特許行政年次報告書2018年度版
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特許における取組第1章Column 10 特許行政年次報告書2018年版126Fintechと特許Fintechは、ファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、Fintechとして、ICTを用いた様々な新たな金融サービスが誕生している。具体的には、スマートフォンを用いた決済や個人間送金、家計簿アプリ、ウェブ履歴に基づく与信判定等が挙げられる。Fintechは世界的に広がりをみせ、各国で金融分野におけるイノベーションが誕生している。1.金融関連発明の特許出願の動向(国内)国内のFintechを含む金融関連発明の特許出願件数は、増加傾向で、2016年は1,066件となり、大きな伸び率を示している。日本におけるFintechの着実な広がりがみられる。2.IP5の金融関連発明の動向IP5における金融関連発明の特許出願件数は、全体として増加傾向である。特に、中国、韓国は大きな伸びを示している。米国は2014年以降、相対的に減少傾向がみられる。その背景には、米国連邦最高裁判所のAlice判決(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int'l, 573 U.S. ___)により、金融関連発明等に関する特許の取得が困難になったことが考えられる。欧州の出願規模は小さく、その背景には、全体の出願規模が小さいこと、金融関連発明等に対する厳しい進歩性の判断を有することが挙げられる。そうした中、日本における金融関連発明の出願規模は、増加傾向であるものの、各国と比較すると相対的に小さく、欧州と同水準となっている。その一因には、日本におけるFintechの普及が他国と比較すると低調であることが考えられる。日本におけるFintechの普及による市場拡大と、それに伴う投資拡大により、さらなるイノベーションの創出が期待される。1,2001,0008006004002000201120122013201420152016(年)出願件数出願年80706050403020100中国イギリススペインアメリカドイツフランス韓国33%32%27%日本14%(%)69%42%35%37%(備考)・ここではIPCとしてG06Q20/,40/が付与された出願を「金融関連発明」としている。・出願件数は、①国内出願件数と②PCT(Patent Cooperation Treaty:特許協力条約)に基づく国際出願のうち日本へ国内移行した出願件数、の合計数。・PCT国際出願は、国内書面の受付日を基準日として計上している。(資料)Ernst & Young「EY FinTech Adoption Index 2017」を基に特許庁作成(備考)・2015-2016年には、DBに未反映の多数の出願が存在する可能性があるため点線で表示している。・「Fintech普及率」とは、オンラインアクティブユーザのうち、Fintech利用者の割合を意味する。金融関連発明の出願件数各国の金融関連発明の特許出願件数各国のFintech普及率6,0005,0004,0003,0002,0001,00002010201120132012201420152016(年)出願年出願件数USPTO(米国)JPO(日本)SIPO(中国)KIPO(韓国)EPO(欧州)(資料)WIPO Patentscope を基に特許庁作成(資料) 特許庁作成
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