理 由 |
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1 本件商標 |
本件国際登録第1679885号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2022年(令和4年)1月20日にChinaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年7月5日に国際登録出願、第9類に属する別掲2のとおりの商品を指定商品とし、令和5年10月30日に登録査定、同年12月15日に設定登録されたものである。 |
そして、本件商標は、2024年(令和6年)1月16日に本件商標に係る基礎出願の効力が停止されたため、議定書第6条(4)の規定により国際登録において指定されていた商品の登録がすべて取り消され、国際登録簿におけるその取り消しの登録が同年6月20日になされている。 |
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2 引用商標 |
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第1425634号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、2018年(平成30年)1月18日にJamaicaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年7月18日に国際登録出願、第9類に属する別掲4のとおりの商品を指定商品とし、令和元年11月15日に設定登録されたものである。 |
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3 登録異議の申立ての理由 |
(1)申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 |
(2)本件商標が取り消される理由 |
本件商標は、引用商標と相紛らわしい類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものを含むものである。 |
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
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3 当審の判断 |
(1)本件商標 |
本件商標は、別掲1のとおり、薄いオレンジ色地で、右下の角部分がめくれている隅丸正方形内に白抜きで筆記用具(以下「本件筆記用具)という。)を右上から左下に斜めに描いている図形からなるところ、当該図形は、何らかの筆記用具を表示したものとの印象を受けるものの、これよりは特定の称呼及び観念は生じないものである。 |
(2)引用商標 |
引用商標は、別掲3のとおり、オレンジ色地の隅丸正方形内に白抜きで、上部にキャップ等の付属品がある筆記用具(以下「引用筆記用具」という。)を右上から左下に斜めに描き、引用筆記用具の先端から右に当該正方形の右枠まで横に直線を書している図形からなるところ、当該図形は、何らかの筆記用具を表示したものとの印象を受けるものの、これよりは特定の称呼及び観念は生じないものである。 |
(3)本件商標と引用商標の類否について |
本件商標と引用商標は、外観において、ともにオレンジ色地の隅丸正方形内に白抜きした筆記用具をモチーフにしている点においては共通にするものである。 |
しかしながら、本件筆記用具は、全体的に太く、短く、かつ、上部にキャップ等を有してない筆記用具であるのに対して、引用筆記用具は、全体的に細く、長く、かつ、上部にキャップ等の付属品を有している筆記用具である点において差異がある。 |
また、本件商標は、本件筆記用具のほかには何も描かれていないものに対して、引用商標は、引用筆記用具のほかに、横の直線を描いている点において差異がある。 |
さらに、本件商標と引用商標は、背景図形について、ともに隅丸正方形であることは共通にするとしても、本件商標は右下の角部分がめくれている描写である点において、引用商標と差異を有しているものである。 |
そうすると、本件商標と引用商標は、全体から受ける印象は明らかに相違するものであり、外観において相紛れるおそれはない。 |
そして、本件商標と引用商標は、ともに特定の称呼及び観念を生じないものであるから比較することはできない。 |
してみると、本件商標と引用商標は、称呼及び観念において比較することはできないとしても、外観において、相紛れないものであるから、これらを総合的に勘案すると、両商標は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標といえるものである。 |
その他、本件商標と引用商標が類似する理由を見いだすことはできない。 |
したがって、両商標の指定商品の類否を判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 |
(4)その他 |
申立人は、令和6年5月17日付け手続補正書において、「本件商標は、中国における出願(出願番号:62285519)を基礎として、日本国に国際商標登録出願されたものであるところ、当該基礎出願は、中国特許庁に、引用商標と混同のおそれがあると判断され拒絶を受けた。本件商標の権利者は、これに対する応答を行わなかったため、当該基礎出願は、直に消滅するものであり、本件商標は、当該基礎出願の消滅に伴い、取り消されるものである。そこで、申立人は、本異議の申立てにつき、引用商標権者と交渉を行うこところであるから、当該交渉の結果が出るまで、審理を猶予してほしい。」旨申し出ていたため、当合議体は、同年6月13日付け審尋において期間を定めて、商標権者に対して意見を求めたところ、指定した期間内に応答がなかったため、これ以上審理の遅延を猶予する合理的な理由はないものと判断し、本件の審理を進めた。 |
(5)むすび |
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 |
よって、結論のとおり決定する。 |
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別掲1 本件商標(色彩は原本を参照。) |
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別掲2 本件商標の指定商品 |
第9類「Downloadable mobile applications; computer software applications, downloadable; tablet computers; personal digital assistants in the shape of a watch [data processing apparatus]; notebook computers; computers; computer hardware; computer software, recorded; pedometers; bathroom scales; smartphones; network routers; television apparatus; earphones; cameras [photography]; connected bracelets [measuring instruments]; chips [integrated circuits]; digital door locks; 3D spectacles; mobile power (rechargeable battery).」 |
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別掲3 引用商標(色彩は原本を参照。) |
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別掲4 引用商標の指定商品 |
第9類「Computer software for creating, editing and printing documents comprised of text and graphics and utility programs for use therewith; computer software for use in word processing, desktop publishing, image editing, graphics creation and editing, drawing, computer aided design and drafting.」 |
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