特許行政年次報告書2018年度版
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~明治初期からの産業財産権制度の歩み~冒頭特集特許行政年次報告書2018年版i特許行政年次報告書2018年版i~明治初期からの産業財産権制度の歩み~~産業財産権の重要性への気づき、 専売特許条例制定作業の始まり~明治維新前、幕藩体制下で行われていた各藩の輸出入品に対する統制と課税、藩札の発効、藩専売や、幕府の株仲間政策等により各商品の製造及び流通が統制されていたが、明治政府の近代化及び自由化を目的とする政策によってこれらの制度は廃止され、各商品の粗製乱造や特産物の模造等、経済秩序に一本年(平成30年(2018年))は、明治元年(1868年)から満150年を迎える節目の年である。先人たちの熱い想いで導入され、これまで幾多の先進的な技術を保護し、我が国の産業を世界一まで押し上げてきた産業財産権制度について振り返る。「1.産業財産権制度設計への道」として、特に初代特許庁長官である高橋是清に焦点をあてつつ、明治初期から中期にかけて、当時の先人たちが、諸外国の技術との圧倒的な差を感じ、世界に追いつき、追い越すためには、我が国に産業財産権制度の導入が必要であるとして、その制度設計に尽力してきた姿や想いを紹介する。「2.特許・意匠・商標の三条例制定後の登録第一号」では、特許・意匠・商標の三条例が制定された後、我が国で初めて登録された出願を紹介し、当時の出願書類から見える、明治期の人々の生活や産業が、一体どのようなものであったのかということについて想いを馳せる。1 産業財産権制度設計への道1産業財産権制度設計への道11時の混乱が生じていたといえる。一方、明治政府は、積極的な欧米技術の導入や官営工場の設立等、殖産興業政策を推し進めており、我が国の工業化及び近代化は進みつつあった。実際、図1に示すように、衣類や金属製品といった各種製品の輸出も明治初期から伸びを見せ始めていた。1 この項に関する主な参照文献 高橋是清「高橋是清自伝」(千倉書房、1936年)209-314頁 社団法人帝国発明協会内特許法施行五十年記念会編「特許法施行五十年紀念会報告」(社団法人帝国発明協会内特許法施行五十年記念会、1936年)、第10章第1節 高橋是清翁講演会(89-115頁) 特許庁編「工業所有権制度百年史 上巻」(社団法人発明協会、1984年)、前史-第2期第1章 特許庁編「意匠制度120年の歩み」(2009年)、第1部第1章-第4章 櫻井孝「明治の特許維新」(社団法人発明協会、2011年)、第1章、第3章 石井正「知的財産の歴史と現代」(社団法人発明協会、2005年)、154-162頁 杉本達於「特許制度事始」<I>-<VI>(湯浅・原特許ニュース/第2巻第2号-4号、第3巻第1号) 田村敏朗「日本特許制度概史(1)明治以前から専売略規則まで」(特許研究、No.23、1997年) 鈴木伸夫「日本特許制度概史(2)専売特許条例と特許条例」(特許研究、No.24、1997年) 丸山亮「日本特許制度概史(3)パリ条約加盟と法制の整備」(特許研究、No.25、1998年) 櫻井孝「制度創設期の我が国の実用新案制度について」(特許研究、No.58、2014年) ※原文からの引用文は、旧字体・旧仮名遣いを新字体・新仮名遣いに改める等の変更を行っている。
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