審決


不服2023-650052

In der Braike 13, 72127 Kusterdingen(DE)
 請求人
allstar Fecht-Center GmbH & Co. KG
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
江崎 光史
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
佐久間 洋子
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
田崎 恵美子
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
高橋 正宏
  


 国際登録第1499530号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
  
1 本願商標及び手続の経緯
 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第8類、第9類、第14類、第25類、第27類及び第28類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2019年(平成31年)2月1日に欧州連合においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2019年(令和元年)7月9日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 本願は、2021年(令和3年)1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年7月30日付けで手続補正書及び意見書の提出、2022年(令和4年)9月2日に国際登録簿に記録された所有権一部移転の通報があり、指定商品について、第8類、第25類、第27類及び第28類に属する別掲2のとおりの商品となったが、2023年(令和5年)3月15日付けで拒絶査定がされたものである。
 これに対して、令和5年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
 
2 引用商標
 本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第431660号の1商標(以下「引用商標」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和27年7月10日に登録出願され、第65類「玩具及び運動遊戯具」を指定商品として、同28年9月21日に設定登録された登録第431660号商標の商標権の分割に係るものであって、第65類「玩具及び運動遊戯具但し、玩具,遊戯具を除く」を指定商品として、平成11年12月24日に分割の登録、同16年11月24日に指定商品を、第6類、第8類、第9類、第19類ないし第21類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がされた後、同25年9月17日に指定商品を第28類「運動用具(体育用器械器具・体操用器械器具・スターターピストル・スケート靴を除く。)」とする更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
 
3 当審における審尋
 当審において、令和6年7月17日付け審尋(以下「審尋」という。)により、請求人に対し、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する請求人の対応又は意見を求めた。
 
4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
 請求人は、上記3の審尋に対し、令和6年10月22日付け回答書を提出し、要旨、以下(1)ないし(3)のとおりの意見を述べた。
(1)引用商標は欧文字「All Star」と片仮名「オールスター」の二段書き、黒色のみからなる文字商標であるのに対し、本願商標は赤色の欧文字「allstar」及びフェンシングの剣のグリップ及びガードと、白抜きで表されたプレード(フェンシングの剣の図形)からなる文字と図形の結合商標であり、フェンシング商品と関係があることが示唆され、文字と図形が一体化している。
 したがって、本願商標は引用商標と外観上明確に区別し得るものであり非類似である。
(2)本願商標は「アルスター」という称呼で取引され、本願の指定商品の分野においては、「アルスター」として認識されている。本願商標と同一又は類似する商標を付した請求人のフェンシング用品が、日本代表の選手のほか、子供、学生、社会人にも愛用され、その品質が高く評価されているという取引の実情がある。
 したがって、本願商標は「アルスター」という称呼のみが生じるから、引用商標「オールスター」とは明瞭に聴別し得るものであり、両者は称呼においても非類似である。
(3)本願商標は、引用商標と、観念において比較することができないとしても、総合すれば非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
 
