異議の決定


異議2022-685021
41, EOULMADANG-RO 5-GIL, MAPO-GU SEOUL(Republic of Korea)(KR)
 商標権者  
IICOMBINED Co., Ltd.
アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92879 コロナ モンスター ウェイ 1
 商標登録異議申立人  
モンスター エナジー カンパニー
神奈川県横浜市港北区新横浜3-23-3 新横浜AKビル 5階 柳田国際特許事務所
 代理人弁理士
柳田 征史
  


 国際登録第1613571号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。



 結 論
  
 国際登録第1613571号商標の商標登録を維持する。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第1613571号商標(以下「本件商標」という。)は、「GENTLE MONSTER」の欧文字を横書きしてなり、2021年6月22日に国際商標登録出願、第18類「Portable cosmetic cases (sold empty); collars for pets; bags; shopping bags made of skin; briefcases; suitcases; purses; card cases [notecases]; wallets for tickets; umbrellas; canes.」及び第25類「Money belts [clothing]; sandals; footwear; sports wear; suits; infants' clothing; one-piece suits; jackets [clothing]; coats; underwear; shirts; ankle socks; winter gloves; scarfs; gloves [clothing]; headwear; baseball caps; winter face masks (clothing); belts [clothing].」を指定商品として、令和4年(2022年)7月6日に登録査定され、同年9月9日に設定登録されたものである。
  
第2 引用商標
 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標は、以下の1ないし4のとおりであり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。
 1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)は、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、平成22年7月8日に登録出願、第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同年12月24日に設定登録されたものである。
 2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成18年6月9日に登録出願、第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」を指定商品として、同19年6月22日に設定登録されたものである。
 3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)は、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなり、平成22年7月8日に登録出願、第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同23年2月25日に設定登録されたものである。
 4 登録第5788676号商標(以下「引用商標4」という。)は、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなり、平成26年12月25日に登録出願、「運動用ヘルメット」を含む第9類、「バッグ,バックパック,財布,ブリーフケース,スーツケース,キーケース,ダッフルバッグ,書類入れかばん,ハンドバッグ,汎用スポーツバッグ,汎用のキャリーバッグ,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を含む第18類及び「被服,履物,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を含む第25類並びに第16類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同27年8月28日に設定登録されたものである。
 なお、引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は、以下「引用商標」という。
 
