4条第1項第11号には該当しない。 |
(2)引用商標2との関係における本願商標の商標法第4条第1項第11号該当性について |
ア 本願商標 |
本願商標は、別掲1のとおり、「Apres(「e」の文字の上にアクセント記号が付されている。)」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は「~のあとに」等の意味を有するフランス語(ディコ仏和辞典、白水社)としてフランス語の辞書に掲載されているものの、我が国において親しまれた語とはいえないから、特定の意味合いを認識させるものではないものである。 |
そして、特定の意味合いを認識させない欧文字からなる商標については、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから、本願商標からは「アプレス」の称呼を生じるものとみるのが相当である。 |
そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して「アプレス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 |
イ 引用商標2 |
引用商標2は、別掲2のとおり、「アプルズ」の片仮名及び「aples」の欧文字を上下二段に表してなるところ、下段の「aples」の文字は、辞書等に載録された成語とは認められず、また、特定の意味合いを想起させるものとして一般に知られているということもできないものであり、さらに、上段の「アプルズ」の文字は下段の「aples」の文字の読みを片仮名表記したものと無理なく理解、認識できるものである。 |
そうすると、引用商標2は、その構成文字に相応して「アプルズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 |
ウ 商標の類否について |
本願商標と引用商標2とは、それぞれ、上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、外観においては、本願商標が欧文字を一連に表してなるのに対し引用商標2は欧文字及び片仮名を二段に表してなるものであること、並びに本願商標を構成する欧文字部分と引用商標2に含まれる欧文字部分とを比較した場合に、「A」と「a」、「r」と「l」及び「e」におけるアクセント記号の有無の差異を有することに鑑みれば、両商標はその構成において明確な差異があるから、外観上明確に区別できるものである。 |
また、本願商標から生じる「アプレス」の称呼と、引用商標2から生じる「アプルズ」の称呼とは、4音中2音を異にするものであり、その差異は4音という短い音構成よりなる両称呼において、全体の音調、音感に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両商標をそれぞれ一連に称呼しても、その語調、語感が異なり、互いに聞き誤るおそれのないものというのが相当である。 |
加えて、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上比較することができない。 |
以上によれば、本願商標と引用商標2とは、観念において比較することができないものの、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標と判断するのが相当である。 |
したがって、本願商標と引用商標2は、上記のとおり非類似の商標であるから、指定商品の類否について論ずるまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当するとはいえない。 |
(3)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、引用商標1、引用商標2及び引用商標3との関係で、商標法第4条第1項第11号に該当しないものであるから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 |
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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