特許行政年次報告書2018年度版
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特許における取組第1章特許行政年次報告書2018年版114(1)特許審査の迅速化の推進①登録調査機関による先行技術文献調査の拡充近年、外国語特許文献の割合が増加し、その調査の重要性も高まっている。特許庁は、そのような状況に対応するため、登録調査機関による先行技術文献調査の範囲を日本語特許文献から外国語特許文献まで拡張し、先行技術文献調査の質の向上と、それに基づく審査の迅速化に取り組んできた。2017年度の登録調査機関による先行技術文献調査の総件数15.3万件のうち、外国語特許文献の調査が行われたのは11.4万件であった。登録調査機関による外国語特許文献の調査をより一層充実させていくことで、審査効率審査の迅速性を堅持するための取組1特許庁は、2023年度までに特許の「権利化までの期間1」(標準審査期間)と「一次審査通知までの期間」をそれぞれ、平均14か月以内、平均10か月以内とすべく、登録調査機関による先行技術文献調査の拡充、必要な審査官の確保等の取組を着実に実施してきた。「権利化までの期間」(標準審査期間)が14か月以内になれば、例えば出願とほぼ同時に審査請求された案件が、出願公開の前には特許取得の目処がつくことを意味しており、これは、特許権の活用に加えて、特許査定に至らなかった発明の秘匿も含めた、多様な事業戦略の構築を可能にするものと期待される。本節では、これらの審査の迅速化に関する取組について紹介する。の更なる向上が期待される。また、審査の質の維持・向上にもつながるものと考えられる。登録調査機関の数は、2018年4月1日現在10機関である。登録調査機関としての登録は、39に分けられた技術区分単位で行うこととし、各登録調査機関は登録した区分で調査業務を行っている。2004年当時の特許庁の審査室体制に基づいて39の区分と区分に含まれる技術の分野が決定されたが、十数年間における各技術分野の出願傾向の変遷により、区分ごとの件数規模のばらつきが拡大していた。そのため、各区分の「区分の名称」及び「技術の分野」を改正し、2018年4月から改正後の区分に基づいた調査業務を実施している。特許における取組我が国企業や大学・研究機関等のグローバルな知的財産活動を支援するためには、特許庁が国際的に信頼される質の高い審査を行い、国内外で速やかに特許を取得できるようにすることが重要である。このため特許庁は、「世界最速・最高品質の特許審査」の実現に向けた様々な取組を講じてきた。また、IoTや人工知能(AI)、ビッグデータ等の新技術の研究開発及びビジネスへの適用が急速に進んでおり、これらへの対応も急務となっている。本章では、「世界最速・最高品質の特許審査」を実現するための、審査の迅速化に関する取組、質の高い権利を設定するための取組、及び海外特許庁との連携・協力について紹介するとともに、標準必須特許に関する取組を紹介する。第1章1 審査請求日から取下げ・放棄又は最終処分を受けるまでの期間(出願人が補正等をすることに起因して特許庁から再度の応答等を出願人に求めるような場合や、特許庁に応答期間の延長や早期の審査を求める場合等の、出願人に認められている手続を利用した場合を除く。)。
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