理 由 |
|
1 手続の経緯 |
本願は、2022年(令和4年)4月27日に国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 |
2023年(令和5年) 3月20日付け:暫定拒絶通報 |
2023年(令和5年) 8月 7日 :意見書の提出 |
2023年(令和5年) 9月26日付け:拒絶査定 |
2024年(令和6年) 1月15日 :審判請求書の提出 |
2024年(令和6年) 5月 2日 :上申書の提出 |
|
2 本願商標 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第1類「Photographic sensitised films; photographic film, paper and plates all being unexposed; photo-sensitive material; chemical preparations and substances, all for use in processing photo-sensitive materials.」を指定商品として、国際商標登録出願されたものである。 |
|
3 原査定の拒絶の理由(要旨) |
本願商標は、「FP4」の文字を通常の書体で太字により横書きしてなるものであり、用いられる文字の形や組み合わせ自体に特徴があるとはいえないものである。 |
そして、ローマ字の1字又は2字の次に数字を組み合わせたものは、取引において、商品の規格・品番等を表示する記号、符号として一般に使用され、また、本願の指定商品に係る化学品の分野においても同様に使用されている。 |
そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者において、単に商品の規格・品番等を表す記号・符号と認識されるにとどまるものといえることから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標というのが相当である。 |
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。 |
|
4 当審の判断 |
(1)商標法第3条第1項第5号該当性について |
本願商標は、別掲1のとおり、「FP4」の文字及び数字を一列に横書きしてなるものである。 |
そして、このような欧文字1字又は2字と数字の組合せからなる標章は、一般に様々な商品分野において、自己の製造、販売に係る各種商品について、その商品の管理又は取引の便宜性等の事情から、商品の規格、品番等を表示するための記号、符号として、取引上普通に採択、使用されている実情があるところ、原審提示の情報や、別掲2の情報にあるように、本願の指定商品を取り扱う分野においても、同様の実情が認められるものである。 |
また、本願商標は、欧文字2字「FP」と数字「4」とを組み合わせ、特筆すべき特徴のない太いゴシック体で表してなるものであって、その文字の態様や組合せ方法に特徴があるわけではなく、本願商標は、その構成態様において、別掲2に示した用例と比べて、特段の差異があるものとはいえない。 |
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の型番、品番等を表示するための記号又は符号の一類型を表したものと理解するにとどまり、これを自他商品の識別標識として認識することはないというべきである。 |
したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標に該当するというべきであるから、商標法第3条第1項第5号に該当する。 |
(2)請求人の主張について |
ア 請求人は、本願の指定商品の分野において、本願商標のようなアルファベット2文字と数字を組み合わせた商標が一般的に使用されておらず、需要者・取引者が商品の規格等と認識しないのであれば、たとえ、本願商標が審査基準に記載された例に該当する商標であるとしても、ありふれた標章ということはいえず、自他商品識別機能を発揮する商標と認められる場合があるというべきであって、そのことは過去の審決例からも明らかである旨主張する。 |
しかしながら、上記(1)のとおり、欧文字1字又は2字と数字の組合せからなる標章は、一般に様々な商品分野において、商品の規格、品番等を表示するための記号、符号として、取引上普通に採択、使用されている実情があり、かつ、本願の指定商品を取り扱う分野においても、同様の実情が認められること、すなわち、同分野において、上述のごとき一般的な取引実情とは異なる事情があるとする事実は認められないことからすれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるというのが相当である。 |
そして、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第5号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品・指定役務との関係や、その商品又は役務の分野における取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げた審決例は、商標の構成態様が本願商標とは異なり、指定商品又は指定役務の分野も異なるものである点において、本願とは、事案を異にするものというべきであり、また、過去の審決例が存在することをもって、上記判断が左右されるものではない。 |
イ 請求人は、本願の指定商品である写真フィルムの市揚は、昨今、極めて限定的なものとなっており、その商品の需要者層は、商品の選択に際して高度な注意力を有する需要者層に限られるという状況において、請求人の製品は、長い期間、我が国で流通しており、「写真フィルム」について「FP4」といえば請求人のことを想起するような状況すらあるといえることから、本願商標を「写真フィルム」に使用した場合、それに接する需要者は、それを自他商品の識別標識として認識できるものである旨主張する。 |
しかしながら、欧文字2字と数字1字を一般に用いられる書体により横書きしてなる本願商標の構成は、商品の規格、品番等を表示するための記号、符号として、取引上普通に採択、使用されている標章の一類型といえるものであり、本願の指定商品を取り扱う分野においてそれと異なる事情があるとする事実が認められないことは、上記(1)及び上記アのとおりであるから、仮に、請求人が述べるとおり、本願の指定商品の市場が過去と比べて大幅に縮小しており、その需要者層も限定的であったとしても、本願商標が、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であることに変わりはないというべきである。 |
また、請求人は、請求人による本願商標の使用実情を示す証拠として、参考資料8、参考資料11及び参考資料12(いずれも枝番号を含む。以下同じ。)を提出しているが、これらの資料からは、遅くとも1991年(平成3年)頃から、本願商標と社会通念上同一といい得る商標が、商品「写真フィルム」について使用されてきたことは確認できるものの、本願商標が使用された請求人の業務に係る商品(以下「請求人商品」という。)の出荷量を示す資料(参考資料11)については、英語で表されており、その訳文が提出されていないために内容を明確に把握することができない上、請求人商品の売上高や市場シェア、請求人商品に関する広告宣伝の規模などが不明である。さらに、本願の指定商品中には、上記2のとおり、「chemical preparations and substances, all for use in processing photo-sensitive materials.」(参考訳:「化学剤及び化学物質(全て感光性材料の処理用のもの)」)など、「写真フィルム」以外の商品も含まれている上、本願商標に係る需要者の認識度を示す資料(アンケート調査の結果など)も提出されていないことなどからすれば、提出された資料をもってしては、本願商標がその指定商品に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものになっているとはいえない。 |
ウ したがって、請求人の上記ア及びイの主張は、いずれも採用することができない。 |
(3)まとめ |
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当するものであるから、登録することができない。 |
よって、結論のとおり審決する。 |
|
|
|
別掲1 本願商標 |
|
|
別掲2 本願の指定商品を取り扱う分野において、欧文字1字又は2字と数字とを組み合わせてなる標章が、商品の規格・品番等を表す記号・符号などとして使用されていることを示す事実 |
(1)「ヨドバシ.com」のウェブサイトにおいて、商品「YASHICA ヤシカ YAS-F35R60 [YASHICA Ruby 60s New. ヤシカカラーフィルム]」が掲載されており、商品紹介として「YASHICA Ruby 60s このカラーフィルムは温かみのある表現を持ち、その色調がレトロな雰囲気を強調する画調になります。日中の特別な日の写真を撮るのに最適です。」の記載がある。 |
https://www.yodobashi.com/product/100000001008269535/ |
(2)「ヨドバシ.com」のウェブサイトにおいて、商品「フェラーニア FERRANIA P30 (ISO80) 135-36 [白黒ネガフィルム 36枚撮り ISO80]」が掲載されており、商品紹介として「イタリア・フェラーニア社の白黒フィルムです。」の記載がある。 |
https://www.yodobashi.com/product/100000001008431652/ |
(3)「通販モノタロウ」のウェブサイトにおいて、商品「フジフイルム フジ プレミアム400R」が掲載されており、商品紹介として「きめ細かく美しい再現力の高感度カラーネガフイルム。」の記載があるほか、「品番」として「36EX 3SB」の記載がある。 |
https://www.monotaro.com/g/04553560/ |
(4)「ビックカメラ.com」のウェブサイトにおいて、商品「パンクロマティック白黒フィルムROLLEI RETRO400S 135-36」が掲載されており、商品紹介として「あらゆる条件下で優れた効果を発揮する白黒フィルムです。」の記載があるほか、「型番」として「RR4011」の記載がある。 |
https://www.biccamera.com/bc/item/3272519/ |
(5)「ビックカメラ.com」のウェブサイトにおいて、商品「CS8011 CINESTILL_800T135-36N」が掲載されており、商品紹介として「ISO感度800カラーネガフィルム」の記載があるほか、「型番」として「CS8011」の記載がある。 |
https://www.biccamera.com/bc/item/6058115/ |
(6)「ヨドバシ.com」のウェブサイトにおいて、商品「蔵Cura クラ MONO BATH MB500 [LAB-BOX用現像液]」が掲載されており、商品紹介として「暗室不要の現像ボックス「LAB-BOX」でご利用いただける1液タイプの現像液「MONO BATH」。」の記載がある。 |
https://www.yodobashi.com/product/100000001005262071/ |
(7)「中外写真薬品株式会社」のウェブサイトにおいて、「SILVERCHROME モノクロフィルム現像薬品」の見出しの下、商品「SILVERCHROME D76 (シルバークローム D76)」が掲載されており、「型番:SC-D76」の記載があるほか、商品紹介として「1剤粉剤タイプのMQ現像液です。全ての一般的なフィルム処理に対応する微粒子フィルム現像剤です。」の記載がある。 |
https://www.chugai-photo.co.jp/products/silverchrome-film-chemicals/ |
(8)「みらいフィルムズ」のウェブサイトにおいて、商品「[フィルム現像] フォマドン パウダー現像剤 W37 1L セール」が掲載されており、商品紹介として「フォマドン パウダー W37現像剤は、フォマパンなど白黒フィルムのためのメトール・ハイドロキノンのパウダー現像剤です。」の記載がある。 |
http://miraifilms.jp/?pid=100699551 |
(9)「みらいフィルムズ」のウェブサイトにおいて、商品「[フィルム現像] アドックス FX-39現像液 500ml」が掲載されており、商品紹介として「アドックス FX-39現像液は、鮮鋭度やフィルム感度を上げる白黒フィルム濃縮現像液です。」の記載がある。 |
http://miraifilms.jp/?pid=87696703 |
(10)「みらいフィルムズ」のウェブサイトにおいて、商品「[フィルム現像] R09 スペシャル現像液 120ml」が掲載されており、商品紹介として「独特な白黒ネガ現像のための微粒子現像液です。」の記載がある。 |
http://miraifilms.jp/?pid=76091347 |
(11)「ビックカメラ.com」のウェブサイトにおいて、商品「サンハヤト ポジ感光基板用現像液 DP1000」が掲載されており、商品紹介として「希釈することなく、原液のまますぐに現像ができます。」の記載があるほか、「型番」として「DP1000」の記載がある。 |
https://www.biccamera.com/bc/item/11932119/ |
|
|
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
|
審判長 大森 友子 |
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |