異議の決定


異議2023-685010
2 rue du Pont-Neuf F-75001 PARIS(France)
 商標権者  
Louis Vuitton Malletier
東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所
 代理人弁理士
田中 克郎
  
東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所
 代理人弁理士
稲葉 良幸
  
東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所
 代理人弁理士
佐藤 俊司
  
東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所
 代理人弁理士
飯田 遥
  
トルコ共和国、メルケズ キャタヒヤ エヌオー:96、エスキシュエヒル カラヨル ブルバリ、インコイ マハレシ
 商標登録異議申立人  
グロク トゥリズム ヴェ マデンシリク アノニム シルケティ
東京都新宿区西新宿一丁目6番1号
 代理人弁理士
弁理士法人RYUKA国際特許事務所
  


 国際登録第1621175号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。



 結 論
  
 国際登録第1621175号商標の商標登録を維持する。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第1621175号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2021年4月20日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2021(令和3)年5月28日に国際商標登録出願、第11類、第12類、第15類、第16類、第21類、第27類及び第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和5年6月30日に登録査定され、同年9月15日に設定登録されたものである。
 
第2 申立人標章
 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「申立人標章」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、テーブル用グラス製品製造販売会社のブランドとして、また、申立人のハウスマークとして当該分野の需要者、取引者に世界的に広く知られているとするものである。
 