5 当審の判断
(1)本願商標について
 本願商標は、別掲1のとおり、「allstar」の欧文字を、下寄りの一部を横線で細く白抜き状に省略し、その左側に横線と弧を組み合わせたような装飾を施し、赤色で横書きしてなるところ、その構成文字は「花形選手総出場の。オールスターの。」(参照:「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」(株式会社大修館書店)「all-star」の項」)の意味を有する英語であり、その発音や意味合いを含めて我が国でも広く親しまれている外来語である。
 そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「オールスター」の称呼及び「オールスターの」程度の観念を生じる。
(2)引用商標について
 引用商標は、別掲3のとおり、筆記体で表した「all star」の欧文字の下に、「オール スター」の片仮名を小さく表してなるところ、上記(1)のとおり、それら文字は「花形選手総出場の。オールスターの。」等の意味を有する英語に通じ、我が国でも広く親しまれている外来語である。
 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「オールスター」の称呼及び「オールスターの」程度の観念を生じる。
(3)本願商標と引用商標との類否について
 本願商標と引用商標を比較すると、外観においては、装飾や片仮名の有無、書体などの微差はあるものの、その構成文字である「allstar」と「all star」は共通する語を表してなり、記憶される印象において互いに極めて似通ったものとなる。また、「オールスター」の称呼及び「オールスターの」の観念を共通にする。
 そうすると、本願商標と引用商標は、その比較において、外観において記憶される印象が極めて似通っており、称呼及び観念を共通にするから、これらを総合して全体的に考察すれば、同一又は類似の商品に使用するときは、出所について誤認混同を生じるおそれがあり、両商標は類似の商標と認められる。
(4)本願の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
 本願の指定商品中、第25類「Fencing clothing for men, women and young people, foil fencing suits (clothing), fencing jackets (clothing), fencing breeches (clothing), epee suits (clothing), sabre suits (clothing), sabre jackets (clothing), sabre breeches (clothing), fencing stockings (clothing), fencing shoes (clothing).」、第27類「Metal fencing pistes (flooring - sports mats), fencing pistes of metal, of soft PVC and black rubber (flooring - sports mats).」及び第28類「Cup protectors for men (sports equipment), chest protectors for women and girls (sports equipment), plastrons for wear under clothing (sports equipment); fencing masks for foil, epee and sabre; fencing gloves for foil, epee and sabre; fencing weapons (sporting articles), including foils, epees and sabres; accessories for fencing weapons (included in class 28), namely fencing blades, fencing grips, fencing guards, fencing pads, body wires for fencing, plugs for fencing and fencing pommels, weapon bags; fencing articles (included in class 28).」は、引用商標の指定商品と、同一又は類似の商品を含む。
(5)請求人の主張について
 ア 請求人は、(ア)「allergy」(アレルギー)、「alliance」(アライアンス)、「Allan」(アラン(人名))、「allay」(アレイ)など、語頭に「Al」の文字が来る単語の中には「a」を「ア」と発音する単語があること、ヘボン式ローマ字では「a」を「ア」と発音することから本願商標から「アルスター」の称呼が生じる旨、(イ)請求人が、パリオリンピックでメダルを獲得した国内外のトップ選手のスポンサーをする世界的なフェンシング用具専門メーカーであるところ、指定商品の分野において、本願商標は「アルスター」とのみ称呼されている取引の実情がある旨、(ウ)仮に、本願商標を「オールスター」と称呼することがあるとしても、本願商標と引用商標は、外観においてこれを凌駕する相違があるから、互いに非類似の商標である旨を主張する。
 イ(ア)しかしながら、本願商標の構成文字である「allstar」は、上記(1)のとおり、「オールスターの」等の意味を有する英語であり、その発音や意味合いを含めて我が国でも広く親しまれている外来語であるから、それより「オールスター」の称呼が無理なく生じるとするのが自然である。
 そして、請求人提出に係る証拠から、構成文字を「allstar」とする本願商標が、その指定商品と関連して、請求人主張の読み(称呼)のみをもって、取引上普通に使用されている実情までは見いだせず、本願商標に接する需要者及び取引者が、その構成文字を、広く親しまれている外来語としての読みから離れて、請求人主張の読み(称呼)のみを直ちに想起するとは認め難い。
(イ)加えて、商標の類否判断にあたり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指し、単に当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではない(参照:平成28年(行ケ)第10270号、平成29年6月28日知財高裁判決)ところ、請求人の主張する本願商標の使用に係る実情は、請求人に係る個別の商品についての特殊的、限定的な事情にとどまり、商標の類否判断に考慮すべき一般的、恒常的な実情とはいえないから、本願商標についての上記判断は左右されない。
(ウ)また、本願商標と引用商標は、外観においては、装飾や片仮名の有無、書体などに微差があるものの、その構成文字である「allstar」と「all star」は共通する語を表してなり、記憶される印象において互いに極めて似通ったものとなる。
 したがって、請求人の主張は採用できない。
(6)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、これを登録することができない。
 よって、結論のとおり審決する。
 


        令和 6年12月16日

     審判長  特許庁審判官 旦 克昌
          特許庁審判官 阿曾 裕樹
          特許庁審判官 山根 まり子

 
別掲1 本願商標(色彩は原本参照。)
                                                  
 
別掲2 本願の補正後の指定商品
 第8類「Hand tools, namely stretchers for fencing pistes.」
 第25類「Fencing clothing for men, women and young people, foil fencing suits (clothing), fencing jackets (clothing), fencing breeches (clothing), epee suits (clothing), sabre suits (clothing), sabre jackets (clothing), sabre breeches (clothing), fencing stockings (clothing), fencing shoes (clothing).」
 第27類「Metal fencing pistes (flooring - sports mats), fencing pistes of metal, of soft PVC and black rubber (flooring - sports mats).」
 第28類「Cup protectors for men (sports equipment), chest protectors for women and girls (sports equipment), plastrons for wear under clothing (sports equipment); fencing masks for foil, epee and sabre; fencing gloves for foil, epee and sabre; fencing weapons (sporting articles), including foils, epees and sabres; accessories for fencing weapons (included in class 28), namely fencing blades, fencing grips, fencing guards, fencing pads, body wires for fencing, plugs for fencing and fencing pommels, weapon bags; fencing articles (included in class 28).」
 
別掲3 引用商標
   
 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)        本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
  
審判長 旦 克昌           
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .261-Z  (W08252728)
            262
            263

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年12月16日  審判書記官  奥田 智子