理 由 |
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1 手続の経緯 |
本願は、2020年(令和2年)12月29日及び2021年(令和3年)6月21日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいて、パリ条約第4条による優先権を主張し、2021年(令和3年)6月24日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 |
2022年(令和4年) 3月3日効力発生:商品等限定通報 |
2022年(令和4年) 7月25日付け:暫定拒絶通報 |
2022年(令和4年)12月12日 :意見書、手続補正書の提出 |
2023年(令和5年) 2月28日付け:拒絶査定 |
2023年(令和5年) 6月 9日 :審判請求書の提出 |
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2 本願商標 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第25類及び第41類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として国際商標登録出願されたものであり、その後、指定商品及び指定役務については、前記1の国際登録原簿に記録された限定の通報及び手続補正書により、別掲2のとおりの商品及び役務とされたものである。 |
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3 原査定の拒絶の理由(要点) |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下の9件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの登録商標をまとめていうときは、「引用商標」という。)。 |
(1)登録第579754号商標(以下「引用商標1」という。) |
商標の態様 別掲3のとおり |
指定商品 第28類「運動用具(体育用器械器具・体操用器械器具・スターターピストル・スケート靴を除く。)」 |
登録出願日 昭和28年1月21日 |
設定登録日 昭和36年9月1日 |
書換登録日 平成14年11月20日 |
(2)登録第651711号商標(以下「引用商標2」という。) |
商標の態様 別掲4のとおり |
指定商品 第25類「運動用特殊衣服,マラソン足袋」を含む第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 |
登録出願日 昭和28年1月21日 |
設定登録日 昭和39年9月4日 |
書換登録日 平成17年6月22日 |
(3)登録第3101355号商標(以下「引用商標3」という。) |
商標の態様 別掲5のとおり |
指定役務 第41類「技芸・スポ―ツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,自動車競走の企画・運営又は開催」を含む第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 |
登録出願日 平成4年9月30日 |
設定登録日 平成7年11月30日 |
(4)登録第3160226号商標(以下「引用商標4」という。) |
商標の態様 別掲6のとおり |
指定役務 第41類「技芸・スポ―ツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,自動車競走の企画・運営又は開催」を含む第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 |
登録出願日 平成4年9月30日 |
設定登録日 平成8年5月31日 |
(5)登録第4579738号商標(以下「引用商標5」という。) |
商標の態様 「オリンピア」(標準文字) |
指定商品及び指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催」を含む第9類、第28類及び第36類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 |
登録出願日 平成13年2月9日 |
設定登録日 平成14年6月21日 |
(6)登録第5064683号商標(以下「引用商標6」という。) |
商標の態様 別掲7のとおり |
指定商品及び指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,インターネット・携帯電話を通じて行うコンピュータゲームイベントの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を含む第9類、第16類、第20類、第28類、第34類ないし第37類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 |
登録出願日 平成18年10月24日 |
設定登録日 平成19年7月20日 |
(7)登録第5081824号商標(以下「引用商標7」という。) |
商標の態様 別掲8のとおり |
指定商品及び指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,インターネット・携帯電話を通じて行うコンピュータゲームイベントの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を含む第9類、第14類、第16類、第20類、第28類、第34類ないし第37類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 |
登録出願日 平成18年9月12日 |
設定登録日 平成19年10月5日 |
(8)登録第5083167号商標(以下「引用商標8」という。) |
商標の態様 「オリンピア」の文字を横書きしてなるもの |
指定商品及び指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,インターネット・携帯電話を通じて行うコンピュータゲームイベントの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を含む第9類、第14類、第20類、第28類、第34類ないし第37類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 |