第3 登録異議の申立ての理由
 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第457号証(枝番号を含む。)を提出した。
 以下、証拠については、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。
 1 申立人の使用に係る「MONSTER」及び「モンスター」の周知著名性
(1)MONSTERブランドの創設及び「MONSTER」の使用
 申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドを創設し、これ以降、現在に至るまで、「MONSTER」をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として使用している。
 申立人商品は、2002年に米国でMONSTERブランドの第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。
 申立人商品には、2002年以降現在まで一貫して、「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名(例えば、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER PIPELINE PUNCH」等)が採用されている。また、これらの個別製品の包装容器は同じデザインで統一されており、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)を独立して見る者の目をひきつける態様で顕著に表示している。
 このように、規則的なネーミング法(すなわち「MONSTER」に他の語を結合する方法)で命名された個別製品名と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字を顕著に表示した統一的デザインの包装容器を特徴とする申立人商品は、需要者の間でたちまち人気となり、申立人のMONSTERブランドのエナジードリンク事業を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2~甲33、甲51~甲58、甲391~甲393)。
 国内では、2012年5月の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー 缶 355ml)及び「MONSTER KHAOS」(モンスター カオス 缶 355ml)発売以降、現在まで25種類の申立人商品(リニューアル商品を含む。)を販売している。
(2)広告宣伝活動
 申立人商品に関する広告宣伝活動は、幅広く継続的なものであり、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む。)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む。)、爪の図柄と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字(以下、これらを併せて「MONSTERブランドマーク」という。)を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている。
 また、申立人は、申立人商品の中心的需要者層である10~30代の若い世代(特に男性)に人気が高いモータースポーツ、エクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行うとともに、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウントを開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。
(3)商標権侵害物品の輸入差止
 需要者におけるMONSTERブランドのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から度々発生している。
(4)国内外における商標登録
 MONSTERブランドマークについて、申立人は、引用商標を始めとして、国内外において多数の商標登録を取得している(甲447~甲453)。
(5)ブランド認知度及び市場占有率
 複数の第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、既に2013年時点で申立人商品の国内市場占有率は25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかである。2013年以降も、申立人商品は着実に売上げを伸ばしており、若い世代の男性を中心とした従来の主要需要者層にとどまらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく目立つ態様で表示された爪の図柄が人目をひきつけ、男性のみでなく女性の間でもMONSTERブランドの認知度を高めてきた。2018年には、申立人商品の販売実績は1千万ケースに近づき、それまで首位の「レッドブル」を超えて市場占有率トップに立った(甲311~甲322、甲383~甲385、甲433)。
(6)「MONSTER」及び「モンスター」の表示で認識されていたこと
 上記のような販売実績を通じて、申立人商品は、飲料業界で「モンスター」と称され、「MONSTER」又は「モンスター」と表示され、「MONSTER(モンスター)」のブランドとして認識されている(甲10、甲16、甲17、甲34、甲42ほか)。
 この点に関しては、特許庁の審査においても、「モンスター」は、申立人が飲料等について使用する商標「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」の略称として需要者の間で広く認識されていると認定されている(甲433)。
(7)小括
 以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
 2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標「GENTLE MONSTER」の文字は、成語ではなく、熟語的観念を生じるものではないから、常に一体不可分のものとして捉えなければならない事情はない。一方、「GENTLE」の文字はその音訳が外来語の「ジェントル」(甲456、甲457)として、「MONSTER」の文字はその音訳が外来語の「モンスター」(甲454、甲455)として、それぞれ親しまれていることから、本件商標は、「GENTLE」と「MONSTER」との2語を1文字分のスペースを介して結合したものとして容易に看取される。
 本件商標は、「MONSTER」の文字、「モンスター」の称呼及び「モンスター」の観念を包含する点で、引用商標及び「MONSTER」を使用した申立人商品の個別製品名と一致し、これらの申立人の使用に係る商標と外観、称呼及び観念の印象が類似する。
 また、本件商標の構成文字は、申立人商品に使用されている全ての個別製品名と同一のネーミング規則、すなわち、「MONSTER」に他の語を結合する方法によって構成されている点でも申立人の使用に係る商標と一致する。
 したがって、本件商標は、申立人の使用に係る商標と類似性の程度が極めて高いことが明らかである。
(2)本件商標の第18類に係る指定商品は、引用商標4に係る指定商品中、第18類「バッグ,バックパック,財布,ブリーフケース,スーツケース,キーケース,ダッフルバッグ,書類入れかばん,ハンドバッグ,汎用スポーツバッグ,汎用のキャリーバッグ,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,愛玩動物用被服類」と同一又は類似のものである。
 また、本件商標の第25類に係る指定商品は、引用商標4に係る指定商品中、第25類「被服,履物,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と同一又は類似のものである。
 さらに、本件商標の指定商品は、上記のMONSTERブランドのライセンス商品、及び申立人商品の販売キャンペーンの賞品・景品として需要者に提供されている非売品MONSTERグッズと同一又は類似のもの、あるいは、これらと製造部門、用途、機能、販売場所、需要者層を共通にする極めて関連性が強いものであることが明らかである。
 本件商標の指定商品の需要者は一般消費者を含むものであるから、その通常の需要者の注意力の程度はさほど高いものとはいえない。
 先に述べたとおり、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び査定時に申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた。
(3)したがって、本件商標が使用された場合、これに接した需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人を直観し、当該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的関係を有する者の取扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。
 また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力を希釈化するものであり、さらに、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
 3 商標法第4条第1項第7号該当性
 本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがある。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
 
