異議の決定


異議2024-685005
Temple Fields, Central Road Harlow, Essex CM20 2BH(United Kingdom)
 商標権者  
Synthomer (UK) Limited
大阪府大阪市北区中之島三丁目2番4号 中之島フェスティバルタワー・ウエスト
 代理人弁理士
弁理士法人深見特許事務所
  
アメリカ合衆国 19803 デラウェア州 ウィルミントン パウダー ミル ロード 200 ビルディング 353
 商標登録異議申立人  
スペシャルティ プロダクツ ユーエス エルエルシー
東京都港区赤坂2丁目6番20号
 代理人弁理士
弁理士法人谷・阿部特許事務所
  


 国際登録第1643441号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。



 結 論
  
 国際登録第1643441号商標の商標登録を維持する。



 理 由
  
 1 本件商標
 本件国際登録第1643441号商標(以下「本件商標」という。)は、「POLYFOX」の欧文字を横書きしてなり、2021年(令和3年)10月27日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、同年11月12日に国際商標登録出願、第1類「Unprocessed polymer resins for industrial use; chemical compounds for use in the manufacture of polymers; chemical adhesives used in the manufacture of paints; chemical additives for use in manufacture of flow and levelling aids for floor care based products; chemical preparations for use in the manufacture of paints; Fluorinated Hydroxyl containing chemical reactant for use in the manufacture of polymers, namely, catalysts for use in the manufacture of polymers.」を指定商品として、令和5年10月19日に登録査定され、同年12月22日に設定登録されたものである。
 
 2 引用商標
 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由において引用する登録第5264779号商標(以下「引用商標」という。)は、「POLYOX」の欧文字と「ポリオックス」の片仮名を二段に書した構成からなり、平成20年10月24日に登録出願、第1類「化学品,化学剤,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),陶磁器用釉薬,原料プラスチック,水溶性樹脂,熱可塑性樹脂」並びに第2類、第3類及び第5類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同21年9月11日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
 
 3 登録異議の申立ての理由
 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
(1)本件商標と引用商標の対比
 ア 本件商標「POLYFOX」は、その欧文字より「ポリフォックス」の称呼を生じると考えるのが自然である。また、造語と考えられるので、特定の観念は生じない。
 イ 引用商標は、欧文字「POLYOX」と片仮名「ポリオックス」を二段書きしてなり、「ポリオックス」の称呼を生じる。外観についてみると、片仮名部分は、欧文字部分の称呼を特定したものであるから、各部分は分離看取される。また引用商標も造語であり、特定の観念は生じない。
 ウ 本件商標の「ポリフォックス」の称呼と引用商標の「ポリオックス」の称呼を比較すると、両者は共に促音を含む6音からなるところ、称呼を識別する上で重要な要素を占める語頭音を含め、5音が共通している。両商標は、3音目の「フォ」と「オ」の音に差異を有するものの、「フォ(fo)」の音はその子音「f」が無声摩擦音で弱く発音されるため、母音の「o」に吸収されがちであり、「オ(o)」に近似する音となる。
 エ 過去の審決例においても、比較的聴別がし易いとされる語頭に「フォ」と「オ」の差異がある商標においてさえも、語調・語感が紛らわしく聴き誤りを生じるおそれがあるとして商標が類似するとの審決がなされている(甲3~甲6)。
 このような審決例に鑑みれば、本件のように当該差異音が中間部にある場合には聴き誤るおそれは非常に高い。
 オ 本件の場合は、差異音の後に、破裂音「クス」が続くことから、差異音の母音「o」の音調が強く残るので、両商標それぞれが一連に称呼されたときは、中間に位置する差異音の影響は小さくなり、両称呼の語調・音調が近似して聴覚される。
 したがって、両者は一音の相違にあって、その相違音が中間に位置し、母音を共通にする称呼が近似する商標である。
 カ 外観についてみると、両商標の欧文字を対比した場合、本件商標5文字目の「F」の有無に相違があるにしても、普通に用いられる方法で表された「POLY」及び「OX」の6文字は共通している。文字列の中間部分は特別に看者の目を引くようなものではなく、他の構成文字の全てを共通にするから、外観上、近似した印象を与える。
 キ 観念においては、両者はいずれも造語であり、特定の観念を生じないため、観念による識別は困難である。
 そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼及び外観において近似し、観念においては比較すべくもないものであるから、全体として類似した商標というべきである。
(2)指定商品の対比
 本件商標の指定商品はすべて、引用商標の第1類の指定商品と同一又は類似する。
(3)小括
 以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似し、指定商品においても同一又は類似する。
 
 4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
 ア 本件商標
 本件商標は、上記1のとおり、「POLYFOX」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、辞書類に載録された既成語ではなく一種の造語と認められるものであり、欧文字からなる造語は、通常、英語又はローマ字の読みに倣って発音されるものであるから、これよりは、「ポリフォックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
 イ 引用商標
 引用商標は、上記2のとおり、「POLYOX」の欧文字と「ポリオックス」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、下段の「ポリオックス」の片仮名部分は、上段の「POLYOX」の欧文字の読みを表したものと認められるから、引用商標よりは、「ポリオックス」の称呼が生じるものである。
 また、「POLYOX」及び「ポリオックス」の文字は辞書類に載録された既成語ではなく一種の造語と認められるものであるから、引用商標よりは「ポリオックス」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
 ウ 本件商標と引用商標の類否
 本件商標と引用商標とを比較すると、両商標の全体の外観は、片仮名の有無で相違し、また、本件商標と引用商標の欧文字部分を比較しても、中間に位置する「F」の文字の有無と7文字と6文字という構成文字数において差異を有するものであるところ、これらの差異は、比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さくなく、外観上、紛れるおそれはないものとみるのが相当である。
 次に、本件商標から生じる「ポリフォックス」の称呼と、引用商標から生じる「ポリオックス」の称呼を比較すると、両者は中間音における「フォ」と「オ」の音の差異を有するものであり、当該「フォ」と「オ」の音は、母音(o)の音を共通にするものの、それぞれ促音を伴うことから、当該差異音は強く発音・聴取されるものである。そして、この差異が7音及び6音という比較的短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
 さらに、観念においては、両商標はいずれも特定の観念を生じるものではないから、比較することができない。
 そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
 エ 小括
 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものと認めることはできない。
(2) 申立人の主張について
 申立人は、本件商標と引用商標は、外観において欧文字を対比した場合、欧文字の「F」の有無に差異があるとしても、その他の文字を共通にしているから近似した印象であり、両商標の称呼全体をそれぞれ一連に称呼するときには、称呼が近似する旨主張しているが、上記(1)ウのとおり、本件商標と引用商標は、両商標の外観、観念、称呼等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
 また、申立人は、過去の審決例を挙げて、本件商標も引用商標と類似した商標である旨主張しているが、商標の構成態様や指定商品等において本件とは事案を異にするものといえ、本件商標とこれらの事件を同一に論じ、該審決例等の存在をもって、本件商標の登録の適否の判断基準とするのは必ずしも適切とはいえない。
 したがって、申立人のかかる主張は採用することができない。
(3)むすび
 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、登録異議の申立てに係る指定商品についての登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その商標登録を維持すべきである。
 よって、結論のとおり決定する。
 


        令和 6年 8月 8日

     審判長  特許庁審判官 大森 友子
          特許庁審判官 清川 恵子
          特許庁審判官 白鳥 幹周

 
 
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〔決定分類〕T1651.261-Y  (W01)
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            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年 8月 8日  審判書記官  奥田 智子