登録出願日 平成18年6月22日 |
設定登録日 平成19年10月12日 |
(9)登録第5116868号商標(以下「引用商標9」という。) |
商標の態様 別掲9のとおり |
指定商品及び指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,インターネット・携帯電話を通じて行うコンピュータゲームイベントの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を含む第9類、第14類、第16類、第20類、第28類、第34類ないし第37類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 |
登録出願日 平成18年8月16日 |
設定登録日 平成20年3月7日 |
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4 当審の判断 |
(1)本願商標 |
本願商標は、別掲1のとおり、二重線で描いた大きな縦長の楕円(両楕円の間には模様が施されている。)の内側上部に、男性の胸像を配置した図形部分を背景として、上段に「JOE WEIDER’S」の文字を小さく、中段に「OLYMPIA」の文字(文字はややデザイン化されている。)を大きく、下段に「AMATEUR」の文字をやや小さく表してなるところ、各段の文字部分は近接して配置されていることに加え、上段と下段の文字部分の横幅は、中段の「LYMPI」の文字部分の幅に揃えて表されており、また、中段の「O」及び「A」の文字の高さは、上段、中段及び下段の文字部分を合わせた高さに揃えて表されていることから、構成全体として、視覚上まとまりのよい印象を与えるものである。 |
ところで、請求人の主張及び当審における職権調査によれば、本願商標の構成中、文字部分の上段に表された「JOE WEIDER」の文字は、カナダ出身のボディビルダー、実業家であるジョー・ウイダー氏(故人)の氏名を欧文字表記したものであるところ、同氏が創設したボディービル大会「ミスターオリンピア」(Mr.OLYMPIA)は、世界で最も権威のあるプロ・ボディービル界の最高峰の大会として、また、そのアマチュア版である「オリンピアアマチュア」(OLYMPIA AMATEUR)は、プロカードを取得できる大会として、ボディービル関係者において相当程度知られていることが認められる。 |
以上を考慮すると、本願商標をボディービルに関連する指定商品及び指定役務に使用する場合、これに接する取引者、需要者は、その構成文字中の上段部分において、ジョー・ウイダー氏を表す「JOE WEIDER」の文字に、「~の」の意味を有する名詞の所有格語尾「’S」を配し、中段には同氏が創設したボディービル大会の略称と認められる「OLYMPIA」の文字を、下段には「アマチュア」を意味する「AMATEUR」の文字を配してなると認識、理解されるといえる。 |
したがって、本願商標は、その構成文字全体に相応して「ジョーウイダーズオリンピアアマチュア」の称呼を生じ、「ジョー・ウイダー氏のオリンピア大会(アマチュア版)」の観念を生じるほか、当該称呼がやや冗長であり、かつ「AMATEUR」の文字が「アマチュア向け」という用途表示と看取される場合には、「ジョーウイダーズオリンピア」の称呼を生じ、「ジョー・ウイダー氏のオリンピア大会」の観念を生じる。 |
(2)引用商標 |
ア 引用商標1は「Olympia」の文字をややデザイン化してなり、引用商標2は、ややデザイン化してなる「Olympia」の文字と「オリンピア」の文字とを上下二段に表したものである。また、引用商標3、引用商標5、引用商標7及び引用商標8は、「オリンピア」の文字を横書きに、あるいは標準文字で表してなり、引用商標4,引用商標6、引用商標9は「OLYMPIA」の文字をややデザイン化してなるものである。 |
イ 引用商標1、引用商標4、引用商標6及び引用商標9は、デザイン化の相違等はあるものの、いずれもつづりをを同一とするものであるから、各構成文字から「オリンピア」の称呼を生じ、「オリンピア(ギリシアペロポネソス半島西部の平野;古代オリンピア競技の発祥地)」(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)の観念を生じる。 |
ウ 引用商標2は、その構成中の下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを表したものと理解されるものであるから、上記アと同じく、当該欧文字から「オリンピア」の称呼を生じ、「オリンピア(ギリシアペロポネソス半島西部の平野;古代オリンピア協議の発祥地)」(前掲書)の観念を生じる。 |
エ 引用商標3、引用商標5、引用商標7及び引用商標8は、当該構成文字から「オリンピア」の称呼を生じ、「古代ギリシア、ペロポネソス半島北西部エリス地方にあった都市」(「広辞苑 第七版」岩波書店)の観念を生じる。 |
オ そうすると、引用商標は、その構成各文字に相応して、「オリンピア」の称呼を生じ、「オリンピア(古代ギリシアの都市名)」の観念を生じる。 |
(3)本願商標と引用商標との類否 |
本願商標と引用商標との類否について検討すると、本願商標と引用商標とは、外観においては、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、その全体の構成において、顕著な差異を有するものであるから、両者は、外観上、明確に区別できる。 |
また、称呼については、本願商標から生じる「ジョーウイダーズオリンピアアマチュア」又は「ジョーウイダーズオリンピア」の称呼と、引用商標から生じる「オリンピア」の称呼とは、その全体の音構成及び構成音数において明らかな差異を有するから、両者は、称呼上、明瞭に聴別できる。 |
さらに、観念については、本願商標は「ジョー・ウイダー氏のオリンピア大会(アマチュア版)」又は「ジョー・ウイダー氏のオリンピア大会」の観念を生じるのに対し、引用商標は「オリンピア(古代ギリシアの都市名)」の観念が生じるから、両者は、観念上、相違する。 |
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 |
(4)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務の類否を判断するまでもなく、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 |
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |