理 由 |
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1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲1の構成からなり、第10類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2021年(令和3年)12月1日に国際商標登録出願されたものである。 |
本願は、2022年(令和4年)10月3日付で暫定拒絶の通報がされ、指定商品については、2023年(令和5年)1月27日付け手続補正書により、第10類「Heart rate monitors; heart rate recorders; heart monitors; heart rate monitoring apparatus; heartbeat measuring apparatus; electrocardiographs; ECG (electrocardiogram) monitoring apparatus; test equipment for medical use; wireless heart rate monitor devices for medical use; apparatus for use in medical analysis; diagnostic apparatus for medical purposes; measuring devices for medical use; patient monitoring and arrhythmia analysis apparatus.」に補正され、同日付けで意見書が提出されたが、同年4月20日付けで拒絶査定がされた。 |
これに対し、令和5年8月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 |
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2 引用商標 |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した国際登録第1369933号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2の構成からなり、2017年(平成29年)9月5日に国際商標登録出願、第5類及び第10類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として(別掲3)、令和元年6月7日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。 |
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3 原査定の拒絶の理由の要点 |
本願商標は、前記2における引用商標と同一又は類似の商標であって、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
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4 当審の判断 |
(1)本願商標について |
本願商標は、別掲1のとおり、いずれも、グラデーションが施された濃い青色で、左側に、山型の図形とT字の図形とを結合したとおぼしき図形を、右側に、ややデザイン化された「patch」の欧文字を配してなるものである。 |
そして、本願商標の構成中、左側の図形部分は、直ちに特定の事物を想起させないから、これよりは特定の称呼及び観念は生じない。 |
また、本願商標の構成中、右側の「patch」の欧文字は、「ばんそうこう」(「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」株式会社大修館書店)などの意味を有する、我が国において一般に親しまれた語であり、加えて、医療分野においては、当該文字及びその片仮名表記である「パッチ」の文字が、前記の「ばんそうこう」の意味のほか、例えば、人体に貼り付けて使用される医療機器や医薬品等に使用されている実情がうかがえることからすれば、構成中の「patch」の文字は、これを本願の指定商品に使用しても、需要者が、単に、貼り付けて使用される商品であることを想起することも少なくないものであり、自他商品の識別標識としての機能が強いものとはいえないものであるから、当該文字より、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないものといえる。 |
そして、外観においては、構成中の図形部分と文字部分が同じ色彩で表されており、さらに、文字部分が、図形部分の右側に近接して配置されていることから、本願商標は全体的にまとまりよく一体感のあるものといえる。 |
その他、構成中の文字部分が、本願商標に接した需要者に、強く支配的な印象を与えると認め得る特段の事情も見いだせない。 |
してみれば、本願商標は、その構成全体をもって認識されるものであり、その構成中の「patch」の文字部分を分離、抽出して、当該文字部分から生じる称呼及び観念をもって商取引に資することはないというのが相当であるから、本願商標からは出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。 |
(2)引用商標について |
引用商標は、別掲2のとおり、濃い灰色の十字図形と、その図形内に白抜きで「PATCH」の欧文字を配した構成からなるものである。 |
そして、引用商標の構成中の「PATCH」の文字は、前記(1)のとおり、医療分野においては、自他商品の識別標識としての機能が強いものとはいえないものであって、これより、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものといえる。 |
加えて、引用商標の文字部分は、図形部分の内部に配されており、引用商標は全体的にまとまりよく一体感のあるものである。 |
その他、構成中の文字部分が、引用商標に接した需要者に、強く支配的な印象を与えると認め得る特段の事情も見いだせない。 |
そうすると、引用商標は、その構成全体をもって認識されるものであり、その構成中の「PATCH」の文字部分を分離、抽出して、当該文字部分から生じる称呼及び観念をもって商取引に資することはないというのが相当であるから、引用商標からは出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。 |
(3)本願商標と引用商標の類否について |
本願商標と引用商標を比較するに、外観においては、同じつづりから構成される「patch」及び「PATCH」の欧文字を構成中に有する点で共通するものの、図形を含めた商標の構成全体での比較において、明確に区別できるものである。 |
また、称呼及び観念においては、本願商標と引用商標は、いずれも出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものであるから、比較できない。 |
そうすると、本願商標と引用商標とは、称呼及び観念において比較できないとしても、外観において明確に区別できるものであるから、これらを総合して判断すれば、本願商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。 |
(4)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、引用商標の指定商品と類似の商品を指定商品とするものであるとしても、引用商標と類似する商標ではないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 |
したがって、本願商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 |
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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