第3 登録異議の申立ての理由
 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
 1 申立人の概要について
 申立人は、トルコで1948年に設立された、製造業、旅行業、建設業の事業を営む企業グループであり、トルコ最大の民間企業グループの一つである(甲3、甲4)。
 申立人が有する「LAV社」(以下「LAV社」という。)は、1994年に設立され、1日あたり200万個に達する幅広いグラス製品を製造する世界第5位のテーブル用グラス製品製造販売会社であり、その製品は世界135カ国に輸出されている(甲5、甲6)。
 LAV社のテーブル用グラス製品は、カタログの目次にあるように、グラス、脚付きグラス、タンプラー、ボウル、ビールグラス、マグカップ等多岐にわたる(甲7)。
 2 申立人標章について
 申立人は、ハウスマークとして、アルファベット3文字「LAV」からなるロゴマークを使用し、「A」を中央に、黒文字「L」「V」が、同じ大きさで左右対称にバランスよく配置され、「A」は二色に分断されている構成において、上部の赤色部分が「V」をひっくり返した形と認識でき、「A」の左斜めの線と中央の横線が「L」の文字を成すことから「A」の中に「L」と「V」が暗示的に示されていて、「A」の両端にある「L」と「V」のアルファベット二文字が、自然に、看者に印象づけられる構成である。
 3 申立人標章の周知・著名性について
 申立人は、ハウスマークである「LAV(ロゴ)」商標(申立人標章、甲2)を、テーブル用グラス製品(以下、申立人標章を使用したテーブル用グラス製品を「申立人商品」という場合がある。)に継続して使用しており、本件商標の出願日(優先日)以前から、日本でも使用している。
(1)申立人商品の2018年からの6年間の累計輸入金額は、371,778.74ユーロ(60,697千円)、合計個数は、1,098,548個に及び、金額、個数とも年々増加しており、特に2022年は輸入金額が前年度比約4.7倍と大幅な増加をし、2023年度は、継続的に更に増えており、人気が高まっていることを示している(甲8)。
(2)インターネット上での記事でも、LAV社の製品は、トルコ製グラスを代表するものとして紹介されている。例えば、旅行会社が運営するトルコ情報サイト「TURKISH CULTURE CLUB」では、「トルコグラス(チャイグラス)とは?特徴や選び方・買い方のコツを解説」の記事中に、「LAVもよく知られているメーカーです。家庭用の低価格ガラス食器を取り扱っており、こちらもヨーロッパからアジアまで幅広い地域に展開しています。」との記載がある(甲9)。
(3)以上のとおり、申立人標章は、世界第5位の製造規模を有するテーブル用グラス製造販売会社のブランドとして世界的に知られ、日本でも、年々販売額を伸ばして人気を呼び、同社のハウスマークとして高い認知を得ている状況がある。
 したがって、申立人標章は、本件商標の出願日(優先日)から、現在に至るまで、申立人の標章として、日本の取引者や消費者の間で、よく知られた周知な商標である。
 4 本件商標と申立人標章の類否について
(1)本件商標は、「LOIUS VOUITON」の頭文字「L」と「V」を掛け合わせたロゴマークとして著名である。「モノグラム」であり、その外観において、積み重ねられている「L」と「V」のアルファベットが強く印象づけられる構成である。
(2)一方、申立人標章についても、前述のとおり、その構成上、両端の「L」と「V」の文字が、自然に強調されるロゴデザインであり、両者に接した需要者は、「L」「V」のアルファベットが組み合わされた共通の特徴から、外観上類似するとの印象を持つといえる。
 需要者が、両商標を混同するかにあたり、第21類の指定商品である「グラス、食器類」等における本件商標の周知・著名度が関係するが、本件商標権者の「LOIUS VOUITON」社の日本での「グラス、食器類」等に対する使用状況を見る限り、「かばん類」等に対する様な著名性は獲得しておらず、むしろ第21類「グラス、食器類」等に関しては、世界5位の製造規模を有し、国内外での著名性を有する申立人標章の方が、周知性・著名性が上回るものと思料する。
 具体的には、「LOIUS VOUITON」社のティーカップやお皿などの食器類は、現在、同社の公式ホームページのメニュー「ライフスタイル」内「アートオブダイニング」のページで購入することができる(甲10)。ただし、これらの食器類が、公式ホームページで紹介されたのは、検索サイトで、時期的な条件による検索をする限り、2021年度以降であり、ラグジュアリー製品情報サイトの2021年1月1日付記事でも、現在、掲載中の食器類が、2021年より新たに「ホームコレクション」のアイテムに加わり、ホームページに掲載された旨が紹介されている(甲11)。
 かかる使用の実情から、本件商標権者の食器類などの第21類の指定商品の日本での販売は、まだ歴史が浅く、当該商品に対しては、周知性を獲得するには至っていないものと思料する。
(3)したがって、両者の商標を比較すると、共に「L」「V」より強い印象を受けることから、外観上、類似する印象を受け、称呼としても共通して「エル、ブイ」の読み方が発生するといえる。申立人標章が、第21類「グラス、食器類」と関係で、周知・著名性を有することを考慮すると、本件商標が付与された「グラス、食器類」を看た需要者は、申立人の商品との間で、その外観、称呼の類似性から出所を混同するおそれがあり、両商標は相紛らわしい類似する関係にある。
