審決


不服2023-650051

1933 Davis, Suite 297 San Leandro CA 94577(United States of America)
 請求人
Zelos Energy Ltd.
  
東京都港区虎ノ門5-13-7 虎ノ門A&K-IPビル 小池国際特許事務所
 代理人弁理士
小池 晃
  
東京都港区虎ノ門5-13-7 虎ノ門A&K-IPビル 小池国際特許事務所
 代理人弁理士
河野 貴明
  


 国際登録第1617548号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
第1 本願商標及び手続の経緯
 本願商標は、「ZELOS」の欧文字を横書きしてなり、第9類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2021年2月25日にUnitedStatesofAmericaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年8月23日に国際商標登録出願されたものである。
 本願は、2022年(令和4年)6月14日付けで暫定拒絶の通報がされ、同年9月21日に意見書が提出され、同日付け手続補正書により、本願の指定商品は、第9類「Batteries not including rechargeable batteries; fuel cells not including rechargeable batteries; auxiliary power units for supplying electrical power; condensers (capacitors) not for telecommunication apparatus composed of batteries not including rechargeable batteries, inverters, control systems, electronic devices and recorded software for the operation and performance of energy storage systems.」と補正されたが、2023年(令和5年)3月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
 
第2 引用商標
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下の1及び2のとおりである。
 1 登録第5851353号商標(以下「引用商標1」という。)
 引用商標1は、「Zeros」の欧文字を横書きしてなり、平成27年10月9日に登録出願、「再充電可能な電池」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同28年5月20日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
 2 国際登録第1131519号商標(以下「引用商標2」という。)
 引用商標2は、「XEROS」の欧文字を横書きしてなり、2012年(平成24年)4月12日に国際商標登録出願、「Motors including electric motors (except for land vehicles)」を含む第1類、第3類、第7類、第11類及び第37類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成25年10月4日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
 以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。
 
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
 原査定は、本願商標と引用商標1は、特定の観念は生じないものの、外観において近似した印象を与え類似し、「ゼロス」の称呼を同一にする類似の商標であり、かつ、本願の指定商品は引用商標1の指定商品と類似する商品である。また、本願商標と引用商標2は、特定の観念は生じず、外観は相違するものの、「ゼロス」の称呼を同一にし、外観の差異は称呼の同一性を凌駕するほどの顕著な差異があるものとはいえないから、類似の商標であり、かつ、本願の指定商品は引用商標2の指定商品と類似する商品である。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
 
