理 由 |
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第1 本件商標 |
本件国際登録第1496667号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2018年11月23日にFranceにおいてした商標登録出願に基づく優先権を主張し、2019年(令和元年)5月15日に国際商標登録出願、第7類、第9類及び第42類に属する別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和3年6月11日に登録査定、同年11月12日に設定登録されたものである。 |
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第2 引用商標 |
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、別掲3のとおり「SCANTEC」の文字を横書きしてなるもの(以下「引用商標」という。)であり、請求人が「表面欠陥検査装置」(以下「引用商品」という場合がある。)について使用し、需要者間で広く知られていると主張するものである。 |
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第3 請求人の主張 |
請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類の全ての指定商品、及び第42類の指定役務中「computer system analysis; design and development of computers and software for measuring; research and development of new products for third parties in the field of precision measuring; computer system design; software development in the context of software editing; software development, software installation, maintenance of computer software; calibration; electronic data storage; monitoring of computer systems for fault detection; monitoring of computer systems by remote access; design and development of computer hardware and software for measuring technology; research and development of new products for third parties in the field of precision measuring; massive data analysis computer services.」(以下「請求商品及び請求役務」という場合がある。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由(商標法第4条第1項第10号及び同項第15号)を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第133号証を提出した(枝番号を含む。なお、以下、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように表記する。)。 |
1 審判請求書における主張 |
(1)本件商標は、請求人の業務に係る表面欠陥検査装置を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標(甲3~甲115)と称呼及び観念において一致しており、看者に相紛らわしい印象・記憶を与える。 |
また、本件商標に係る第9類指定商品のうち、「weighing apparatus and instruments; measuring sensors, infrared sensors, beta radiation sensors, laser triangulation sensors; distance recording apparatus; quantity indicators; densimeters, densitometers, detectors, infrared detectors, gages, electric measuring apparatus, precision measuring apparatus; measures, measuring apparatus and instruments; measuring apparatus; optical sensors, x-ray sensors; microwave detectors, interferometers, optical detectors; measuring instruments」(以下、これらを総称して「請求商品1」という。)は、引用商品と同一又は類似する。 |
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。 |
さらに、本件商標を、請求商品1、第9類指定商品「Optical apparatus and instruments; apparatus and instruments for physics; signals, luminous or mechanical; electrical monitoring apparatus; x-ray detectors; scintillators as a part of x-ray detectors.」(以下、これらを総称して「請求商品2」という。また、以下「請求商品1」と「請求商品2」をあわせて「請求商品」という。)、及び、第42類指定役務「computer system analysis; design and development of computers and software for measuring; research and development of new products for third parties in the field of precision measuring; computer system design; software development in the context of software editing; software development, software installation, maintenance of computer software; calibration; electronic data storage; monitoring of computer systems for fault detection; monitoring of computer systems by remote access; design and development of computer hardware and software for measuring technology; research and development of new products for third parties in the field of precision measuring; massive data analysis computer services.」(以下、これらを総称して「請求役務」という。)に使用する場合には、これに接する取引者、需要者は、本件商標の優先日以前から、請求人の業務に係る表面欠陥検査装置を表示する商標として、我が国の需要者の間で広く認識されている引用商標を連想、想起して、当該商品及び役務が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 |
(2) 本件商標登録を無効とすべき具体的理由 |
ア 利害関係 |
請求人は、化学系専門商社首位で、東証プライム上場企業、長瀬産業株式会社(甲3。以下「長瀬産業」という。)の100%子会社として1989年6月28日に設立された法人であり、2009年4月に長瀬産業の100%子会社であるナガセシィエムエステクノロジー株式会社と合併した際、現社名に変更した(甲4の1)。 |
