理 由 |
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1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第9類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2019年3月18日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2019年(令和元年)9月18日に国際商標登録出願されたものである。 |
本願は、2020年(令和2年)11月19日付けで暫定的拒絶通報が通知された後、令和3年6月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものの、2021年(令和3年)8月20日付けで拒絶査定がされたものである。なお、本願商標の指定商品は、上記補正の結果、別掲2のとおりの商品となった。 |
これに対して、令和3年12月2日に拒絶査定不服審判の請求がされ、請求人は、引用商標権者と交渉中であることから審理の猶予を求めていたが、令和5年10月24日付けの審尋に対し、指定した期間内に何ら応答がなかったものである。 |
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2 引用商標 |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりであり(以下、まとめて「引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。 |
(1)国際登録第706538号商標 |
商標の構成:別掲3のとおり |
事後指定日:2000年(平成12年)6月16日 |
設定登録日:平成13年4月13日 |
指定商品 :第9類「Microphone stands; speaker stands (speaker stands systems).」及び第15類「Guitar stands (electric guitars, acoustic guitars, bass guitars), keyboard stands, drum stands (specially cymbal stands), brass stands for all windblow instruments.」 |
(2)国際登録第886503号商標 |
商標の構成:別掲4のとおり |
国際登録日:2006年(平成18年)4月4日(2005年12月13日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張) |
設定登録日:平成20年2月15日 |
指定商品 :第9類「Amplifiers, loudspeakers cabinets.」及び第15類「Electric guitars and electric bass guitars.」 |
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3 原査定の拒絶の理由(要旨) |
原査定は、本願商標の構成中、「WARWICK」の文字部分を分離抽出し、これと引用商標とが類似する商標であるから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとしたものである。 |
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4 当審の判断 |
本願商標は、別掲1のとおり、「WARWICK ACOUSTICS」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中「WARWICK」の文字は「ウォリック伯、ウォリック」等の意味を、「ACOUSTICS」の文字は「音響学」の意味を表す(リーダーズ英和辞典、研究社)英語であり、全体として特段の意味を表すものでないものの、本願商標の指定商品との関係において、その構成中のいずれかの文字又は文字の組み合わせが、他の部分に比して出所識別標識として強く支配的な印象を与える又は特段出所識別標識としての機能が弱いということはできないものである。 |
また、本願商標の外観上も、「WARWICK」及び「ACOUSTICS」の文字を、いずれも同じ大きさ、同じ書体の文字で構成されており、両語の間に僅かのスペースが開いているだけであるから、いずれかの部分が別個独立の商標と認識されるものではない。 |
さらに、本願商標の構成文字全体から生じる「ワーウィックアコースティクス」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 |
加えて、本願商標の構成中「WARWICK」の文字部分のみが、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情は見いだせない。 |
そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、本願商標全体をもって、一体不可分のものとして認識し、把握するとみるのが相当であり、本願商標は、構成全体を一体的に観察して、引用商標との類否を判断するのが相当である。 |
してみれば、本願商標の構成中、「WARWICK」の文字部分を分離抽出し、これを前提に、本願商標と引用商標とが類似するとした原査定の判断は妥当なものとはいえない。 |
他に、本願商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。 |
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 |
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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