 以上より、本件商標は、未登録周知商標である申立人標章と類似するものであり、申立人標章が使用されている「グラス」に類似する「食器類」について使用されているものであるため、商標法第4条第1項10号に該当する。
 5 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人標章の周知著名性について
 上記3のとおり、申立人標章は、本件商標の出願日(優先日)から、現在に至るまで、申立人の標章として、日本の取引者や消費者の間で、周知、著名である。
(2)本件商標と申立人標章の類否について
 上記4で述べたとおり、本件商標と申立人標章は、相紛らわしい類似する関係にある。
(3)本件商標の指定商品と申立人標章の業務の関連性について
 本件商標の異議申立対象となる第21類の指定商品中、「Tableware(食器類)、bowls(ボウル)、drinking vessels(コップ類)、drinking glasses(グラス)、cups(カップ)」などの商品は、申立人商品と同一商品であり、その他の食卓で用いられるテーブルウエア関連商品やメイクアップ関連の商品も、ガラス容器やガラス製品が用いられることもあり、同じグラス製造会社が生産・販売することがありえることから、類似若しく業務上の関連性のある商品といえる。
(4)取引者又は需要者の共通性について
 本件商標の指定商品と、申立人標章に係る「グラス、食器類」等のテーブルウエア関連の商品の間において、両商品の取引者又は需要者は、共通する。
(5)本件商標権者による本件商標の使用について
 上記4(2)で述べたとおり、本件商標権者の本件商標の使用は、公式サイトでの販売は、2021年頃からと年月が経っておらず、本件商標は、第21類の指定商品との関係では、取引者、需要者に、よく知られたものではなかったものといえる。
(6)混同のおそれについて
 上記3のとおり、申立人標章は、世界的なテーブル用グラスメーカーのブランドの商標として認識され、日本での販売実績から、本件商標の出願日から現在に至るまで、日本の取引者、需要者の間で周知、著名となっている。
 また、上記4(3)のとおり、両商標は、「L」と「V」の文字が、顕著に印象づけられる特徴から、類似するものといえ、上記(3)、(4)のとおり、両者の商品は、業務上の関連が深く、取引者及び需要者も共通している。
 さらには上記(5)のとおり、テーブル用グラス関連分野において、本件商標は、周知を得るに至っておらず、国内外での著名性を有する申立人標章の方が、周知性・著名性を得て、よく知られているという取引の実情がある。
 以上を総合的に勘案すると、本件商標が指定商品に使用された場合、当該商品が申立人の商品に係るものであると誤信させるおそれが生じ、又は、当該商品が申立人との間に、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信するおそれが生じることは明らかである。
 したがって本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
 6 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)申立人標章の国内外での周知著名性について
 上記3のとおり、申立人標章は、本件商標の出願日(優先日)から、現在に至るまで、申立人の標章として、日本の取引者や消費者の間で、周知、著名である。
 また、申立人は、1日あたり200万個に達する幅広い製品を製造する世界第5位のテーブル用グラス製造会社であり、その製品はフランス、スペイン、アメリカをはじめ、ブラジル、フィリピン、中国を含む世界135カ国に輸出されている(甲5、甲6)。
 ちなみに、申立人標章は、英国、エジプト、チュニジア、オマーン、UAE、イスラエル、インド、シンガポール、フィリピン、オーストラリア、ブラジル、ウルグアイ、メキシコなどで登録になっており、欧州連合商標、米国でも出願中である(甲12)。
 世界でも著名なトルコを代表するテーブル用グラス製品メーカーのハウマークとしてグローバルに権利化が図られ、使用されている。
(2)本件商標と申立人標章の類否について
 上記4(3)のとおり、本件商標と申立人標章は、相紛らわしい類似する関係にある。
(3)不正の目的について
 上述のとおり、本件商標は、国内及び外国で周知著名な申立人標章と類似しており、これを同一類似又は関連性が深い第21類の指定商品に使用することは、需要者に混同を招く可能性があり、申立人標章の「グラス、食器類」等の商品における信用にフリーライドするおそれがある。
 仮に、本件商標権者に、そのようなフリーライドする意思がないとしても、申立人にとって、需要者が、申立人商品を本件商標権者の製造に係る「グラス・食器類」と誤認混同することは、今まで申立人が培ってきた周知商標の出所表示機能、品質保証機能を毀損することになり、ブランドの持つ信用名声を希釈化するおそれがある。
 これは、先行商標権者(申立人)に多大な損害を与えるものであり、かかる損害が予見され、需要者の間でも混同が生じることとなる商標の使用は、不正の目的を持って商標の使用をするものといえる。
 したがって本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
 
