理 由 |
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1 手続の経緯 |
本願は、2021年(令和3年)2月9日に欧州連合知的財産庁においてした商標登録出願に基づき、パリ条約第4条による優先権を主張して、同年8月9日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 |
2022年(令和4年) 5月30日付け:暫定拒絶通報 |
2022年(令和4年) 9月 8日 :意見書の提出 |
2022年(令和4年)11月11日付け:拒絶査定 |
2023年(令和5年) 2月24日 :審判請求書の提出 |
2023年(令和5年) 4月10日 :手続補正書の提出 |
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2 本願商標 |
本願商標は、別掲のとおり、「AJ TROLLEY」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなり、第20類「Furniture.」を指定商品として登録出願されたものであり、指定商品については、上記1の手続補正書により、第20類「Trolleys[furniture].」と補正されたものである。 |
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3 原査定の拒絶の理由の要旨 |
原査定は、「本願商標の構成中前半の「AJ」の文字は、商品の品番又は規格等を表示するための記号・符号の一類型として取引上、普通に採択・使用される欧文字2字の一種といえる。また、構成中後半の「TROLLEY」の文字は、本願の指定商品「家具」との関係では、「(料理などを運ぶ)ワゴン」という商品の名称として理解される語といえる。してみると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は全体として「品番等が「AJ」のワゴン」といった意味合いを理解・認識するにとどまるから、本願商標は、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記意味合いに相応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
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4 当審の判断 |
本願商標は、別掲のとおり、「AJ TROLLEY」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるものである。 |
そして、その構成中の「TROLLEY」の文字(語)は、「手押し車、トロッコ、(料理などを運ぶ)ワゴン、市街電車」等を意味する語として辞書に載録されているもの(研究社 新英和中辞典 第7版)であるが、一般的には、「トロリーバス、市街電車、手押し車」等の意味合いで知られている語であって、「(料理などを運ぶ)ワゴン」を想起させるものとはいい難い。 |
また、欧文字の2字が、商品の品番又は規格等を表示する記号・符号として類型的に使用されるとしても、「AJ TROLLEY」の文字からなる本願商標の構成において、その構成中の「AJ」の文字部分が商品の品番又は規格等を表したものと認識されるとはいい難く、むしろ、構成全体をもって特定の意味を有しない一種の造語として認識されるというべきである。 |
さらに、当審において調査するも、本願商標を構成する「AJ TROLLEY」の文字が、その補正後の指定商品との関係において、取引上、原審説示の意味合いを表すものとして、普通に使用されている事実を見いだすことはできず、また、当該文字に接する取引者、需要者が、当該文字を原審説示の意味合いを表したものと認識するというべき事情も見いだせなかった。 |
そうすると、本願商標は、その構成態様からすれば、「品番等が「AJ」のワゴン」であることを表したものと認識されるというよりは、むしろ、構成全体をもって自他商品の識別標識として認識されるというべきであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえない。 |
また、本願商標は、これをその補正後の指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生じるおそれがあると認めることはできない。 |
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 |
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |