特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版119第1章第5章第6章第7章第8章第4章第3章第2章第2部・特許庁における取組権利化の予見性向上とコストの削減が可能となっている。そして、特許庁は、特許審査の質と速さを主な指標としてユーザーに選択される他庁との競争環境に晒されている。このような状況の下、各国特許庁は特許審査の品質向上に注力し始めている。米国特許商標庁は、2010-2014年戦略計画に引き続き2014-2018年戦略計画の中で、特許の質及び適時性の最適化を優先目標として掲げており、2015年初頭に新設された特許品質担当の副局長のもと、特許関連業務の品質向上に向けた包括的プログラムに取り組んでいる。また、欧州特許庁は、長官直下に品質監査を担う組織を設置し、特許審査の実体面に関するサンプルチェック等を行う体制を整えている。日本国特許庁もその例外ではなく、特許審査の質の維持・向上のための様々な取組を推進している。②特許審査の品質管理の推進出願人が求める特許審査の質を満足するためには、各審査室において質の維持・向上に取り組むことはもちろんのこと、特許審査を担当する審査部全体で、ユーザーニーズを踏まえて品質管理に係る取組を推進することが重要である。特許庁では、各審査室において、審査官一人一人が質の維持・向上に日々取り組むことに加えて、審査部全体としては、品質管理室が中心となり、特許審査の質の維持・向上に関する一元的な取組を行っている。2017年度は、特許審査の質の更なる向上を目指し、品質ポリシーと品質マニュアルの下、「品質保証」、「品質検証」及び「品質管理に対する外部評価」の3つの観点から品質管理に関する取組を実施した。a. 品質保証特許庁では、特許性の判断や先行技術文献調査の均質性の向上を通じて、特許審査の質の保証を図るために、審査官同士が意見交換を行う協議を実施している。2017年度は、審査官が自発的に行う協議に加えて、他庁を受理官庁とする英語PCT国際出願や、3回目以降の拒絶理由を通知する案件等について、必ず協議を行うこととした(2017年度は約5万件)。また、特許庁から発送される書類の質を保証するという観点から、審査官が作成した処分等に係る書面の全件について、その審査官が所属する審査室の管理職が当該書面の内容を確認しており、担当技術分野における統一的な運用の実施や特許審査の均質化に役立たせている。b. 品質検証特許庁では、特許審査の品質監査を行う者として、担当する技術分野における高い知識や判断力を有する審査官から「品質管理官」を選任し、全ての技術分野に配置している。品質管理官は、審査の質を把握することを目的とし、無作為に抽出された案件を対象に、審査官の処分等の判断及びその結果として作成された起案書の適否を確認する品質監査を行っている。また、品質管理官が行った品質監査の結果を分析及び評価することで、特許審査の質の現状把握と課題抽出を行い、関係部署に情報共有するとともに、課題解決に向けて関係部署と連携した対応を行っている。さらに、品質管理室では、拒絶理由通知書において発生する形式的な瑕疵に対する監査も実施している。また、特許庁では、特許審査の質に関するユーザーニーズや期待を把握し、特許審査を継続的に改善することを目的として、特許審査等の質全般と特定の出願における審査等の質のそれぞれについて調査を行っている。2017年度は、内国企業570社、外国企業59社、代理人52者を対象として、2016年度に特許査定又は拒絶査定がなされた国内出願の中からランダム抽出された1,970件と、2016年度に国際調査報告又は国際予備審査報告が作成されたPCT国際出願の中からランダム抽出された731件についての調査を行った。調査対象者からより一層自由・率直な評価・意見を得るために、前年度に引き続き、特許審査等の質全般の調査について無記名での回答を可
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