請求人の事業内容は、「低温・真空関連機器の販売及び保守・メンテナンス」、「低温関連機器の設計・開発、製造及び販売」、「半導体、液晶パネル等製造用薬液の調整・回収装置の設計・開発、販売及び保守・メンテナンス」、「外観検査装置の設計、据付及び保守・メンテナンス」、「その他半導体・液晶業界等向け装置の開発、販売及び保守・メンテナンス」、「農業関連製品・システムの開発及び保守・メンテナンス」、「UV殺菌装置の販売」、「クリーン環境システムの販売」、「抵抗率測定装置の販売」であり(甲4の2)、取扱製品の一つに、「表面欠陥検査装置」がある(甲4の3)。請求人が業として設計、製造、販売する表面欠陥検査装置には、引用商標「SCANTEC」が使用されている(甲5~甲115)。 |
後述するとおり、引用商標「SCANTEC」は、本件商標の欧文字部分「SCANTECH」の語尾「H」の有無の差異を有するにすぎず、同一の称呼及び観念が生じることから、両者は非常に相紛らわしい商標といえる。 |
また、「表面検査装置」は、類似群コード10C01が付される第9類の商品に分類され(甲119)、請求人の製造・販売に係る「表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)」は、これに含まれる商品といえる。請求商品1も、いずれも類似群コード10C01が付される商品である。このため、引用商品と請求商品1とは、同じ類似群コードが付される同一又は類似する商品といえる。 |
さらに、請求商品2及び請求役務は、表面欠陥検査装置との高い関連性がある。 |
したがって、引用商標と同一又は類似する本件商標の請求商品及び請求役務における登録の有効性を争う本件審判について、請求人は利害関係を有する。 |
イ 除斥期間 |
本件審判の請求は、本件商標の国内登録日(2021年11月12日。甲1、甲2)から5年を経過していない。 |
したがって、本件審判請求について除斥期間は適用されない。 |
ウ 引用商標の周知性 |
(ア)「SCANTEC」シリーズ |
請求人の親会社である長瀬産業(甲3、甲4)は、1989年に硝子メーカーの依頼により検査機の社内開発に着手し、翌1990年に、表面欠陥検査装置「SCANTEC3000」の販売を開始した。 |
1990年9月12日付け化学工業日報(甲6)及び日刊工業新聞(甲7)には、「長瀬産業は、目視検査に代わる高精度表面検査用画像処理装置「SCANTEC3000」を開発、発売する。これは工場内のシート、板、ディスク状のものを検査する際の中枢となる画像処理コンピューターで、リニアCCDのラインセンサーによる入力によって、リアルタイムでデジタル画像処理が行える。また、従来品に比較して三十~百倍の高速処理を実現した。」、「長瀬産業では、SCANTEC3000を、今後のFA化のキーツールとして、工場の生産管理部門やエンジニアリング会社に販売する。価格は三百六十六万円から二千万円まで。九十二年度には百二十台、七億二千万円の販売を見込む。」との記事が掲載されている。 |
表面欠陥検査装置とは、主にフィルムやガラス、金属板など連続して生産される製品の異物やキズ、凹凸等欠陥を検査するための装置をいい(甲5の5)、投光器(光源)からの光を検体(製品)を通してカメラ(受光側)で認識し電気信号に変換した後、専用ハードウェアで欠陥として認識する(甲5の3)。さらに入力された欠陥情報は、専用のコンピューターソフトウェアで解析・分類、画像処理を行い、帳票等にまとめられることで、様々な検査条件において、キズ・ムラ・スジなどの欠陥を高速かつ確実に検知するシステムをいう(甲5の2)。 |
請求人の表面欠陥検査装置の主な構成機器は、ラインセンサカメラ、カメラコントローラー、画像処理プロセッサ、ホストコンピューター、モニターである(甲18)。 |
請求人の表面欠陥検査装置は、とりわけ、WEB(連続物:フィルム・紙・鋼板・金属箔など)検査やBATCH(枚葉品、個別品:カットフィルム・カットガラス・ドラム)検査におけるインライン高速表面欠陥検査に対応しており(甲5の2、甲18)、リチウムイオン二次電池の電極シートやFPD用フィルム検査、紙・不織布検査、ガラス検査、金属表面検査、OPCドラム表面検査等における不可欠な装置として(甲5の4)、これら製品の製造・開発に携わる事業者が、主たる需要者といえる。 |
なお、「表面欠陥検査装置」は需要者の製造ラインに用いられる商品の性質上、納入先や納入品の数量・スペック等は、需要者の生産能力や品質管理に関する内部情報に関わるため、請求人による公表は控えざるを得ない。後述するとおり、大手事業者が、自社の特許明細書において、請求人等の「表面欠陥検査装置」について言及しており(甲77~甲88)、これらの事業者が属する業界において「表面欠陥検査装置」が利用されていることから、参考として、各業界の主要事業者(引用商品の主たる需要者)が掲載されている成美堂出版発行「業界地図2016-2017年版」を一部抜粋して書証として提出する(甲89)。 |
また、請求人は、検体の特性やユーザーの要望に応じて、構成機器や専用ソフトウェア(甲5の5)のカスタマイズにも柔軟に対応しており、以下は、FPD用フィルム検査における表面欠陥検査装置のシステム構成の一例を表したものである(甲5の4)。 |
このシステム構成においては、エンコーダや高輝度LED照明、欠陥マーキングシステムが「表面欠陥検査装置」の構成機器に追加されている。 |
請求人の表面欠陥検査装置は、1990年に発売した「SCANTEC3000」を初号機として、以下のとおり、その後何度となく、性能や仕様変更(バージョンアップ、機能や適用範囲・用途の拡大)を続けるも(「SCANTECTCG」、「SCANTEC4000」、「SCANTEC5000」、「SCANTEC6000」、「SCANTEC7000」、「SCANTEC-SS」、「SCANTEC7000a」、「SCANTECELEMENTS」、「SCANTEC8000」、「SCANTECELEMENTSII」、「SCANTECColor1」、「SCANTECBRAIN」。甲5~甲26)、一貫して「SCANTEC」の名称を使用している。 |
このように、請求人の親会社である長瀬産業、及び2016年に同社より表面欠陥検査装置事業を承継した請求人の「SCANTEC」シリーズは、発売開始から30年以上の実績を有するロングセラー商品といえる。 |
請求人等の表面欠陥検査装置「SCANTEC」シリーズが30年以上にも及ぶことは、「SCANTEC」の新機種を投入するたびに業界新聞等において報じられていることからも明らかである(甲6~甲17)。 |
また、請求人等の「SCANTEC」シリーズの売上が好調なことから、長瀬産業の「会社案内」や「決算説明会」において、「SCANTEC」が同社の事業をけん引する代表機種として何度となく紹介されている(甲33~甲40)。 |
(イ)「SCANTEC」商標の使用態様及び実績 |
請求人等は、引用商標「SCANTEC」を、表面欠陥検査装置の主要構成機器である画像処理プロセッサ本体に表示し(甲18~甲25)、また、当該装置のカタログ(甲18~甲25)や取扱説明書(甲27~甲32)、見積書・請求書等の取引書類(甲121~甲125)、さらにはウェブサイト(甲5)においても使用している。 |
また、請求人等は、業界団体が主催する展示会において、頻繁に、「SCANTEC」シリーズのカタログやパネル展示をし、実機を使った表面欠陥検査のデモを行うなどして、事業者向けの販促活動にも注力している(甲41~甲47)。 |
このように、請求人等は、1990年より継続して30年以上にわたり、表面欠陥検査装置に「SCANTEC」商標を使用し続けている。 |
(ウ)「SCANTEC」シリーズの売上、市場シェア |
上述したとおり、請求人等の開発、製造、販売に係る表面欠陥検査装置「SCANTEC」シリーズは、リチウムイオン二次電池の電極シートやFPD用フィルム検査、紙・不織布検査、ガラス検査、金属表面検査、OPCドラム表面検査等における不可欠な装置として(甲5)、各種産業資材や部材の製造・開発に携わる事業者が必要とする測定検査装置であることから、「表面欠陥検査装置」の主たる需要者は、上記製品の製造・開発に携わる事業者である。 |
