特許行政年次報告書2018年度版
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情報システムにおける取組第5章特許行政年次報告書2018年版172④WIPO-CASE関連日本国特許庁はWIPO-CASEへの新興国等の参加支援、WIPO-CASEの機能向上、OPDとの連携等の支援をこれまで行ってきた。2017年度は、WIPO-CASEの機能向上を行うとともに、実体審査におけるワークシェアリングの重要性、WIPO-CASEを利用したドシエ情報の参照・利用方法に関するワークショップ3(タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、シンガポール)を開催し、日本国特許庁の特許審査官を講師として派遣した。⑤新興国向けIT研修の実施日本国特許庁では2017年度にWIPOと連携し、ASEANを中心とした新興国知財庁のIT担当者12名を招へいし、知財庁における効率的なITインフラを構築・利用する人材育成のための研修を実施した。(5)ePCTに関する取組PCT国際出願制度は、WIPO及び加盟国の特許庁が、受理官庁、国際調査機関など複数の役割を果たしつつ、協力して国際出願の処理を行う非集中型の制度である。そのため、下記表に例示するとおり、出願人や代理人及び各機関は、手続の進行に応じて、複数の関係機関との間で書類のやりとりをする必要があるのが現状である。一方、WIPOが2011年からサービス提供を開始したePCTは、将来的に出願人や代理人が複数機関に対する手続を一元的に行えるようにすることを目指し、現在もその機能の向上が図られている。WIPOにおける今後の開発次第ではあるが、ePCTは、我が国ユーザーにとっても魅力的な手段となり得る。そこで、特許庁では、将来的に、我が国ユーザーの利便性向上に資する形でePCTを採用できるようにWIPOとの調整を2016年度より開始し、2017年度には、主にePCTの出願機能について検討を続けた。て出願書類等の紙書類を電子化するプロジェクトへの協力を行っている。2018年度は、タイ、フィリピンでプロジェクトを継続中である。②ワークフロー最適化支援ASEAN等新興国においては法律や制度は異なるものの、特許、商標の出願から登録までの業務の流れは共通している部分が多くなっている。しかし、実際には業務の流れ(ワークフロー)が定型化されておらず、担当者によって異なる処理を行うなど、非効率的、不正確な業務が行われていることがある。ITシステムの導入を行うには、まずワークフローを最適化する必要があるため、WIPOジャパンファンドを通じて最適化の支援を行っている。2017年度はモンゴル、カンボジアにおいてプロジェクトが完了し、2018年度はベトナム、タイ、フィリピン、ラオスでプロジェクトを継続中である。③新興国向けITシステムの開発支援WIPOは独力でITシステムを構築することが困難な新興国知財庁向けにWIPO-IPAS1というシステムを開発し無償で提供している。WIPO-IPASは世界70か国以上の知財庁で導入されており、特許や商標のオンライン出願、庁内での書類の電子的決裁や出願人への発送、公報の電子的発行などの機能がある。また、WIPO-IPASは各国知財庁のニーズに合わせて必要な機能を選択して導入することが可能であり、また、導入後も機能追加が可能などの柔軟性を持っている。このWIPO-IPASのシステム開発もWIPOジャパンファンドを通じて支援を行っている。また、2017年度には、システム構築支援を行っていたASEAN PATENTSCOPE2のリリースが完了し、一般公衆からもASEAN各庁の公報データを一括で参照することが可能となった。1 WIPO IP Office Administration System2 2017年8月にリリースされた、ASEANが提供する特許情報の検索・提供サービス。3 第3部第2章3.(2)⑤e.WIPO-CASEナショナルワークショップ参照

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