特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版85第4章第3章第2章第1部・知的財産をめぐる動向第1章第5章④匿名化技術匿名化技術とは、個人の識別が可能なデータを、個人の識別が不可能となるように加工する技術である。日本においては、個人情報流出事件が報道として大きく取り上げられる傾向にあり、また、プライバシー漏えいへの不安からパーソナルデータの提供に不安を感じる傾向が欧米に比べて強いと言われており、匿名化技術の潜在ニーズが高い。近年クラウド上には、個人の識別が可能な情報を含む非構造化データ(表形式でないデータ(音声や画像情報等))が大規模に蓄積されており、これらのデータを活用するため、匿名化技術の適用が求められている。非構造化データへの匿名化技術の適用に関する特許出願件数では、日本は米国に後れをとっている。非構造化データへの匿名化技術の適用は、これからの「成長」が見込まれる技術領域であり、日本は、これまでの構造化データに加えて、非構造化データを対象とした匿名化関連技術の研究開発に注力すべきである。構造化データへの匿名化技術の適用は、既に「成熟段階」であるが、その匿名化技術の性能を評価する指標は世界でも未だ確立されていない。評価指標に関する日本国内の世界に先駆けた動き(PWS CUP1)等を活用して、国際標準となる評価指標を提案していくべきである。1  安全で有用性の高い匿名加工技術の開発の促進や、再識別のリスクを正しく評価すること等を目的とした匿名加工・再識別コンテスト。匿名化基礎技術(※1)高度匿名化技術(※2)成熟段階構造化データ(※3)非構造化データ非構造化データに対する匿名化関連技術の適用、特に、高度匿名化技術の適用に関しては、誰も適用し得ていない「未知の領域」が大きく存在する。(※1)データの一部の削除、データ置換などの個人情報を加工するための要素技術(※2)K-匿名性、Pk-匿名性などの指標を達成するための複合的な技術(※3)顧客情報や在庫情報など、定型的に扱えるデータ成長段階未知の領域成熟段階1-5-30図 パーソナルデータの提供全体に対する不安感1-5-31図 技術区分「非構造化データ」における出願人国籍(地域)別出願ファミリー件数比率1-5-32図 構造化データ・非構造化データに対する匿名化関連技術の適用の研究開発段階020406080100日本(N=989)米国(N=1011)英国(N=1023)ドイツ(N=1015)やや不安を感じるとても不安を感じるあまり不安を感じない全く不安を感じないよく分からない日本は、パーソナルデータの提供に不安を感じる傾向が強い(%)24.724.724.759.459.459.413.113.113.12.42.42.414.514.514.547.347.347.326.426.426.410.110.110.11.71.71.713.513.513.548.948.948.98.38.38.327.927.927.91.41.41.413.713.713.747.347.347.331.631.631.61.61.61.65.85.85.80.40.40.4(出典)総務省「平成29 年版情報通信白書」より作成(資料)特許庁「平成29年度特許出願動向調査報告書―匿名化技術―」欧州国籍293件9.3%中国籍566件17.9%韓国籍180件5.7%その他国籍57件1.8%日本国籍684件21.6%米国籍1,383件43.7%合計3,163件(資料)特許庁「平成29年度特許出願動向調査報告書―匿名化技術―」(資料)特許庁「平成29年度特許出願動向調査報告書―匿名化技術―」

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