事業者の生産設備や製造工程・ラインに組み込まれて利用される産業用であることから、「表面欠陥検査装置」は、店頭に陳列して販売に供されるものではない。また、製造ラインに組み込まれて利用される商品の性質上、納入後も、「表面欠陥検査装置」のメンテナンスや修理、機種変更、専門のコンピューターソフトウェアの改良やバージョンアップ等、需要者に対する長期的、継続的なサポートが必要とされる。 |
「SCANTEC」シリーズは、1990年の発売開始以来、本件商標の優先日(2018年11月23日)前までに、国内の事業者向けに累計1500システム納入されている(甲17)。 |
表面欠陥検査装置の市場動向に関する統計資料として、株式会社富士経済(甲48)が毎年発行している「画像処理システム市場の現状と将来展望」がある(甲49~甲60)。 |
2003年版には、「ラインセンサ画像処置装置」の分野で、長瀬産業の「SCANTEC6000」が、2002年度実績で国内シェア44%(金額ベース。16.5億円)、2003年度見込みで48.9%(金額ベース。17億円)を占めることが報告されている(甲49)。 |
2006年版には、「無地シート外観検査装置」の分野で、長瀬産業の「SCANTEC7000」が好調で多くのリピートがあり、2005年実績で国内シェア14.7%(金額ベース。18億円)、2006年見込みで15.2%(金額ベース。20億円)を占めることが報告されている(甲50)。 |
2008年版には、「無地シート外観検査装置」の分野で、長瀬産業の主力機種「SCANTEC」が好調で、「微細欠陥検出に強みを持つ。光学フィルム検査上位メーカー。感光ドラム、ガラス基板検査にも強い」とされ、2007年実績で国内シェア12.9%(金額ベース。20億円)、2008年見込みで12.1%(金額ベース。20億円)を占めることが報告されている(甲51)。 |
2011年版及び2012年版には、「Web外観検査装置」の分野で、長瀬産業が、「高付加価値フィルム向けの販売比率を高めることに成功」、「高機能版「SCANTEC8000」、廉価版「WEBSENSORII」を上市し、高付加価値フィルムを中心に実績を伸ばした」とされ、2010年実績で国内シェア10.2%(金額ベース。14.5億円)、2011年実績10.4%(金額ベース。13億円)、2012年見込みで10.8%(金額ベース。15億円)を占めることが報告されている(甲52、甲53)。 |
なお、Web外観検査装置とは、「連続的に流れるフィルムや製紙、金属箔、不織布などの無地Web(シート)に対する画像検査装置」をいう(甲52)。 |
2014年版には、「Web外観検査装置」の分野で、長瀬産業が、2013年実績で国内シェア7.8%(金額ベース。10億円)、2014年見込みで8.1%(金額ベース。11億円)を占めることが報告されている(甲55)。 |
2015年版には、「Web外観検査装置」の分野で、長瀬産業が、2014年実績で国内シェア7.7%(金額ベース。10億円)、2015年見込みで8.4%(金額ベース。11億円)を占めることが報告されている(甲56)。 |
2016年版には、「Web外観検査装置」の分野で、長瀬産業が、2015年実績で国内シェア8.3%(金額ベース。10.5億円)、2016年見込みで7.7%(金額ベース。10.5億円)されている(甲57)。 |
2017年版には、「Web外観検査装置」の分野で、請求人であるナガセテクノエンジニアリング(2016年に親会社である長瀬産業より「SCANTEC」シリーズの事業を移管)が、2016年実績で国内シェア8.0%(金額ベース。11億円)、2017年見込みで8.8%(金額ベース。12億円)を占めることが報告されている(甲58)。 |
2018年版には、「Web外観検査装置」の分野で、ナガセテクノエンジニアリングが、2017年実績で国内シェア7.5%(金額ベース。10.5億円)、2018年見込みで6.3%(金額ベース。9.5億円)を占めることが報告されている(甲59)。 |
2019年版には、「Web外観検査装置」の分野で、ナガセテクノエンジニアリングが、2018年実績で国内シェア6.4%(金額ベース。9.5億円)、2019年見込みで5.9%(金額ベース。9.5億円)を占めることが報告されている(甲60)。 |
富士経済の上記刊行物に掲載されたデータを基に、「SCANTEC」シリーズの販売数量、金額及び市場シェア(注記がないものは実績値)を見てみると(甲49~甲60)、近年は、参入企業との競争激化により、やや苦戦を強いられているものの、数量ベース及び金額ベースとも、過去20年間継続して、「Web外観検査装置」市場の国内シェア10%前後で推移している。 |
(エ)業界内における「SCANTEC」シリーズの認知度 |
請求人等の表面欠陥検査装置「SCANTEC」シリーズに関する記事が、度々、業界新聞等において掲載されただけでなく(甲6~甲17)、各種専門誌(光技術関連業界の月刊誌「OPTORONICS」、半導体デバイス・装置の総合情報誌「月刊Semiconductor World」、情報調査会発行「センサ技術」、画像技術の専門誌「画像ラボ」、加工技術研究会発行「コンバーテック」、日本プラスチック工業連盟誌「プラスチックス」、産業開発機構発行「映像情報Industrial」、プラスチック産業・技術の総合情報誌「プラスチックスエージ」)においても、「SCANTEC」シリーズの新機種や技術を紹介する記事が何度となく掲載されている(甲61~甲75、甲90~甲115)。 |
また、表面欠陥検査装置に関連する技術分野における他社の特許明細書においても、請求人等の「SCANTEC」シリーズのことが引用されている(甲76~甲88)。 |
表面欠陥検査装置は、各種産業資材の製造・開発に携わる事業者向けの測定検査装置として、事業者の生産設備や製造工程・ラインに組み込まれて利用される産業用であり、納品後の保守や修理、部品供給、ユーザーの製造ラインやニーズに合わせた仕様変更・カスタマイズも必要となるため、代理店販売ではなく、ユーザーとの商談を通じた営業活動、直接取引が主流となっている。例えば、株式会社富士経済発行「2019画像処理システム市場の現状と将来展望」(甲60)には、Web外観検査装置について「当該製品は、メーカーとエンドユーザー間での緻密なすり合わせを経た上でのカスタマイズが必須になるため、直接販売がメインルートとなっている。」と報告されている。このため、表面欠陥検査装置を取り扱う業界において、各社とも、メディアを用いた宣伝広告活動を大々的に行うことはなく、ユーザーとの個別商談以外には、展示会や業界新聞・専門誌上での製品紹介、技術発表、自社ウェブサイト等を通じて各社の取組みが公表されているのが実情である。 |
(オ)小括 |
以上のとおり、引用商標「SCANTEC」は、請求人等が1989年に開発し、翌90年に発売以来、30年以上にわたり、製造・販売する表面欠陥検査装置に継続して使用され、シリーズ化されるに至っており、また、過去20年間、国内シェア10%前後を占めるロングセラー商品として、その実績、評判は業界内において広く認識されてきたものであり、その結果、請求人の業務に係る表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)を表示する商標として、本件商標の出願時及び登録時に、我が国の取引者・需要者の間で周知性を獲得している。 |
エ 商標の同一又は類似 |
本件商標は、一部を切り欠いた黒塗りの横長の長方形の内部に、白抜きの欧文字「SCANTECH」を一連に配した構成からなる。 |
図形部分は、左程特徴のあるものではなく、本件商標からは、その構成文字に相応して、「スキャンテック」の称呼が生じる。 |
「SCANTECH」の語は、それ自体辞書等に掲載されたものではないものの、請求商品及び請求役務に係る我が国の需要者であれば、「走査、スキャン」を意味する英単語「SCAN」と、「技術者。科学技術」を意味する英単語「TECHNICAL。TECHNOLOGY」の略語が結合したものと認識することから(甲116、甲117)、本件商標全体からは「スキャン技術」の意味合いが生じる。 |
一方、請求人が証拠(甲4~甲115)として提出する引用商標は、ごく普通の書体で書された欧文字「SCANTEC」からなるところ、その構成文字に相応して、「スキャンテック」の称呼が生じる。 |
「SCANTEC」の語は、それ自体辞書等に掲載されたものではないものの、請求商品及び請求役務に係る我が国の需要者であれば、「走査、スキャン」を意味する英単語「SCAN」と、「TEC」で始まる英単語として馴染みある「TECHNICAL。TECHNOLOGY」に関連する語が結合したものと認識することから(甲116、甲117)、引用商標全体からは「スキャン技術」の意味合いが間接的に生じる。 |
