特許行政年次報告書2018年度版
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中小企業・ベンチャー企業・地域・大学等への支援・施策第6章特許行政年次報告書2018年版174(1)ベンチャー企業支援の在り方の検討ベンチャー企業への期待が高まる中、ベンチャー企業の成長フェーズに応じた様々な支援策が展開されている。しかし、知的財産の観点からベンチャー企業に特化した支援策が十分に整備されているとは言い難いことから、ベンチャー企業の創業から事業化までのフェーズにおける知的財産に関する課題と必要となる支援策の在り方を検討した1。調査によると、成長スピードの著しいベンチャー企業において、創業の早い段階から知ベンチャー企業への支援1産業構造や社会の変革が急速に進む中、ベンチャー企業(スタートアップ)には、破壊的イノベーションにより産業の新陳代謝を促し、大企業・中堅企業との連携によるオープンイノベーションのけん引役として、我が国の経済発展を将来にわたり支えていくことが期待されている。政府全体としても、2016年4月に日本経済再生本部が「ベンチャー・チャレンジ2020」を取りまとめ、ベンチャー・エコシステムの構築に向けて政府一体となって取り組んでいるところである。革新的な技術やアイディアをもとに創業するベンチャー企業にとっては、その技術・アイディア自体が財産となるため、権利化・ノウハウ化やライセンスなどの方針や体制を整備する「知財戦略」に意識して取り組むことが求められる。しかしながら、創業前に知財戦略を構築しているベンチャー企業は約2割に留まる(2-6-1図参照)など、知的財産の重要性がベンチャー企業に十分浸透しているとはいい難い。また、ベンチャー企業の他に投資家やアクセラレータなどから構成されるベンチャー・エコシステムへの知財専門家の関与は十分とはいえない。さらに、ベンチャー企業とのオープンイノベーションに取り組みはじめた大企業・中堅企業においても、知財の取扱いが大きな課題となっている。以上のような認識のもと、特許庁では、これまでの中小企業施策全体における「中小・ベンチャー企業」としての取扱いを改め、ベンチャー企業に対して知財に関する情報を的確に発信し、知財意識の向上を図るとともに、ベンチャー企業特有の知財面の課題を解決すべく各種施策を実施していく。本節では、特許庁のベンチャー企業向けの支援施策について紹介する。的財産の重要性を認識する必要があるものの、創業前に知的財産を経営戦略に組み込んでいるベンチャー企業の割合は、特許が要と言われる医薬・バイオですら約5割に留まり、機械、電気・電子、IT系等の領域ではわずか2割にすぎない。また、創業の早い段階で知的財産の重要性の気づきを得ているベンチャー企業は、企業トップが知財関連の業務経験があるなど偶発的な要素が強いことが明らかとなった。中小企業・ベンチャー企業・地域・ 大学等への支援・施策第6章1 平成29年度特許庁制度問題調査研究「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究」

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