特許行政年次報告書2018年度版
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特許における取組第1章特許行政年次報告書2018年版122実施している。2017年度も引き続き当該判断相違の要因分析を実施し、その結果を審査官に周知する等、グローバル化に対応した品質管理の充実に向けて活用している。④IoT、AI等の新技術に対応した取組「第4次産業革命」において、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やAI、ビッグデータ等の利活用が積極的に検討される中、その成果物として生み出された、サービスとモノとが結びついたビジネス関連発明や学習済みモデル、データ構造等の発明が、特許出願される傾向にある。このような状況の下、産業構造・出願動向の変化に対応するために、特許出願の審査の質を維持・向上させるための取組を実施した。a. 審査基準、審査ハンドブックに関する取組IoT関連技術やAI等の新たな技術の台頭に伴い、ソフトウエア関連発明が多くの技術分野で創出されるようになり、様々な技術分野の審査官やユーザーがソフトウエア関連発明に係る審査基準等について十分理解する必要性が高まってきた。このような状況を踏まえ、ソフトウエア関連発明に係る審査基準等について、基本的な考え方を変更せずに発明該当性や進歩性に関する明確化を図った。具体的には、産業構造審議会の審査基準専門委員会WG第12回会合(2018年1月16日開催)での検討及び意見募集を経て、「特許・実用新案審査基準」2及び「特許・実用新案審査ハンドブック」3の改訂を行った。当該審査基準等は2018年3月14日に日本語及び英語にて公表され、4月1日以降の審査に適用されている。b. 先行技術文献調査に関する取組IoT関連技術の近年の急速な発展に伴い、同技術の特許出願の動向や、どのような発明しながら、今後も技術の進展に応じてIPCをより効率的な検索ツールとするために、五大特許庁及びIPC加盟国と協働してIPC改正を進めていく。c. グローバル化に対応した品質管理の充実グローバル出願が増加する中で、ユーザーにとっては権利化の予見性の向上がより重要な課題となってきている。日本国特許庁では、このような状況にあるユーザーを支援する観点から、グローバル化に対応した品質管理の充実のための以下のような取組を行ってきている。日米欧の三極特許庁で開始された、PCT国際段階での国際調査の結果と各国段階での審査結果との間の一致度に関するサンプル調査が契機となり、日本国特許庁は、2013年から、欧州特許庁との間で、その一致度等を統計的に解析すると共に、結果が相違した案件を対象として、双方の審査官同士の直接的な意見交換を通じて判断相違の要因分析を実施している。そして、その分析により明らかになった両庁間の判断の差異、先行技術文献の調査ノウハウ等を、日本国特許庁における特許審査に活用している。2018年2月、スペイン・マドリードにおいて開催されたPCT国際機関会合(MIA)1第25回会合では、かねて我が国から提案していた国際段階と国内段階の連携のためのPCT国際調査・予備審査ガイドラインの改訂案について、引き続き多くの参加国からの支持が得られたため、事務局によるガイドラインの改訂に向けた各国への意見紹介手続に入ることとなったほか、品質管理システムに関する同ガイドライン21章の強化やPCT制度の将来等について議論を行った。さらに、現在、日本国特許庁での品質管理に関する取組として、日本国特許庁と外国特許庁との双方に出願され、審査結果が相違した案件を対象とした、判断相違の要因分析を1 ISA・IPEAとして任命されている知財庁・機関の会合であり、PCT作業部会に向けた実務者間の協議の場と位置づけられている。2 https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun.htm3 https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/handbook_shinsa.htm23

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