審決


取消2024-670004

神奈川県大和市大和南一丁目7番11号
 請求人
株式会社アンバーパートナーズ
  
東京都新宿区西新宿4-14-4 カツラビル7階
 代理人弁理士
駒津 啓佑
  
6262 Sunset Drive Miami, FL 33143(United States of America)
 被請求人
Interval International, Inc.
  
東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁理士
杉村 憲司
  
東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁護士
杉村 光嗣
  
東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁理士
門田 尚也
  
東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館36階
 代理人弁理士
長嶺 晴佳
  


 上記当事者間の国際登録第1017793号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は、成り立たない。
 審判費用は、請求人の負担とする。



 理 由
  
第1 本件商標
 本件国際登録第1017793号商標(以下「本件商標」という。)は、「ASTON」の文字を横書きしてなり、2009年1月30日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2009年(平成21年)7月29日に国際商標登録出願、第35類、第36類及び第43類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成23年6月17日に設定登録されたものであり、その後、商標登録の取消審判により、その指定役務の一部を取り消す旨の審決がなされ、令和3年1月22日にその確定審決の登録がされた結果、その指定役務は、第43類「Hotel, condominium, vacation cottage, and vacation home services; hotel, condominium, vacation cottage, and vacation home reservation services; hotel services for preferred customers; providing information about hotels, condominiums, vacation cottages, and vacation homes via the Internet.」のほか、第35類及び第36類に属する役務となった。
 そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年2月8日である。
 なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年(2021年)2月8日から同6年(2024年)2月7日までを、以下「要証期間」という。
 
第2 請求人の主張
 請求人は、本件商標の指定役務中、第43類「全指定役務」(以下「請求に係る役務」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
 1 請求の理由
 本件商標は、その指定役務中、請求に係る役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
 2 答弁に対する弁駁
 請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。
 
第3 被請求人の主張
 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
 1 本件商標は、被請求人から黙示の許諾を受けた使用権者によって、本件審判請求に係る指定役務のうち、少なくとも「hotel, condominium, vacation cottage, and vacation home reservation services; providing information about hotels, condominiums, vacation cottages, and vacation homes via the Internet」(参考和訳「ホテル・分譲マンション・休暇時利用コテージ及び別荘の宿泊の予約の取次ぎ,ホテル・分譲マンション・休暇時利用コテージ及び別荘における宿泊施設の提供に関する情報のインターネット経由による提供」)について、審判請求の登録前3年の間に日本国内において使用されている。
 したがって、本件商標登録は、取り消されるべきではない。
 以下、本件商標の使用事実を立証する。
 2 乙第1号証について
 乙第1号証は、「Aqua-Aston Hospitality,LLC」(以下「アクア・アストン ホスピタリティー社」という。)が提供する宿泊施設オンライン予約サイト「Aston HOTELS & RESORTS」(https://www.aquaaston.jp/aston)の、2023年9月21日時点におけるウェブページの情報であり、インターネットアーカイブサービス「Wayback Machine」において保存されているものである。なお、「Wayback Machine」とは、世界中のウェブ情報を始め様々なデジタル情報をアーカイブしている非営利法人「Internet Archive(インターネットアーカイブ)」が提供しているウェブ情報保存サービスである(乙2)。
 乙第1号証の最上段左には、アーカイブのサービス名である「Wayback Machine」及び対象となっているウェブサイトのURL(https://www.aquaaston.jp/aston)が表示されており、最上段右には、アーカイブから抽出されたウェブ情報の日付(「SEP 21 2023」)が表示されている。
 乙第1号証の1頁目中ほど、やや上より中央部には、二段書きで「Aston HOTELS & RESORTS」と表示されており、そのすぐ下には「優れたサービス、心からのおもてなし、楽しい旅 人気のホテル、コンドミニアムリゾート、ヴィラなど素晴らしい宿泊施設をご用意しています。ファミリー向けからワンランク上の快適な客室まで、そのすべてがアストンの理念である思い出に残る旅を体現しています。」との記載があり、そのさらに下には検索ボックスが設けてあり、ホテル名や目的地、チェックイン/チェックアウトの日付、希望のベッドルーム数、その他の条件を指定して検索できるようになっている。
 さらにその下には、実際の部屋の写真とともに下部に「今すぐご予約」と表示してあり、希望する部屋の写真をクリックすれば、当該部屋のホテル情報及び予約画面に進むことができる。
 乙第1号証の2頁目下部中央には、二段書きで「AQUA-ASTON HOSPITALITY」と表示してあり、その下にある6つのロゴのうち一番左のものは「Aston HOTELS & RESORTS」のものである。
 乙第1号証の2頁目下部右側には、「Aqua-Aston Hospitality,LLC アクア・アストン ホスピタリティー 日本地区販売総代理店(株)パシフィックリゾート 日本予約センター」及びフリーダイヤルの番号が記載されている。
 以上より、乙第1号証に示されるウェブサイトは、日本の顧客を対象とした宿泊施設のオンライン予約サイトであり、当該ウェブサイトは「アクア・アストン ホスピタリティー社」によって管理・運営されており、当該ウェブサイトにおいて、「アクア・アストン ホスピタリティー社」の系列の宿泊施設の情報を提供するとともに、検索システムを利用してホテル名や日程、ロケーション等を指定することにより、「アクア・アストン ホスピタリティー社」系列の宿泊施設の予約を行うことができることが分かる。つまり、当該ウェブサイトにおいて、「hotel, condominium, vacation cottage, and vacation home reservation services; providing information about hotels, condominiums, vacation cottages, and vacation homes via the Internet」(参考和訳「ホテル・分譲マンション・休暇時利用コテージ及び別荘の宿泊の予約の取次ぎ,ホテル・分譲マンション・休暇時利用コテージ及び別荘における宿泊施設の提供に関する情報のインターネット経由による提供」)に係るサービスが提供されていることが明白である。
 3 「アクア・アストン ホスピタリティー社」について
 次に、乙第1号証において示される宿泊施設オンライン予約サイトの運営者である「アクア・アストン ホスピタリティー社」(Aqua-Asto Hospitality,LLC)と、本件商標の権利者である「Interval International,Inc.」(以下「インターバル・インターナショナル社」という。)の関係について説明する。
 乙第3号証は、「アクア・アストン ホスピタリティー社」の歴史を説明するウェブページ及びその和訳である。
 1948年にハワイでオープンした小さなホテルから始まった同社は、1968年から1969年にかけて、ホテル・コンドミニアムの管理会社「ホテル・コーポレーション・オブ・ザ・パシフィック(Hotel Corporation of the Pacific)」へと変わり、1986年には、「アストン ホテルズ&リゾーツ(Aston Hotels & Resorts)」へと発展した。2007年、同社は「インターバル・レジャー・グループ・インコーポレイテッド(Interval Leisure Group,Inc.)」(以下「ILG社」という。)傘下の事業部門となり、2013年、「アクア ホテルズ&リゾーツ(Aqua Hotels & Resorts)」を買収し、ハワイ最大のホスピタリティー管理グループの一つとなる(乙4)。これを契機に、2015年、同社は正式名称を「アクア・アストン ホスピタリティー社」とした。
 なお、「ILG社」は、本社をフロリダ州マイアミに置くタイム・シェア(リゾートホテルやコンドミニアムの部屋を設定された期間使用できる権利を購入する制度)カンパニーであり、マリオット・バケーションズ・ワールドワイド(Marriott Vacations Worldwide)の子会社である。そして、当該「ILG社」の子会社であり、バケーション業界において、会員制・レジャーサービスを提供しているのが、「インターバル・インターナショナル社」である(乙5)。
 つまり、「インターバル・インターナショナル社」と「アクア・アストン ホスピタリティー社」は、間接的に親会社・子会社の関係にあり、本件商標の使用については、親会社の立場にあり、また、本件商標の権利者である「インターバル・インターナショナル社」から、その傘下の「アクア・アストン ホスピタリティー社」に黙示の使用許諾が与えられている。
 4 本件商標の構成及び使用商標について
 本件商標は、欧文字「ASTON」と表示してなる。
 一方、乙第1号証の1頁目中ほど、やや上より中央部に表示された使用商標「Aston HOTELS & RESORTS」は、「Aston」と「HOTELS & RESORTS」の二段書きであり、「Aston」の文字が「HOTELS & RESORTS」よりも大きなフォントで表示されている。下段の「HOTELS & RESORTS」の文字は、指定役務との関係においては、役務の質・特徴等を記載するものであり、識別力が弱いと考えられ、使用商標のうち役務等の出所識別標識として機能する商標の要部は上段の文字「Aston」である。上段「Aston」の文字と本件商標とは、後半の「ston」の文字において、大文字・小文字の表示の差異があるものの、同一文字構成であり、よって、使用商標は、本件商標とは社会通念上同一と認められるべきものである。
 5 要証期間内における本件役務についての本件商標の使用について
 被請求人は、以上のとおり、本件商標について黙示の使用許諾を被請求人から得ている、被請求人傘下の「アクア・アストン ホスピタリティー社」を通じて、本件審判の要証期間内である2023年9月21日に、宿泊施設のオンライン予約サイト上に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「Aston HOTELS & RESORTS」を付し、宿泊施設の予約の取次ぎを行うとともに、オンラインで宿泊施設の提供に関する情報を提供していた。これらの行為は、電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為(商標法第2条第3項第7号)、及び、役務に関する広告、価格表等を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
 6 以上、証拠とともに説明したとおり、本件商標は、本件審判請求登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の商標権者よりその使用について黙示の使用許諾を得ていた使用権者が、「hotel, condominium, vacation cottage, and vacation home reservation services; providing information about hotels, condominiums, vacation cottages, and vacation homes via the Internet」(参考和訳「ホテル・分譲マンション・休暇時利用コテージ及び別荘の宿泊の予約の取次ぎ,ホテル・分譲マンション・休暇時利用コテージ及び別荘における宿泊施設の提供に関する情報のインターネット経由による提供」)について使用した結果、業務上の信用が化体しているものであり、本件商標登録は、本件審判の取消の対象とはなり得ない。このような商標登録を取り消すことは、業務上の信用の化体しない商標の整理を図るという不使用取消審判制度の趣旨に反するだけではなく、業務上の信用の保護という法目的にも反するものである。
 したがって、請求の趣旨のとおりの審決を求める。
 
