特許行政年次報告書2018年度版
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Column 4 特許行政年次報告書2018年版97第4章第3章第2章第1部・知的財産をめぐる動向第1章第5章全固体電池近年、電気自動車の急速な普及にともない、リチウムイオン電池の需要は急速に高まっている。一方で、現在用いられているリチウムイオン電池は、電解質に可燃性液体が用いられることに伴うエネルギー容量の制限や安全性への課題が存在する。そんな中、それらの課題を解決し得る次世代二次電池として「全固体電池」が期待を集めている。1.全固体電解質の開発状況全固体電池の歴史は古く、1970年代には、リチウムヨウ素電池が開発されていたものの、電解質のイオン伝導度が十分ではなかったためにその用途は限られていた。しかし近年、液体系と同等のイオン伝導度を示す新しい化合物が発見され、全固体電池の実用化が現実味を帯びてきている。全固体電池の重要な要素技術である無機固体電解質には、酸化物系化合物と硫化物系化合物があり、現在のところ硫化物系の方がイオン伝導度の点で優れ、室温において電解液のイオン伝導度を上回る化合物が見つかるなど、より実用化が近いと考えられており、同分野における特許の重要性が高まっている。2.固体電解質に関する特許出願の動向硫化物系無機固体電解質に関する特許出願について、出願件数の上位ランキング(表1)では、上位1位~3位が日本企業、4位~5位が韓国企業となっており、日本企業の研究開発が先行しているといえる。一方、出願件数推移(図1)をみると日本国籍の出願件数は最も多く、韓国籍や中国籍の出願人の出願件数は少ないものの近年は増加傾向にある。3.全固体電解質の実用化に向けて我が国は、実用化が近い硫化物系固体電池分野の研究で、他国をリードしている。そこで、我が国の企業によって早期に実用化し、市場に供給することができれば、我が国企業が市場おいても優位性を確保することができるといえる。ただし、この分野の研究競争は非常に激しいことから、今後の市場や技術の方向性を分析して綿密な市場戦略を構築し、それに適合した特許出願を行うことが必要である。表1 出願人別ファミリー件数上位ランキング(硫化物系無機固体電解質、日米欧中韓への出願)※出願年(優先権主張年):2009~2015年図1 硫化物系無機固体電解質、日米欧中韓への出願注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを反映していない可能性がある。日米欧中韓への出願順位出願人名称ファミリー件数1トヨタ自動車株式会社2942出光興産株式会社863住友電気工業株式会社694Samsung Group(韓国)345Hyundai-Kia Motors group(韓国)2320132014出願年(優先権主張年)20152009201120122010200180160140120100806040200(件)日本国籍米国籍欧州国籍中国籍韓国籍その他合計優先権主張2009-2015年6499128146124111123

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