理 由 |
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第1 手続の経緯 |
本願は、2021年(令和3年)5月21日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 |
2022年(令和4年)5月10日付け:暫定拒絶通報、拒絶理由通知書 |
2022年(令和4年)6月3日付け :取消しの通報の国際登録簿への記録 |
2022年(令和4年)8月26日付け:意見書、手続補正書の提出 |
2023年(令和5年)9月27日付け:拒絶査定 |
2024年(令和6年)1月9日付け :審判請求書の提出 |
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第2 本願商標 |
本願商標は、「CURL」の欧文字を横書きしてなり、第8類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として登録出願されたものであり、その後、本願の指定商品については、上記第1の取消しの通報及び手続補正書により、最終的に、第8類「Folding multipurpose hand tool comprised of multiple blades and one or more of the following hand tools, namely, scissors, pliers, wire-cutter, wire stripper, straight screwdriver, file, can opener, and bottle opener, non-electric; fabric and leather sheaths for knives; fabric and leather sheaths for folding multipurpose hand tools; and tool pouches for attachment to tool belts.」とされたものである。 |
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第3 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下の1及び2のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 |
1 登録第4403258号商標(以下「引用商標1」という。) |
引用商標1は、「カール」の文字を標準文字で表してなり、平成11年7月8日に登録出願、第8類「パンチ,その他のはさみ類,押し切り,その他の手動利器(「刀剣」を除く。),手動工具(「すみつぼ類」を除く。)」を指定商品として、同12年7月28日に設定登録、その後、令和2年2月27日に最新の商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 |
2 登録第4403259号商標(以下「引用商標2」という。) |
引用商標2は、「CARL」の欧文字を標準文字で表してなり、平成11年7月8日に登録出願、第8類「パンチ,その他のはさみ類,押し切り,その他の手動利器(「刀剣」を除く。),手動工具(「すみつぼ類」を除く。)」を指定商品として、同12年7月28日に設定登録、その後、令和2年2月27日に最新の商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 |
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。 |
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第4 当審の判断 |
1 商標法第4条第1項第11号該当性について |
(1)本願商標について |
本願商標は、「CURL」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、「巻く。カールする。巻いていること。」等の意味(「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」大修館書店、「広辞苑第7版」岩波書店)を有する外来語として我が国で広く親しまれているものである。 |
そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「カール」の称呼が生じ、「巻く。カールする。巻いていること。」ほどの観念が生じるものである。 |
(2)引用商標1について |
引用商標1は、「カール」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、「巻く。カールする。巻いていること。」の意味(前掲書)を有する外来語として我が国で広く親しまれているものである。 |
そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して、「カール」の称呼が生じ、「巻く。カールする。巻いていること。」ほどの観念が生じるものである。 |
(3)引用商標2について |
引用商標2は、「CARL」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、我が国における一般的な辞書に載録がないものであるから、指定商品の取引者、需要者において、特定の意味合いを認識、理解させない一種の造語であるといえ、引用商標2は特定の観念は生じないものである。 |
また、造語からなる欧文字にあっては、ローマ字読み又は英語読み風に発音するのが一般的であるから、引用商標2は、その構成文字に相応して、「カール」の称呼が生じるものである。 |
(4)本願商標と引用商標の類否について |
ア 本願商標と引用商標1の類否について |
両商標はそれぞれ上記(1)及び(2)の構成よりなるところ、外観については、文字種が相違するものの、商標の使用において、その構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われていることに鑑みれば、本願商標と引用商標1は、それぞれの文字を置き換えたものとして、取引者、需要者に認識されるものであるから、両者における文字種の相違が出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないものである。 |
次に、称呼については、本願商標と引用商標1は、「カール」の称呼を共通にするものである。 |
さらに、観念については、本願商標と引用商標1は、「巻く。カールする。巻いていること。」ほどの観念を共通にするものである。 |
そうすると、本願商標と引用商標1は、外観上の差異が強い印象を与えるものとはいえず、称呼及び観念を共通にするものであるから、本願商標と引用商標1の外観、観念及び称呼等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。 |
イ 本願商標と引用商標2の類否について |
両商標はそれぞれ上記(1)及び(3)の構成よりなるところ、いずれも普通に用いられる方法で書してなることから、外観において、特徴的な差異を有しないことに加え、語頭と語尾を含め、構成する欧文字の4文字中、「C」、「R」及び「L」の3文字を共通にし、相違点は2文字目の「U」の文字と「A」の文字の差異のみである。そうすると、本願商標と引用商標2の外観は、時と所を異にして接したときには、取引者、需要者に同一の出所を表示したものと認識させるというべきであるから、両商標は、外観において類似するものである。 |
次に、称呼については、本願商標と引用商標2は、「カール」の称呼を共通にするものである。 |
さらに、観念については、本願商標は「巻く。カールする。巻いていること。」ほどの観念が生じるのに対し、引用商標2は特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれはない。 |
そうすると、本願商標と引用商標2は、観念において相紛れるおそれはないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであるから、本願商標と引用商標2の外観、観念及び称呼等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。 |
ウ そうすると、本願商標は引用商標と類似するものである。 |
(5)本願商標と引用商標の指定商品の類否について |
本願の指定商品である第8類「Folding multipurpose hand tool comprised of multiple blades and one or more of the following hand tools, namely, scissors, pliers, wire-cutter, wire stripper, straight screwdriver, file, can opener, and bottle opener, non-electric; fabric and leather sheaths for knives; fabric and leather sheaths for folding multipurpose hand tools; and tool pouches for attachment to tool belts.」は、引用商標の指定商品である第8類「パンチ,その他のはさみ類,押し切り,その他の手動利器(「刀剣」を除く。),手動工具(「すみつぼ類」を除く。)」と同一又は類似の商品を含むものである。 |
(6)小括 |
以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 |
2 請求人の主張について |
(1)請求人は、本願商標と引用商標1の類否について、文字種が異なれば、外観において判然と区別される旨主張する。 |
しかしながら、上記1(4)のとおり、本願商標と引用商標1は、それぞれの文字を置き換えたものとして、取引者、需要者に認識されるものであるから、両者における文字種の相違が出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないものというべきである。 |
(2)請求人は、本願商標と引用商標2の類否について、わずか4文字の欧文字からなる商標において、1文字の違いは外観上区別するのに十分な差異である旨主張する。 |
しかしながら、外観において、特徴的な差異を有しないことに加え、語頭と語尾を含め、構成する欧文字の4文字中、「C」、「R」及び「L」の3文字を共通とし、相違点は2文字目の「U」の文字と「A」の文字の差異のみであることからすると、本願商標と引用商標2の外観は、時と所を異にして接したときには、取引者、需要者に同一の出所を表示したものと認識させるというべきである。 |
(3)請求人は、観念において、本願商標は「巻く」「カールする」を意味するのに対し、引用商標は、権利者である「カール事務器株式会社」を想起させ、両商標は観念上明確に区別される旨主張する。 |
しかしながら、引用商標から権利者である「カール事務器株式会社」の観念が生ずるとする特段の事情も見いだせず、上記1(4)のとおり、引用商標1からは、「巻く。カールする。巻いていること。」ほどの観念が生じ、引用商標2からは特定の観念は生じないというべきである。 |
(4)請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標もそれらと同様に登録を認められるべきである旨主張する。 |
しかしながら、商標の類否の判断は、出願された商標と他人の登録商標との対比において、個別具体的に判断すべきものであり、また、請求人の挙げる登録例と本件商標とは、商標の構成等を異にするものであるから、当該登録例によって、本願商標に係る判断が左右されるものではない。 |
したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 |
3 まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
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