両商標を対比してみると、図形の有無により、外観上の差異があるものの、文字部分の外観は似通っており、また、称呼上、両商標は同一であり、さらに、両商標から非常に似通った観念が生じる。 |
そうすると、外観において異なるものの、本件商標の図形部分は左程特徴のあるものではなく、それ自体明確な観念が生じるものではないことから、当該相異点が商標全体として看者の印象・記憶に影響を及ぼす程のものではなく、称呼及び観念における共通点を凌駕するものではない。したがって、両商標は明らかに類似する。 |
現に、「TECH/テック」と「TEC」の類似性が争われた異議事件において、両者は「「テック」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならない」と判断されている(甲118)。 |
さらに、特許庁は、請求人が所有する商標登録第4046260号商標「SCANTEC/スキャンテック」(甲126)と同一又は類似するとして、後願の「SCANTECH」(出願番号:H06-050294)を拒絶した(甲127)。 |
オ 請求商品1と引用商品の同一又は類似 |
請求商品1は、対象物を測定するためのセンサ又は機器類であるところ、いずれも、第9類の「測定機械器具」(類似群コード:10C01)に属する商品と解される。 |
一方、請求人等の引用商品「表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)」は、主にフィルムやガラス、金属板など連続して生産される製品の異物やキズ、凹凸等欠陥を検査するための装置をいい(甲5の5)、投光器(光源)からの光を検体(製品)を通してカメラ(受光側)で認識し電気信号に変換した後、専用ハードウェアで欠陥として認識し(甲5の3)、入力された欠陥情報を専用ソフトウェアで分類、画像処理を行い、帳票等にまとめられることで、様々な検査条件において、キズ・ムラ・スジなどの欠陥を高速かつ確実に検知するシステム(甲5の2)であるところ、その機能、用途において、「測定機械器具」に属する商品といえる。現に、「表面検査装置」には、類似群コード10C01が付されている(甲119)。 |
したがって、請求商品1と引用商品とは、同一の類似群コードが付される類似の商品と推定される。 |
カ 請求商品2と引用商品との関連性 |
請求商品2は、引用商品に必要不可欠な構成装置の一つ、カメラと同じ類似群コード:10B01が付される商品であることから、完成品と部品の関係にあるため、両商品の関連性は極めて高い。 |
また、引用商品は、異物やキズ、凹凸等欠陥を計測し検査するための装置であるところ、実験用に用いられることもあり、用途が一致する場合があることから、「apparatus and instruments for physics」(物理学実験用機械器具)との関連性は高い。 |
また、「signals, luminous or mechanical」(発光式又は機械式の信号機)には、LEDを用いた発光式のものも含まれるところ、FPD用フィルム検査における引用商品のシステム構成には、LED照明を利用することから(甲5の4)、引用商品との関連性は決して低くはない。 |
「electrical monitoring apparatus」(モニター付き電子式監視装置)は、電子の作用を応用した「通信機械器具」に該当するところ、引用商品は、ラインセンサカメラ(CCDカメラ)で撮影したビデオ信号を電気信号に変換して専用ハードウェア(画像処理プロセッサ)で欠陥検査を行い、その情報を外部に備えたモニターで常時監視できるシステムの構成において、「遠隔測定制御機械器具」とも捉えられ得ることから、品質、用途及び需要者が一致するため、両商品の関連性は高い。 |
また、「x-ray detectors; scintillators as a part of x-ray detectors」(X線検出器)は、X線(電磁波)の検出を目的とした商品と解されるところ、「検出探知装置」が測定機械器具に該当することから(甲120)、引用商品との関連性は高い。 |
したがって、請求商品2と引用商品は、総じて高い関連性を有するものといえる。 |
キ 請求役務と引用商品の類似性及び関連性 |
請求役務は、コンピューターソフトウェアやシステムに関する役務、あるいは、測定又は欠陥検出に関する役務といえる。 |
一方、引用商品の開発や製造、納入後のアフターサービスに関連して、例えば、表面欠陥検査装置の修理や保守、表面欠陥検査用のコンピューターソフトウェアの開発や設計、表面欠陥検査の分野における研究や開発といったものが該当し、現に、ユーザーのニーズにおいて、請求人等はこれらを提供している(甲32、甲122他)。 |
請求役務のうち、コンピューターソフトウェアやシステムに関する役務「computer system analysis; design and development of computers and software for measuring; computer system design; software development in the context of software editing; software development, software installation, maintenance of computer software; electronic data storage; monitoring of computer systems for fault detection; monitoring of computer systems by remote access; design and development of computer hardware and software for measuring technology; massive data analysis computer services.」が測定(measuring)又は欠陥検出(fault detection)に用いられた場合、事業者や提供の手段、目的、用途、需要者において、請求人等の「表面欠陥検査装置」専用のコンピューターソフトウェアと一致することから、引用商品と類似しており、関連性は高い。 |
また、測定又は欠陥検出に関する役務「research and development of new products for third parties in the field of precision measuring; calibration」は、その提供に関連する物品(表面欠陥検査装置)において引用商品と一致しているだけでなく、業種や用途も一致しており、同一の事業者が提供するものといえることから、引用商品と類似しており、関連性も高い。 |
したがって、請求役務と引用商品とは類似しており、それぞれ高い関連性を有する。 |
ク 商標法第4条第1項第10号 |
上述したとおり、引用商標「SCANTEC」は、過去20年間、国内シェア10%前後を維持している請求人等のロングセラー商品「表面欠陥検査装置」を表示するものとして、請求商品及び請求役務に係る需要者の間に広く認識されているところ、本件商標と引用商標とは外観において異なるものの、本件商標の図形部分は左程特徴もなく、それ自体明確な観念が生じるものではなく、称呼及び観念における共通点を凌駕するものではないことから、両商標は明らかに類似する。 |
また、請求商品1は引用商品「表面欠陥検査装置」と同一の類似群コードが付される類似商品であり、同様に、請求役務と引用商品とは類似する。 |
したがって、本件商標は、請求商品1及び請求役務において、商標法第4条第1項第10号に該当する。 |
ケ 商標法第4条第1項第15号 |
(ア)本件商標と引用商標との類似性の程度 |
上述したとおり、本件商標と引用商標とは外観において異なるものの、本件商標の図形部分は左程特徴もなく、それ自体明確な観念が生じるものではなく、このため、「スキャンテック」の称呼、及び「スキャン技術」の観念における共通点を凌駕するものではないことから、両商標の類似性の程度は相当高い。 |
(イ)引用商標の周知性及び独創性の程度 |
引用商標「SCANTEC」は、30年以上にわたり、請求人等が製造・販売する表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)に継続して使用され(甲5~甲115)、シリーズ化されるに至っており(甲5、甲18~甲32)、過去20年間、国内シェア10%前後を占めるロングセラー商品として(甲49~甲60)、本件商標の出願時以前より、我が国の取引者・需要者の間で広く認識されている。 |
また、引用商標を構成する欧文字「SCANTEC」は、それ自体辞書等に掲載された語ではないから(甲116、甲117)、その独創性は高い。 |
(ウ)請求商品及び請求役務と請求人の業務に係る商品との関連性 |
上述したとおり、「表面欠陥検査装置」と請求商品1とは、同一の類似群コードが付される類似の商品と推定される(甲119)。 |
また、「表面欠陥検査装置」と請求商品2とは、生産部門や販売部門、品質、用途、需要者、完成品と部品との関係において共通しており、高い関連性を有する。 |
さらに、請求役務と引用商品とは、事業者や用途、需要者の範囲が一致し、このため、類似しており、それぞれ高い関連性を有する。 |
(エ)取引者及び需要者の共通性その他取引の実情 |
上述したとおり、「表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)」の主たる需要者は、リチウムイオン二次電池の電極シートやFPD用フィルム、紙・不織布検ガラス、金属表面、OPCドラム表面等におけるWEB(連続物:フィルム・紙・鋼板・金属箔など)検査やBATCH(枚葉品、個別品:カットフィルム・カットガラス・ドラム)検査を必要とする事業者であり(甲89)、産業用に利用される商品であるところ、請求商品及び請求役務も同じく、各種産業資材や部材の製造・開発に携わる事業者を対象としており、その販売手法や流通経路、実際に需要者が利用する場所(生産設備や製造工程・ライン)において共通している。 |
(オ)混同を生ずるおそれ |
上記の事情を総合すると、引用商標は、請求人の表面欠陥検査装置を表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたことに照らせば、文字部分において引用商標と外観において酷似し、同一の称呼を生じ、観念上の印象も類似している本件商標が請求商品及び請求役務に付して使用された場合には、これに接する取引者、需要者は、「SCANTEC」の文字部分に着目し、周知な引用商標を連想、想起して、当該商品又は役務が請求人又は請求人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品又は役務であると誤信するおそれがある。 |
以上より、本件商標は、請求商品及び請求役務について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前から、請求人の業務に係る表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されて引用商標を連想、想起し、当該商品又は役務が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。 |
したがって、本件商標は、請求商品及び請求役務において、商標法第4条第1項第15号に該当する。 |
2 弁駁書における主張 |
(1)答弁理由1について |
ア 甲6ないし甲17について |
被請求人は、「甲6、甲7、甲10及び甲11は、引用商品を「画像処理装置」と紹介しており、「表面欠陥検査装置」に関する引用商標の使用については参考とならない」旨述べているが、甲6は「高精度表面検査用画像処理装置「SCANTEC3000」」、甲7は「最高速の表面検査用画像処理装置「SCANTEC3000」」、甲10は「走査型カメラを開発/高分解能で高感度/表面検査に威力」との見出しの後、「ラインセンサー用画像処理装置「SCANTEC 3000」」と、それぞれ掲載されており、「表面欠陥検査」用の「画像処理装置」であることが容易に確認される。 |
甲6、甲7、甲10及び甲11が発行された1990年ないし1992年にかけて、請求人は、「SCANTEC3000」「SCANTEC TCG」「SCANTEC4000」を販売しており(甲26)、当該機種に係る製品カタログ表紙には、確かに「表面欠陥検査装置」の文言は表示されていないものの(甲23~甲25)、これらカタログに掲載されている当該製品の構成機器は、「SCANTEC」の最新機種カタログ(甲18、甲19)に掲載された構成機器と何ら変わっておらず、両者が同種の製品であることは明らかである。 |
イ 甲18ないし25、甲27ないし甲32及び甲121ないし甲125について |
被請求人は、甲22、甲23、甲25、甲27ないし甲32は、引用商標についての使用及び実績の参考とはならないと述べているが、審判請求書において説明したとおり、請求人の「表面欠陥検査装置」は、主にフィルムやガラス、金属板など連続して生産される製品の異物やキズ、凹凸等欠陥を検査するための装置をいい(甲5の5)、投光器(光源)からの光を検体(製品)を通してカメラ(受光側)で認識し電気信号に変換した後、専用ハードウェアで欠陥を検知する(甲5の3)。さらに入力された欠陥情報は、専用のコンピュータソフトウェアで解析・分類、画像処理され、帳票等にまとめられることで、様々な検査条件におけるキズ・ムラ・スジなどの欠陥を高速かつ確実に検知するシステムをいう(甲5の2)。当該装置の主な構成機器は、ラインセンサカメラ、カメラコントローラー、画像処理プロセッサ、ホストコンピューター、モニターである(甲18)。 |
「画像処理プロセッサ」や「画像処理用コンピュータ」が表面欠陥検査装置の性能を左右する重要な構成機器であることから、「SCANTEC」の取扱説明書(甲27~甲32)に、「画像処理プロセッサ」や「画像処理用コンピュータ」に関する掲載があるのは当然のことである。 |
上述したとおり、甲22、甲23及び甲25には、「表面欠陥検査装置」の文言がカタログ表紙に表示されていないものの、これらカタログに掲載されている当該製品の構成機器は、「SCANTEC」の最新機種カタログ(甲18、甲19)に掲載された構成機器と何ら変わっておらず、両者が同種の製品であることは明らかである。 |
また、被請求人は、甲121ないし甲125は、「表面欠陥検査装置」に関する取引書類ではないため、「表面欠陥検査装置」の使用及び実績の参考とならないと述べているが、甲121の1及び2は、「SCANTEC」の既存ユーザーに対し、当該機種のバージョンアップ・機種変更の商談に関するものであり、ユーザーの要求に応じて「表面欠陥検査装置」の画像処理プロセッサの設計変更を盛り込んだ見積書及びこれに対する請求書である。請求人の見積書(甲121の1)には、「SCANTEC8000の開発/プログラミング/試験費用」の文言があるものの、見積品目として、「画像処理装置」「ラインセンサカメラ」「照明機器」「制御盤及び剣先附帯設備」が上がっており、単に、「SCANTEC」の開発、プログラミング、試験費用に係る取引書類でないことは明白である。 |
甲122の1ないし3は、「SCANTEC8000」のコンピュータソフトウェア改造に係る取引書類であるところ、請求人の「表面欠陥検査装置」が画像処理を行うコンピュータソフトウェアを用いることは、そのシステム構成上明らかであり(甲32他)、ソフトウェアのバージョンアップやユーザーの要求に応じて設計変更を行うことは、取引において周知の事実といえる。 |
被請求人は、甲123ないし甲125は「画像処理装置」に係る取引書類と述べているが、「画像処理装置」は見積品目の一つにすぎず(甲123の1、甲124の1、甲125の1)、各見積書に係るその後の取引書類において、「検査システム(欠陥検出器)」(甲123の2及び3)、「欠陥検査機」(甲124の2及び3)、「A面用検査装置」(甲125の2及び3)と記載されていることから、これらが「画像処理装置」のみの取引に係るものでないことは明らかである。 |
ウ 甲41ないし甲47について |
被請求人は、表面欠陥検査装置「SCANTEC」の展示会への出展事実に係る証拠資料について、「甲41ないし甲47からは、一部の展示会で引用商標が展示会のパネル等で表示されていることは示されてはいるものの、その他の展示会では引用商標がいかなる態様で表示されていたのか、又は表示された事実があるかも不明である」と述べている。 |
甲42以外の展示会においても請求人の表面欠陥検査装置「SCANTEC」が展示されていたことは、各展示会(画像センシング展、国際画像機器展)における長瀬産業の出展内容を紹介する、日本工業出版株式会社発行「画像ラボ」の掲載記事(甲96、甲99、甲100、甲102~甲105、甲107~甲111、甲113)において、客観的に明らかである。 |
また、被請求人は、「出展されたとする請求人等のブースヘの訪問者数が明らかにされていないから、引用商標の認知度立証の助けとはならない」旨述べているが、仮に、請求人等のブースヘの訪問者が極めて少ないのであれば、企業として、費用対効果が期待できない展示会に20年近くも継続して繰り返し出展するようなことはない。したがって、ブースの訪問者の数が明らかでなくとも、業界関係者が多数集う国内展示会に20年近くも継続して出展している事実は、引用商標の認知度を十分裏付けるものといえる。 |
エ 甲49ないし甲60について |
被請求人は、株式会社富士経済発行の市場統計データ(甲49~甲60)に関して、「他分野を含む「画像処理システム」市場全体におけるシェアを示しておらず、参考とはならない」と述べているが、請求人は、請求商品1と同一又は類似する表面欠陥検査装置(Web外観検査装置)における引用商標の周知性を主張立証しており、本件とは無関係の商品分野を含んだシェアを議論する必要がないことはいうまでもない。 |
また、被請求人は、「「SCANTEC」シリーズが請求人等の主力商品との記載があるものの、果たして「SCANTEC」シリーズのみで各証拠資料にあるシェアを算出しているかは不明である」と述べているが、「主力商品」の意味するところ、当該シェアが「SCANTEC」シリーズであることは自明といえる。 |
オ 甲61ないし甲75及び甲90ないし甲115について |
被請求人は、各種専門雑誌の発行部数等が示されていないことをもって、「引用商標の認知の程度を推し量る参考にはならない」と述べているが、表面欠陥検査装置は、各種産業資材の製造開発に携わる事業者向けの商品であり、各社とも、メディアを用いた宣伝広告活動を大々的に行っておらず、ユーザーとの個別商談以外には、展示会や業界新聞、専門誌上での製品紹介、技術発表、自社ウェブサイト等を通じて各社の取り組みを公表しているのが実情である。 |
このような専門性の高い産業用製品に係る取引の実情において、「SCANTEC」の発売直後より、何度となく各種専門雑誌等に掲載されている事実は、読者に価値ある情報として、業界メディアの「SCANTEC」シリーズに対する関心の高さを裏付けるものといえる。 |
また、被請求人は、各種専門雑誌に掲載された「SCANTEC」シリーズの記事(甲91~甲102)において、その名称として「表面欠陥検査装置」が使用されていないことをもって、「「表面欠陥検査装置」についての使用を示す証拠資料としては参考にならない」と述べているが、上述したとおり、請求人の表面欠陥検査装置は、ラインセンサカメラ、カメラコントローラー、画像処理プロセッサ、ホストコンピューター、モニターを主な構成機器としており(甲18)、甲91ないし甲101は、このうち、「画像処理プロセッサ」「ラインセンサカメラ」等を取り上げたものである。なお、甲102には「次世代欠陥検査システムScantec6000」と掲載されている。 |
当該機器が請求人の「表面欠陥検査装置」の構成機器の一つに該当することから、「表面欠陥検査装置」に関する請求人の見積書(甲121の1、甲123の1、甲124の1、甲125の1)には、見積品目として、「画像処理装置」、「ラインセンサカメラ」等が記載されている。 |
カ 甲76ないし甲88について |
被請求人は、第三者の特許明細書における「SCANTEC」シリーズの引用のうち、甲76ないし甲80、及び甲83は、「表面欠陥検査装置」に係るものではないと述べているが、甲76は「透明シート状成形体の欠陥検査法」に関する発明、甲77は、「顕微鏡用XYステージおよびラインセンサカメラを備えた検査装置」に関する発明、甲78は、「枚葉フィルムの欠陥検査装置」に関する発明であり、いずれも、その技術分野及び利用分野において、「表面欠陥検査装置」と一致する。 |
また、甲79の発明の実施の形態には、「検査装置としての市販の外観検査システムを応用することが可能である、例えば長瀬産業(株)製SCANTEC-6000」と記載されており、明らかに、引用商標を「表面欠陥検査装置」の出所表示と認識している。 |
甲80では、平版印刷版材料(発明品)の透過濃度測定、反射濃度測定を行う際のデータ処置装置に、「SCANTEC6000(長瀬産業株式会社)」が記載されており、汎用のデータ処理装置ではなく、測定機械器具として利用されている。 |
さらに、甲83において、「外観検査装置として光照射ラインセンサー画像処理装置(長瀬産業隊製SCANTEC-7000)を用いて、1万本中での気泡発生頻度(1万本の感光体サンプルのうち気泡が発生した本数)を測定した」と記載されており、明らかに、請求人の「SCANTEC」が外観検査装置として用いられている。 |
(2)答弁理由2について |
被請求人は、「提出された証拠資料によっては、本件国際登録の優先日である2018年11月23日時点において、引用商標が周知性を獲得しているとはいえない」旨と述べているが、上述したとおり、被請求人の答弁は、いずれも妥当性を欠いている。 |
また、被請求人は、「1992年の設立当初から今日に至るまで、本件商標を、フランスを含む世界各国で使用している」と述べ、乙1及び乙2を提出しているが、これらは、1992年から使用されていることを示す客観的な証拠資料とはいい得ず、また、日本での使用事実は一切知り得ない。 |
さらに、被請求人は、乙3ないし乙9を提出し、日本を含む複数の国において商標登録を取得していると述べている。しかしながら、請求人が調べたところ、インドネシア・トルコ・韓国(乙4)、及び中国(乙5)では、各国での審査の結果、請求商品及び請求役務の全部又は一部において、本件商標は登録を拒絶されていた(甲128~甲133)。 |
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第4 被請求人の主張 |
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙9を提出した。 |
1 本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 |
(1)引用商標の周知性 |
請求人は、審判請求書において、引用商標は、1990年に発売された請求人の業務にかかる表面欠陥検査装置について今日に至るまで使用された結果、需要者の間で広く認識されるに至っている旨を主張し、これを立証するための証拠資料を提出している。 |
以下、各証拠資料について検討する。 |
ア 甲6ないし甲17 |
請求人は、甲6ないし甲17を、引用商標の「表面欠陥検査装置」についての使用に関する証拠資料とするが、甲6、甲7、甲10、甲11は、引用商品を「画像処理装置」と紹介しており、「表面欠陥検査装置」に関する引用商標の使用については参考とならない。 |
イ 甲18ないし甲25、甲27ないし甲32、甲121ないし甲125 |
請求人は、甲18ないし甲25、甲27ないし甲32、甲121ないし甲125を引用商標の使用態様及び実績として提出するが、甲22は「高速ライセンサリアルタイムイメージンプロセッサ」、甲23は「ライセンサ画像処理システム」、甲25は「HIGHSPEED IMAGE PROCESSOR FOR SURFACE INSPECTION」、甲27及び甲28(5頁)は「画像処理コンピュータ」、甲29ないし甲31は「1.システム概要」にて「画像処理コンピュータ」とあり、甲32はソフトウエアの使用説明書であるため、引用商標の「表面欠陥検査装置」についての使用及び実績の参考とはならない。 |
ウ 甲121の1は「SCANTEC8000の開発、プログラミング、試験費用」についての見積書、甲121の2には引用商標の記載がなく、甲122の1には引用商標の記載がなく、甲122の2及び3は「ソフト変更」についての注文書及び請求書、甲123の1、甲124の1及び甲125の1は「画像処理装置」としての見積書、甲123、甲124及び甲125の各2及び3には引用商標の記載がなく、いずれも引用商標の「表面欠陥検査装置」についての使用及び実績の参考とはならない。 |
エ 甲41ないし甲47 |
請求人は、「業界団体が主催する展示会において、頻繁に「SCANTEC」シリーズのカタログやパネル展示をし、実機を使った表面欠陥検査のデモを行うなどして、事業者向けの販促活動にも注力している。」と述べている。しかしながら、甲41ないし甲47は、一部の展示会で引用商標が展示会のパネル等で表示されたことは示されてはいるものの、その他の展示会では引用商標がいかなる態様で表示されていたのか、又は表示された事実があるかも不明である。また、展示会の参加社及び来場者数はそれぞれ示されているものの、出展されたとする請求人等のブースヘの訪問者数は明らかにされていない。したがって、引用商標の認知度立証の助けとはならない。 |
