特許行政年次報告書2018年度版
161/372
特許行政年次報告書2018年版135第1章第5章第6章第7章第8章第4章第3章第2章第2部・特許庁における取組に対して、国際調査報告を作成することが可能となっている。今後も、日本国特許庁がPCTに基づく国際調査機関として質の高い先行技術文献調査の結果を国際的に発信することにより、国際的な権利取得を目指す出願人が安定した権利を得ることができる環境整備に貢献していく。このような背景から、日本国特許庁は、国際調査機関として国際調査報告を作成し提供可能となるよう、アジア新興国等を中心に積極的に管轄の対象拡大を進めてきた。現在では、米国及び韓国(日本語出願)に加え、ASEANにおいてPCTに加盟している9か国全ての国の国民又は居住者によるPCT国際出願米国2015年7月1日開始インドネシア2013年6月1日開始韓国(日本語出願のみ)フィリピン2002年1月1日開始カンボジア2016年12月8日開始ブルネイ2015年10月1日開始ベトナム2012年7月1日開始ラオス2016年1月1日開始シンガポール2012年12月1日開始マレーシア2013年4月1日開始タイ2010年4月15日開始(1)標準必須特許のライセンス交渉に関する手引きIoTの浸透により、様々な業種の企業が情報通信技術の標準規格を利用する必要性が増大しつつあることに伴い、SEPをめぐる環境は大きく変化している。第一に、ライセンス交渉の当事者が変化しており、主に情報通信分野の企業同士で行われてきた交渉は、情報通信分野の企業とそれ以外の製造業やサービス業、インフラ業といった異業種間でも行われるようになってきている。第二に、こうした交標準必須特許に関する取組4高速大容量の次世代モバイル通信規格「5G」によるIoT(Internet of Things)を用いた新たなサービスの開始が視野に入る中で、標準技術を実施するために必要となる特許である「標準必須特許(SEP)」をめぐる紛争が注目されている。こうした中、特許庁は、SEPのライセンスに関し、透明性と予見可能性を高め、交渉を円滑化し、紛争の未然防止及び早期解決を図るため、SEPのライセンス交渉に関する手引きの策定や標準必須性に係る判断のための判定の実施に向けた取組を進めている。本節では、これらのSEPをめぐる取組について紹介する。渉当事者をめぐる関係者の多様化に伴い、ライセンス交渉の態様にも変化が生じている。上記のとおりライセンス交渉が情報通信分野の企業とそれ以外の業種の企業との間で行われるようになり、企業間で互いに所有する特許の使用を認め合うクロスライセンスによる解決が困難になっている。これに加え、必須性の判断やライセンス料率の相場観が大きく異なることなどにより、SEPのライセンス交渉や紛争に対する不安の声が高まっている。こうした状況を分析し、交渉の進め方やロ2-1-17図 日本国特許庁によるPCT国際出願の国際調査の管轄状況(2018年3月現在)
元のページ
../index.html#161