第4 当審の判断
 1 申立人標章の周知性について
(1)申立人の提出した証拠、主張によれば、以下のとおりである。
 ア 申立人は、トルコで1948年に設立された、製造業、旅行業、建設業の事業を営む企業グループであり(申立人主張、甲3、甲4)、申立人のグループ会社であるLAV社は、1994年に設立された、1日当たり200万個に達する幅広いグラス製品を製造するテーブル用グラス製品製造会社であって、その製品は世界135カ国に輸出されている(申立人主張、甲5、甲6)。申立人及びLAV社のホームページには、申立人標章が掲載されている(甲3、甲6)。
 イ LAV社は、ウェブサイトで申立人商品に係るカタログを掲載していることがうかがえるところ、申立人は、外国語で記載されたカタログのみを提出している(甲7、掲載日不明、作成日令和5年11月24日)。
 ウ 申立人は、我が国において、2018年からテーブル用グラス製品を販売している。申立人は、甲第8号証が、2018年度から2023年度の、申立人による我が国への申立人商品の輸出額(審決注:「輸入」は輸出の誤記と判断した。)を示す資料及びINVOICEであると主張するが、そのほとんどに和訳はなく詳細は不明である。
 エ 旅行会社が運営するトルコ情報サイト「TURKISH CULTURE CLUB」に、「トルコグラス(チャイグラス)とは?特徴や選び方・買い方のコツを解説」の記事中に、「LAVもよく知られているメーカーです。」の記載があるところ、その掲載日は不明である(甲9)。
 オ 申立人は、申立人標章の文字からなる標章を、世界各国で商標登録又は商標登録出願をしている(甲12)。
(2)判断
 ア 上記(1)アないしオによれば、申立人のグループ会社のLAV社は、1994年に設立されたテーブル用グラス製品製造会社であり、我が国においても2018年からテーブル用グラス製品を販売していることがうかがえる。
 イ しかしながら、提出された資料によっては、申立人商品に関して申立人標章の使用が開始された時期は不明であって、申立人商品に係るカタログ(甲7)についても、外国語で記載されている上、頒布先、頒布数及び利用者数等は不明である。
 ウ また、我が国への商品の輸出額を示す資料(甲8)にしても、部分的に和訳が付いているもののほとんどが外国語で記載されており、一部に「17・・・JAPONYA」の記載があることから、日本と関連する書類と推認はされるものの、詳細は不明である。さらに、申立人商品が日本へ輸出販売されていることが推認されるとしても、日本のどこでその商品が販売されているのか不明であり、その販売商品に申立人標章が使用されているのか等詳細は確認できないし、輸出額についても、他の同業者のそれと比較することができないため、この輸出額の多寡について判断することができない。
 エ LAV社が紹介されているインターネット記事についても、上記(1)エのわずか1件にすぎず、その掲載日及びアクセス数も不明であり、その記事には申立人標章は掲載されていない。
 オ そのほか、申立人が、申立人標章の文字からなる標章を、世界各国で商標登録又は商標登録出願をしている事実は、申立人標章の周知性を直接的に裏付けるものではない。
 カ そして、上記以外に申立人商品に関する国内及び外国における販売数、広告の方法、市場シェア等の周知・著名性を数量的に判断し得る具体的な証拠は提出されていない。
 キ 以上のことを総合的に勘案すると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人標章が申立人の業務に係る商品「テーブル用グラス製品」を表示する商標として、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
 2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標と申立人標章の類否
 本件商標は、別掲1のとおり、LとVのモノグラムからなり、申立人標章は別掲2のとおり、デザイン化された「LAV」の文字からなり、両者は、それぞれの構成に照らし、外観上、判然と区別し得る差異を有するというのが相当である。また、本件商標は、欧文字2文字からなるモノグラムであって、特定の称呼は生じないものであり、申立人標章からは、その構成文字に相応して「エルエーブイ」又は「ラブ」の称呼を生じるものであるから、称呼上も明瞭に聴別できるものである。
 そして、本件商標は、かばんや被服等における本件商標権者(ルイヴイトン)の取り扱う商品の商標として我が国及び外国の需要者に広く認識されているものであって、本件商標の指定商品との関係においても、本件商標に接する需要者、取引者は、本件商標権者の商標であることを想起、認識するというのが相当であるから、本件商標からは、ルイヴイトンのブランドマークの観念を生じるものである。他方、申立人標章を構成する「LAV」の文字は辞書等に掲載はないから、造語と認められ、観念は生じないから、本件商標と申立人標章は、観念において相紛れるおそれのないものである。
 そうすると、本件商標と申立人標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(2)そして、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人標章が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
(3)以上よりすれば、本件商標と申立人標章の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
 3 商標法第4条第1項第15号該当性について
 上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人標章が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
 また、上記2のとおり、本件商標と申立人標章は外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
 そうすると、本件商標は、申立人標章の独創性の程度、本件商標の指定商品と申立人標章の使用商品などの関連性の程度などを考慮しても、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人標章を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。その他、本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
 4 商標法第4条第1項第19号該当性について
 上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人標章が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものとはいえない。
 また、本件商標は、上記2のとおり、申立人標章とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、申立人標章を連想又は想起させることのないものである。
 さらに、申立人提出の証拠によっては、本件商標が申立人標章の出所識別機能を希釈化させる又はその信用、名声、顧客吸引力を毀損させるなど不正の目的をもって使用するものというべき事情は見いだせない。
 そうすると、本件商標は、申立人標章の信用、名声などにただ乗りする、毀損する、あるいは出所識別機能を希釈化するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
 5 まとめ
 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、その登録は同項の規定に違反してされたものとはいえない。
 他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
 したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
 よって、結論のとおり決定する。
 
 


        令和 6年 7月23日

     審判長  特許庁審判官 大森 友子
          特許庁審判官 清川 恵子
          特許庁審判官 白鳥 幹周

 
 
別掲1 本件商標
 
別掲2 申立人標章(色彩は原本参照。)
 
 
 
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〔決定分類〕T1652.25 -Y  (W21)
            271
            222

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年 7月23日  審判書記官  奥田 智子