オ 甲49ないし甲60 |
請求人は「ライセンサ画像処理システム」の分野(甲49)、「無地シート外観検査装置」の分野(甲50、甲51)及び「Web外観検査装置」の分野(甲52~甲60)における実績ベースでの販売シェアを示しているが、他分野を含む「画像処理システム」市場全体におけるシェアを示しておらず、参考とはならない。また、上記各分野の請求人シェアの算出ベースを「SCANTEC」シリーズとしているが、同シリーズが請求人等の主力商品との記載はあるものの、果たして「SCANTEC」シリーズのみで各証拠資料にあるシェアを算出しているかは不明である。 |
カ 甲61ないし甲75及び甲90ないし甲115 |
請求人は、各種専門雑誌に「SCANTEC」シリーズに関する記事が掲載されていることを指摘するが、掲載専門雑誌の発行部数等が示されておらず、認知の程度を推し量る参考にはならない。 |
加えて、「ライセンサ用高速画像処理装置」(甲91)、「ライセンサ用汎用画像処理装置」(甲92)、「WEB検査用次世代プロセッサ」(甲93)、「ライセンサ画像処理装置」(甲94~甲101)、「ライセンサ画像処理プロセッサ」(甲102)については、「表面欠陥検査装置」についての使用を示す証拠資料としては参考にならない。 |
キ 甲76ないし甲88 |
請求人は、第三者の特許明細書において「SCANTEC」シリーズが引用されていることを指摘するが、「画像処理ボード」(甲76)、「画像処理装置」(甲77)、「CCDライセンサー」(甲78)、「画像処理装置」(甲79)、「データ処理装置」(甲80)、「画像処理装置」(甲83)としての引用も含まれており、「表面欠陥検査装置」についての引用商標の認知度を推し量る参考にはならない。 |
したがって、提出された証拠資料によっては、引用商標は国内の需要者の間で広く知られていたことを証明するに至っていない。 |
(2)本件商標と引用商標の類否 |
本件商標は「SCANTECH」の文字及び図形からなり、当該文字部分から「スキャンテック」の称呼が生じ、同様に引用商標からも「スキャンテック」の称呼が生じるため、称呼が共通することをもって、本件商標と引用商標が類似することは争わない。 |
以上より、引用商標は本件国際登録の優先日である2018年11月23日時点において、請求人に係る商品を示すものとして、国内の需要者に広く知られるに至っていないため、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。 |
2 本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 |
上述のとおり、提出された証拠資料によっては、本件国際登録の優先日の時点において、引用商標が周知性を獲得しているとはいえないため、商品又は役務の類似の範囲を超えて、混同を生じるおそれはない。 |
なお、被請求人は、プラスチック、不織布、金属、ガラス、紙などの材料に特化した業界向けの測定及び制御システムを製造販売するものであり、1992年の設立当初から今日に至るまで、本件商標を、フランスを含む世界各国で使用している(乙1、乙2)。そして、その商標を保護するために、日本を含む複数の国において商標出願し、登録を取得している(乙3)。よって、被請求人が本件商標を出願した背景に、フリーライドやひょう窃といった目的は全くない。 |
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 |
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第5 当審の判断 |
1 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 |
以下、本案に入って審理する。 |
2 引用商標の周知性について |
(1)請求人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。 |
ア 請求人は、1989年に設立された法人であり、長瀬産業の100%子会社である(甲4の1)。請求人の事業内容には「外観検査装置の設計、据付及び保守・メンテナンス」が含まれ、また、請求人の取扱製品には「表面欠陥検査装置」が含まれている(甲4の2、甲4の3)。 |
イ 長瀬産業は、1990年に、「SCANTEC(Scantec)」と称する表面欠陥検査装置(主にフィルムやガラス、金属板など連続して生産される製品の異物やキズ、凹凸等欠陥を検査するために用いられる、ラインセンサカメラやカメラコントローラー、モニター等からなる装置。甲5の5、甲18。なお、「ラインセンサ画像処理装置」「欠陥検査システム」「自動外観検査装置」等として紹介されているものを含む。)の販売を開始した(甲17)。その後、「SCANTEC3000」「SCANTEC4000」「SCANTEC5000」等、「SCANTEC(Scantec)」の文字を使用した表面欠陥検査装置(以下、これらをまとめて「引用使用商品」という。)が発売された(甲5、甲67ほか)。 |
ウ 請求人は、2016年に長瀬産業から引用使用商品に係る事業を承継した(請求人の主張。以下、長瀬産業と請求人を合わせていうときは「請求人ら」という。)。 |
エ 引用使用商品に関連する「ラインセンサ画像処置装置」、「無地シート外観検査装置」又は「Web外観検査装置」等の分野において、請求人らの業務に係る商品の国内市場シェアは、おおむね2000年代前半は40%前後、2000年代後半から2010年代中頃までは10%台、2010年代後半以降は5%ないし8%台であった(いずれも金額ベース。甲49~甲60)が、請求人らの業務に係る商品には、引用使用商品の他に低価格機種(廉価版)も存在することがうかがえる(甲51、甲53)。 |
オ 1998年から2018年にかけて、引用使用商品が業界の展示会に出展された(甲41~甲47、甲96、甲99、甲100、甲102~甲105、甲107~甲111、甲113)。 |
カ 1990年から2018年にかけて、新聞及び専門誌において、引用使用商品が紹介された(甲6、甲7、甲9~甲14、甲16、甲17、甲61~甲75、甲90~甲115)。 |
キ 請求人ら以外の者による特許出願に係る特許公報において、引用使用商品に関する記載がなされた(甲76~甲87)。 |
(2)上記(1)によれば、以下のとおり判断できる。 |
請求人らは、1990年より、引用使用商品を継続して販売していることがうかがえる。 |
しかしながら、上記(1)エにおいて示されている、引用使用商品に関する分野における国内市場シェアは、引用使用商品の他に廉価版の商品等も加えた、請求人らの業務に係る商品全体についてのものであって、引用使用商品が単独で、当該分野においてどの程度のシェアを有していたかを具体的に把握することができない。 |
また、展示会についても、請求人らが継続的に引用使用商品を展示会に出展していたことはうかがえるものの、各展示会における請求人らの出展ブースへの来訪者数は不明であり、引用使用商品が、来場者のうちどの程度の者の目に留まったかが定かでないから、展示会に出展したことをもって、引用使用商品及び引用商標の周知性が直ちに基礎付けられるものではない。 |
そして、引用使用商品が紹介された新聞及び専門誌は、各媒体の発行部数が不明である上、その掲載頻度も、多くても年に数回程度であって高いとはいい難く、散発的である。 |
さらに、特許公報については、それらの特許を出願した者によって認知されているとはいえるものの、それをもって、取引者及び需要者の間に広く知られていると認めることはできない。 |
なお、請求人は、表面欠陥検査装置は事業者向けの商品であり、メディアを用いた宣伝広告活動が大々的に行われるものではなく、ユーザーとの個別商談以外には、展示会や業界新聞、専門誌、技術発表、自社ウェブサイト等を通じて各社の取り組みを公表しているのが実情であるから、引用使用商品が発売直後より各種専門雑誌等に掲載されている事実は、業界メディアの引用使用商品に対する関心の高さを裏付けるものである旨主張するが、上記のとおり、引用使用商品が専門誌や新聞、展示会、特許公報等において紹介されている事実をもって、引用商標が需要者の間に広く知られていると直ちに認められるものではない。 |