第4 当審の判断
 1 「MONSTER」、「モンスター」の周知著名性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張並びに職権による調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次の事実が認められる。
 ア 申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスター カオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、同年12月には累計157万箱となった(甲7~甲9)。
 その後、申立人は、2022年まで毎年、新製品やリニューアル商品を合計25種類以上販売した(甲7~甲13、甲59~甲62、甲101~甲103、甲127~甲130、甲252、甲253、甲256、甲257、甲323、甲324、甲353~甲361、甲434~甲442、甲445、甲446ほか)。
 イ 申立人商品に係るほとんどの種類の商品の容器には、3本の爪痕のような図形、デザイン化された「MONSTER」の文字(以下、この文字部分を「MONSTERロゴ」という。)及び「ENERGY」の文字を3段に表した別掲2のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。)が表示され、また、全ての申立人商品には、「MONSTERロゴ」が大きく表示されている(甲7~甲13ほか)。
 そして、これらの申立人商品を指称する際は、「モンスターエナジー」ブランドと総称されている(甲8、甲10、甲59、甲60、甲129、甲130ほか)。
 ウ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲2のとおりの構成よりなる商標を表示している(甲73~甲80、甲82ほか)。
 エ 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
 オ 日本経済新聞社の2019年3月29日付け「(飲料HOT&COOL)モンスターエナジー、レッドブル超え」をタイトルとするウェブページには、「日経MJ」として、「飲料総研によると2018年の販売実績は1千万ケースに近づき、それまでカテゴリーの首位を走っていた「レッドブル」を超えた。」の記載がある(職権調査:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43024750Y9A320C1HE4A00/)。
 カ 2022年5月7日付け「モンスターエナジー、レッドブルを駆逐しトップ独走状態の秘密・・・周到な販売戦略」をタイトルとするウェブページには、「全国のドラッグストアのPOSデータをもとにした買物指数によると、エナジードリンクの火付け役だった「レッドブル・エナジードリンク」を抑え、モンスターエナジーの売り上げが独走状態になっている。今や日本国内のトップシェアを獲得しているのだ。」の記載がある(職権調査:https://biz-journal.jp/2022/05/post_292763.html)。
 キ 2022年10月25日付け「日経 XTREND」と称するウェブページには、「エナジードリンク飛躍、販売額4年で3倍増 日本コカは苦戦」のタイトルの下、「エナジードリンク、メーカー別販売金額シェアの推移」の図があり、それには2018年9月ないし2022年9月として、「モンスターエナジージャパン」がいずれも40%前後でトップシェアとされている(職権調査:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/02035/)。
 ク ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTERENERGY」であった(甲319)。
 ケ JMR生活総合研究所による消費者調査(No.196「エナジードリンク(2014年7月版)」)によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であり、同消費者調査No.232「エナジードリンク(2016年8月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲311、甲312)。
 コ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.269「エナジードリンク(2018年5月版)」には、「モンスター、レッドブル、リアルゴールド 寡占化すすむエナジードリンク市場」のタイトルの下、「今回の調査では、「リアルゴールド(日本コカ・コーラ)」「レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)以下レッドブル」「モンスターエナジー(アサヒ飲料)」の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載があり、同消費者調査データ No.293「エナジードリンク(2019年5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルの下、「今回の調査でも、前回(2018年5月版)と同様、「リアルゴールド(日本コカ・コーラ)」「レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)以下レッドブル」「モンスターエナジー(アサヒ飲料)」の3ブランドが複数の項目で上位3位を独占した。」の記載があり、同消費者調査 No.365「エナジードリンク(2022年5月版)」には、「「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず」のタイトルの下、「認知では、首位が「リアルゴールド」、2位が「レッドブル」、3位が「モンスターエナジー」で、順位は前回と同様だが、「レッドブル」は49.8%から57.6%に、「モンスターエナジー」は49.3%から55.4%に伸ばした。」の記載がある(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking269.html https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking293.html https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking365.html)。
 サ 申立人及びアサヒ飲料株式会社(以下、両者を併せて「申立人等」という。)は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品に係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスターエナジー」と表示し、また、申立人等以外のウェブページにおいても、申立人商品は「モンスターエナジー」と表示されている。なお、「MONSTER」及び「モンスター」の文字は、申立人商品の写真とともに表されていることが散見される(甲63、甲69、甲71、甲79、甲101~甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124、甲132、甲162、甲163、甲165、甲241、甲251、甲256、甲258~甲260ほか)。
(2)上記(1)からすれば、申立人等は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで25種類以上の申立人商品を販売していること、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったことが認められ、申立人商品の販売実績は、2018年(平成30年)に1千万ケースに近づき、以後2022年まで毎年販売シェア40%前後かつ第1位であると推認できることに加え、エナジードリンク「モンスターエナジー」のブランド認知度の調査において、2014年4月は47.6%、同年7月は31%と差異はあるもののいずれの調査でも第2位であり、2016年、2018年及び2019年はいずれも3位以内であることが推認でき、2022年は55.4%で第3位であったことが認められるから、申立人商品は、本件商標の登録出願日以前から、登録査定日においても、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
(3)そして、申立人商品のほとんどの種類の商品の容器には、別掲2のとおりの構成よりなる引用商標2と同一の商標が表示され、申立人等及びニュースリリースなどにおいて申立人商品を「モンスターエナジー」と表していることや、スポーツ競技会、イベント及び各種のキャンペーンにおける申立人の広告宣伝等を踏まえてみると、別掲2のとおりの構成よりなる引用商標2と同一の商標並びに「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人等の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
(4)申立人は、「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されている旨主張している。
 しかしながら、申立人商品の容器には、別掲2のとおりの構成よりなる商標であって、引用商標2と同一と認められる商標が表示されており、当該商標の構成中には「MONSTER」の文字が含まれているものの、当該「MONSTER」の文字は特殊な「MONSTERロゴ」にて表されており、また、「ENERGY」等の他の文字及び需要者の間に広く認識されている3本の爪痕のような図形が近接し合うように表示されている。
 また、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスター、記事等において、申立人商品が「モンスター」又は「MONSTER」と表示されているものがあるものの、当該ニュースリリース、ポスター、記事等には、「ENERGY」等の他の文字及び需要者の間に広く認識されている3本の爪痕のような図形も併せて表示又は記載されている。
 加えて、「モンスター」及び「MONSTER」の文字(語)それ自体は、一般に親しまれた既存の語であって、独創的なものではない。
 そうすると、「MONSTER」の文字からなる商標又は「モンスター」の文字からなる商標は、申立人の業務に係るエナジードリンクを表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められないから、申立人の当該主張を認めることはできない。
 2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性及び独創性の程度について
 上記1のとおり、3本の爪痕のような図形、「MONSTERロゴ」及び「ENERGY」の欧文字を3段に表してなる引用商標2並びに「MONSTER ENERGY」の欧文字からなる引用商標3及び引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人等の業務に係る商品を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものの、引用商標1については、広く認識されているとはいえない。
 また、引用商標1を構成する「MONSTER」の文字は、我が国で親しまれている成語であるから、独創性の程度は極めて低いものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
 ア 本件商標について
 本件商標は、「GENTLE MONSTER」の欧文字を横書きしてなり、当該文字に相応して「ジェントルモンスター」の称呼を生じ、当該文字は辞書等に載録されていることが見いだせないから特定の観念を生じない。
 イ 引用商標について
 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応して「モンスター」の称呼を生じ、「モンスター(怪物)」の観念を生じるものである。
 引用商標2は、別掲1のとおり、3本の爪痕のような図形、「MONSTERロゴ」及び「ENERGY」の欧文字からなり、全体の構成文字から、「モンスターエナジー」の称呼を生じ、また、その構成中、大きくデザイン化されている「MONSTERロゴ」部分に着目して「モンスター」の称呼及び「モンスター(怪物)」の観念を生じるといえる。
 引用商標3及び引用商標4は、上記第2の3及び4のとおり、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼を生じる。
 また、上記1のとおり、申立人商品のほとんどの種類の商品の容器に、3本の爪痕のような図形、「MONSTERロゴ」及び「ENERGY」の欧文字が表示され、申立人等及び同人に係るニュースリリースなどにおいて、申立人商品を「モンスターエナジー」と表していることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人等の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているから、引用商標2ないし4からは、「申立人のブランド」としての観念を生じるといえる。
 ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標を構成する「GENTLE MONSTER」の文字と引用商標1を構成する「MONSTER」の文字とを比較すると、両者は前半における「GENTLE」の文字の有無の差異を有し、この差異が両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものである。
 次に、本件商標から生じる「ジェントルモンスター」の称呼と引用商標1から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、両者は前半部における「ジェントル」の音の有無の差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、聞き誤るおそれのないものである。
 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標1は「モンスター(怪物)」の観念を生じるものであるから、観念において相紛れるおそれのないものである。
(イ)本件商標の構成文字「GENTLE MONSTER」と引用商標2とを比較すると、引用商標2は、別掲2のとおり、3本の爪痕のような図形、「MONSTERロゴ」及び「ENERGY」の欧文字の3段からなり、図形の有無の差異及び「GENTLE」の欧文字と「ENERGY」の欧文字の相違により、本件商標とは外観において相紛れるおそれはない。
 また、本件商標から生じる「ジェントルモンスター」の称呼と引用商標2から生じる「モンスターエナジー」又は「モンスター」の称呼とは、前半における「ジェントル」の音の有無と後半における「エナジー」の音の有無に差異を有するから、両者は、明瞭に聴別できる。
 さらに、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標2は、エナジードリンクの需要者の間に広く知られている「申立人のブランド」の観念が生じるから、両者は、観念において相紛れるおそれはない。
(ウ)本件商標の構成文字「GENTLE MONSTER」と引用商標3及び引用商標4の構成文字「MONSTER ENERGY」とを比較すると、前半部における「GENTLE」の欧文字の有無と後半部における「ENERGY」の欧文字の有無において明らかな差異を有し、外観において相紛れるおそれはない。
 また、本件商標から生じる「ジェントルモンスター」の称呼と引用商標3及び引用商標4から生じる「モンスターエナジー」の称呼とは、前半における「ジェントル」の音の有無と後半における「エナジー」の音の有無に差異を有するから、両者は、聴別できる。
 さらに、本件商標からは、特定の観念は生じないのに対し、引用商標3及び引用商標4からは、エナジードリンクの需要者の間に広く知られている「申立人のブランド」の観念が生じるから、両者は、観念において相紛れるおそれはない。
(エ)小括
 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性について
 本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第18類及び第25類に属する商品であるところ、申立人の業務に係るエナジードリンクとは、商品の生産部門、販売部門、原材料、用途が相違するといえるから、これら商品の関連性があるとはいえない。
(4)混同のおそれについて
 上記(1)のとおり引用商標2ないし引用商標4は、申立人の業務に係る商品を表示するものとしてエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものの、引用商標1についての周知性は認められず、独創性の程度は極めて低いものであって、上記(2)ウのとおり本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、上記(3)のとおり本件商標の指定商品と申立人商品との関連性がないことから、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(5)申立人の主張について
 申立人は、本件商標「GENTLE MONSTER」は成語ではなく、これを常に一体不可分のものとして捉えなければならない事情はなく、また、「GENTLE」及び「MONSTER」の文字は英単語の「gentle」及び「monster」に通じ、その音訳「ジェントル」及び「モンスター」が外来語として一般に広く親しまれていることから、「GENTLE」と「MONSTER」の2語を結合したものであると容易に認識、理解され、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことから、本件商標からは「MONSTER」が出所識別標識として需要者に強い印象を与える旨を主張している。
 しかしながら、本件商標の構成文字「GENTLE MONSTER」は、同書同大でまとまりよく一体的に表されているものであって、これより生じる「ジェントルモンスター」の称呼はよどみなく一連に称呼し得るものであり、また、上記(1)のとおり、引用商標2ないし引用商標4は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているといえるものの、引用商標1は周知性が認められず、独創性の程度は極めて低いものであり、さらに、「MONSTER」の語は、他の語と結合して「○○ MONSTER」「MONSTER ○○」のように各種商品などに用いられていることからすれば、本件商標は、たとえ、その構成中「GENTLE」の文字が英単語「gentle」に通じ、その音訳「ジェントル」が一般に広く親しまれている外来語であるとしても、かかる構成及び称呼等を併せて考慮すれば、本件商標は、看者をして「MONSTER」の文字部分が出所識別標識として需要者に強い印象を与えることなく、「GENTLE MONSTER」の構成文字全体をもって、一体不可分のものとして認識、把握させるものと判断するのが相当である。
 したがって、申立人の当該主張は採用できない。
(6)小括
 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
 3 商標法第4条第1項第7号該当性について
 本件商標は、上記第1のとおり、「GENTLE MONSTER」の欧文字からなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
 また、上記2(2)のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、上記2(4)のとおり、商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。
 その他、本件商標の登録出願の目的や経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
 そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
 4 むすび
 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとはいえず、その登録は同項の規定に違反してされたものとはいえない。
 他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
 したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
 よって、結論のとおり決定する。


        令和 6年 5月28日

     審判長  特許庁審判官 山田 啓之
          特許庁審判官 鈴木 雅也
          特許庁審判官 杉本 克治

 
別掲1(引用商標2)
 
別掲2(申立人商品に表示されている商標)
 
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〔決定分類〕T1651.22 -Y  (W1825)
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上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年 5月28日  審判書記官  奥田 智子