特許行政年次報告書2018年度版
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中小企業・ベンチャー企業・地域・大学等への支援・施策第6章Column 26 特許行政年次報告書2018年版220INPIT-KANSAIによる事業成長のための知的財産の活用サポートINPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)は、「政府関係機関の地方移転に関する今後の取組について」(2016年9月、まち・ひと・しごと創生本部決定)を受け、2017年7月31日、大阪駅直結の複合商業施設「グランフロント大阪」にINPIT初の地方拠点として設置された。こうした経緯を踏まえ、われわれの行動の全ては関西経済の成長と拡大に貢献するためのものという強い覚悟で取り組んでいる。拠点開設から間もない段階ですが、関西圏の事業者の皆さまにとって、ビジネスの有力な武器となる知的財産を効果的に活用するためのサービスとこれまでの歩みを紹介する。○中堅・中小企業等への専門性の高い支援サービス INPIT-KANSAI は、主に近畿経済産業局の管轄地域である近畿地域2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)に所在する中堅・中小企業等の皆さまの知的財産の保護・活用に関する取組を「知財戦略エキスパート」をはじめとするスタッフ全員でサポートしている。関西圏には、世界に誇る高度な技術力を持つ中小企業が集積しており、次世代の成長産業を支える優れた技術や潜在的な成長力を持った中小企業が数多く存在している。企業出身の「知財戦略エキスパート」は、国内外の知的財産活動の現場で培った豊富な経験とノウハウを活かして、「事業を確実な利益につなげるために知的財産をどのように活用していくか」、「知的財産に絡む様々なリスクを軽減・極小化するためにどのような備えを行っていくか」といった視点で、権利調査、侵害防止、模倣品対策、代理店やパートナーとの契約締結、技術提供(ライセンスを含む)契約、技術・ノウハウ等の適切な管理(技術漏洩防止)対策、事業モデルの検討・見直しなどに対する幅広いサポートを行っている。知的財産にまつわるリスクマネジメントは一見するとビジネスを進める上でブレーキのように感じられがちであるが、ビジネスを円滑に、かつ、より良い方向に推進するための視点から、意思決定のスピードを加速させるべく、事業展開の道筋に沿った具体的な課題の整理・分析や戦略策定を誠意と情熱を持ってサポートしている。INPIT-KANSAI開設以降、近畿地域から218件(2018年3月末時点)のサポート要請をいただいた。2016年度実績と比較すると31%の増加である。特に「海外展開支援」は約1.8倍に急増した。さらに、府県別にみると、大阪府が54%と最も多く、続いて兵庫県21%、京都府8%の順となっている。また、福井県、滋賀県は、そのほとんどが海外展開支援の要請である。INPIT-KANSAIでは、ご相談やサポート要請を受けた時点で、すぐに担当知財戦略エキスパートが社長や経営企画室、知財担当のメンバーなどに訪問して意見交換をしている。「企業のおかれている状況の認識」「問題の背景」「課題の抽出・設定」「解決へのアプローチ」「取組体制」などを議論し、企業の実情に合わせて社内の推進役とともに分解した課題に重要度と緊急度をつけて具体的な作業内容・スケジュールを詰めていく。こうしたスタイルは、企業にとっての経験の蓄積と主体的な取組を期待するものであり、自ずとリピートや定期的なサポートにつながっていく。○地域における連携活動(セミナー等の開催、情報発信)INPIT-KANSAIは、知財戦略エキスパートによる個別企業サポートのほか、支援機関や関係団体とともに、ビジネスシーンにおける知財活用と知財リスク低減に関する講座やセミナーを開催している。ビジネスの真のねらいを実現するために、「知財をしっかりと活かしていくための実践的なビジネス目線」と「ビジネスを成立させるための知財の目線」の両面から様々なモデルケースをもとに解説する。われわれが目指すところは、企業の主体的な知的財産活動であることは間違いない。しかし、成長や拡大を推し進める中小企業にこそ、必ずやぶつかるであろう知財面の様々な悩みや課題に、知財戦略エキスパートがリアルな現場でどのように向き合い、どのように解決してきたかといった経験値をインタラクティブに活か

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