特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版131第1章第5章第6章第7章第8章第4章第3章第2章第2部・特許庁における取組c. PPHの実効性向上に向けた取組PPH案件の審査の遅延解消がユーザーより要望されていたインドネシア知的財産総局においてはPPH案件の迅速な審査が可能となるよう、2016年6月以降日本からPPH専門家を延べ10名派遣して継続的な支援を行っており、これにより、支援開始前の3年間では、PPH申請がなされた出願のうち審査が行われた案件が約30件であったのに対し、支援開始以降の1年半で300件以上の案件の審査結果が通知された。また、日本からの年間のPPH申請可能件数に上限が設定されているベトナム、日本からPPH申請可能な技術分野に制限等があるブラジルについても、相手庁との会合の場を利用して要件緩和に向けて働きかけを行っている。今後もPPHを実施しているがその運用に問題がある外国特許庁に対して継続的に支援を推進することで、PPHがより実効性のある枠組みとなることが期待される。②日米協働調査試行プログラム日米協働調査試行プログラム1は、日米両国に特許出願した発明について、日米の特許審査官がそれぞれ先行技術文献調査を実施し、その調査結果及び見解を共有した後に、それぞれの特許審査官が最初の審査結果を送付する取組であり、米国特許商標庁との間で2015年8月1日から試行を行っている。この取組により、「日米の審査官が早期かつ同時期に審査結果を送付することで、ユーザーにとっての審査・権利取得の時期に関する予見性が向上する」、「日米の審査官が互いに同じ内容の一群の出願について先行技術文献調査を協働して実施することにより、より強く安定した権利をユーザーに提供することが可能となる」等の効果が期待される。2017年7月31日に2年間の第1期試行プログラムが終了し、試行期間中に67件の申請を受理した。また、同年11月1日からは新しb. PPHの利便性向上に向けた取組PPHは従来、二庁間の取組であったため、例えば、日本国特許庁の審査結果に基づくPPHであっても、第二庁ごとにPPHの要件が異なる等の問題があり、各PPHの要件の共通化を求めるユーザーニーズも大きかった。そこで、PPHの利便性向上に向けて、2009年2月の第1回多国間特許審査ハイウェイ長官会合及び実務者会合以来、両会合が継続して開催され、2014年1月、それらの議論を踏まえて日本国特許庁を含めた17の庁間でグローバル特許審査ハイウェイ(GPPH)が開始された。この枠組みに参加した庁の間では、利用できるPPHの種類が共通化され、通常型PPH、PPH MOTTAINAI及びPCT-PPHの全てが利用可能となる。その後、2017年7月にニュージーランドが、2018年1月にはヴィシェグラード特許機構が参加し、2018年4月1日時点で25の庁に拡大した。なお、2016年1月から日本国特許庁がGPPHの事務局を務めている。また、2013年9月、スイス・ジュネーブにおける五大特許庁長官の合意に基づき、日米欧中韓の五庁相互間でのPPH(IP5 PPH)が2014年1月から開始された。これにより、五庁間で通常型PPH、PPH MOTTAINAI及びPCT-PPHの全てが相互に利用可能となり、欧中、欧韓の間で新たにPPHが開始された。日本国特許庁は、更なるユーザーの利便性向上に向けて、PPHによる審査待ち期間短縮等の効果を客観的に把握可能となるようにPPH統計情報の公開を提案するとともに、統計情報を公開する際に統一的な指標を設定すべく五大特許庁の議論をリードしている。将来的には、通常型PPH、PPH MOTTAINAI、PCT-PPHを含むすべてのPPHの枠組みを各庁との間で相互に利用可能としてユーザーの戦略的権利取得のための選択肢を広げるとともに、わかりやすい手続とすることによる利便性向上が期待される。1 申請手続等その他詳細な情報は下記ウェブサイト参照  https://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/tetuzuki/shinsa/zenpan/nichibei.htm1

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