第4 当審の判断
 1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本願商標について
 本願商標は、上記第1のとおり、「ZELOS」の欧文字を横書きしてなるところ、当該欧文字は「古代ギリシアで競争心の化身」(「ランダムハウス英和大辞典 第2版」発行者:株式会社小学館)の意味を有する語であるものの、我が国においては特定の意味を有する語として一般に親しまれた語とはいえず、これに接する取引者、需要者は、特定の観念を生じることのない造語と理解、認識するものと判断するのが相当である。
 そして、特定の語義を有すると判断し得ない欧文字よりなる語は、我が国において広く親しまれているローマ字風又は英語風の発音をもって読まれるのが一般的といえるところ、本願商標は、その構成文字に相応して、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を生じるものである。
 そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
 ア 引用商標1について
 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「Zeros」の欧文字を横書きしてなるところ、当該欧文字は、英語辞書の「zero」の項に、「複 ~s,~es」として、「zero」の複数形(「ジーニアス英和辞典 第6版」発行者:株式会社大修館書店)であることが載録されているものの、我が国においては一般に親しまれた語とはいえず、直ちに上記のように理解できるとはいい難いものであるから、これに接する取引者、需要者は、特定の観念を生じることのない造語と理解、認識するものと判断するのが相当である。
 そして、特定の語義を有すると判断し得ない欧文字よりなる語は、我が国において広く親しまれているローマ字風又は英語風の発音をもって読まれるのが一般的といえるところ、引用商標1は、その構成文字に相応して、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を生じるものである。
 そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
 イ 引用商標2について
 引用商標2は、上記第2の2のとおり、「XEROS」の欧文字を横書きしてなるところ、当該欧文字は、一般の辞書等に載録された特定の意味合いを表す語ではなく、特定の意味合いを表す語として一般に使用されているような特別な事情はないことから、これよりは、特定の観念は生じないものである。
 そして、特定の語義を有すると判断し得ない欧文字よりなる語は、我が国において広く親しまれているローマ字風又は英語風の発音をもって読まれるのが一般的といえるところ、引用商標2は、その構成文字に相応して、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を生じるものである。
 そうすると、引用商標2は、その構成文字に相応して、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
 2 本願商標と引用商標との類否について
(1)本願商標と引用商標1との類否について
 本願商標と引用商標1とを比較すると、外観においては、2文字目以降が大文字と小文字であり、3文字目が「L」と「r」の差異を有するものの、両商標は、一般的な書体で表されており、5文字中4文字のつづりを共通にしているから、外観上、近似した印象を与えるものである。
 次に、称呼においては、本願商標と引用商標1とは、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を共通にするものである。
 そして、観念においては、本願商標と引用商標1とは、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較できないものである。
 そうすると、本願商標と引用商標1とは、観念において比較できないとしても、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を共通にし、外観において近似した印象を与えるため、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、全体的に考察すれば、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
(2)本願の指定商品と引用商標1の指定商品との類否について
 請求人は、本願の指定商品中の第9類「Batteries not including rechargeable batteries; fuel cells not including rechargeable batteries」と引用商標1の指定商品中の第9類「再充電可能な電池」は類似するものではない旨主張しているので、以下、これらの商品の類否を比較検討する。
 なお、請求人は、本願の指定商品中の第9類「condensers (capacitors) not for telecommunication apparatus composed of batteries not including rechargeable batteries, inverters, control systems, electronic devices and recorded software fort he operation and performance of energy storage systems.」と引用商標1の指定商品中の第9類「再充電可能な電池」以外の指定商品は類似するものではない旨も主張しているが、これらの商品は類似しないものと認められる。
 ア 本願の指定商品中の第9類「Batteries not including rechargeable batteries」と引用商標1の指定商品中の第9類「再充電可能な電池」の類否について
 本願の指定商品中の「Batteries not including rechargeable batteries」のうち、「batteries」は、「battery」の複数形で、「電池,バッテリー」の意味を有し、「rechargeable」は、「充電可能な」(いずれも「ジーニアス英和辞典 第6版」発行者:株式会社大修館書店)の意味を有する語であるから、上記指定商品は、「充電可能な電池を除いた電池」を意味する商品であると理解できる。
 そして、「電池」は、「化学的な反応などによって起電力を発生させる装置。ダニエル電池や乾電池のような一次電池と、蓄電池のような二次電池とがある。」(「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)とされているように、「電池」には、充電できない電池(一次電池)と充電可能な電池(二次電池)が含まれているものといえる。
 また、別掲1のとおり、充電できない電池(一次電池)と充電可能な電池(二次電池)は、同一営業主により製造、開発、販売されている事実が確認でき、さらに、これらの電池は、需要者が、電池の特長や用途等に応じて使い分けており、需要者の範囲を同じくすることがあるものと認められる。
 そうすると、本願の指定商品中の「Batteries not including rechargeable batteries」(充電可能な電池を除いた電池)と引用商標1の指定商品中の「再充電可能な電池」とは、ともに「電池」の範ちゅうに属する商品であって、その生産部門及び販売部門並びにその需要者の範囲を同じくすることがあるといえるものであり、これらの取引の実情に照らせば、両者は類似する商品と判断すべきものである。
 イ 本願の指定商品中の第9類「fuel cells not including rechargeable batteries」と引用商標1の指定商品中の第9類「再充電可能な電池」の類否について
 本願の指定商品中の「fuel cells not including rechargeable batteries」のうち、「fuel cells」は、「fuel cell」の複数形で、「燃料電池」(「ジーニアス英和辞典 第6版」発行者:株式会社大修館書店)の意味を有し、「batteries」及び「rechargeable」は、上記アのとおりの意味を有する語であるから、上記指定商品は、「充電可能な電池を除いた燃料電池」を意味する商品であると理解できる。
 そして、「燃料電池」は、「水素やメタノールなどの燃料の化学エネルギーを熱に変えることなく、電気化学的に直接電気エネルギーに変換する装置。」(「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)であるとともに、「燃料となる化学物質と酸化剤を外部から供給しつつ反応させて電気を取り出すタイプの電池」(水素エネルギーナビ https://hydrogen-navi.jp/fcv/fuelcell.html)ともされているように、「電池」の範ちゅうにも属する商品であると認められ、上記アのとおり、「電池」には、充電できない電池(一次電池)と充電可能な電池(二次電池)が含まれているものといえる。
 また、別掲2のとおり、燃料電池と充電可能な電池(二次電池)は、同一営業主により製造、開発、販売されている事実が確認でき、さらに、これらの電池は、需要者が、電池の特長や用途等に応じて使い分けており、需要者の範囲を同じくすることがあるものと認められる。
 そうすると、本願の指定商品中の「fuel cells not including rechargeable batteries」(充電可能な電池を除いた燃料電池)と引用商標1の指定商品中の「再充電可能な電池」とは、ともに「電池」の範ちゅうに属する商品であって、その生産部門及び販売部門並びにその需要者の範囲を同じくすることがあるといえるものであり、これらの取引の実情に照らせば、両者は類似する商品と判断すべきものである。
 ウ 小括
 以上のとおり、本願商標は、引用商標1と類似する商標であり、かつ、本願の指定商品は、引用商標1の指定商品と類似するものであるから、引用商標1との関係においては、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)本願商標と引用商標2との類否について
 本願商標と引用商標2とを比較すると、外観においては、両商標は、一般的な書体で表されており、文字数はいずれも5文字であるものの、1文字目の「Z」と「X」、3文字目の「L」と「R」の差異を有するため、両商標は、外観上、明確に区別し得るものである。
 次に、称呼においては、本願商標と引用商標2とは、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を共通にするものである。
 そして、観念においては、本願商標と引用商標2とは、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較できないものである。
 そうすると、本願商標と引用商標2とは、「ゼロス」又は「ゼロズ」の称呼を共通にし、観念において比較できないとしても、外観において明確に区別し得るため、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、全体的に考察すれば、両商標は、非類似の商標というのが相当である。
 したがって、本願商標は、引用商標2とは類似しない商標であるから、本願の指定商品と引用商標2の指定商品について比較するまでもなく、引用商標2との関係においては、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
 3 まとめ
 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
 よって、結論のとおり審決する。


        令和 6年 7月 4日

     審判長  特許庁審判官 大橋 良成
          特許庁審判官 渡邉 あおい
          特許庁審判官 渡邉 潤

 
 
別掲1 充電できない電池(一次電池)と充電可能な電池(二次電池)は、同一営業主により製造、開発、販売されている事実((1)ないし(5))及び需要者は、これらの電池を、その特長や用途等に応じて使い分けていること((6))が認められる事例
(1)「Panasonic」のウェブサイトにおいて、「商品ラインアップ」の見出しの下、「乾電池」、「充電池」との記載がある。
https://panasonic.jp/battery/
(2)「TOSHIBA」のウェブサイトにおいて、「電池・充電池」との記載がある。
https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/batteries/
(3)-1「SONY」のウェブサイトにおいて、「アルカリ電池」との記載がある。
https://www.sony.jp/battery/lineup/alkali.html
(3)-2「SONY」のウェブサイトにおいて、「充電器・充電器セット・充電池」との記載がある。
https://www.sony.jp/battery/lineup/charge.html
(4)「FUJITSU DENCHI」のウェブサイトにおいて、ページ上部のスライダーの2つめに「日本製 FUJITSU アルカリ乾電池 シリーズ」、「日本製 FUJITSU 充電式電池 シリーズ」との記載がある。
https://www.fdk.co.jp/denchi/
(5)-1「maxell」のウェブサイトにおいて、「一次電池」との記載がある。
https://biz.maxell.com/ja/primary_batteries/
(5)-2「maxell」のウェブサイトにおいて、「二次電池」との記載がある。
https://biz.maxell.com/ja/rechargeable_batteries/
(6)「Panasonic」のウェブサイトにおいて、「電池の使い分けは?」の見出しの下、「一般に市販されている電池の種類には、大きく分けて【使いきりの一次電池(乾電池)】と【くり返し使える二次電池(充電池)】の2種類があります。 電池の特長と主な用途は次の通りです。」との記載があり、当該記載の下には、電池の種類別に、特徴と用途が記載されている。
https://panasonic.jp/battery/contents/guide.html
 
別掲2 燃料電池と充電可能な電池(二次電池)は、同一営業主により製造、開発、販売されている事実((1)ないし(3))及び需要者は、これらの電池を、特長や用途等に応じて使い分けていること((4))が認められる事例。
(1)-1「Panasonic」のウェブサイトにおいて、「商品ラインアップ」の見出しの下、「乾電池」、「充電池」との記載がある。
https://panasonic.jp/battery/
(1)-2「Panasonic」のウェブサイトにおいて、「家庭用燃料電池「エネファーム」との記載がある。
https://panasonic.biz/appliance/FC/
(2)-1「TOSHIBA」のウェブサイトにおいて、「電池・充電池」との記載がある。(上記2(2)再掲)
https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/batteries/
(2)-2「TOSHIBA」のウェブサイトにおいて、「排出するのは水だけのクリーンな発電機。1960年代より開発を続けている信頼性の高い技術から生まれた純水素燃料電池システム「H2Rex」でCO2フリーな水素社会の実現に貢献します。」との記載がある。
https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/hydrogen/products-technical-services/fuel-cell.html
(3)-1「KYOCERA」のウェブサイトにおいて、「世界最小・最軽量の家庭用燃料電池「エネファームミニ」新型モデルの発売が決定」との記載がある。
https://www.kyocera.co.jp/newsroom/news/2022/002048.html
(3)-2「KYOCERA」のウェブサイトにおいて、「太陽光発電・蓄電池」との記載がある。
https://www.kyocera.co.jp/solar/products/enerezza/
(4)「AGUS」のウェブサイトにおいて、「電池の種類を徹底解説!リチウムイオンやニッケル水素など様々な電池をわかりやすく解説」の見出しの下、一次電池、二次電池、燃料電池の特徴と活用場面が記載されている。
https://agus.co.jp/?p=5718
 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)        本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
  
審判長 大橋 良成          
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W09)
            262
            263
            264

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年 7月 4日  審判書記官  加賀 泉