第4 当審の判断
 1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)「Aqua-Aston Hospitality,LLC」(アクア・アストン ホスピタリティー社)が提供する宿泊施設のオンライン予約用ウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)の2023年9月21日時点におけるウェブページ情報(乙1)において、冒頭に、別掲のとおりの構成で、「Aston」の文字を表してなる商標(以下「本件使用商標」という。)を含む商標が表示され、「ホテル、コンドミニアム、リゾート」の見出しの下、ホテル名、目的地、チェックイン及びチェックアウトの日付、ベッドルーム数及び設備について検索できるボックスが配置され、その下に、「今すぐご予約」の記載とともに、複数のホテルの写真が「今すぐご予約」の記載とともに表示され、各ホテルの予約が可能な状態となっている。
(2)アクア・アストン ホスピタリティー社(旧社名は「アストン ホテルズ&リゾーツ」)は、2007年に、インターバル・レジャー・グループ・インコーポレイテッド(ILG社)の傘下となった(乙3)。
(3)商標権者は、ILG社を親会社とし、バケーション業界において、会員制・レジャーサービスを提供している(乙5)。
 2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用役務について
 上記1(1)によれば、本件ウェブサイト上では、各種ホテルに関する情報が掲載され、また、それらのホテルの予約も可能な状態となっていることから、本件ウェブサイトにおいて、「インターネット経由によるホテルにおける宿泊施設の提供に関する情報の提供,インターネット経由によるホテルの宿泊の予約の取次ぎ」の役務が提供されているとみるのが相当である。
 そして、上記役務は、請求に係る役務中、「hotel, condominium, vacation cottage, and vacation home reservation services; providing information about hotels, condominiums, vacation cottages, and vacation homes via the Internet.」の範ちゅうに属する役務である。
(2)使用商標について
 本件商標は、前記第1のとおり「ASTON」の文字を横書きしてなり、本件使用商標は、別掲のとおり、「Aston」の文字をややデザイン化して表してなるところ、両者は、大文字と小文字の差異を有し、書体において相違するものの、同一の文字構成からなる商標であるから、本件商標と本件使用商標とは、社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用時期について
 アクア・アストン ホスピタリティー社は、2023年9月21日に存在していた本件ウェブサイトにおいて、本件商標と社会通念上同一である本件使用商標を使用していたところ、上記2023年9月21日は、要証期間である。
(4)使用者について
 本件ウェブサイトにおいて本件使用商標を使用しているアクア・アストン ホスピタリティー社と商標権者とは、ともにILG社を親会社とする子会社同士の関係であるから、両者は相互に密接な業務上のつながりがあるといえる。
 そうすると、アクア・アストン ホスピタリティー社は、本件商標の使用について、本件商標権者から黙示の許諾を受けていたとみるのが相当であるから、同社は、本件商標の通常使用権者ということができる。
(5)使用行為について
 本件使用商標は、本件ウェブサイトにおいて「インターネット経由によるホテルにおける宿泊施設の提供に関する情報の提供,インターネット経由によるホテルの宿泊の予約の取次ぎ」の役務が提供されるにあたり、ウェブページの画面に表示されているから、これは、電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して提供する行為(商標法第2条第3項第7号)に該当する。
 そして、当該ウェブページは、日本語で記載され、日本の利用者に向けたものであるから、その提供先は日本国内であるといえる。
(6)小括
 上記(1)ないし(5)によれば、通常使用権者は、要証期間内に、電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たり、その映像面に本件商標と社会通念上同一の商標を付して、請求に係る役務を提供する行為を行ったものと認められ、これは、商標法第2条第3項第7号に該当する商標の使用ということができる。
 3 まとめ
 以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、通常使用権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定役務中、請求に係る役務について使用していたことを証明したものと認められる。
 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
 よって、結論のとおり審決する。


        令和 6年12月12日

     審判長  特許庁審判官 旦 克昌
          特許庁審判官 大島 康浩
          特許庁審判官 小林 裕子

 
別掲(本件使用商標を含む商標)
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。         (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)        本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。


〔審決分類〕T132 .1  -Y  (X43)

上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 6年12月12日  審判書記官  荒川 香奈子