審決


取消2022-670079

大韓民国 ソウル ソンパ-ク ペクジェゴブン-ロ 9-ギル 14 3階
 請求人
フォーカンパニー カンパニー リミテッド
  
大阪府大阪市北区中之島3丁目3番3号
 代理人弁理士
弁理士法人R&C
  
Suite 400, 13631 Progress Blvd. Alachua FL 32615(United States of America)
 被請求人
AxoGen Corporation
  
東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア ウエストタワー17F
 代理人弁理士
弁理士法人浅村特許事務所
  


 上記当事者間の国際登録第1297103号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 国際登録第1297103号商標の商標登録を取り消す。
 審判費用は、被請求人の負担とする。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第1297103号商標(以下「本件商標」という。)は、「AVIVE」の欧文字を書してなり、2015年(平成27年)9月16日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2016年(平成28年)3月15日に国際商標登録出願、第5類「Surgical implants comprised of biological tissues, namely, human and animal tissues for medical use, drug therapies, pharmaceutical, veterinary and sanitary preparations.」を指定商品として、平成28年(2016年)12月22日に設定登録されたものである。
 そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年1月12日である。
 なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)1月12日ないし同5年(2023年)1月11日である(以下「要証期間」という場合がある。)。
 
第2 請求人の主張
 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由として、本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
 なお、請求人は、下記の被請求人の答弁に対し、何ら弁駁していない。
 
第3 被請求人の答弁
 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
 1 本件商標権者は2002年に設立された米国法人であり、組織修復と再生、特に神経修復と再生に用いられる製品を開発している。
 2 本件商標に係る商品は、人臍帯膜を加工した、再吸収可能な軟組織バリアとして外科的に使用される医療製品(以下「使用商品」という。)であり、本件商標の指定商品に含まれているところ、使用商品は、2016年から米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)の基準にしたがって製造・販売がされていた。
 しかし、FDAの再生医療製品に関する2017年11月の発表により、本件商標権者の製造に係る製品が、生物製剤ライセンス申請が必要になる生物学的製品に分類される可能性が生じた。
 本件商標権者は使用商品の規制区分と要件についてFDAと協議を続けるため、2021年6月1日より販売を停止することを発表し、協議を続けているがFDAとの合意には達していない。
 使用商品のようなヒト組織製品を海外に輸出するためには、FDAの輸出・販売承認を取得することが推奨されているため、使用商品がヒト組織規則に準拠している外国政府証明書(CFG)を取得したが、その有効期間は2020年3月7日までであった。
 3 本件商標権者が直面しているのは、米国国内における規制である。しかし、この規制により米国国内で使用商品を製造販売することができない状態で、日本において使用商品の開発や販売を行うことは、経済的にもマーケティング的にも現実的に見て、不可能である。
 また、2020年3月に失効した上記2の外国政府証明書(CFG)を再取得することも、FDAの規制による分類が未決定であるため困難であった。
 本件商標権者は今日まで使用商品の米国本国での販売再開と国際的展開の基礎となるFDAによる適切な規制区分を求めて、FDAとの協議を積極的に続けている。
 4 このような事実から、本件商標権者が使用商品を日本国内で販売することができなかったことは、商標法第50条第2項の「正当な理由」に該当する。
 
第4 当審における審尋
 当審において、令和6年3月14日付け審尋により、被請求人に対し、被請求人の主張及び提出された証拠によっては、日本において本件商標の指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることが明らかにされていない旨の合議体による暫定的見解を示したうえで、当該暫定的見解に対し、意見があれば証拠とともに提出されたい旨の審尋を送付し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
 
第5 審尋に対する被請求人の回答
 被請求人は、上記第4の審尋に対し、何ら回答をしていない。
 
第6 当審の判断
 1 本件商標の使用について
 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標権者は2002年に設立された米国法人であり、組織修復と再生、特に神経修復と再生に用いられる製品を開発している(乙1、乙2)。
(2)本件商標権者の製造に係る製品は、米国外においても提供されており、当該提供には在日米軍基地での販売が含まれる(乙1、乙2)。
(3)使用商品(本件商標に係る商品)は2016年11月21日に米国で販売が開始されたが、2017年11月15日付けで公表されたFDAの再生医療政策の枠組み(規制)によって2021年6月に販売が停止された(乙1、乙2)。
 本件商標権者はFDAと協議を続けているものの現在においても使用商品の販売は再開されていない(乙1、乙2)。
 使用商品の日本を含む海外輸出において、本件商標権者は外国政府証明書を取得したが、当該証明書の有効期限は2018年3月8日ないし2020年3月7日であって、上記の規制のため更新又は再取得は行っていない(乙1、乙2)。
(4)使用商品が要証期間内外を問わず日本(在日米軍基地を含む)に輸出した又は日本に輸出するための手続を行ったことを示す証拠は提出されていない。
 2 本件商標を使用していないことについての正当な理由の有無について
(1)商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために使用をすることができなかった場合をいうと解すべきである。(東京高等裁判所 平成7年(行ケ)第124号判決、知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10160号判決、知的財産高等裁判所 平成22年(行ケ)第10012号判決参照)
(2)本件商標を使用していない正当な理由について、被請求人が主張する事由は、2017年11月15日付けで公表されたFDAの再生医療政策の枠組み(規制)によって、2021年6月に使用商品の販売が米国で中止され、それに伴い日本でも販売ができなくなったというものである。
(3)しかしながら、本件商標の国内登録日は平成28年(2016年)12月22日であり、要証期間の初日も令和2年(2020年)1月12日であって、2021年6月の使用商品の米国での販売停止までに相当の期間があったこと及び外国政府証明書の有効期間は、本件商標の国内登録日後で要証期間内の2020年3月7日までであり、かつ、米国での販売停止前であったにも関わらず、被請求人の主張は、FDAの規制により使用商品を日本で販売しなかった(できなかった)旨にとどまるものである。
(4)被請求人は、本件商標権者が要証期間内外を問わず、使用商品を我が国(在日米軍基地を含む)で販売するために手続を行ったことを示す証拠をなんら提出していない。
(5)被請求人は、本件商標の指定商品中、使用商品以外の商品については、本件商標を使用したことを証する証拠または使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
(6)そうすると、使用商品の米国における販売停止後に、日本で販売することが、経済的にもマーケティング的にも現実的に見て、不可能であるとしても、米国における販売停止までに、使用商品が日本において販売されていなかったこと、又は本件商標権者が、使用商品の日本での販売のための手続を行っていなかったこと、つまり、販売を行う準備もしていなかったことは、本件商標権者の判断であり、主として本件商標権者の事情によるものであって、その責めに帰すことができない事由とは認めることができないことから、本件商標を使用していないことが正当な理由によるものとは認められない。
(7)以上からすると、被請求人の主張する上記事由は、商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」には当たらないというべきであって、その他、本件商標を使用していないことに関し、「正当な理由」があるとは認められない。
(8)なお、本件商標が要証期間に日本国内で使用された証拠は提出されていない。
 3 まとめ
 以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標を使用していた事実を証明したものとは認められない。
 また、被請求人の主張する、本件商標をその指定商品に使用していない理由は、正当な理由には当たらず、その他、本件商標に関し、本件商標を使用していないことについて正当な理由があるものとは認められない。
 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
 よって、結論のとおり審決する。
 


        令和 6年 8月22日

     審判長  特許庁審判官 高野 和行
          特許庁審判官 大森 友子
          特許庁審判官 板谷 玲子

 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。         (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)        本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
  
審判長 高野 和行          
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T131 .1  -Z  (W05)

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年 8月22日  審判書記官  加賀 泉