その他、請求人の提出に係る全証拠によっても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、引用使用商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 |
以上を踏まえると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用使用商品に使用されている引用商標が、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間において、広く知られていると認めることはできない。 |
3 商標法第4条第1項第10号該当性について |
(1)引用商標の周知性 |
上記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く知られているものではない。 |
(2)本件商標と引用商標の類否 |
ア 本件商標 |
本件商標は、別掲1のとおり、黒色の横長長方形の一部を三角形状に切り欠いた幾何図形の内部に、「SCANTECH」の文字を白抜きで表してなるところ、幾何図形部分は文字部分を強調するための装飾又は背景として把握されるとみるのが相当であって、当該図形部分からは特定の称呼及び観念は生じないといえる。 |
そうすると、本件商標においては、「SCANTECH」の文字部分が、自他商品及び役務の識別標識として強く支配的な印象を与える部分といえるから、これを要部として分離、抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。 |
そして、当該「SCANTECH」の文字は、辞書類に掲載された語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれた語でもないから、一種の造語として理解されるものである。 |
以上より、本件商標は、構成中の「SCANTECH」の文字部分に相応して「スキャンテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 |
イ 引用商標 |
引用商標は、別掲3のとおり「SCANTEC」の文字よりなるところ、当該文字は辞書類に掲載された語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれた語でもないから、一種の造語として理解されるものである。 |
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「スキャンテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 |
ウ 本件商標と引用商標の類否 |
本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、本件商標の要部である「SCANTECH」の文字と引用商標「SCANTEC」とは、末尾の「H」の有無において差異を有するにすぎず、他の7文字をすべて共通にするから、外観上近似した印象を与える。 |
また、両者はともに「スキャンテック」の称呼を生じるから、称呼を共通にする。 |
そして、両者はともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。 |
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観において近似した印象を与え、称呼を共通にするから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似の商標というのが相当である。 |
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について |
上記(1)及び(2)を踏まえると、本件商標と引用商標は類似の商標であるが、引用商標は請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものではないから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の使用商品の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 |
4 商標法第4条第1項第15号該当性について |
(1)引用商標の周知性 |
上記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く知られているものではない。 |
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度 |
上記3(2)のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であるから、両者の類似性の程度は高いといえる。 |
(3)商品及び役務の関連性 |
本件商標の請求商品及び請求役務のうち、第9類「weighing apparatus and instruments; measuring sensors, infrared sensors, beta radiation sensors, laser triangulation sensors; distance recording apparatus; quantity indicators; densimeters, densitometers, detectors, infrared detectors, gages, electric measuring apparatus, precision measuring apparatus; measures, measuring apparatus and instruments, measuring apparatus; optical sensors, x-ray sensors; microwave detectors, interferometers, optical detectors; measuring instruments(参考訳:計量用機器,測定用センサー,赤外線センサー,ベータ線センサー,レーザー三角測量センサー,距離記録装置,分量計量器,比重計,濃度計,検出探知装置(測定機械器具),赤外線検出器,ゲージ,電気式測定装置,精密測定装置,計量器,測定用機器,測定装置,光センサー,X線センサー,マイクロ波検出器,光波干渉測長機,光学検出探知装置(測定機械器具),測定用具)と、引用商標の使用商品である「表面欠陥検査装置」は、いずれも対象物の物理量を測るための機器であり、商品の用途、生産者及び需要者、流通経路等を共通にする場合も少なくないといえる。 |
また、本件商標のその他の請求商品及び請求役務と、引用商標の使用商品とは、主たる機能や用途、需要者が一致するとはいい難いが、前者が表面欠陥の検査に関する用途で使用ないし提供される場合には、需要者を共通にする場合もあると考えられる。 |
そうすると、本件商標の請求商品及び請求役務と引用商標の使用商品は、一定程度の関連性を有するといえる。 |
(4)商標の独創性 |
上記3(2)イのとおり、引用商標は造語であるから、一定程度の独創性を有するといえる。 |
(5)出所の混同のおそれ |
以上を踏まえると、本件商標と引用商標とは類似性の程度が高く、本件商標の請求商品及び請求役務と引用商標の使用商品が一定程度の関連性を有し、引用商標が一定程度の独創性を有するといい得るものの、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く知られているものではないから、本件商標が請求商品及び請求役務に使用された場合、需要者をして引用商標を連想又は想起させることは考えにくく、請求商品及び請求役務が他人(請求人ら)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であると誤認させ、商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。 |
その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 |
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 |
5 まとめ |
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |